【登場人物】
少女(12):ネグレクトを受ける少女
店員(20):コンビニ店員のお姉さん
母(35):少女の母
彼氏(26):母の彼氏
その他
【本編】
○団地 道路 自販機前
雪の降るクリスマスシーズンの北海道。
スーツ姿の男性が自販機で飲み物を買おう
と財布から小銭を出す。
男性「あっ……」
男性、小銭を雪の中に落としてしまう。
小銭、積もった雪の中に消える。
男性、諦めて新しい小銭を取り出し飲み物
を買い去った。
少女(12)、そこに走って現れる。
素手で雪を掻き分け10円玉を手に入れ
る。
少女の手、真っ赤になる。
少女、笑顔を浮かべ去る。
○コンビニ
少女、棚にあるクリスマスセールのケーキ
を見つめる。
値札を見た後、10円玉を握りしめ出てい
く。
店員(20)、少女の背中を心配そうに見つめ
る。
○団地 少女の家 居間
少女、帰宅。
母(35)、叱る。
母「こっち入って来るなって……!」
母、少女の頭を何度も叩く。
少女「っ……」
母「これから彼氏来るんだからあっち行ってて」
少女、洗面所に逃げ込む。
○団地 少女の家 洗面所
少女、洗面所の棚を漁る。
小さな籠に小銭がいくつか入っていた。
少女、小銭を数えて溜息を吐く。
× × ×
少女、洗面所の床に寝転がりながら母とや
って来た彼氏(26)の会話を聞いている。
母「えーこっちの店が良いー」
彼氏「そこ高ぇだろ、俺も金ないんだよ」
母「せっかくのクリスマスディナーなんだから
さ、ちょっとくらい奮発しても良くない?」
彼氏「わがまま言うなよ、こっちもカツカツな
んだ」
彼氏、少女の存在に言及。
彼氏「そいえばアイツの飯は?」
母「あー適当にこれくらいあげとけば良いよ」
母、洗面所の扉を開け少女に残飯を渡す。
少女、母が去った後に残飯を貪る。
○団地 少女の家 居間(夜)
少女、母と彼氏が寝たのを確認しTVを点
ける。
慌てて音量を0にした。
クリスマス映画が放映されていた。
少女、家族でケーキを分けるシーンを見つ
める。
○団地 道路 自販機前(日替わり)
少女、自販機前の雪を掻き分け100円玉を
見つけ目を輝かせる。
○団地 少女の家 洗面所
少女、拾った100円玉と集めた小銭を合わ
せ更に目を輝かせた。
居間からは母と彼氏の声が聞こえて来る。
彼氏「そろそろ行くかー」
母「ちゃんと予約できてるよね?」
彼氏「大丈夫だって」
母、洗面所の扉を開ける。
少女、慌てて小銭を隠す。
母「私たちディナー行って来るから、適当に冷
蔵庫にあるもん食べて」
母と彼氏、出て行く。
○団地 道路
少女、小銭を素手に持ち走る。
しかし凍った地面で滑って転んでしまい小
銭を側溝に落としてしまう。
母と彼氏の乗る車、横を通り過ぎた。
少女、目に涙を浮かべる。
○コンビニ
少女、膝や手を擦りむいた状態で入店。
店員、心配そうに見つめる。
少女、トボトボと棚のケーキを見るが売り
切れていた。
少女、肩を落とし店を出る。
○道路
少女、トボトボと歩く。
店員、救急箱と袋を持ち走って来る。
店員「待って!」
少女、立ち止まり振り返る。
店員、少女に救急箱を見せる。
店員「これ、怪我してるでしょ?」
店員、少女を座らせ傷の手当てをする。
店員「これでヨシっと」
店員、少女が立ち上がると袋を差し出す。
店員「はいコレ、欲しがってたでしょ?」
少女、袋の中を見るとケーキと蝋燭が入っ
ていた。
少女、目を輝かせ店員を見る。
店員「私からのクリスマスプレゼント」
少女、目に涙を浮かべる。
店員「メリークリスマス、お嬢さん」
少女、嬉しそうに走って帰る。
一度立ち止まって振り返り店員に手を振っ
た。
○団地 少女の家 洗面所
少女、洗面所を暗くしケーキに刺した蝋燭
に火を着ける。
鏡に写るケーキを持った自身の笑顔を見な
がらそっと囁いた。
少女「……メリークリスマス」
少女、フッと火に息を吹きかけ消した。
洗面所は火が消え真っ暗となった。
少女の笑顔の残像だけが残された。
(了)
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