#37 真珠の耳飾りの少女 ドラマ

若さとは、強靭な感性と脆弱な語彙のこと。
竹田行人 26 0 0 09/25
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第一稿

「真珠の耳飾りの少女」


登場人物
宮澤一葉(19)大学生   
沢木優(23)新聞記者
小山田義郎(63)国会議員
宮澤純一(48)議員秘書
友人・奏
一葉の ...続きを読む
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「真珠の耳飾りの少女」


登場人物
宮澤一葉(19)大学生   
沢木優(23)新聞記者
小山田義郎(63)国会議員
宮澤純一(48)議員秘書
友人・奏
一葉の母・葉月
アナウンサー(声)

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○城西音楽大学・正門前
   門柱に「城西音楽大学」の看板。

○同・学生食堂・中
   ほぼ満席。
   一角にテレビがあり、ニュースが流れている。
   宮澤一葉(19)、テーブルでサラダをつついている。
   友人・奏、一葉の向かいに座っている。
   奏の耳にはピアス。
一葉「いーなーピアス。カナデ。それって」
奏「うん。カズくんに買ってもらった」
一葉「いーなーいーなー。痛くなかった? 穴開けるとき」
奏「ううん。全然。ピアッサーってのがあってね。あ。じゃあカズハにあげる」
   奏、鞄からピアッサーを取り出す。
奏「使い捨てのヤツ。余ったから」
一葉「ありがと。でもなー」
奏「パパがなんていうか。でしょ?」
一葉「え?」
奏「そろそろファザコン卒業したら?」
一葉「別にファザコンってワケじゃ」
奏「今日もデートなんでしょ? パパと」
一葉「デートっていうか。仕事関係のパーティーに。一緒に」
奏「一葉のパパなにしてる人だっけ?」
一葉「え。と」
アナウンサーの声「続いては小山田義郎議員の収賄疑惑に関するニュースです」
   一葉、テレビに目をやる。

○テレビ画面
   小山田邸前。
   マスコミが大挙している。
   小山田義郎(63)、現れる。
   小山田に群がるマスコミ。
   宮澤純一(48)、マスコミを掻き分けて道を作っている。
アナウンサーの声「小山田議員は産業廃棄物処理場建設に際して市山建設から賄賂を受け取ったという疑惑をもたれており」
   純一、車のドアを開け小山田を乗せる。

○城西音楽大学・学生食堂・中
   一葉、テレビを見つめている。
   奏、一葉の肩を叩く。
奏「ごめん。バイトあるから私行くね」
一葉「え? ああ。うん」
   奏、去る。
   一葉、テレビに目をやる。
沢木の声「宮澤一葉さん。ですね?」
一葉「え?」
   沢木優(23)、一葉の前に立っている。
一葉「はい。あの」
   沢木、一葉の前に座り、名刺を渡す。
一葉「朝売新聞」
沢木「サワキ。ユウと言います」
   一葉と沢木、目を見合わせる。

○同・レッスン室・中
   床はフローリング、壁は防音。
   中央にグランドピアノ。
   一葉と沢木、入ってくる。
一葉「どうやって入ってきたんですか?」
沢木「音大生の日常を取材する。ということで許可を取りました」
一葉「汚いですね」
沢木「きれいとか。きたないとか。そういうの。あんまり考えたことないですね」
一葉「少しは考えた方がいいと思いますよ」
沢木「お父様が秘書をされている議員先生にも。そうお伝えください」
   一葉と沢木、目を見合わせる。
一葉「父が言ってました。政治家が書いた美しい曲を、いつも記者が下手くそに演奏するんだって」
沢木「なるほど。で?」
一葉「で?」
沢木「あなたは。どう思うんですか?」
   一葉と沢木、目を見合わせる。

○宝石店「moonlight jewelry」・外(夕)
   通りに面した店構え。
   一葉、ショーウィンドウ展示されている真珠のピアスを見ている。
純一の声「欲しいのか?」
   純一、一葉の隣に立っている。
一葉「え? 買ってくれるの?」
   純一、一葉に微笑み、歩き出す。
   一葉、純一を追いかける。

○天王洲ホテルグランド・朱雀の間(夜)
   シャンデリア。
   一角にステージと金屏風。
   数十人が参加する立食パーティー。
   一葉、純一の隣でオレンジジュースのグラスを持って周囲を見回している。
一葉「あ。あれ。生ハムメロン。初めて見た」
純一「迷子になるなよ」
一葉「大丈夫。子どもじゃないから」
   一葉、料理のテーブルに歩み寄り、生ハムメロンを食べる。
一葉「んま!」
小山田の声「宮澤くんの娘さんだね?」
   小山田、一葉の脇に立っている。
一葉「え? あ! 小山田。先生! はい。はじめまして。宮澤。一葉です。ええっと。父が。いつも。お世話様です。はい」
小山田「こちらこそ。いつも宮澤くんには無理をさせてしまっている。申し訳ない」
一葉「いえ! いえ! そんな。そんな」
   小山田、一葉を眺める。
小山田「少し。足りないな」
一葉「は?」
   小山田、ポケットから札入れを出し、万札を数枚抜き取る。
小山田「これでネックレス。いや。イヤリングでも買うといい。ああ。今はピアスか」
一葉「いや! そんな! 貰えないです」
小山田「いいんだ」
   小山田、一葉の手に万札を握らせる。
小山田「これは有意義な投資だ」
   小山田、一葉に微笑むと、純一に歩み寄る。
   一葉、手の中の万札を見ている。
   小山田、純一に耳打ちする。
   純一、中空を見る。
小山田「ああ。市山さん!」
   小山田、会場の隅に歩いていく。
   純一、中空を見ている。
   一葉、手の中の万札を見ている。

○城西音楽大学・レッスン室・中
   一葉、ピアノを弾いている。
   椅子の脇に鞄。
   曲が終わる。
   拍手の音。
   沢木、ドアに背を預けて立っている。
沢木「調べました。ピアノに使われる平均律は1オクターブを12の鍵盤に、均等に割り当てたもの。なんですよね」
一葉「ええ」
沢木「そのために、ピアノではすべての和音に小さな乱れが起こる。厳密に言えば、すべては不協和音ということになる」
一葉「それは。厳密に言えば」
沢木「政治家が平均律を広めたら、すべては不協和音だと騒ぐ。たとえ演奏が下手くそと言われようと。それが記者です」
   一葉と沢木、目を見合わせる。
沢木「宮澤さん。あなたはどう思いました? 小山田を」
一葉「私は」
   一葉、鞄に目をやる。
一葉「私は。なんか。なんていうか。その。汚い。って思いました」
沢木「他に言葉持ってないんですか?」
一葉「すみません。バカなんで」
沢木「宮澤さんはバカじゃないと思います。印象に惑わされず、ちゃんと小山田の正体を感じ取った」
   一葉と沢木、目を見合わせる。
沢木「ただ周囲の大人を。なにかを。安易な言葉で一括りにしない方がいいですよ」
   一葉と沢木、目を見合わせる。
沢木「いつか宮澤さんが社会に曝されたとき。簡単に楽な方を選ぶ口実になるから」
   一葉と沢木、目を見合わせる。
   携帯電話のバイブ音。
沢木「はい沢木」
一葉「もしもしママ? え」
沢木「え」
   沢木、一葉に目をやる。
   一葉、中空を見ている。

○宮澤家・ダイニング・中(夜)
   テレビだけがついている。
   テーブルの隅に灰皿とライター。
   一葉、喪服姿でテーブルについている。
   一葉の母・葉月、喪服姿で入ってくる。
葉月「一葉。これ」
   葉月、「moonlight jewelry」のロゴが入った紙袋を置く。
葉月「ホテルの部屋にあったって」
   一葉、紙袋を見つめる。
葉月「ご近所に。挨拶してくる」
   葉月、出ていく。
アナウンサーの声「速報です。秘書が都内のホテルで自殺したことを受け、小山田義郎議員が先ほど記者会見を」
   テレビを消す一葉。
   一葉、灰皿とライターを引き寄せ、鞄から万札を取り出し、火をつける。
   万札、燃えている。
   一葉、万札を灰皿に落とし、鞄からピアッサーを取り出す。
   万札、燃えている。
   ピアッサーの音がダイニングに響く。

〈おわり〉

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