すたんど・あっぷ・そうる 歴史・時代

織田信長(15)と帰蝶(14)、婚儀の一夜の物語。
竹田行人 34 0 0 03/01
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

「すたんど・あっぷ・そうる」


登場人物
織田信長(15)武将   
帰蝶(14)斉藤家の娘
池田恒興(13)織田家家臣
林秀貞(36)織田家家臣
平手政秀(57 ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

「すたんど・あっぷ・そうる」


登場人物
織田信長(15)武将   
帰蝶(14)斉藤家の娘
池田恒興(13)織田家家臣
林秀貞(36)織田家家臣
平手政秀(57)織田家家臣
斉藤利政(55)帰蝶の父

========================================

○(織田の夢)川岸(夜)
   織田信長(15)、提燈を片手に背丈より高い雑草を掻き分け、現れる。
   対岸に提燈の明かりが見える。
   織田、一歩踏み出し、落ちる。

○那古野城・織田の寝間(夜)
   織田、飛び起きる。

○稲葉山城・帰蝶の間
   女中たち、部屋の中を動き回っている。
   帰蝶(14)、白無垢姿で襖の隙間に見える山々を眺めている。
   斉藤利政(55)、音を立てて襖を開ける。
   女中たち、手を止めて頭を下げる。
   帰蝶、うつむく。
   斉藤、手を払う。
   女中たち、目を見合わせ出て行く。
   帰蝶、三つ指をつく。
帰蝶「お父様。今まで長い間」
斉藤「家に生き、家に死ぬのが女の勤め」
   斉藤、帰蝶の前に胡坐をかき、帰蝶の前に小刀を置く。
   帰蝶、頭を上げない。

○那古野城・中庭
   林秀貞(36)平手政秀(57)、周囲を見渡しながら歩いている。
平手「信長様。のぶながさま~」
林「あの大うつけめ。どこに隠れた」
   林と平手、歩いていく。


○同・天守閣
   織田、手すりに足を乗せて城下に目をやり、手で顎をさする。
織田「うーん。どうしたもんかねぇ」
   池田恒興(13)、織田の横に立つ。
池田「下で爺さんたちが騒いでる。その原因は」
織田「知るか。めでたい日だ。大目に見てやろう」
   池田、笑う。

○ 同・大広間
   織田と帰蝶、上座に座っている。
   家臣一同、顔を上げる。
   平手、膳に目を落とす。
平手「昨年の二割に満たない収穫に民が飢えているというのに、ずいぶんと豪勢な」
林「これもうつけのわがままだ」
   池田、咳払い。
   織田、帰蝶の盃に御神酒を注ぐ。
   帰蝶、飲み、盃を見つめる。

○ 同・織田の間(夜)
   織田、火鉢に手を当てている。
   帰蝶、三つ指をつく。
帰蝶「信長様、ふつつかものですが」
織田「そういうのやめよう。こっち来て」
   織田、隣を叩く。
帰蝶「はい」
   帰蝶、隣に座る。
織田「温まるでしょ」
   織田、笑顔。
   帰蝶、織田を見つめる。
帰蝶「あの。信長様。どうして」
池田の声「失礼」
   池田、襖を開ける。
織田「おぉ。入れ入れ」
   池田、徳利と盃を手に入って来る。
織田「池田恒興。俺の乳兄弟で無二の友だ」
池田「ただの腐れ縁だ」
   織田と池田、微笑み合う。
   帰蝶、織田と池田を見つめる。
池田「ここならいいだろ」
織田「ああ」
   帰蝶、二人の盃に酒を注ぐ。
織田「帰蝶も飲め」
   織田、帰蝶の手から徳利を取って盃を渡し、注ぐ。
   帰蝶、織田を見つめる。
   織田、帰蝶を見て、盃を置く。
織田「そうだ。ひとつ相談がある」
   帰蝶、盃を置く。
帰蝶「相談。私に。ですか?」
織田「ああ。城下の土地が痩せて収穫が減ってるんだ。どうしたらいいと思う?」
   池田、盃を置く。
池田「おいおい。政のこと女に話したって」
織田「ん? なんかまずいか?」
池田「いや。まずくはないけど」
帰蝶「こうしてみてはいかがでしょうか?」
   織田と池田、帰蝶を見る。
   帰蝶、自分の盃を取り、飲み干す。
帰蝶「土地を半分に分けて、片方で作物を育てる間、もう片方を肥やして、準備する」
   帰蝶、池田の盃を取り、自分の盃に酒を移す。
帰蝶「そして、次の年は肥やした土地で作物をつくり、もう片方を肥やす」
織田「なるほど」
池田「しかし、十分な収穫を見込むなら、土地を肥やすのに二年はかかる」
帰蝶「それなら。土地を三つに分ければいいんです」
   帰蝶、自分の盃の酒を半分飲む。
帰蝶「作物を作る土地。一年肥やす土地。二年肥やす土地。これを順番に入れ替えてゆく」
   帰蝶、盃の酒を順番に隣に移していく。
帰蝶「確実に、三割三分の収穫になります」
   織田と池田、目を見合わせる。
池田「あんまり、現実的じゃ、ない。かな」
帰蝶「申し訳ありません。出過ぎたことを」
   帰蝶、うつむく。
織田「気にすんな。ありがとな」
   帰蝶、織田を見つめる。
織田「一つの利のために、二つの準備」
   織田、笑顔。酒を飲み干し、倒れる。
帰蝶「のぶながさま? 信長様!」
池田「大丈夫だよ」
帰蝶「そんな風には。まさか。これに毒でも」
池田「あー。違う違う。この人。下戸なんだ」
帰蝶「ゲコ」
池田「うん。呑めないんだ。一滴も」
帰蝶「あ。あの御神酒」
   池田、頷く。
池田「婚礼は一生の大事だから粗相があっちゃいけないって」
帰蝶、織田を見る。
池田「うつけで、下戸。いいとこなし」
   池田、笑顔。
   帰蝶、織田を見つめる。

○ 同・寝間(夜)
   帰蝶、水桶の手ぬぐいを絞り、織田の額に置いた後、懐に手をやる。
   織田、目覚める。
   帰蝶、手を戻し、笑顔。
帰蝶「信長様。お加減は」
織田「最近。同じ夢をよく見る」
帰蝶「ゆめ」
織田「川の対岸に誰かいて、俺は渡りたいんだが、何かが足りない」
   織田、起き上がり、帰蝶を見つめる。
織田「殺せって、言われてきたんだろ?」
   織田と帰蝶、見つめ合う。
帰蝶、懐の小刀を織田の胸元に向ける。
帰蝶「家に生き、家に死ぬのが女の勤めです」
   織田、笑う。
織田「それを言うなら帰蝶はもう、織田家の女だ」
   帰蝶、織田を見つめる。
織田「そんで、俺の大事な嫁さんだ」
   帰蝶、手が震えている。
帰蝶「あんな、現実的じゃないことしか言えなくても、ですか?」
織田「武家の娘が現実的じゃ、色気がない」
帰蝶「初夜に、夫を殺そうとしても?」
織田「天下の大うつけの嫁だ。それくらいの気概がないと勤まらない」
   帰蝶、手を下ろし、崩れ落ちる。
帰蝶「怖かった。すごく。怖かった。こんな世に生まれなければ。こんな国。もう嫌」
   織田、帰蝶を抱きしめる。
織田「生まれる世も、家も。人は選べない」
   織田、小刀に目をやる。
織田「俺が変えてみせる。帰蝶が、帰蝶のままに生きられる世に。帰蝶が好きな場所に行ける。あ」
   織田、帰蝶の目を見る。
織田「そうか。対岸にいるのは帰蝶だったんだ」
   帰蝶、織田の目を見る。
帰蝶「対岸。ああ。夢の中の。川」
   織田、頷く。
織田「足りなかったのは。そうか。橋だ」
帰蝶「はし」
織田「最近も戦のために橋を落とした。よくやる手だ。敵がこっちに来られなくなる」
帰蝶「なるほど。でも。それが」
織田「橋がないのは、戦ばっかりやってるからだ」
   織田、帰蝶の肩を掴む。
織田「帰蝶。決めたぞ。俺は天下を獲る。戦を無くす。川に橋を架け、2人で旅するために」
   織田と帰蝶、目を見合わせる。
帰蝶「天下って。いいね。それ」
   帰蝶、笑顔。
織田「忙しくなるぞ。なんせ狙うは天下だ」
   織田と帰蝶、微笑み合う。

○ 同・大広間
   帰蝶、女中たちを前に立っている。
帰蝶「これからは女も強くなくてはいけません。そこで。先生をお呼びしました。池田、恒興先生です。はい。拍手」
   帰蝶、拍手。
   一同、拍手。
   池田、入ってくる。
池田「池田です。え。と。とりあえず。構えから」
   池田、棒を持ち、構える。
   帰蝶、棒を取り、構えを真似る。
   平手と林、廊下から様子を見ている。
平手「楽しいお人だ」
林「うつけが。二人」
   林、額を押さえて座り込む。
   帰蝶、笑顔。

〈おわり〉

閉じる
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントをするには会員登録・ログインが必要です。