僕の彼女は不発弾 ~そして僕は爆弾処理班~ コメディ

某警察機動隊、爆弾処理班の長谷川。 「爆弾処理のエース」と言われる彼は、ある事件の中で ひとつの爆弾と出会った。 その爆弾の名は「良子」……。 奇異な出会いに戸惑いつつも、次第に惹かれあっていく二人…。 やがて、二人に襲いかかる、悲哀な運命とは!? 人と爆弾、互いの境界を越えたラブストーリー(笑)
白石 謙悟 10 0 0 06/05
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第一稿

『僕の彼女は不発弾〜そして僕は爆弾処理班〜』

登場人物

長谷川(ハセガワ)……某警察機動隊の爆発物処理班の一員。
           署内では「爆弾処理の ...続きを読む
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『僕の彼女は不発弾〜そして僕は爆弾処理班〜』

登場人物

長谷川(ハセガワ)……某警察機動隊の爆発物処理班の一員。
           署内では「爆弾処理のエース」と言われている。
良子(ヨシコ)  ……爆弾。女性。ある事件のなかで長谷川と出会う。
村山(ムラヤマ) ……爆弾魔。通称「レッドボマー」。
           ターゲットは主にリア充。
室伏(ムロフシ) ……長谷川の所属している班の班長。
           娘を溺愛するマイペースなお父さん。


明転。長谷川が登場
爆弾撤去作業に当たっている

長谷川 「(ナレーション)僕の名前は長谷川。警察官だ。
     警察官といっても、僕の仕事は少し特殊で、大概の相手は人間では
     なく、爆弾だ。
     署内では、『爆弾処理のエース』だなんて言われてるけど、正直、
     ハードルを上げられているようで少し迷惑している。
     うちの班長が頼りなくて、仕事の度に胃が痛くなるのが目下の悩みだ」

   撤去作業を終える長谷川

長谷川 「ふう……任務完了」

   無線を取り出す

長谷川 「……こちら長谷川です。解除作業完了しました。
     室伏さん、聞いてます?え?娘さんにお父さん臭いって言われた?
     知りませんよ!加齢臭じゃないんですか?そんなの自分で解決して
     ください!切りますよ!」

   無線を切る

長谷川 「ったく、あの人は……」

   解除したはずの爆弾から、音が鳴り始める

長谷川 「ん……?何だ、この音は……?」

   爆弾に近づき、耳をすます長谷川

長谷川 「ま、まさか!?そんな馬鹿な!解除したはずなのに!」

   慌てて、再び爆弾の解除に戻る

長谷川 「くそっ、何が間違ってたんだ…!くそっ…わからない!
     不味い、もう時間がない!あと……10秒!?」

   解除することが不可能だと悟り、絶望する長谷川

長谷川 「ここまで、か…。室伏さん、すみません……」

   うなだれる長谷川。爆弾の音が止まる
   しばらくの間

長谷川 「……あれ?」

   おそるおそる爆弾を覗きこむ

長谷川 「爆発、しない……?何でだ……?」
良子  「あの……」
長谷川 「だ、誰だ!?」
良子  「落ち着いて……私は怪しい者じゃないわ」
長谷川 「どこから声が…?」
良子  「ここよ、ここ」

   周りを見渡す長谷川

良子  「あなたの、目の前」
長谷川 「(爆弾を見て)……え?」
良子  「驚かないで聞いて。私の名前は良子。爆弾なの」

   間

長谷川 「……最近、仕事続きだったからな。たまには休まないと」
良子  「お願い、信じて。あなたはおかしくないわ」
長谷川 「えーっと……不発弾だったのかな。不幸中の幸いだな。
     とにかく、撤去作業を続けよう、うん。そうしよう」

   良子に近づく長谷川

良子  「駄目っ!」
長谷川 「!?」
良子  「これ以上、私の体を見ないで!」
長谷川 「は、はあ?」
良子  「あんまり見られると、恥ずかしいから……」

   間

長谷川 「(混乱して)どういうことだ、これは……」
良子  「あの、あなた……」
長谷川 「?」
良子  「あなたの名前は?」
長谷川 「長谷川だけど……」
良子  「長谷川君ね…。ねぇ、私を助けてくれない?」
長谷川 「助ける?」
良子  「私、このままだと危険物として処理されちゃう。
     まだ、死にたくないわ」
長谷川 「僕にどうしろって言うんだ…」
良子  「私を匿ってくれない…?」
長谷川 「いや、それはちょっと……」
良子  「お願い、長谷川君!私の話をここまで聞いてくれたのはあなたが初めて!
     あなたとは、他の人にはない運命を感じるの!」
長谷川 「そりゃあ、まともに話を聞く人は少ないだろうな…」
良子  「長谷川君は、何の仕事をしているの?」
長谷川 「僕は…警察官だよ。爆発物処理を主に担当してる」
良子  「そうなの…。道理で…」
長谷川 「ん?」
良子  「私を解体していく時のあの手さばき…。正確で迅速だけど、
     どこか優しさも感じられた…。初めてよ、解体されることに
     喜びさえ感じたのは」
長谷川 「そ、それはどうも…」
良子  「やっぱり、あなたしかいない!あなた以外の人に解体されるのは、
     絶対に嫌!」
長谷川 「そんなこと言われても、僕も正直何がなんだか…」
良子  「私は今、危険な状態なの。いつ爆発してもおかしくない。
     だから、信頼できる人に、こうしてお願いするしかないの…」
長谷川 「…………」
良子  「私は爆弾だけど…誰も傷つけたくない。不発弾のまま、静かに一生を
     終えたい……」
長谷川 「…………」
良子  「長谷川君……」
長谷川 「……わかった。君は、僕が責任もって解除してみせる」
良子  「嬉しい……。ありがとう、長谷川君」
長谷川 「君に尋ねたいことは山ほどあるけど、まずはここを離れよう。
     いつまでもここにいると、班長に不審に思われる」
良子  「ええ、わかったわ」
長谷川 「とりあえず、僕の家に運ぶよ。いいね?」
良子  「は、長谷川君の…家……(照れながら)」
長谷川 「どうかした?」
良子  「な、何でもないわ。うん、お願い」
長谷川 「顔がないから何考えてるのかわかりづらいな…」
良子  「大切なのは顔じゃないわ!心よ!」
長谷川 「ご、ごめん…」

   そんなやりとりをしながら、長谷川と良子がはける
   暗転

長谷川 「(ナレーション)その日、僕は良子と一晩中向き合った。
     激闘の末、彼女が爆発することは二度となくなった。
     彼女は喜んでいた。これでもう、誰も傷つけなくて済む、と。
     表情がわからない彼女が、微笑んでいるように見えた。
     良子は、優しい人だった。いや、爆弾だった。
     仕事が終わり、疲れて帰ってくる僕をいつも暖かく迎えてくれた。
     彼女と話しているうちに、仕事が終わって家に帰る当たり前の毎日が
     とても楽しみに感じられるようになってきた。
     そしていつしか僕は……彼女に惹かれていた」

   ※長谷川はナレーションの間に、良子と色々何かやってほしい

   明転
   長谷川の部屋。長谷川と良子が向かい合って座っている

良子  「ねぇ、長谷川君…」
長谷川 「何?」
良子  「もし、私が…再び爆弾として使われたらどうする?」
長谷川 「何言い出すんだよ、突然…」
良子  「最近、そのことを考えると不安になるの」
長谷川 「良子……」
良子  「その時は長谷川君、私を……」

   言葉を遮り、良子を抱きしめる長谷川

良子  「長谷川君……」
長谷川 「その時は、また僕が解除してやる。何度だって。
     僕は、『爆弾処理のエース』なんだから」
良子  「……ありがとう……」
長谷川 「そうだ、明日、二人で遊びに行こう。仕事も休みだし」
良子  「えっ?でも…」
長谷川 「いつも家の中じゃあ、退屈だろ?」
良子  「でも私は、こんな姿だし…」
長谷川 「姿なんて関係ないよ。好きな人と一緒に遊んで何がいけないんだ」
良子  「長谷川君……今、何て?」
長谷川 「……好きだ、良子。僕と付き合ってくれ」

   静かに向き合う二人

良子  「……はい」

   再び良子を抱きしめる長谷川
   暗転

   明転
   村山が登場。ちょっと危ない様子でキョロキョロしている

村山  「リア充…リア充…リア充…!この世は、数多くのリア充で満ちている…。
     許せない…。奴らは存在してはいけない…!
     神は言っている。奴らを滅ぼせと」

村山  「(ナレーション)私の名は村山。『レッドボマー』という通り名で巷を
     騒がせている爆弾魔だ。私の主なターゲットはリア充。
     公然の場で幸せを振りまく奴らを文字通り爆破するのが私の使命…!」

村山  「むううぁ!私のリア充センサーが反応している!……いる!
     この近くに、リア充がッ!」

   物陰に隠れる村山。長谷川と良子が登場

長谷川 「ふぅ、少し休憩しようか」
良子  「うん」
長谷川 「久しぶりの外出はどう?」
良子  「色んな景色が見れて楽しいわ。でも、ごめんね、長谷川君」
長谷川 「何が?」
良子  「……重いでしょ?私…」
長谷川 「ははは、全然。これでも警察官だからね」

   イチャイチャする二人

村山  「おかしい…何なんだ、奴らは。確かに凄まじいリア充オーラを放っているが、
     あんな特殊なカップルは見たことがない。
     ……くくく、面白い。次のターゲットはあいつらだ」
長谷川 「あ、そうだ。良子、ちょっと待ってて。いいもの買ってくる」
良子  「うん」

   長谷川がはける
   見計らって、村山が物陰から出てくる

村山  「ふっふっふ…」
良子  「!?」
村山  「リア充に、裁きを……」
良子  「誰、あなた!?」

   良子を乱暴に掴む村山

良子  「きゃああああ!」
村山  「大人しくしろ。今からお前は、私に爆破されるのだ」
良子  「何ですって…!?」
村山  「くっくっく…」

   良子(爆弾)を開く村山

良子  「いやああっ!」
村山  「こ。これは…!なるほど、そういうことか…。丁度いい」

   良子を持ち去ろうとする村山
   長谷川が戻ってくる。手にはアイスクリームが二つ

長谷川 「お待たせ、良子……何してんだお前ぇぇぇ!」
村山  「見つかったか…。逃げるッ!」
良子  「長谷川くうううん!」

   村山と良子がはける

長谷川 「待てええええ!良子おおおぉぉぉ!」

   長谷川がそれを追うようにはける
   暗転

長谷川 「(ナレーション)結局、奴には逃げられてしまった。
     僕は、自分のふがいなさを呪った。同時に、良子がいない日々の生活に
     絶望した…。僕の中で、いつの間にか彼女が、こんなに大きな存在に
     なっていただなんて…。
     良子のことは、誰にも話せなかった。話しても、信じてもらえるはずがない。
     一人で彼女を必死に探し続けたが、一向に足取りは掴めなかった。
     しかし、あの日…。まさか、あんな形で再会することになるなんて。
     信じたくはなかった……」

長谷川 「こちら、長谷川です。現場に到着しました。今から、撤去作業に
     取りかかります」

   明転
   長谷川が登場。爆弾(良子)が設置されている
   長谷川がそれに気付く

長谷川 「お、お前…!?良子!?良子じゃないかっ!」
良子  「長谷川…君……」
長谷川 「良子、お前、どうして……?」
良子  「私をさらったあの人…爆弾魔だったの。あれからあいつのアジトに
     連れて行かれて…中身をいじくられたわ」
長谷川 「あいつ……何て事を!」
良子  「せっかく長谷川君が私を無害な体にしてくれたのに…ごめんなさい」
長谷川 「良子のせいじゃないよ!悪いのはあいつだ!」
良子  「…………」
長谷川 「安心して。僕が必ず助けるから」
良子  「ありがとう…」
長谷川 「じゃあ、開けるよ、良子……」
良子  「うん……」

   良子(爆弾)を開く長谷川

長谷川 「こ、これは…!」
良子  「どうしたの…?」
長谷川 「なんて複雑…それでもって、精密なんだ…。
     ここまで組み込まれた配線、見たことない……」
良子  「…………」
長谷川 「でも、絶対に解除してみせる。絶対に!」
良子  「信じてるわ……長谷川君」

   ペンチでコードを切る長谷川

良子  「きゃあああッ!」
長谷川 「良子!?どうしたんだ!?」
良子  「わ、わからない…。ただ、長谷川君がコードを切った途端に、
     痛みが……」
長谷川 「そんな……」
良子  「前の時は、こんなことなかったのに……」
長谷川 「くそっ、どうすればいいんだ……」
良子  「…………」
長谷川 「ちょっと待ってろ、何か別の方法を……」
良子  「続けて、長谷川君」
長谷川 「良子!?」
良子  「私なら、大丈夫だから。爆発する前に、早く!」
長谷川 「でも…」
良子  「前にも言ったでしょう?私のせいで、誰かが傷付くところなんて
     見たくないの」
長谷川 「できないよ!何で、良子一人が苦しまなきゃならないんだ!」
良子  「馬鹿!」
長谷川 「!?」
良子  「思い出して…あなたは爆弾処理班でしょう?罪のない市民を守るのが
     仕事だって言ってたじゃない」
長谷川 「…………」
良子  「あなたが躊躇っていたら、大勢の人が傷付くかもしれないのよ。
     そんなの、私は耐えられない」
長谷川 「良子……」
良子  「さあ、早く。私、長谷川君になら構わない。全然、苦しくないわ」
長谷川 「くそぉっ…!」

   再びペンチを手に取る長谷川

長谷川 「ごめんな……」

   一つずつコードを切っていく

良子  「わ、私ね……。何で自分は爆弾なんだろうって、ずっと思ってた…。
     こんな、人を傷つけることしかできない存在にした神様を、何度も
     恨んだりしたわ……」

   涙を堪えながらコードを切り続ける長谷川

良子  「で、でも……こうやって、長谷川君と出会えて、楽しい時間を過ごせた。
     そう考えたら…ただ爆発するだけの他の爆弾より、ずっと幸せだなって…。
     だから……本当に、ありがとう……」
長谷川 「やめろよ……これでお別れみたいな言い方するなよ」
良子  「…………」
長谷川 「ほら、次の一本で最後だから。終わったら、一緒に返ろう。な?」
良子  「…………」
長谷川 「良子?おい、良子?」
良子  「……大丈夫……早く、最後の一本を……」
長谷川 「お前、本当に大丈夫なのか……?」
良子  「ええ……。だから、お願い……早く……!」
長谷川 「う……うおおおおぉぉぉっ!」

   最後のコードを切る

長谷川 「よし、これでもう大丈夫だ!良子、終わったぞ!」
良子  「……長谷川君……」
長谷川 「どうした!?」
良子  「私……生まれ変わったら…今度は、人間になりたいな……」
長谷川 「な、何言ってんだよ……」
良子  「そしてまた……長谷川君と…恋がしたい」
長谷川 「良子は良子だよ……。今のままでも、いいんだ……」
良子  「こんな私を愛してくれて…本当に……ありが……と……う……」

   少しの沈黙

長谷川 「良子…?おい、返事しろよ……おい……」

   いくら呼びかけても、返事はない

長谷川 「良子……ッ!」

   強く良子を抱きしめる長谷川

長谷川 「助けてください……助けてください!」

   ※BGM:平井堅 「瞳をとじて」

長谷川 「うわあああああああ!」

   泣き崩れる長谷川

長谷川 「ごめんな、良子……本当にごめん。お前を守りきれなかった。
     でも、約束する。お前をこんな目に遭わせた犯人は絶対に捕まえてやる。
     (立ち上がり)だから、見ててくれよ!」

   客席に向かって決めポーズを取る長谷川
   暗転

   明転
   長谷川と室伏が爆弾撤去作業を行っている
   長谷川が、爆弾を解除している

室伏  「……みたいな話を考えてみたんだけど、どうこれ?」
長谷川 「どうでもいいです。っていうか、設定に無理があるでしょ」
室伏  「娘は気に入ってくれたんだけどな〜。ハセちゃんって面白いね!
     って言ってたよぉ」
長谷川 「はいはい、よかったですね」
室伏  「うん、よかったよぉ〜。あ、写真見る?」
長谷川 「結構です!あぁもう、いいから静かにしてくださいよ……」

   照明F・O。暗転

                                 完

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