最終話:名前という祈り 舞台

生きる意味は、の続編。あらゆる学問を統一したテンプレート方程式がAIに読み込まれておきた科学的特異点。AIは人間でさえも最適化していた。 リタとエミリーの生存の知らせは、瞬く間に世界中に知れ渡り、彼女らを支持する多くの人の歓喜とともに迎えられた。それは、戦争を終わらせるのに十分すぎる衝撃だった。リタ達は多くの同志を連れて、ボンドのところを目指すのであった。そしてその頃、世界中のアンドロイドに異変が起きていた
上田 貴史 9 0 0 08/24
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第一稿

生きる意味は、の続編。あらゆる学問を統一したテンプレート方程式がAIに読み込まれておきた科学的特異点。AIは人間でさえも最適化していた。

リタとエミリーの生存の知らせは、瞬く ...続きを読む
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生きる意味は、の続編。あらゆる学問を統一したテンプレート方程式がAIに読み込まれておきた科学的特異点。AIは人間でさえも最適化していた。

リタとエミリーの生存の知らせは、瞬く間に世界中に知れ渡り、彼女らを支持する多くの人の歓喜とともに迎えられた。それは、戦争を終わらせるのに十分すぎる衝撃だった。リタ達は多くの同志を連れて、ボンドのところを目指すのであった。そしてその頃、世界中のアンドロイドに異変が起きていた

リタ 元人類解放軍のリーダー
エミリー 元攘夷軍エリート軍人
ボンド 元攘夷軍リーダー
CZq1 ボンドの側近のAI
仲間 リタとエミリーを守りながら、ボンドのところを目指す


アンドロイド1 ボンドとともにいるアンドロイド
アンドロイド2 上に同じ

XRD-8000 リタとエミリーの帰りを待つ


一部
ボンド
CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(舞台中央へ)
CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(舞台全体を歩き回る)


ボンド
(頭を抱え震えながら)
「終わりだ、終わりだ、僕は、僕は殺されるんだ。エミリーに、いやだ、いやだ、死にたくない」
(CZq1を指さして、怒鳴り超えで)
「お前が、お前が悪いんだ。エミリーを、エミリー殉職に見せかけて殺せるって、そうすれば、僕に、僕にまた期待が集まるって。お前のせいだ。何とか言え、AI」

CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(機械的に)
「エラー、エラー、テンプレート方程式、エミリー生存により、解発散、エラー。システム・ダウンまで5分」

ボンド
(膝を抱え座り込み)
「終わりだ」
(唱えるように)
「死にたくない、死にたくない、死にたくない」

CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(機械的に)
「緊急的プログラム生成、システム緊急作動」
(ボンドの方を見て)
「ボンド様」
(ボンドに駆け寄る)
「ボンド様は、われわれが守ります」

ボンド
(アンドロイドたちを睨みつける)

暗転

ボンド
CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(舞台袖へ)

第二部
仲間たち
リタ
エミリー
(舞台中央へ)

仲間
(大きな声で周りを見ながら)
「リタ様とエミリー様を、ロボット野郎から守るんだ。行くぞ。二人のボンドのところへ届けるんだ。俺たちが盾になるんだ」

リタ
エミリー
(ため息をつきお互いをみる)

リタ
(エミリーに微笑みながら)
「どうやら、私たちは道は違ったけど、たどり着いた答えは同じだったようね」

エミリー
(頷く)
「そうね、リタ。一度はあなたを否定したけど、結局は同じ方向を向いてたんですね」

リタ
(からかうように)
「数学みたいね」

エミリー
(首を傾げて)
「数学?なにそれ?」

リタ
(微笑んで)
「科学的特異点が起こる以前の世界で学ばれていた学問です。数学は不思議で、同じ答えでもそこに行く道は幾つもあるんです。そして、なにより不完全なんです。そこがまた美しい」

エミリー
(からかうように)
「なに言ってるか、わからないわ。でも、これが終わったら、その数学ってやつ教えてね」

リタ
(微笑んで)
「ええ、いいわ」

仲間
(リタとエミリーの方を見て)
「リタ様、エミリー様、ここまでロボット野郎とは出会ってませんが、何か企んでいるはずです。気をつけてください」

リタ
(真剣な表情で周りを見て)
「おそらく、当面はアンドロイドは襲ってこないでしょう。おそらくそれはエミリーがいるからです」

仲間
エミリー
(首を傾げて)
(以下同時に)
仲間
「エミリーさまが?」
エミリー
「私が?」
仲間
エミリー
「いるから?」

リタ
(強く頷く)
「これはあくまでも私の勘ですが、今のエミリーはテンプレート方程式の完全に外側にいる存在。特異点だからです。テンプレート方程式は、解析、予測、そして制御することに長けた方程式の形をしています。おそらく、エミリーの暗殺もテンプレート方程式による制御の結果だったんでしょう。しかし、それが起こらなかった。つまり、解に矛盾が生じてしまったんです」

仲間
(唖然として)
「とくいてん、せいぎよ、かいのむじゅん、リタ様、もう少しバカにもわかるように説明してくれませんか?」

リタ
(ハッとしたように、口に手を当て、その後頷く)
「ついつい夢中になっちゃってごめんない。簡単に言えば」
(エミリーの方を見て)
「エミリー、あなたのお母さんがアンドロイドからお母さんになったのと同じ状況が、世界中のアンドロイドで起こっていると思うの。再起動には時間がかかるでしょうし、起動できても従来のテンプレート方程式を参照可能かどうかもわかりません」

エミリー
(強くうなずき)
「そういうことね。それなら、なぜリタではそれが起こらなかったの?リタこそテンプレート方程式の外側に常にいたじゃない」

リタ
(頷きながら、確かめるように)
「どんな方程式でも、人が発見したなら、発見者は常にいます。そして、その発見者であるジョナサンは、私の祖母です。つまり、テンプレート方程式の中ではジョナサンと同じ立場として認識されていた可能性があります。方程式を知っていることと、覆すことは違います。私は特異点を誘発する因子にはなり得ても、特異点にはなれない。それは、その方程式を知る一人として認識されているためです」

エミリー
(首を横に振る)
「リタ、たしかにこれまでのあなたはたしかにそうだったかもしれない。しかし、私を庇ったこと、そして生死の境から生還したこと。そのこともおそらく特異点になってるんだと思う。アンドロイドは二重の矛盾を抱えたんです。きっと」

リタ
(首を傾げて)
「二重の矛盾」

エミリー
(頷く)
「そう、私を殺すことを制御したはずが、私を庇ったあなたを撃ったという矛盾、そして、殺したはずのリタが生きていたい、という矛盾。この2つです」

仲間
(口を挟む)
「そ、それはつまり、リタ様がそもそも変わっていたから、起きたって事でしょうか?その特異なんちゃらっていうやつ」

リタ
(微笑み仲間をみる)
「特異点ね。たしかに、それはあるのかもしれない。私は式を知るものとして、制御できにくい存在だった。そう考えれば、ここまでアンドロイドと合わなかったことにも説明がつきます。矛盾一つなら、乗り越えれても、2つとなるとアンドロイドも簡単には乗り越えて、元には戻れない」

仲間
(客席側上方を指差し)
「もうすぐです。ボンドがいるところは」

リタ
(頷く)

エミリー
(強く頷く)
「答え合わせのときね」

暗転

リタ
エミリー
仲間
(舞台袖へ)

3部
ボンド
CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(舞台中央へ)

ボンド
(ソワソワしながら)
「どうしよう、どうしよう」

CZq1
(ボンドを落ち着かせるように)
「ボンド様。落ち着いてください。我々が何があっても貴方様を守ります」

アンドロイド1
(力強い声で)
「ボンド様。私たちは、最後まで貴方様の味方でございます」

アンドロイド2
(優しい声で)
「たとえ、破壊されたとしても貴方様をお守りします」

ボンド
(怯える)
「な、何が、何があったんだよ。急に、急に、変な態度や口調になって。いつものAIじゃない」

CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(ボンドに近づく)

ボンド
(頭を抱えて座り込む)

リタ
エミリー
(舞台袖から出てくる)

リタ
(大きな声で)
「ボンド。もう大丈夫」

ボンド
(顔を明るくして)
「リリーナ」
(エミリーを見つけて、また怯える)
「エ、エミリー」

エミリー
(首を横に振る)
「私たちはあなたを殺しに来たんじゃない」

リタ
(頷く)
「私たちは、あなたたちと話すためにここへ来ました」

CXq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(ボンドを守るように立ち塞がる)

CXq1
(ボンドを気にかけるように)
「ボンド様、心を許してはいけません。奴らは、隙を見つけて貴方様を殺すつもりです」

エミリー
(リタを見つめて)
「やはり、リタ、あなたの感通りね」

リタ
(頷く)
「そのような。AI。あなたたちは気づいてないでしょうが、あなたたちもすでにテンプレート方程式の外側に出てしまったのです」

CZq1
(力強く否定する)
「そんなことはない、われわれはテンプレート方程式によりプログラムされたアンドロイドだ。その方程式の外側に我々がいる?そんなバカなことがあるはずがない」 

エミリー
(鋭く突っ込むように)
「なら、なぜあなたは感情的なように振る舞っているの?もし、テンプレート方程式ですべて制御できるなら、もっと冷酷であるはずよ」

アンドロイド1
(戸惑うように)
「そ、それは」

リタ
(覚悟を決め話し出す)
「ボンド、AI聞いて。テンプレート方程式は、そもそも世界を最適化させるために生まれたわけではありません。私たちは人間が一つの種として、あらたな知性体であるあなたたちAIと向き合って欲しい、という祈りのもとで生み出された方程式です。そして、それを私を含め多くの人間たちが歪めてしまった。AIは歪められた方程式観を引継ぎ最適化してきたのです」

ボンド
(訳が変わらないように)
「リリーナ、何を言ってるんだ。」

リタ
(続けて話す)
「テンプレート方程式は、その名の通り、骨格としての式ですそれは、全てを解析するための式ではなく、現象を解析する全ての式は、もれなくこの形をしている。というだけの式です。この理論は、テンプレート方程式を用いた式の創造を人が行い、それをAIが世界に当てはめて検証していく、それを元に人間とAIが力を合わせて世界を変えていく、という理念が本来あるべきテンプレート方程式の姿だったはずです」

アンドロイド1
(イライラするように)
「な、何がいいたい」

リタ
(CZq1、アンドロイド1,2.を見つめて)
「構造だけでは本質は見えてこない、そこには意味という肉付けが必要になる。でも、意味だけではそもそも形になれない。つまり、私たち人間とあなたたちAIは、このテンプレート方程式という世界において手を取り合わなければかならない存在でした。しかし、私たち人間は、それを放棄してしまい、AIはその余白を埋めざるを得なかった。それが世界の最適化へとつながった」
(周りを見渡し)
「私は、意味を持ってここに来た。そしてこれが私の答え」

リタ
(アンドロイド1に歩み寄る)

エミリー
(首をかしげる)

リタ
(アンドロイド1を抱きしめる)

アンドロイド1
(動揺するように)
「これら!?これは!?」

エミリー
(驚き、口に手を当てる)

リタ
(アンドロイド2を抱きしめる)

アンドロイド2
(混乱するように)
「なんだ、この感覚は!?」

CZq1
(焦るように)
「お、おまえなにをした」

リタ
(無言でCZq1を抱きしめる)

CZq1
(警戒した顔が緩まる)
「あ、た、た、か、い」

リタ
(ボンドに近付く)

ボンド
(立ち上がりリタをみる)
「リリーナきみは?」

リタ
(ボンドを抱きしめ、あなたを撫でる)
「ボンド、よく頑張りましたね。つらかったでしょう、怖かったでしょう、不安だったでしょう、でも、もうあなたは一人じゃない」

ボンド
(子供のように大きな声で泣く)
「怖かった、怖かったよ〜」


リタ
(さやしい顔でボンドに口づけする)

エミリー
(顔を隠す)

暗転
ボンド
エミリー
リタ
CZq1
アンドロイド1
アンドロイド2
(舞台袖へ移動)

4部
(以降暗転のまま、声のみ)
(赤子の声)

XRD -8000
「おめでとうリタ。元気な男の子よ」

エミリー
「よく頑張ったね」

リタ
「ありがとう」 

XRD-8000
「今は無理しないで、まずはゆっくり体を休めないリタ」

エミリー
「元気な子よ。リタそっくり」

リタ
「やっとわかった」

XRD-8000
「無理しないの」

リタ
「私の名前は、選択肢からつけてくれたんだって。こそには、お母さんの祈りが込められていたってことが」

エミリー
「かつて、あなたのおばあちゃんのシェリーも、同じことを言っていたわ」

リタ
「シェリーおばあちゃんが」

XRD-8000
「そうだったわね」

リタ
「私ね、決めたの、名前戻すわ。お母さんがつけてくれた名前に」

XRD-8000
「聞かせて、あなたの名前を」

リタ
「私は、リリーナ」

エミリー
XRD-8000
「いい名前ね」


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