魔女狩り狩り ドラマ

これは、たった一人を守るために、世界の全てを敵に回した少年の物語。 真尾健彦(13)の幼なじみ・須磨薫(13)は、ただ強く念じるだけで人を殺すことが出来る。しかしそれは薫に限った能力ではない。今や世界各国で様々な能力を持つ人類(=魔女)の存在が確認されており、日本では「対魔女法」によって「魔女は発見し次第、殺害しても良い」と定められていた。真尾と薫は、薫が魔女である事を隠しながら生きてきたが……。
マヤマ 山本 60 0 0 04/26
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第一稿

<登場人物>
真尾 健彦(13)中学1年生
土岐 薫(13)真尾の幼馴染、魔女

布施 明子(57)魔女
根津 (45)一般人、親族が魔女

薫の母
警察官
教師 ...続きを読む
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<登場人物>
真尾 健彦(13)中学1年生
土岐 薫(13)真尾の幼馴染、魔女

布施 明子(57)魔女
根津 (45)一般人、親族が魔女

薫の母
警察官
教師
生徒A~C
先輩A、B
若者A~C



<本編> 
○(夢の中)保育園・外観
   悲鳴があがる。

○(夢の中)同・教室
   男子児童の死体がある。
薫の声「私ね、人殺せるんだ」

○(夢の中)同・建物の裏
   茂みに隠れた場所に並んで座る真尾健彦(5)と土岐薫(5)。
薫「頭に浮かんだピストルで『バン!』って撃つとね、人が死んじゃうんだ」
健彦「ふ~ん」
薫「タケちゃん、信じてないでしょ?」
健彦「いや、そんな事ないよ?」
薫「じゃあ、見せてあげる」
   右手を拳銃のような形にする薫。
   その様子を、固唾をのんで見守る健彦。

○マンション・真尾家・真尾の部屋(朝)
   ベッドで寝ている真尾(13)に向かってダイブする薫(13)。薫は中学校の制服姿。
薫「バン!」
真尾「(うめき声)」
薫「タケちゃん、起きろ~。早くしないと遅刻しちゃうぞ~」
真尾「もっと普通に起こせよ。殺されたかと思った……っていうか、そもそも何勝手に人の部屋入ってきてんだよ」
薫「勝手じゃないよ。ちゃんと、おばちゃんに許可貰ったから」
真尾「それを勝手って呼ぶんだろが」
薫「そんな事より、さっさと着替える。本当に遅刻しちゃうよ?」
真尾「いいよ、もう。かったりぃから、今日は休む」
   と言って布団を被ろうとする真尾とそれを阻む薫。
薫「大丈夫、タケちゃんにとって『学校がかったるい』のは健全な証。はい、さっさと着替える」
真尾「ったく……」
   渋々起き上がる真尾。ベッドに腰掛ける薫に目を向ける。
薫「ほら(さっさと着替えて)」
真尾「いや、薫が居たら着替えらんねぇだろ」
薫「何なに、もう。色気づいちゃって」
真尾「だったら、薫は俺の前で着替えられんのかよ」
薫「うん、平気だよ」
真尾「えっ……」
薫「何、想像してるの? やだやだ。思春期恐~っ」
   と言いながら部屋を出て行く薫。
真尾「想像するくらい、健全な証だろが。ったく……」
   着替え始める真尾。
薫の声「おばちゃん、行ってきま~す」

○通学路
   並んで歩く制服姿の真尾と薫。
薫「何とかギリギリ、遅刻せずに済みそうだね。よかったよかった」
真尾「あ、そ」
薫「他人事だな。誰のせいで私までギリギリの時間になってると思ってんの? 少しは感謝してよね」
真尾「(棒読みで)ありがとうございます」
薫「三百円ね」
真尾「高ぇよ。……ったく」
若者Aの声「おら、死ね!」
   声のした方に目を向ける真尾と薫。初老の男を、数名の若者が鉄パイプなどの武器を使ってボコボコにしている。
薫「何、アレ……」
   それを黙って見ている警察官の元に向かう薫。
薫「あの、何で止めないんですか?」
警察官「いいんですよ。あの男は、魔女なんですから」
薫「え……」
   目を向けると、初老の男と目が合う薫。
薫「……」
   動きの止まる薫の手を取る真尾。
真尾「……ったく、遅刻すんぞ?」
薫「……うん」
   真尾に引かれ、その場を後にする薫。真尾の手を強く握る。

○メインタイトル『魔女狩り狩り』

○中学校・外観

○同・教室
   授業中。机に突っ伏し寝ている真尾。
教師の声「……真尾。真尾健彦」
   目を覚ます真尾。教壇に立つ教師がテストを返却している。
真尾「……ん?」
教師「テスト返してるんだ。早く取りに来い」
真尾「ったく、めんどくせぇ」
   席を立ち、教師からテスト用紙を受け取る真尾。一瞥し、興味なさげにテスト用紙を机の中に放り込む。わずかにはみ出て見えるその得点は、九六点。再び机に突っ伏す真尾。
   チャイムの音。
    ×     ×     ×
   休み時間中。
   出入口を邪魔するように談笑する生徒A、B、C。そこにやってくる真尾。
真尾「邪魔」
生徒A「え? あぁ、ごめん」
真尾「ったく」
   出ていく真尾。その背中を見送る生徒A、B、C。
生徒A「魔王、機嫌悪っ」
生徒B「テストの結果、悪かったんだろ?」
生徒C「にしても、真尾を『魔王』とか、あだ名のセンスありすぎだろ」
生徒A「だろ?」
生徒B「まぁ、魔王って言うより『魔女』かもしんないけどな」
生徒C「あ~、この間のヤツだろ?」
生徒B「それだけじゃなくて。俺、塾の同じクラスに、魔王と同じ保育園出身ってヤツが居るんだけど」
生徒A「保育園?」
生徒B「魔王が保育園時代、担任の保育士とクラスメイトの男子が連続で謎の死を遂げた事件があったらしくて」
生徒C「あ、何か聞いたことある」
生徒B「で、その最初の一人目が死ぬ前の日、その四人と魔王が揉めてたんだって」
生徒C「うわ~、確定じゃん」
生徒A「じゃあさ……狩っちゃう?」
生徒B「魔王を?」
生徒A「だって、魔女なんだろ? 世界の平和の為にも狩っちまった方がいいだろ」
生徒C「でも相手はあの……」
   と言いながら、生徒Aの背後に何かを見つける生徒B、C。
生徒A「関係ねぇよ。いざとなりゃ武器でもなんでも使ってよ」
生徒B「おい、後ろ……」
生徒A「(気づかず)見てろよ、魔王。この俺が見事にとっちめてやっからよ」
真尾の声「じゃあ、やってみろよ」
   驚き、振り返る生徒A。生徒Aの背後に立つ真尾。
生徒A「げ、魔王」
真尾「随分好き勝手言ってんじゃねぇか」
生徒A「いや、それは……」
真尾「遠慮はいらねぇから。どっからでもかかってこいよ。ほら」
   背後から真尾の頭を叩く薫。
薫「たぁ」
真尾「痛っ。何すんだよ、薫」
薫「『どっからでもかかってこい』って言ったの、タケちゃんじゃん」
   と言いながら、席に戻っていく真尾と薫。ホッと胸をなでおろす生徒A。
真尾「薫に言ったんじゃねぇよ」
薫「まぁ、油断大敵というヤツだね」
真尾「ったく」

○通学路
   並んで歩く真尾と薫。
薫「『ったく』はコッチの台詞だから。何となく嫌な予感がして、タケちゃんのクラス覗いてみたら」
真尾「別に、俺は喧嘩売られてた側で……」
薫「だからって、買わなきゃいいじゃん」
真尾「そんな簡単な話じゃねぇよ」
薫「簡単だよ。……タケちゃんは、普通にしてていい人なんだからさ」
真尾「……」
薫「ただでさえ、誤解されやすい性格なんだから。このままじゃ友達できないぞ?」
真尾「そんな事言われてもな」
   何かに気付き、立ち止まる薫。
真尾「(気づかず歩きながら)俺は別に、仲良くなりたいと思わねぇヤツらと仲良くしてねぇってだけで……(薫に気付く)」
   警戒するように周囲を見回す薫。
真尾「薫? ……まさか、居んのか?」
   振り返る真尾。真尾達の進行方向から歩いてくる布施明子(78)。
明子「おやおや、この距離で気付くとは、お前さん、ただもんじゃないね」
真尾&薫「(警戒するように)……」
明子「安心しな。今ココでお前さんの事を言ったりしないよ。コッチも命握られているようなもんだからねぇ。ヒッヒッヒ」
真尾「まぁ、そりゃそうだな」
明子「(目を細め)ほぉ……属性は『デス』と来たか」
薫「(驚き)!?」
真尾「……何でソレを?」
明子「なに、年の功じゃよ。ヒッヒッヒ」
   真尾の横を素通りし、薫の肩に手を置く明子。
明子「お前さんの力は、いつかきっと役に立つ。大事にするんだよ」
薫「はぁ……」
   薫の肩から手を離し、道端に咲いている枯れかけた花に触れる明子。
明子「せっかく会えた魔女同士じゃ、何か困った事があったら頼っておいで。歓迎するよ。ヒッヒッヒ」
   歩き出す明子。
明子「まったく、あの『対魔女法』ってのが出来てからというもの、生きづらくなっちまったもんだね。ヒッヒッヒ」
   薫の元にやってくる真尾。
真尾「……薫、大丈夫か?」
薫「うん、平気……」
   明子に触れられた肩を気にする薫。

○マンション・外観(夜)

○同・真尾家・真尾の部屋(夜)
   机に向かっている真尾。開かれたノートには「対魔女法」と書かれている。
教師の声「みんなも知ってると思いますが、先日この付近で魔女が出ました」

○(回想)中学校・教室
   黒板には「対魔女法」と書かれている。真尾ら生徒達がいる教室中を歩きながら授業をする教師。真尾は机に突っ伏し寝ている。
教師「対魔女法により、みんなも魔女を処分する事は出来ますが、危険ですのでなるべく大人の人を呼ぶように」
   真尾の頭を叩く教師。目を覚ます真尾。
真尾「……痛っ」
教師「寝てるとは余裕だな、真尾。じゃあ、魔女や対魔女法について説明してもらおうか」
   渋々立ち上がる真尾。
真尾「魔女の特徴その一。魔女の外見は男性女性問わず人間と同じ姿をしている。魔女の特徴その二。特殊な力を持つ。例、テレパシーや未来予知、人を眠らせる、人を殺す、等」
   呆気にとられる教師や生徒達。
真尾「そんな魔女を『発見し次第処分しても良い』と定めた法律が『対魔女法』。しかし、魔女ではない人間が『魔女』と間違われて殺される事件が相次ぎ、その場合の処罰を含め、未だ議論が続いている」
教師「……」
真尾「まだ何かあったっけ?」
教師「……いや、いい」
   腰を下ろすなり、再び机に突っ伏し眠る真尾。「真尾って魔女?」などと小声で喋っている生徒達。

○マンション・真尾家・真尾の部屋(夜)
   机に向かう真尾。インターホンの音。
真尾「ん?」

○同・同・前(夜)
   ドアの前に立つ真尾と薫の母。
真尾「え、薫が?」
薫の母「そうなのよ。もうとっくに塾終わってる時間なんだけど、まだ帰ってなくて」
   何かに気付き、マンションの外に目を向ける真尾。武器を持って歩く多数の若者たち。
若者A「魔女を殺せ」
若者たち「魔女を殺せ」
若者A「魔女を殺せ」
若者たち「魔女を殺せ」
薫の母「まさか魔女に襲われて……とか、あるかもしれないじゃない?」
真尾「……俺、探してきます」
   駆け出す真尾。

○公園(夜)
   ブランコや小さなトンネルのような遊具がある公園。遠くから若者たちによる「魔女を殺せ」の大合唱も聞こえる。
   息せき切ってやってくる真尾。ブランコに腰掛ける薫を見つける。
薫「あ、タケちゃん。思ってたよりも早かったね」
真尾「……ったく。あんまり心配させんじゃねぇよ」
薫「へぇ、心配してくれたんだ」
真尾「当たり前だろ」
薫「えっ……」
真尾「いくら魔女だからって、薫は一日一人しか殺せねぇんだ。集団で襲われたら、危ねぇだろ」
薫「……だからじゃん」
真尾「あ?」
薫「だから、一人で帰れなかったんじゃん」
   涙を流す薫の頭をなでる真尾。
真尾「大丈夫だから。心配すんな」

○(夢の中)保育園・外観

○(夢の中)同・教室
   女子用のおもちゃを取り上げ、からかう男子児童三人と、からかわれ泣いている五歳の薫。
    ×     ×     ×
   男子児童三人を殴る五歳の健彦。おもちゃを薫に返す。笑顔になる薫。
    ×     ×     ×
   教師に怒られている健彦。その後ろで教師に見えないように笑い、あっかんべえ等をしている男子児童三人。
   その様子を見ている薫。拳を握りしめ る。唇が動く。

○マンション・真尾家・真尾の部屋(朝)
   ベッドで寝ている真尾に向かってダイブする薫。
薫「バン!」
真尾「(うめき声)」
薫「タケちゃん、起きろ~。早くしないと遅刻しちゃうぞ~」
真尾「驚かすなよ。もっと平和的な起こし方あるだろ? そもそも起こしに来んなよ」
薫「いいじゃん。っていうか、タケちゃんが毎朝起きないからいけないんでしょ。ほらこのままじゃ遅刻しちゃうよ?」
真尾「(棒読みで)いいねー、学校。気分ノリノリだぜー」
薫「いいねぇ。じゃあ、早速着替えよう。外で待ってるね」
   部屋から出て行こうとする薫。
真尾「『かったりぃのが健全』じゃなかったのかよ、ったく。……まぁ、元気そうで何よりだけどな」

○通学路
   並んで歩く真尾と薫。
薫「タケちゃん、髪の毛にゴミ付いてるよ」
   真尾の髪に付いたごみを取る薫。
薫「ほい、三百円ね」
真尾「だから、高ぇよ」
先輩Aの声「おら、死ね!」
   声のした方に目を向ける真尾と薫。根津(45)をボコボコにしている先輩A、Bら。全員、真尾と同じ制服。
先輩A「テメェも魔女なんだろ!」
根津「ち、違います……」
先輩B「嘘つけ。昨日処分された魔女、お前の兄貴なんだろ!」
根津「そ、そうですけど、僕は……」
先輩A「魔女の兄弟は魔女に決まってんだろ。さっさと死ねや、こら!」
根津「やめて、誰か、助けて……」
   その様子を見ている真尾と薫。
薫「違う……あの人、魔女じゃない」
真尾「え?」
薫「助けなきゃ……」
   駆けだそうとする薫を制する真尾。一人で根津たちの元に向かう。
先輩A「勘違いすんなよ? コレは暴力でも犯罪でもねぇ。正義の、魔女狩りなんだよ!」
   根津に向け拳を振り下ろす先輩A。その拳を受け止める真尾。
先輩A「あん?」
真尾「その辺で止めとけよ」
先輩A「何だテメェ。魔女の味方すんのか?」
先輩B「コイツ、アレだ。魔王とか呼ばれてる一年坊だ」
先輩A「何だ、一年かよ。先輩は敬いな」
真尾「魔女の親が、子が、兄弟が、魔女とは限らない」
先輩A「あん?」
   掴んだ拳を背中側に回し、先輩Aを後ろ手に取り押さえる形になる真尾。
先輩A「痛たたた……」
真尾「コレ、常識。一年二年先に生まれたのか知んねぇけど、そんな常識も知らねぇヤツ、敬えるか」
   手を離す先輩A。
真尾「あと、弱ぇヤツもな」
先輩A「……テメェ、調子乗んなよ?」
   逃げるように立ち去る先輩A、B。倒れている根津に手を貸す薫。
薫「大丈夫ですか?」
根津「あ、ありがとう。恩に着るよ」
薫「三百円ね」
根津「え?」
真尾「気にしなくていいから」

○中学校・外観

○同・廊下
   一人で歩く真尾。
   その様子を遠巻きに見ている生徒達。
生徒A「なぁ、今朝の話、聞いた?」
生徒B「魔王が魔女を助けた、って話?」
生徒C「もう魔女確定じゃん。……あっ」
   生徒達の視線の先、先輩A、Bら多数の先輩たちに囲まれる真尾。
先輩A「おい、魔王。ちょっと来いよ」
真尾「あ? 嫌だよ。面倒くせぇ」
先輩B「まぁ、そう言わずによ」
   隠し持っていた金属バットで真尾を殴る先輩B。
真尾「がっ……」

○同・職員室
   テレビを観ている教師。刑事ドラマの再放送中。そこにやってくる薫。
薫「あの……」
教師「テレビつけると、いつも同じドラマの同じシーン観る気がするんだよな」
薫「同じ時間にテレビつけると、同じような再放送が流れてますからね。で、あの……」
教師「あぁ、プリントならソコの机の上に置いてあるから。持ってっといて」
薫「はーい」

○同・廊下
   プリントの束を抱え、歩く薫。
薫「意外と重いな。タケちゃんにでも手伝わせれば良かった……」
   窓の外を見ている生徒達。
生徒B「うわ~、本当にいいのかな?」
生徒A「関係ねぇだろ。おらおら、やっちまえ~!」
   つられて窓の外に目を向ける薫。中庭で真尾が先輩A、Bらに殴られている。
薫「タケちゃん!?」
   駆け出す薫。床に散らばるプリント。

○同・中庭
   真尾を殴っている先輩A、Bら。周囲や校舎内の窓際には多数の野次馬。
先輩A「どうだ、魔王。一年のくせにイキがってっからこういう目に遭うんだぞ?」
真尾「……けっ。こういう事しか出来ねぇから、敬われねぇんじゃねぇの?」
先輩A「この野郎」
   真尾を殴る先輩A。
   そこに駆け込んでくる薫。野次馬の生徒達をかき分ける。
薫「タケちゃん!」
先輩B「ところでさ、魔王。お前、魔女なんだって?」
   足が止まる薫。
   顔を上げ、先輩Bを睨む真尾。
先輩B「野球部の一年がそんな話してたんだけどさ」
真尾「だったら、何だよ?」
先輩A「『対魔女法』って知ってんだろ? 魔女はな、殺していいんだよ」
   金属バットを手にする先輩A、B。
   息をのむ真尾。
先輩B「今から魔女をぶっ殺しま~す」
   野次馬の生徒達や窓から見ている生徒達が盛り上がる。野次馬の最前線に出てくる薫。
   バットを構える先輩A、B。
薫「やめて」
   真尾の腕を押さえている他の先輩達。
薫「やめてよ」
   窓から見ている生徒達。笑っている。
   野次馬の生徒達。煽っている。
薫「やめてってば」
   バットを振りかざす先輩A。
薫「やめろー!」

○同・職員室
   テレビで刑事ドラマの再放送を見ている教師。
教師「で、ここで撃つんだろ? ココだけ何回も観たわ」
   ドラマ内、主人公の刑事が犯人に向けて拳銃を発砲する。

○同・中庭
   バットを持ったまま息絶える先輩Aに駆け寄る先輩B。
先輩B「し、死んでる……」
   呆然と立ち尽くす薫。
   一同の視線が薫に集まる。
先輩B「お前が魔女だったのか……」
   悲鳴を上げ一斉に散っていく野次馬の生徒達。窓から見ていた生徒達も逃げていく。
   過呼吸気味になり座り込む薫。
   バットを手に薫に向かっていく先輩B。
先輩B「女子だからって、関係ねぇからな。コレは、魔女狩りだ!」
   薫に向けバットを振りかざす先輩B。目を瞑る薫。

○(フラッシュ)保育園・教室
   男子児童の死体が横になっている。
   座り込み泣いている五歳の薫。そこに差し出される手。

○中学校・中庭
   目を開く薫。
   座り込む薫に手を差し出す真尾。

○(フラッシュ)保育園・教室
   薫に手を差し出す五歳の健彦。
真尾の声「行くぞ」

○中学校・中庭
   座り込む薫に手を差し出す真尾。
薫「行くって、どこに?」
真尾「わかんねぇよ。ただ、少なくともココには居られねぇだろ。ほら」
薫「でも……」
真尾「安心しな」
   傍らに、頭から血を流して倒れている先輩B。真尾の手には(先輩Aが持っていた)バット。血が付いている。
真尾「俺も同罪だ」
   他の先輩達が真尾達に迫ってくる。
真尾「急ぐぞ」
薫「……うん」
   真尾の手を握る薫。走り出す二人。

○同・裏
   手を取り走る真尾と薫。
真尾「……悪かったな」
薫「え?」
真尾「俺のせいで、薫が魔女だってバレちまって……」
薫「……じゃあ、三百円ね」
真尾「さすがに安すぎだろ」
   笑う真尾と薫。

○通学路
   手を取り走る真尾と薫。
アナウンスの声「市役所からお知らせです。先ほど、市内において新たな魔女が確認されました。魔女は女子中学生の姿をし、現在も逃亡中です。発見の際には各自で対処するか、市役所や警察へのご連絡をお願いします」
真尾「ったく、こういう時に限って情報が早ぇな」
   立ち話している主婦達とすれ違う真尾と薫。主婦の一人が訝しげに薫を見る。薫と目が合うと、倒れる主婦。他の主婦が悲鳴を上げる。
薫「!?」
真尾「なっ!?」
薫「何で……今日はもう、力使ったはずなのに……」
   立ち尽くす薫の手を引く真尾。
真尾「薫、いいからコッチだ」
   路地裏に駆け込む真尾と薫。
   枯れていた花が元気に咲いている。

○マンション・外観(夜)
   多くのパトカーが集まっている。

○同・土岐家・前(夜)
   警察の事情聴取を受ける薫の母。憔悴しきった表情。

○公園(朝)
   小さなトンネルの遊具の中で目覚める薫。顔を上げると、トンネルの入口に座っている真尾。
薫「……あ、タケちゃん。おはよう」
真尾「起きたか」
薫「もしかして、ずっと起きてた?」
真尾「……まぁ、昼間ずっと寝てたからな」
薫「ごめん、私……」
真尾「とりあえず、場所変えるぞ。ココも、結構危ねぇ」
   と言いながら、刃物や鈍器などをポケットに入れるなどする真尾。
薫「タケちゃん、ソレ、どうしたの?」
真尾「貰った。いいから、行くぞ」
薫「……うん」
   トンネルから出てくる薫。周囲を見回すと、数人の死体。近くには血の付いた鉄パイプが転がっており、死体には全て頭部を殴られた跡がある。
薫「!? タケちゃん……?」
真尾「(服装を見て)しっかし、制服だと目立つよな……何とかしねぇと」
   複数の財布を開く真尾。
真尾「なぁ、女物の服っていくらあれば買えんだ?」
薫「タケちゃん、そのお金は……?」
真尾「ん? 貰った」
薫「ねぇ、タケちゃん。私のせいで、何人殺したの?」
真尾「ゼロ」
薫「え?」
真尾「殺したのは五、六人だけど『薫のせい』じゃねぇ。あくまでも、俺の戦いだから」
薫「……」
真尾「(財布の中身を見ながら)しっかし、しょぼいな。食いもんも買わなきゃだし、金も何とかしねぇと……」
薫「じゃあさ……」
真尾「ん?」

○路地裏
   人通りのない場所。物陰に隠れる真尾と薫。パトカーの通り過ぎる音。胸を撫で下ろす真尾と薫。
薫「……行ったね」
真尾「あぁ。……なぁ、本当に信じて大丈夫なのか?」
薫「私は、大丈夫だと思う。まぁ、タケちゃんが『止めとけ』って言うなら……」
真尾「別に。薫に任す」
薫の母「薫?」
   そこに荷物を持ってやってくる薫の母。
薫「ママ」
薫の母「薫」
   抱き合う薫と薫の母。
薫の母「(荷物を見せ)コレ、着替え。健彦君の分は、パパの服だけど」
真尾「あ、ありがとうございます」
薫「三百円ね」
真尾「だから……」
薫の母「ところで、薫。あなた本当に……」
若者Cの声「見~つけた」
   鉄パイプを持ってやってくる若者C。もう片方の手に自撮り棒を持っている。
若者C「(カメラ目線で)魔女発見しました」
真尾「ちっ、一旦逃げ……」
   振り返る真尾。反対側からも鉄パイプを持った若者二人がやってくる。
若者C「魔女狩り、行っきま~す!」
   挟み撃ちされる真尾、薫、薫の母。二人組の方を睨みつける薫。息絶える二人組。
若者C「は?」
薫の母「!?」
薫「え……?」
真尾「よくやった」
   若者Cに向かっていく真尾。
若者C「おいおい、人殺す系の魔女かよ。聞いてねぇって」
真尾「なら、覚えとけ。薫は人殺す系の魔女だ。それから……」
   持っていたナイフで若者Cを刺す真尾。
薫の母「!?」
真尾「俺は人殺す系の人間だ」
   息絶える若者C。
薫の母「……薫、本当に魔女だったのね」
薫「うん。……でも、二人同時なんて、今まで……いや、昨日も出来なかったのに」
真尾「そういう話は後だ。ココ離れんぞ」
薫「うん。ママ、ありがとう。気を付けて帰ってね」
薫の母「待って、薫。お金もいるんでしょ?」
   別の鞄から何かを取り出す薫の母。
薫「ごめん、ありがとう」
薫の母「いいのよ。これは私が、母親としてやらなくちゃいけない事だから……」
薫「え?」
   包丁を取り出し、薫に向ける薫の母。
薫の母「ごめんね、薫……」
薫「!?」
真尾「薫!」

○路地
   歩いている真尾と薫。ともに着替済み。
真尾「……大丈夫か、薫?」
薫「……タケちゃんの言う通りだったね」

○路地裏
   若者三人と薫の母の死体。
薫の声「まさか、ママまで……」

○路地
   歩いている真尾と薫。
薫「わかってはいたけど……もう、帰れる所、無いんだね」
真尾「薫……」
明子の声「それはどうかな? ヒッヒッヒ」
   驚き、振り返る真尾と薫。そこに立っている明子。
真尾「この間の……」

○明子の家・外観
   怪しげな館。

○同・地下室・ダイニング
   テーブル席に座り食事をとる真尾、薫、明子。
明子「一人暮らしの婆さんの料理が、若者の口に合うといいんだけどねぇ」
薫「すみません。ご馳走になっちゃって」
明子「遠慮する事はないよ。人として当然……いや『魔女として』って言った方がいいかね? ヒッヒッヒ」
    ×     ×     ×
   テーブル席に座る薫と明子、台所で皿洗いをしている真尾。真尾は聞き耳を立てている。
明子「ほう、保育園の時にねぇ。それはそれは、随分と早かったんじゃな」
薫「早かった?」
明子「魔女は皆、産まれたときは人間だったんじゃよ。それがどういう原因か、いつの間にやら魔女の能力を手に入れちまうらしいんじゃよ」
薫「へぇ、そうだったんですか」
明子「ただ、私も色んな魔女に会ったけど、早くても小学生くらい、定年退職後ってじいさんも居たくらいじゃったな」
薫「それが、あの部屋に飾ってある写真の方達ですか?」
明子「あぁ」
   薫と明子の視線の先、隣の部屋(=仏間)がある。

○同・同・仏間
   仏壇には様々な年齢の男女の写真(冒頭、通学中に狩られていた初老の男も含む)が飾られている。
明子の声「行き場のなくなった魔女同士、肩を寄せ合って暮らしてたんじゃがね。一人また一人と見つかっては殺されて、今は私一人じゃよ」

○同・同・ダイニング
   テーブル席に座る薫と明子、洗い物を終える真尾。
明子「まぁ、ここはそういう家じゃから、お前さんも、自分の家だと思ってくれていいんじゃよ。ヒッヒッヒ」
薫「ありがとうございます」
真尾「俺からも一個聞いていいか?」
明子「何じゃ?」
真尾「薫は今、力が制御できなくなってる。つまり、婆さんも殺されるかもしれないんだろ? それなのに、俺らをココに置いてくれるって言うのか?」
明子「何じゃ、そんな事かい。安心していいよ。(薫に)お前さんの能力は、他の魔女には通用しない。魔女の力じゃ、他の魔女は殺せないようになっとるんじゃよ」
真尾「ふ~ん……随分都合がいいんだな」
明子「ちなみに、私の能力は逆でね。自分や人間には使えないんじゃよ」
薫「あの、おばあさんの能力って……?」
明子「それはまたおいおいじゃな。それよりも、(真尾に)お前さん、ちょいと買い物に行って来てくれやしないかい?」
真尾「は? 何で俺が……」
明子「他に頼めそうな人が居るかい? ヒッヒッヒ」
薫「行ってらっしゃ~い」
真尾「……ったく」

○スーパーマーケット・前
   出てくる真尾。片手にメモ、片手に買い物袋を持っている。
真尾「(メモを見ながら)買い忘れはねぇよな。……ん?」
   前方、武器を持った男たちを見つける真尾。
薫の声「タケちゃんはずっと一緒に居てくれたんです」

○明子の家・地下室・ダイニング
   向かい合って座る薫と明子。
薫「私が魔女だってわかる前から、私が魔女だってわかった後も、ずっとずっと変わらず、一緒に居てくれて……」

○(フラッシュ)中学校・中庭
   座り込む薫に手を差し出す真尾。
薫の声「私が、自分の力に耐えられなくなって、世界から取り残されそうな時も」

○(フラッシュ)保育園・教室
   座り込み泣いている五歳の薫に手を差し出す五歳の真尾。
薫の声「いつもいつも、私に手を差し出してくれたんです」

○明子の家・地下室・ダイニング
   向かい合って座る薫と明子。
薫「だから、タケちゃんも、この家に置いてもらえないでしょうか? お願いします」
   頭を下げる薫。
明子「別に私は『ダメだ』なんて一言も言ってなかったけどね、ヒッヒッヒ」
薫「良かった……ありがとうございます」
明子「ただ、ちょっと荒っぽいのは気になるかねぇ」
薫「それは、その……」
   そこにやってくる真尾。その服は返り血で汚れている。
真尾「ただいま」
薫「おかえ……もう、タケちゃん……」
   笑い出す薫と明子。
真尾「? 何だよ?」

○同・外観(夜)

○同・地下室・ダイニング(夜)
   テーブルを囲む真尾、薫、明子。
真尾「は? 本気で言ってんの?」
薫「うん、本気」
明子「『人間と魔女が共存する世界』ねぇ」
薫「無理、ですかね?」
明子「方法なら、あるよ」
薫「本当ですか!?」
明子「ただしソレは『この世界から戦争をなくすための方法』と一緒だけどね。ヒッヒッヒ」
真尾「何だ、要するに無理って事か」
薫「ちなみに、どういう方法なんですか?」
明子「正義感、じゃよ」
薫「正義感?」
明子「全ての人間が正義感を捨てれば、戦争も魔女狩りもなくなるんじゃよ。ヒッヒッヒ」
真尾「正義感、か……」
若者Bの声「魔女を殺せ」
若者たちの声「魔女を殺せ」
   声に気付く真尾、薫、明子。

○同・外(夜)
   武器を持って歩く多数の若者たち。
若者B「魔女を殺せ」
若者たち「魔女を殺せ」
若者B「魔女を殺せ」
若者たち「魔女を殺せ」

○(夢の中)市街地
   涙を流し、膝から崩れ落ちる真尾。周囲には警察官や武装した若者、一般人ら多数の人の死体や武器(マシンガン等の銃器他)が散乱している。
   そこに別の武装した若者たちが「魔女を殺せ」等と口にしながらやってくる。
   足下のマシンガンを手に取り、集団に 向けて引き金に手をかける真尾。
真尾「ちくしょぉぉぉおおお!」

○明子の家・地下室・仏間(朝)
   敷き布団で寝ている真尾に向かってダイブする薫。
薫「バン!」
真尾「(うめき声)」
薫「タケちゃん、起きろ~。朝ご飯、冷めちゃうぞ~」
真尾「だから、もっと普通に起こせよ。そもそも……そっか、そもそも俺の部屋じゃねぇんだったな」

○同・同・同
   やってくる真尾。英語の辞書を引いている薫。
真尾「……ったく、あのババァ、こき使いやがって。……薫、何してんだ?」
薫「何って、勉強」
真尾「今更勉強して、何になんだよ」
薫「何かになるかもしれないじゃん。でさ、タケちゃん。『ウェイクアップ』って言葉なんだけど、意味わかる?」
真尾「『目が覚める』だったかな」
薫「目が覚める……」
真尾「まぁ、中一で習う単語じゃねぇけどな」
薫「そっか。でも本当、タケちゃんほど生活態度と学力が合わない人もいないよね」
真尾「うるせぇ」

○(夢の中)市街地
   足下のマシンガンを手に取り、集団に 向けて引き金に手をかける真尾。

○明子の家・地下室・ダイニング
   テーブルに突っ伏して寝ている真尾。目を覚ます。
真尾「……また同じ夢かよ。ったく」
   そこにやってくる明子。
明子「目覚めたようじゃの。悪いけど、また買い物頼んでもいいかい?」
真尾「……はいはい」
   明子からメモを受け取り出ていく真尾。

○同・同・仏間
   勉強中の薫の元にやってくる明子。
明子「お前さん、ちょっといいかい?」
薫「何ですか?」
明子「魔女に必要な儀式、かな? ヒッヒッヒ」
薫「?」

○スーパーマーケット・前
   大量の買い物袋を手に出てくる真尾。中には大量のリンゴ。
真尾「リンゴ買いすぎだろ。毒でも盛る気か」
   近くのベンチに腰を下ろす真尾。
真尾「さすがにキツいっての。ったく」
   一瞬目を閉じる真尾。

○(イメージ)市街地
   人ごみの中に立つ薫と明子。薫に気付く人々。十人ほどが同時に息絶える。それを見て逃げる人々。

○スーパーマーケット・前
   ベンチに座る真尾。
真尾「……何だ、今の?」
   立ち上がる真尾。駆け出す。

○明子の家・地下室・ダイニング
   駆け込んでくる真尾。他に誰もいない。
真尾「ただいま。……薫? 婆さん?」

○同・同・仏間
   入ってくる真尾。誰もいない。
真尾「薫! どこだよ、ったく」

○同・前
   出てくる真尾。そこにやってくる薫と明子。憔悴しきった表情の薫。
真尾「薫! 二人ともどこ行って……」
薫「(真尾に気付き)タケちゃん……」
   真尾に抱き着き、泣く薫。
真尾「薫?」

○同・同・仏間(夜)
   眠る薫。
真尾の声「薫に何した?」

○同・同・ダイニング(夜)
   テーブル席に座る真尾と明子。
真尾「いや、違うな。薫に何させた?」
明子「一種のテスト、かね? ヒッヒッヒ」
真尾「テスト?」
明子「まだ十人程度しか同時には殺せないみたいじゃけど、本来『デス』の能力はこんなもんじゃないよ。ヒッヒッヒ」
真尾「婆さんの狙いは何だ?」
明子「決まっているじゃろ? 人間への逆襲さ。私達の仲間を何人も殺してきた人間を皆殺しにする。デス属性の魔女は、そのための切り札さ。大事に育てないとね」
真尾「……ウェイクアップか」
明子「(一瞬驚き)ほう……」
真尾「薫がいきなりそんな単語気にするからおかしいと思ったんだ。婆さんの魔女としての能力、それが『ウェイクアップ』。つまり魔女を『覚醒させる』魔女」
明子「お前さん、思っていたより頭いいんじゃね。どうだい、協力してくれやしないかい?」
真尾「協力? 人間を滅ぼすための?」
明子「お前さんだって、人間の事が憎いじゃろ? それに、お前さんも……」
真尾「断る」
明子「……お前さん、この期に及んで人間の味方をするつもりかい?」
真尾「魔女とか人間とか、どうでもいい。俺は、薫の味方だ。薫は、人間を滅ぼす事なんて望んでねぇ。だから、婆さんの話には乗らねぇ」
明子「随分とあの嬢ちゃんに惚れこんどるようじゃの」
真尾「そんなんじゃねぇ。俺にとっては、薫こそが世界なんだよ」

○(回想)保育園・教室
   遊んでいる児童達の輪から外れ、一人で座る五歳の健彦。そこにやってくる五歳の薫。
真尾の声「俺はどうしても、みんなの輪には入れなかった。集団に馴染めなかった」

○(回想)中学校・教室
   席に座る真尾とその前に立つ薫。他の生徒は遠巻きに見ている様子。
真尾の声「でも薫は、そんな俺の側にいつも居てくれた。薫が、俺と世界をつなぎ止めてくれていたんだ」

○明子の家・地下室・ダイニング(夜)
   テーブル席に座る真尾と明子。
真尾「だから、俺は薫を守る。人間を敵に回そうが、魔女が滅びようが、関係ねぇ。薫を守る事が、世界を守る事なんだ」
   立ち上がり、明子に向かっていく真尾。
真尾「だから、そんな薫を泣かせた婆さんを、俺は許さねぇ」
明子「そうかい。残念だねぇ」
真尾「あぁ。残念だよ」
   持っていたナイフで明子を刺す真尾。
   倒れる明子。
真尾「(息を整え)どっから聞いてた?」
   仏間からやってくる薫。
薫「『ウェイクアップ』くらいから」
真尾「薫の力が強くなっちまったのは、あの婆さんに会ってから、だったよな」
薫「そういう事、だったんだね……」
   上から騒がしい音。
警察官の声「開けなさい」
真尾「ん?」

○同・前(夜)
   パトカーが集まっている。
警察官「この建物の中に魔女が居る、との通報がありました。無駄な抵抗をやめ、おとなしく出てきなさい」

○同・地下室・ダイニング(夜)
   上を見上げる真尾と薫。
真尾「……ちっ。どうする?」
薫「大丈夫。今日使った、裏に続いてる脱出口があるから」
真尾「さすが、頼りになるな」
薫「じゃあ、三百円ね」
   笑い合う真尾と薫。

○市街地
   やってくる真尾と薫。ともに肩で息をしている。
真尾「この辺まで来りゃ、大丈夫か?」
薫「だといいけど……」
警察官の声「居たぞ、こっちだ!」
真尾「ちっ。薫、まだ走れるか?」
薫「うん……きゃっ」
   若者たちに捕まり、頭から麻袋を被せられる薫。
若者A「はい、魔女捕まえた~」
真尾「薫を離せ!」
   追いついてきた警察官に取り押さえられる真尾。
警察官「少年、確保!」
真尾「何すんだ、この野郎! おい、薫!」
    ×     ×     ×
   麻袋を被せられ、手を後ろで縛られた薫を無理やり跪かせる若者A。周囲には武装した若者や野次馬が百人近く居る。
若者A「おら、魔女。どうだ? 『人を殺す魔女は視界をふさげばいい』。人間様の研究の成果だ」
薫「やめて……」
若者A「さぁ、魔女狩りだ!」
   鉄パイプを振り下ろす若者A。野次馬の中から飛び出し、それを庇う根津。
根津「ぐっ」
若者A「何だ? 邪魔すんじゃねぇ!」
   根津を殴り続ける若者Aら。それでも身を挺して薫を守りながら、縛られた手をほどき、麻袋を取る根津。
薫「!? あなたは……」
根津「恩は返さなきゃな」
   激しい銃声。若者の一人がマシンガンで根津を撃つ。倒れる根津。
薫「おじさん!?」
   最後の力を振り絞り薫に何かを手渡し、息絶える根津。手を開く薫。そこには三百円がある。
   声にならない叫び声をあげる薫。
    ×     ×     ×
   取り押さえる警察官に抵抗する真尾。
真尾「離……せ……」
警察官「抵抗するな。公務執行妨害も加え……」
   声にならない叫び声とともに倒れ、息絶える警察官。
真尾「薫!?」
   起き上がる真尾。
   目の前に広がる百人近い死体の山。
真尾「なっ……」
   死体の山の中心で呆然とする薫。
真尾「薫! 大丈夫か?」
薫「(周囲の死体を見回し)私、こんなにたくさん……」
   薫に手を差し出す真尾。
真尾「とりあえず、ココは危ねぇ。行こうぜ」
   真尾に背を向ける薫。
真尾「薫?」
薫「やっぱり、ダメだよ。これ以上、タケちゃんに迷惑かけたくない」
真尾「迷惑だなんて思ってねぇよ」
薫「でも、そうやってタケちゃん傷つけて、またタケちゃんをひとりぼっちにさせちゃって……私もう、自分が嫌だよ」
真尾「俺はひとりぼっちでも構わねえぇし、薫が居るんだから、そもそもひとりぼっちじゃねぇよ」
薫「でも……」
真尾「じゃあ、三百円な」
薫「……人の台詞取らないでよ」
真尾「いいだろ、たまには逆でも」
薫「逆……」
   薫の視線の先、ショウウィンドウに映った薫の姿。
明子の声「ちなみに、私の能力は逆でね。自分や人間には使えないんじゃよ」

○(回想)明子の家・地下室・ダイニング
   テーブル席に座る薫と明子。
明子「お前さんの能力は、他の魔女には通用しないよ」

○市街地
   真尾に背を向け、ショウウィンドウに映る自分の姿を見ている薫。
明子の声「他の魔女には」
   薫に手を差し出す真尾。
真尾「だからさ、薫。行こうぜ」
   真尾に三百円を放る薫。
真尾「ん? いや、ガチで払うのかよ」
   三百円を拾う真尾。
薫「タケちゃん、ありがとう」
真尾「別にいいって」
薫「大好きだよ」
真尾「(嫌な予感がして)薫?」
薫「……バイバイ」
   再びショウウィンドウに映る自分の姿に目を向ける薫。
   真尾から見える、ショウウィンドウに映った薫の唇が「バン」と動く。
   倒れる薫。息絶える。
   真尾の手から零れ落ちる三百円。

○(フラッシュ)
   様々なシーンでの薫の笑顔。

○市街地
   薫の死体を眺める真尾。
真尾「ふざけんなよ。勝手に自己完結してんじゃねぇよ。俺を一人ぼっちにすんじゃねぇよ。どうしても死にたかったなら、俺も一緒に殺せよ。薫~!」
   涙を流し、膝から崩れ落ちる真尾。そこに聞こえてくる声。
若者Bの声「魔女を殺せ」
若者たちの声「魔女を殺せ」
若者Bの声「魔女を殺せ」
若者たちの声「魔女を殺せ」
   若者たちに目を向ける真尾。
真尾「……何だこれ? 見覚えが……」

○明子の家・地下室・ダイニング
   倒れている明子。目を覚ます。
明子「目覚めたようじゃの。ヒッヒッヒ」

○市街地
   涙を流し、膝から崩れ落ちる真尾。周囲には警察官や武装した若者、一般人ら多数の人の死体や武器(マシンガン等の銃器他)が散乱している。
真尾「そうか、薫。俺の事、殺せなかったんだな。……って事にしておいてやるよ」
   そこに若者Bたちが「魔女を殺せ」等と口にしながらやってくる。
真尾「お前らのくだらねぇ正義感のせいで、薫が……俺の世界の全てが……」
   足下のマシンガンを手に取る真尾。
真尾「お前らが魔女を狩るなら、俺はお前らを、狩ってやる。魔女狩り狩りだ」
   立ち上がり、集団に向けて引き金に手をかける真尾。
真尾「ちくしょぉぉぉおおお!」
                   (完)

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