ありがとうは? コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 5 0 0 01/16
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 10歳
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 8歳
HC=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 2歳

○ホストハウスへの道

地球家族6人が、おしゃべりしながら歩いている。
リコ「リコはイチゴが好き!」
ジュン「ハハハ。食べ物の話じゃないよ」
父「お父さんの一番好きな言葉は、『ありがとう』」
ジュン「そうか、それを忘れていたな。僕も『ありがとう』が好きだ」
ミサ「私も」
タク「『ありがとう』の一言でお互いに幸せになれるのは、きっと万国共通だよね」
父「いいことに気がついたね。その通りだと思う。地球だけじゃなくて、宇宙全体でも、『ありがとう』の言葉が無い国など一つもないと思うよ」
そのとき、前方で、スーツを着た中年男性がしゃがみこんで、何かを探している。
ジュン「あのー、何かお探しですか?」
男性「あ、お金をばらまいてしまって。だいたい全部拾ったんですが、お札が1枚、足りないんです」
ミサ「一緒に探しましょう」
地球家族6人、一緒に探し始める。

○しばらくして、道

地球家族6人、まだ探している。
男性が立ち上がる。
男性「仕方がない、あきらめます。風で飛ばされたのかもしれません」
男性、一瞬だけ地球家族6人を見つめる。
男性「それでは」
男性、地球家族に背を向けて去って行く。
地球家族6人、ポカンとして男性の後ろ姿を見る。
タク「『ありがとう』って言われなかったね」
ミサ「うん」
ジュン「この国には『ありがとう』が無いのかな」
父「どうかな。あるいは、もしわれわれがお金を見つけていれば、お礼の言葉があったかもしれないよ。でも、結果として見つけられなかったのだから、手伝わなかったのと同じなのかもしれない」
ミサ「そんな、ひどい!」
父「ここではこれが普通なのだろう」
リコ「あ、あった!」
リコが突然走り出し、落ちていたお札を拾う。
ミサ「私、渡してくるわ!」
ミサ、走って男性を追いかける。
地球家族5人、止まってミサを待つ。
ミサ、しばらくして、首を横に振りながら走って戻って来る。
ミサ「だめだった」
ジュン「渡せなかったのか?」
ミサ「そうじゃないの。ちゃんと渡した。でも、やっぱり『ありがとう』が無かった。『あー、良かった』とだけ言い残して行っちゃった」
ジュン「これで決まりだな。お礼の言葉がない世界なんだ」
ミサ「なんだか、さびしいわね」

○ホストハウスの玄関

地球家族6人がホストハウスに到着。リコが玄関を開ける。
リコ「おじゃまします」
HF、HS、HBが出てくる。
HF「はじめまして。お待ちしていました。おあがりください」
父「みなさん、はじめまして」
HF「お昼はもう済まされましたか?」
母「いいえ、まだです」
HF「ちょうどよかった。ここの裏に、私たちが経営している食堂があります。一緒に食事しましょう」
父「ええ、ぜひ」

○食堂

地球家族6人とHF、HS、HBが座っている。空席が2つ。
HF「フライドフィッシュの専門店なんです。今、妻が、揚げたてを持ってきますよ」
そのとき、お盆を持ったHMが2歳の息子(HC)といっしょに入って来る。
HM「お待たせしました。みなさん、ようこそいらっしゃいました」
ジュン「はじめまして」
ミサ「こんにちは」
母「(HCを見て)まあ、かわいらしいお坊ちゃん」
HC「また会いましょう」
母「え?」
HC「また会いましょう」
全員「・・・」
そのとき、HFが大声で作り笑いを始める。
HF「ワッハッハッハ」
HM、HS、HBもそれに続く。
HM「ワッハッハッハ」
HS「ワッハッハッハ」
HB「ワッハッハッハ」
HC「間違えちゃった」
HC、照れ笑いをする。
HF「『また会いましょう』はお別れのあいさつだよ。初めて会った時は『会えてうれしいです』とか『はじめまして』と言わなきゃいけないよ」
HC「はじめまして」
HF「よし、よくできた」
ミサ「さっきの笑いは何だったんですか? あんなに大声で笑っちゃ、かわいそうですよ」
HF「いいんですよ。この子は、言葉を言い間違えて、笑われて恥ずかしい思いをするたびに、言葉を覚えるんです」
父「なるほど」
HF「それから、子供はすぐにわれわれ大人が言うことをまねしてしゃべりますから、うかつなことは言えません。子供の模範となるようにいつも気をつけています」
母「そうですね、うちの子供たちもそうでした」
HF「特にあいさつはちゃんと言える子に育てたいですからね。『こんにちは』、『すみません』・・・」
全員「・・・」
HF「それから、『ありがとう』」
地球家族全員、顔を見合わせる。
HM「さあ、どんどん召し上がってください。食べた後は、一緒にバスで観光をしましょう」

○バス停

地球家族6人とHF、HM、HS、HB、HCが待っていると、バスが到着する。
少し混んでいるが、空席がある。

○バスの中

全員、バスに乗り込む。
父の目の前の席が空いている。
母「お父さん、座ったら。疲れているんじゃない」
父「そうだな、じゃあ、お言葉に甘えて」
父が座ろうとする。
そのとき、それをさえぎるようにHBがその席に先に座ってしまう。
HB、座ったまま父に向かってほほえむ。
父、苦笑いをする。
すると、HBが立ち上がり、父に席を譲る。
HB「どうぞ、お座りください」
父「え、あ、うん・・・」
父、不思議そうな顔で座る。
HB「(父に)ありがとうは?」
父「え?」
HB「(父に)ありがとうは?」
父「あ、あ、ありがとう。うん、どうもありがとう」
HB、ほほえみながら、首からぶら下げていたペンダントのボタンを押す。
父「ん? それは何?」
そのとき、別の乗客(高齢の女性)が大きな荷物を上の棚に乗せようとして苦労している。
そばにいたHSが気付き、手伝う。荷物は無事に棚の上に乗る。
HS「ありがとうは?」
女性「ありがとう」
HS、ほほえみながら、首からぶら下げていたペンダントのボタンを押す。
地球家族、不思議そうにそれを見ている。
立っていたHFがHSとHBを手招きで呼びよせる。
HF「見ていたよ。(HSに)君は良かった。(HBに)しかし、君はルール違反だよ。座りかけていた人を押しのけて座ってから席を譲っても、『ありがとう』を言われる価値はないな。取り消しなさい」
HB「はい」
HB、頭をかきながら、ペンダントに手をやる。
父「このペンダントは何ですか?」
HF「子供たちはみんなこのペンダントを持って、お礼を言われるたびにボタンを押すんです。つまりこのペンダントは、子供たちがどれだけ良いことをしたかを記録する装置なんです」
母「へえ。」
地球家族、周りを見渡す。他の子供たちも、みんなペンダントを首からぶら下げている。
母「確かに、子供たちはみんなペンダントを持っていますね」
HM「学校で、子供たちどうしが、お礼を言われた回数を競い合うんです。勉強の成績よりも重視されているので、子供たちは必死です」
地球家族「・・・」
HF「これはとてもいいシステムだと思いませんか? 子供たちは3歳になるともうペンダントを渡されますので、小さいうちから人に親切にする習慣が身につくんですよ。もっとも、親切にしているつもりでも、相手にとっては親切でない場合もありますから、あくまでボタンを押せるのは、『ありがとう』と言われた後です」
父「なるほど」
そのとき、HMの目の前に座っていた乗客の中年女性がハンカチを拾ってHMに渡す。
女性「落ちましたよ」
HM「あ、私のだわ」
女性「ありがとうは?」
HM「ありがとうございます」
地球家族、唖然とした表情。
ミサ「(心の中で)子供だけじゃなくて、大人まで?」

○バス停

地球家族6人とHF、HM、HS、HB、HCがバスを降り、HFを先頭に歩き始めようとする。
ミサ「あ、しまった!」
母「どうしたの?」
ミサ「バスの中に帽子を置き忘れたわ。脱いで目の前の席のところに置いて、そのまま忘れちゃった」
ジュン「あー、しょうがないよ」
ミサ「あの帽子、お気に入りだったのに」
そのとき、誰かがミサの手を引っ張る。
ミサが見ると、HCがすぐ横におり、ミサの帽子を持って差し出す。
HC「はい、帽子。忘れてたよ」
ミサ「あ!」
ミサが帽子を受け取る。
一瞬、ミサとHCが無言で見つめあう。
ミサ「ありがとう!」
ミサ、大喜びの表情で、HCの頭を何度もなでる。
ミサ「気づいてくれて、本当によかったわ。もう戻ってこないとあきらめていたの」
ミサ、HCの頭をさらになでる。
ミサ、ふと横を見ると、ジュンが見ている。
ミサ「何?」
ジュン「いや、坊やと一瞬見つめあっていたのはどうしてかと思って」
ミサ「あ、もしかして『ありがとうは?』って言われるかと思ったのよ。でも、言わなかったから、私が先に『ありがとう』って言ったの」
ジュン「ペンダントをもらうのは3歳だと言ってたからな。2歳児の彼は、まだ『ありがとうは?』って催促する習慣が身についていないんだよ」
ミサ「そうか」

○観光地

地球家族6人、観光しながら、人々の会話に聞き耳を立てる。
女の子「ありがとうは?」
男性「ありがとう」

別の場所で。
中年男性「ありがとうは?」
若い男性「ありがとうございます」

別の場所で。
高齢の女性「ありがとうは?」
若い女性「ありがとう」

それを見ている地球家族。
ミサ「(心の中で)3歳になってペンダントをもらうと、みんなこんなふうになるのか・・・。子供のうちから『ありがとう』と言われてポイントをかせぐことに夢中・・・」
タク「(心の中で)ポイントをかせごうとするあまり、『ありがとうは?』と言って催促する習慣までついてしまっている・・・」
ジュン「(心の中で)その習慣が大人になっても続く。そして、お礼を言うほうも、『ありがとうは?』と言われるのを待つ習慣がついていて、自分からお礼をけっして言わない・・・」
父「(心の中で)きっと、さっきのお金を落とした人も、われわれが『ありがとうは?』と言うのを待っていたのかな・・・」

○翌朝、ホストハウスの居間

地球家族6人が集まっている。
父「そろそろ、出発しないと。ホストファミリーのみなさんはどこへ行ったのかな?」
タク「食堂のほうじゃない?」
ジュン「行ってみよう」

○食堂の入口

地球家族6人が向かうと、食堂から煙が出ている。
ジュン「なんだ、これは? 火事?」

○食堂

地球家族6人が入ると、キッチンが炎につつまれている。
そばで、HSとHBがうろたえている。
ジュン「どうした!」
HB「フライドフィッシュを僕たちで作ろうと思ったら、油に引火して・・・」
炎がさらに強くなっている。
HSが水の入った桶を持ちあげ、炎に向かって水をかけようとする。
母「待って! 揚げ油に水をかけたら危険よ。消火器はどこ?」
HS「わからない・・・」
父「よし!」
父、リュックサックからタオルを取り出して水につけ、炎に向かって投げる。
ミサが消火器を2本かかえて来る。
ミサ「消火器が見つかったわ!」
ミサ、父に消火器を1本渡す。
父とミサ、消火器の栓を抜いて、夢中で火を消す。
そのとき、HFとHMが店に入って来る。事態を見て目を丸くする。
父とミサ、火を消し続ける。
火はやがて沈静していく。

○しばらくして、食堂

全員、疲れ果てた表情でキッチンの床に座り込んでいる。
父「火が消えた。よかった・・・」
HF、HM、HS、HBが黙ったまま、地球家族のほうを見ている。
ミサ「(小声で、父に)ねえ、『ありがとうは?』って言ったほうがいいのかしら? みんな困って、黙っているわ」
父「(小声で、ミサに)ミサはお礼を言ってほしくて火を消したのかい?」
ミサ「違う」
父「だったら、お礼なんか別にいらないじゃないか」
ミサ「そうね」

そのとき、HFとHMの後ろから、隠れていたHCが顔を見せる。
HC「(地球家族に向かって、ゆっくりとした口調で)ありがとう」
地球家族、耳を疑う。
ジュン「え?」
HC「ありがとう」
HC、ひょこひょこと歩いて地球家族に近づき、父の頭をなで始める。
地球家族6人、ほほえむ。
HC、今度はミサのところに行き、ミサの頭をなでる。
HC「ありがとう」
ミサ、涙ぐみながらほほえむ。

そのとき、笑い声が起きる。
HF「ワッハッハッハ」
HC、われにかえったように、なでていた手を止める。
HM「ワッハッハッハ」
HB「ワッハッハッハ」
HS「ワッハッハッハ」
HF「2歳の子供って本当に面白いなあ。突然自分から『ありがとう』と言い出したり、頭なでたり・・・」
HM「ほんとね。今回は心の底から笑えたわ」
HC、照れ笑いをする。
HC「また間違えちゃった」
笑い声の中、ジュン、ミサ、タク、しぶい表情になる。
父「(HCに向かって)いや、間違ってないよ」
HM「え?」
父「もしかすると、間違っているのは、みなさんのほうかもしれません」
全員「・・・」
父「なぜならば、HC君は、心からお礼を言ってくれたからです。世の中のならわしに左右されることのないHC君がお礼を言ったということは、まさにお礼を言う場面だったということになりませんか? ね、みなさん」
全員「・・・」
HS「私も、前からそんな気がしてた」
全員「・・・」
HB「それから、『ありがとうは?』ってお礼を催促するのは、やっぱりおかしいと思う。僕は、お礼を言ってもらうようにお願いするんじゃなくて、自然にお礼を言ってもらえるようになりたい」
HB、握っているペンダントを見つめる。

○飛行機の中

地球家族6人が着席している。
ミサ「この国は、最初はあまり好きになれなかったけど、最後はやっぱり好きになれたわ。これも、最後のお父さんの言葉のおかげね」
父「そうか? 本当に?」
ミサ「本当よ」
父「じゃあ、ありがとうは?」
ミサ「え?」
父「ハハハ、冗談だよ」
ミサ「ちょっと、勘弁してよ。でも、今思ったんだけど、せっかくお礼を言おうと思っていたのに、『ありがとうは?』なんて催促されたら、お礼を言う気がしなくなっちゃうわね」
父「そうだね。HB君やHSさんも、それに気づかずにポイントをいくつも損してきたかもしれないな」
ミサ「やっぱり、心からのお礼が何よりね。ありがとう」
父「ありがとう」
ミサ「(母に)お母さんは? 最後にビシッと言い放ったお父さんをほれ直した?」
母、静かに首を横に振る。
ミサ「え?」
母「ねえ、みんな。お父さんが最後にお説教してHSさんとHB君が納得して、ハッピーエンドみたいになっていたから言い出しにくかったけど、これで本当に良かったの?」
全員「・・・」
母「この星の人たちを憐れむような目で見たり、挙句の果てに地球の常識を押しつけてしまったけれど、私たちの常識って本当にそこまで正しいものかしら? 郷に入っては郷に従えということわざのとおり、旅行先の文化を受け入れようという気持ちを忘れていなかったかしら?」
全員「・・・」
母「お父さんやお母さんだって間違うこともあるんだから、子どもたちみんなも、胸に手をあてて自分なりに考えてみて」
母、目を閉じて胸に手を当てる。父も胸に手を当てる。
ジュン、ミサ、タク、リコも同じように胸に手を当てる。

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