もしも友達として会えていたなら 舞台

交わされた誓い、の続編。あらゆる学問を統一する、たった1本のテンプレート方程式。それがAIにより読み込まれたあとの世界。 エミリーは、攘夷軍のなかでカリスマ性を発揮し、他の兵士たちの士気は上がっていた。そんなエミリー率いる部隊に、リタたちは敗走を余儀なくされていた。そして、遂にエミリーは、リタを追い詰めたのでした
上田 貴史 17 0 0 08/21
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第一稿

あらゆる学問を統一する、たった1本のテンプレート方程式。それがAIにより読み込まれたあとの世界。

エミリーは、攘夷軍のなかでカリスマ性を発揮し、他の兵士たちの士気は上がってい ...続きを読む
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あらゆる学問を統一する、たった1本のテンプレート方程式。それがAIにより読み込まれたあとの世界。

エミリーは、攘夷軍のなかでカリスマ性を発揮し、他の兵士たちの士気は上がっていた。そんなエミリー率いる部隊に、リタたちは敗走を余儀なくされていた。そして、遂にエミリーは、リタを追い詰めたのでした

エミリー 攘夷軍の女兵士。カリスマ性と頭脳を持ち合わせたエリート。周りからの信頼が厚い

ベン 攘夷軍の兵士。エミリーに陶酔している

リタ 人類解放軍のリーダー。エミリーに追い詰められる。ある作戦を決行しようか悩んでいる

シェリー 人類解放軍の兵士。エミリーの妹

解放軍兵士 危険を知らせる

攘夷軍兵士 エミリーを信頼している

ボンド 攘夷軍のリーダー。エミリーの活躍に危機感を覚えている

CZq1 ボンドの側近アンドロイド

アンドロイド CZq1と同型のロボット

一部
ベン
(走りながら舞台中央へ)
「エミリー様、エミリー様。報告に来たのに、どこに行かれたんだろう」

エミリー
(ゆっくり歩きながら舞台中央へ)
「どうした、何か進展はあったのか」

ベン
(うなずき)
「エミリー様の言われた通り、奴らは東方部隊に奇襲をかけてきました。こちらは、エミリー様のおかげで準備ができていたため、奴らを壊滅させることに成功しました。こちらの損害はほぼほぼゼロ」

エミリー
(ため息をつき)
「ほぼほぼゼロ、ということは。死者が出たんですね」
(空を見上げる)
「悲しいことです。こんな事で人が亡くなっていくのは」

ベン
(下を向き)
「恥ずかしながら、私はエミリー様に会うまで、人がどれだけ亡くなろうが、数字としてしか見てませんでした。ましてや、死者が1名だけだと、まるで誤差のように見えないことさえありました。しかし、エミリー様はたった一人の死者にさえ、涙を流し、なまえをお聞きになさる。私は…」

エミリー
(話を制し)
「私をあまり褒めないでください。死者を少なくとも一人は出してしまった。たった一人でも、たしかに人生と想いがあったはずです。それを守れなかったのは、私の不甲斐なさの一つです。ベン。犠牲者の名簿はできてますか」

ベン
(大きな声で)
「すでに準備してあります。」
(エミリーに紙を手渡す)

エミリー
(ため息をつき)
「あれだけ準備する時間もあったのに、3人もの命を失ってしまった。ベン。あなたは、敵の、敵のリーダー、リタをどう見ますか?」

ベン
(目をパチパチさせて)
「えっと、危険な思想を持った危険人物だと聞いています」

エミリー
(ため息をつき)
「私が聞きたいのはあなたの意見です。ベン。私は、彼女を少し過小評価していたみたいで」

ベン
(首を傾げて)
「なぜ、ですか?ここまで追い詰めておいて、なぜ過小評価なんでしょうか?」

エミリー
(冷静に)
「先の戦闘、こちらの圧倒的優勢出ました。たとえ、それを知らずに奇襲をかけたとしても、これまでのリタの戦い方からみて、早々に勝てないこと、多くの犠牲が出ることは予測がついたでしょう。しかし、今回壊滅するまで彼らは戦った。そして、AIの計算結果を裏切る結果を出した。われわれの計算では、死者はおろかけが人すら出ない。という結果だったはずです」

ベン
(うなずき)
「たしかに、テンプレート方程式による国家戦略解析では、われわれの犠牲はゼロと予想されていました。しかし、たかが3人です。何かイレギュラーな事が起きたんでしょう」

エミリー
(怒った声で)
「ベン!!たかが3人とは何事ですか!!この3人の犠牲は我々にとっては大きな犠牲です。それをイレギュラーで片付けては駄目です」

ベン
(頭を下げる)
「申し訳ございません」

エミリー
(後ろを向く)
「私は、私は一度リタと相対してみたいと思ってます。それは、彼女の思想を知りたいのではなく、1軍人として、彼女をかっているからです。もし、許されるのなら、彼女とさしで勝負してみたい」

ベン
(あきれたように)
「そ、それはまた。そんなことしたら、貴方様まで彼女に汚染されてしまいます。おやめください」

エミリー
(首を振り)
「思想は伝染しません。少なくとも、心に一つの芯をもっているものには。」

ベン
(首をかしげる)
「芯、ですか」

暗転
エミリー
ベン
(舞台袖へ)

2部

リタ
(悲しそうな声で)
「多くの犠牲を出してしまいました」

シェリー
(リタを励ますように)
「リタ、あなたのせいではないは。彼らはあなたの制しを振り切って進軍していったじゃないですか。それを傷心に思う必要はないと思います」

リタ
(首を振り)
「もし、彼らはわたしに出会わなければ、こんな若くして死ぬことはなかったたんです。私は、まるで悪魔のようです。この手は汚さず、周りの人に人殺しを命がけてさせている。私は」

シェリー
(リタにビンタする)

リタ
(驚いたように)
「シェリー」

シェリー
(少し声を荒らげて)
「私たちは、あなたのために戦っているのではありません。私たちの信念を信じて戦っているんです。たしかに、リタ、あなたに出会ったことで多くの人が命をかけてまで守りたい信念を見つけました。しかし、それはあなたの指示に従って戦争をすることとは同じじゃない。私たちは、私たちの自由、意思、未来をかけてそれぞれがそれぞれの理由で戦ってます。私たちがあなたの駒のように思うのはあまりに傲慢すぎます。たしかに、あなたなしでは戦えない。それは、あなたが心のよりどころであること。そして、それ以下でもそれ以上でもないことを意味しています。どうか、この事を忘れないでください」

リタ
(驚いた後、少し嬉しそうに)
「そうね。忘れていたわ。あなただけね。そのことに気づかせてくれる人は。そして、私を呼び捨てにする人も」

シェリー
(両手を口に当て驚いたように)
「申し訳ありません。リタ様」

リタ
(少し笑って)
「からかっただけよ。今まで通り、リタでいいわ。いえ、リタと呼んでちょうだい」

解放軍兵士
(舞台袖から声のみ)
「リタ様、敵がこちらに進軍しているとの情報です。ここも危険です。ご決断を」

リタ
(ため息をつき)
「本当にあの計画を実行することも考えないといけませんね」

シェリー
(頷いて)
「過去に行き、科学的特異点を止める」

リタ
(頷く)
「おそらくこのまま行けば、解放軍は壊滅します。たしかに私一人死ねば、皆は助かるでしょう。しかし、その後は治療と言うなの人格改造が行われるでしょう。私は死ぬことよりも、人が永遠にAIの奴隷でいることが怖いのです」

シェリー
(リタの両肩に手を乗せて)
「リタ、私が過去に行きます。わたしにやらせてください」

リタ
(シェリーの目を見て)
「シェリー、あまりに危険よ。本当に過去にいけるかもわならないのよ」

シェリー
(微笑んで)
「そんなことは織り込み済みです。私も、AIに家畜化された人類の未来をみたくありません。そして、あなたはこの時代に必要です。もし、私が失敗しても、あなたがこの時代にいてささくれれば、希望種は途絶えないです。だから、最後まで生き延びてください」

リタ
(悲しそうな声で)
「シェリー。ありがとう。わかったわ。お願い、未来を変えてちょうだい」

暗転
リタ
シェリー
(舞台袖へ)

3部
ボンド
(舞台中央へ移動)

ボンド
(舞台中央付近を悩むように歩き回る)
「どうしよう、どうしょう」

CZq1
(早足でボンドに近付く。無表情で)
「ボンド様あまり悩んでいるところをみられると、兵士の求心力が落ちてしまいますよ。もう少し、自信を持ってください」

ボンド
(CZq1に助けを求めるように、腕をつかむ。情けない声で)
「どうしょう。このままでは、僕は、僕はリーダーから引きずり下ろされちゃう。そうなったら、そうなったら。助けてくれよ。頼むよ。頼むよ。AIなんだろう?何でもできるんだろう?」

CZq1
(無表情で)
「わかりました。一つ提案があります」

ボンド
(CZq1をみる)

CZq1
(ボンドに耳打ちする動作をする)
(ボンドから一歩距離を取る)

ボンド
(驚いたように、戸惑うように)
「そ、そんなこと、本当にできるの?」

CZq1
(冷静に無表情に)
「命令さえくれれば抜かりなく実行します。成功確率をテンプレート方程式で解析、解析開始、解析終了。成功確率、99.999999%です。問題なく遂行できます」

ボンド
(下を向いて、その後CZq1をみる)
「わかった。命令する」
(大きな声で)
「攘夷軍リーダーとして、お前に命令する。その作戦を実行せよ」

CZq1
(頭を下げる、少し広角あげて笑ってるようにみせる)
「わかりました。遂行いたします」
(舞台袖へ移動)

ボンド
(自分の顔を数回叩いて)
「これで、これでいいんだ。これで、僕は、僕はリーダーとして、まだやっていける。そして、いつか、人類の希望として僕は称えられる。リリーナ、その時もう一度君を助けい行くから」
暗転
(ボンド舞台袖へ)

4部

リタ
(舞台中央へ)

リタ
(ため息をつき、首を横に振り)
「シェリー、今気づいたの。あなたは過去に行き、そして、ソシテ私の祖母となる。シェリーおばあちゃんは、あなただったのね。ごめんなさい、それに早く気づいていれば、あなたを過去へは行かせなかったかもしれない」
(涙を拭く)

「そろそろ来るころね」

エミリー
ベン
(舞台中央へ)

エミリー
(冷静に)
「あなたが」

ベン
(威嚇するように)
「お前が」

エミリー
(冷静に)
ベン
(声を荒らげながら)
「リタだな」

リタ
(2人を見回し、冷静に)
「たしかに、私がリタ、解放軍リーダーリタよ。どこにも隠れもしない」

エミリー
(ベンを見て、冷静に)
「ベン、あなたは下がっていなさい」

ベン
(驚いたように)
「エミリー様、しかしそれでは」

エミリー
(怒り気味で)
「下がりなさい!!上官の命令が聞けないの!?」

ベン
(驚いたように)
「わ、わかりました」
(走って舞台袖へ)

エミリー
(冷静に)
「これであなたとゆっくりと話せそうね。その前に、なぜあなただけ逃げなかった?」

リタ
(少し微笑み)
「あなたと会ってみたかったから。私の感は正しかったようね。あなたは私と同じ匂いがする」

エミリー
(皮肉交じりに)
「奇遇ね、わたしもあなたと同じことを考えていた」

リタ
(さらに微笑み)
「もしも、友達として出会えていたら、最高に親友になれたのかもしれませんね」

エミリー
(目を閉じて)
「そうかも知れない。あなたに聞きたいことが2つある。1つは、シェリーは生きてるかどうか、そしてもう1つは、なぜそこまでして人を、世界を変えようとする?」

リタ
(ため息をつき)
「シェリー、シェリーはもうこの世界に居ない。過去に私が飛ばした」

エミリー
(声を荒げ、リタに銃を向ける)
「卑劣者!!そんな危険なことを妹にさせるなんて。失敗すれば、シェリーは永遠に時間の狭間で生きなければならなくなる。それも死ぬことすらできずに」

リタ
(目を閉じて)
「シェリー、過去へ行くわ。問題なく」

エミリー
(声を荒げて)
「ほざくな、この世界が変わらないということは、シェリーは過去に行けなかったっていう何よりの証拠。あなたをかなり過大評価してたみたいね。あなたは人の皮をかぶった化け物よ」

リタ
(目を開き)
「化け物?そうかもしれない。彼女が自分の祖母になることにふら気づかず、彼女を過去へとやった。祖母が晩年悩んでいたことをこんなにも知りながら」

エミリー
(銃を下ろす)
「祖母、シェリーが、あなたの?」

リタ
(頷く)

エミリー
(ため息をつく)

リタ
(エミリーをみて)
「もう1つの質問の答え、なぜここまでして、人を変えようとするか」
(上を見て)
「それは、祖母の祈りがあったから。人が人として生きて死ねる世界を作りたいと」

エミリー
(ため息をつく)
「シェリーが?あの子らしいわはね」
(少し笑う)

リタ
(覚悟したように)
「テンプレート方程式は、骨格だけの数式です。有史以来、人は多くの不思議を数式という言語で表してきました。そこには、人の血肉が通うまでいました。しかし、テンプレート方程式は違う。その式は、天才、ジョナサンが別々に導いた『現象論的統一運動方程式』と『心理ストレス動力学方程式』の形があまりにも似ていたことから、2つの式の共通の骨格だけを残して、その他はそぎ落とした方程式。そのために、彼は『テンプレート』と言う名をその方程式につけた。骨格ゆえに血肉さえつければどんな現象も説明できる。しかし、AIは血肉をつけずに、骨格だけで全てを解析し始めた。本来の用途とは別に」

エミリー
(目を閉じて)
「つまり、この世界はそもそも間違った最適化を行なっていると?」

リタ
(頷く)
「たしかに、ジョナサンもこのテンプレート方程式とAIとの親和性が高いことは気づいていたはず。しかし、なぜか彼が、その式をAIに読み込ませたのか、それが分からない。もしかしたら、私はその答えをただ知りたかっただけなのかもしれません」

エミリー
(少し微笑み)
「あなたは、不思議ね。多くの人があなたに陶酔したがるのも分かる気がするわ。ここであなたを撃たなければならない運命に逆らえるなら、私は逆らいたい。でもね。リタ、あなたは早すぎるのよ。歩むのが。人が、追いつく前に次々と扉を開く。そのたびに、多くの犠牲が生まれた。私は、もうこれ以上犠牲者を出したくない。あなたの思想を否定する気も、肯定する気もありません。いずれ、あなたの思想が必要になる時は来るでしょう。しかし、今ではない」
(リタに銃を向ける)

リタ
(目を閉じる)
「私を殺すのが、あなたでよかった」

アンドロイド
(舞台袖から声のみ)
「エミリー様、ボンド様よりご伝言があります」
暗転

(以降声のみ)
リタ
「エミリー!!」
(銃声)
エミリー
「リタ!!」
ベン
「エミリー様、これは」
エミリー
「逃げなさい、ベン」
ベン
「エミリー様、エミリー様こそ逃げてください。ここは私が覚えます」
攘夷軍人兵士
「私もいます。どうかエミリー様、エミリー様は生きてください」
エミリー
「お前たち、死ぬんじゃないよ」
ベン
攘夷軍人兵士
「我々を誰だと思ってるんです。早く」
(足音)
ベン
「ご武運を」
(爆発音)


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