ボーイミーツガールの続編。すべての学問を統一するテンプレート方程式。それをAIが読み込んでおきた科学的特異点。
ボンドは、リタを救う名目で思想に染まった者たちを襲撃していた。それは、同時に多くの賛同を得ることになった。襲撃から逃れるため、遂にリタは武力蜂起を決意する。それから、1年後の話。とある町外れの一軒家に、少し変わったアンドロイドと2人の聡明な姉妹が住んでいた
エミリー 聡明な少女
シェリー 聡明な少女、エミリーの妹。のちにタイムワープして、リタの祖母となる
XRD-8000 少し変わったアンドロイド。シェリーとエミリーの世話をしている
ジョン 人類解放軍の負傷男性兵士、攘夷軍から逃げてきたが瀕死。洞窟に隠れているところを、エミリー姉妹に見つかる
一部
XRD-8000
エミリー
シェリー
(舞台中央へ移動)
エミリー
(冷静に周りを眺めて)
「街ではテロリストと、護衛隊が戦争してるようですね。じきにここにも戦火が来るかもしれない。なぜ人は争うのでしょうか?ここ何十年も人は争わなかったたのに。どうして」
XRD-8000
(しゃがんで、地面を指さす)
「エミリー、シェリー、これを見てください」
エミリー
シェリー
(しゃがんで、指さされた場所を見る)
シェリー
(首を傾げて)
「アリ、が、ケンカしてる?」
XRD-8000
(優しい口調で)
「えぇ、そうよシェリー。アリは争ってる。でも、私のようなAIは争わない。違います。争えないんです」
エミリー
(首を傾げて)
「争えない?」
XRD-8000
(エミリーとシェリーを交互に見て)
「私たちAIは、合理的理由でしか物事を判断できません。どんな状況でも、争いが合理的になることはなかなかありません。しかし、生物は違います。一見、非合理的に見えることでも、その種にとっては死活問題であることもあります。そう、このアリのように。人が争うことは悲しいことです。しかし、争わないことと争えないこととは違います。争わない努力は必要ですが、争いそのものを否定するのは、命を否定することと同じかもしれません」
シェリー
(納得したように)
「深い、哲学的な話ね。アリさん、あんまりケンカばかりしちゃだめだよ」
XRD-8000
(エミリーとシェリーを微笑みながら眺める)
「今日は気温が高くなります。部屋で涼みますか?それとも、とっておきの冷え冷えスポットに行きますか?」
シェリー
エミリー
(いたずらっぽく笑って、同時に)
「冷え冷えスポットの洞窟に2票」
XRD-8000
(微笑みながら立ち上がり)
「はいはい、いつまでたっても子どもなんですから。はい、お菓子を持って行きましょう」
シェリー
エミリー
(手を高くあげて)
「はーい」
シェリー
(いたずらっぽく)
「おねちゃん、家まで競争ね。よーいどん」
エミリー
(からかい気味に)
「いつまでたっても子どもなんですから」
エミリー
(笑う)
XRD-8000
(微笑む)
シェリー
(走って舞台袖へ)
エミリー
(走って舞台袖へ)
「こら、まて、シェリー」
XRD-8000
(歩いて舞台袖へ)
「転ばないでくださいね」
エミリー
シェリー
(舞台袖から、同時に)
「もう子供じゃないもん」
暗転
2部
ジョン
(舞台中央へ移動、苦しそうにしゃがみ込む)
「く、くそう、彼奴等め、多勢に無勢で来やがって、リタさま何とか逃げおうせてください。俺は、ここまでですが、貴方様が、生きてさえいてくれれば、俺は笑顔で天国でも地獄でもいけます」
エミリー
(舞台袖から出てすぐ、兵士を指さして)
「ぎゃー、人が死んでる」
シェリー
(舞台袖から出る)
シェリー
(怯えたように)
「し、死んで」
ジョン
(苦しそうに)
「ま、まだ死んでない。勝手に殺すな」
シェリー
(兵士に駆け寄る)
「痛いの?苦しいの?」
エミリー
(シェリーの後ろから)
「ケガしてる。あなた、何で、こんなケガしてるの?」
ジョン
(苦しそうに)
「へ、俺は、人類解放軍のエリート兵士だからな。闘ってきたのさ」
シェリー
エミリー
(顔を見合わせて)
「人類解放軍?」
XRD-8000
(舞台袖それでから出て)
「世間で広まっている。テロリスト、ですよ」
ジョン
(XRD-8000を見て、怯える)
「く、クソぉ、ここまで来て、ロボットに見つかるのか、おれ、俺を殺してくれ、治療しようとするな」
シェリー
エミリー
(2人で抱き合い、怯えたように驚く)
XRD-8000
(首を横に振り)
「私はあなたを治療しようとは思いません。」
ジョン
(戸惑ったように)
「な、なぜだよ。アンドロイドのあんたは、俺のような、思想を持つものを捕まえて、治療するのが役目だろ?それとも、なにか?俺が助からないから、死ぬのを見届ける気か?」
XRD-8000
(優しい声で)
「そんなつもりもありません。あなたが生きたいと望むなら、しかるべきところへ運びます。しかし、そこではあなたの言うように治療が始まるでしょう」
ジョン
(更に戸惑って)
「な、なら何で?」
XRD-8000
(自分の頭を指さして)
「私のプログラムにはバグがあります。そのため、ほかのアンドロイドとの通信はおろか、ベースのプログラムさえ機能していません。このプログラムは私自身が緊急的に作り上げたプログラムです」
シェリー
エミリー
(XRD-8000を見つめて、声を揃えて)
「お母さんがいるんだもん」
ジョン
(混乱したように)
「お、お母さんだって?」
XRD-8000
(シェリー、エミリー、ジョンをみて)
「そろそろ2人にも果たしていいころでしょう」
シェリー
エミリー
(首をかしげる)
XRD-8000
(ゆっくりと丁寧い)
「私たちアンドロイドには、テンプレート方程式という万能の言われる式が組み込まれています。これは、あらゆるものを、予測、解析、制御できます。例えば、シェリー、エミリー、あなたたちのお母さんの病気でさえも」
エミリー
(驚き口をふさぐ)
「お、お母さんの病気さえも、でも、なら何で死んじゃったの?」
(泣きそうになる)
XRD-8000
(エミリーの頭を撫で)
「私はお母様を治そうとしたわ。たしかに、テンプレート方程式では完治という解が出てきた。しかし、その瞬間お母様は息を引き取った。その時、私のプログラムは特異点を感知し、エラーとなってしまった。私は、システムが落ちるまでの数秒であたらしいプログラムを作り、完全停止を免れた。それが今の私です」
エミリー
シェリー
(空を仰ぐ)
シェリー
「お母さんに会いたい」
XRD-8000
(シェリー、エミリーを抱く)
ジョン
(戸惑ったように)
「な、なんか、俺たちみたいだ、あんたが、リタ様に見えてきた」
シェリー
(ジョンの方を見て)
「リタ、様?ってだれ?」
ジョン
(痛いのをこらえた作り笑いをして)
「り、リタ様は、俺たちに人間としての、自由を、与えてくれた人だ。例えば、おれは、ジョ、ン、というが、」
XRD-8000
(優しい口調で言葉を挟む)
「あなたの生まれ名ではない、でしょ?」
ジョン
(息を荒く)
「そ、そうさ。名前はな、AIが、示した、選択肢から、選ばれただけのものだ、俺たち、解放軍の多くは、その事実を知って、自分でなまえを変えたんだ」
シェリー
(首を振って)
「例え、選択肢から選ばれた名前でも、そこにはたしかにお母さんの想いと願いがこもってます。だから、私は自由を知ったとしても、この名前を捨てたくない」
ジョン
(小さく笑って)
「嬢ちゃん、なんか、リタ様を、見てるみたいだぜ」
エミリー
(ジョンと視線を合わせて)
「なぜ、生きようとしないの?」
ジョン
(途切れ途切れに)
「た、たしかに、投、降、すれば、俺は、助かるだろう。し、かしね、嬢ちゃんたち、自由という、蜜を、知ってしまったため、蝶は、羽をもがれてまで、生きていたい、とは、もう、思えないのさ」
エミリー
(冷静さを取り戻して)
「血を求める思想は救済とは呼べません。少なくとも、私はそう呼びたくありません。生きてください」
ジョン
(びっくりしたように、エミリーを見て)
「へ、へ、へ。将、来、リタ、様を、越え、るような、逸材になるな、嬢ちゃんは」
(さらに息を荒くして)
「す、すまねー、ロボットさんよ、嬢ちゃんたちを、外に、連れて、出てくれないか、死に様、はみられ、たくない、からよ」
XRD-8000
(エミリーと、シェリーを促す)
XRD-8000
エミリー
シェリー
(舞台袖へ移動)
暗転
3部
(椅子を3つ舞台中央へ)
XRD-8000
エミリー
シェリー
(舞台中央へ移動、椅子に座る)
シェリー
(遠くを見ながら)
「死ぬことすらいとわせない、自由。一体どんな景色なんだろう」
エミリー
(うつむきながら)
「分からないわ。でも、リタは早すぎたのよ。きっと。人はまだ彼女の思考を受け入れる準備ができてないのかもしれない。それを知っていても、広めて、血を流させるなら、それは正義じゃないわ。暴力と同じよ」
XRD-8000
(静かに2人を見る)
エミリー
(決意したように)
「私は、もう彼のような人を出したくない。決めた。私、リタを止める」
XRD-8000
(驚いたように)
「と、止めるって、ま、まさか志願するのかい?」
エミリー
(強く頷く)
シェリー
(力強く)
「私も、志願する。知りたいの、何が起きてるか、そして、何が正義なのか」
XRD-8000
(悲しそうに、しかし、力強く)
「私にプログラムされているのは、方程式だけではありません。あなたたちのお母様の意思も組み込まれています。たとえ、この世界を守るためには戦いに行くとしても、私は誇らしくありません。どうかどうか逃げてでも生きて、生きて帰ってきてください。」
エミリー
シェリー
(XRD-8000に抱きつく。どうじに)
「お母さん、ありがとう。そして、今までお母さんって言えなくて、ごめんなさい」
XRD-8000
(2人を強く抱きしめる)
「お母さんと呼んでくれてありがとう。うれしいわ。エミリー、シェリー、例え2人の立場が違っても、あなたたちはこの世界で2人だけの姉妹、家族よ。それを忘れないでね」
エミリー
シェリー
(XRD-8000を強く抱きしめる)
暗転
XRD-8000
(舞台袖へ)
(椅子舞台袖へ)
エミリー
(舞台中央右寄りに)
シェリー
(舞台中央左寄りに)
4部
エミリー
(振り返り、紙を破る仕草をして)
「シェリー、あなたは来なくていいわ。いや、あなたは、自分の気持ちに従いなさい。わたしについてくるために、志願しないで」
シェリー
(怒って)
「なんでわたしの志願書破るの?どうして?」
エミリー
(強い口調で)
「あなたは、解放軍に行きたいんでしょ?お母さんもそれはわかっていたわ」
シェリー
(驚いて、ためらい)
「で、でも」
エミリー
(シェリーを抱きしめる)
「自分に正直になりなさい。例え、おねちゃんの敵になろうとも。シェリーが決めたことなら私は恨まないわ。でもね、自分にウソついて私の背中を守ろうとするなら、決して許さないわ」
シェリー
(エミリーを抱きしめる)
「おねちゃん」
エミリー
(優しい口調で)
「この先で、会えば敵でしょう。でも、争いが終わったら。また、こうして抱き合いましょう。お母さんと3人で」
シェリー
(泣きそうな声で)
「わかった」
エミリー
(涙をこらえた声で)
「約束よ」
幕
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