図書館の球体 学園

美大の、日本画科と油画科の学生同士の喧嘩です。 このシナリオを元に描いたネームをこちらに掲載しています。 https://daysneo.com/works/531a7bba6fc19ae95ee339e02832345d.html
木谷日向子 7 0 0 10/04
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第一稿

1○図書館
図書館員A「……あー、すみません。図書館の本持って出てませんか?」
春「いえ、持ってないです」
図書館員「すみません。スマホが反応しちゃってるのかもしれないですね ...続きを読む
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1○図書館
図書館員A「……あー、すみません。図書館の本持って出てませんか?」
春「いえ、持ってないです」
図書館員「すみません。スマホが反応しちゃってるのかもしれないですねー。このままどうぞ!」
春「すみません。今回で3回目なのに」
花見「チッ」
 舌打ちしながら春一郎を睨む花見。
 驚く春一郎。

2○大学 大教室
 机に突っ伏している春。
 春「まじ最悪だったー。何あれ……」
 市川「春ちゃんまた生理前の女子みたいになってんじゃん。大学入ってから繊細さマシマシになってない?」
 春「俺はいつだって男だ。しかも鶴間、横尾の前でそれいうのセクハラ」
 市川「あ、わり。ふみにー」
 市川、片手を立てて横尾に笑顔で会釈する。 
 横尾「いーよー。あたしはいつだって作品の肥やしになればと思って、どんなゲスい会話でも摂取しようと思ってっからー」(ズズズといちごミルクを飲む)
 市川「すげーや! さすがふみにーはそんじょそこらの女とちげーな! かっけぇ!」(さすが俺らの友じゃん)
 春「……図書館のスタッフの中に明らかに司書じゃなさそうなロン毛のハーフアップの背ぇ高い男いんのよ。知ってる?」

3 竹内「ロン毛?」
 春「多分あいつ正規じゃなくて、バイトか契約だと思うんだけど。俺がいっつも図書館のカウンターに引っかかんのよ。ぴこぴこ電子音鳴ってさー」
 友達の神妙な顔。
 「別の図書館員のお姉さんに引き止められて、本借りてないまま持ち出してないか確認されて、持ち出してないって伝えると、カウンターが最近調子悪いみたいで、スマホに反応してるのかもですねって通してくれんの。それが3回目。で、そのお姉さんの隣にいるロン毛にその度舌打ちされて睨まれんの。普通に聞こえっし見えてっからな!」
 市川「何それ、春ちゃん悪くなくね? 図書館側の問題じゃんね。そのロン毛スタッフがおかしいんじゃん。てか他になんかそのスタッフと絡みあったりしたの?」
 春「無(ね)え。図書館でカウンター通る時ぐらいしか近寄らねえもん。そいつ苦手すぎて、本借りる時は自分で機械通すか、他のカウンターで借りてるもん。あそこ通りたくねえけど、4限の授業の教室に一番近いし、それまでの空き時間図書館で過ごすのがベストなんだよなー。かーやってらんねー」
 竹内「まー。図書館の問題だとしても、毎回引っかかってぴこぴこ鳴らすやついたら、立ち止まって顔覚えるし、イラついたんじゃないの」
 春「利用者に怒りあらわにするとか、図書館員失格だろ」
 市川「まーモテ期だと思いなよ。やっぱ油絵科受験者の中で、一番デッサンが上手かった辻本春一郎は違うなー! 図書館スタッフにも目ぇつけられてんのかよ。俺も可愛い司書さんに目ぇつけられてぇ!」
 市川、春の背中を叩いて鼓舞する。

4 春「図書館の知らんヤンキーみてぇなロン毛男にモテても何も嬉しくねえし……。(リアルでやばいやつひっかけんの、高校で終わりたかったんだけど)奈保美の顔。目開けて神妙な顔の春。
 再び机に突っ伏す。
 市川「関わんなきゃいいじゃん」
 春「俺も会うたび『かかわらんとこ』って思ってるけど、図書館利用してぇじゃん。学生の権利やん」
 横尾「ねー。辻元くん。そいつ銀髪じゃなかった?」
 ぽっちゃりして小柄な横尾ふみ(20)がいちごミルクパックを飲みながらぼんやりと問う。
 春「あー……確かそんなん。なんか変な色の髪だった」
 市川「図書館員って髪色変だったら怒られねえのかよ」
 横尾「あたしそいつ知ってる。日本画科の花見ってやつじゃない」
 春「はなみ?」(背後に桜の景色)

5 机に伏していた顔を上げる。
 市川「ふみにーロン毛が誰か知ってんの」
 横尾「だって、あたし中国語の授業一緒だもん。日本画科の花見玄くんだよ。あたしらと同じ2年生よ」
 春「あいつ学生なん!!」
 横尾「授業一緒なだけで話したことはないんだけどね。背高いし、髪色派手だから目立つけど、授業は真面目に受けてるかな。静かで落ち着いてる感じだよ。図書館でバイトしてるって聞いたことある。結構真面目なイメージだけどねー。よく夏の花の絵を描いてるよ。蓮とか沙羅双樹とか。実家が寺なんよ」

6 竹内・市川・春「寺!?」

○アトリエ
横尾M「でも寺の息子で、いずれ寺継がなきゃいけないから、大人のお店行ったり、派手なクラブ出入りして女遊びしてるっていう噂は聞いたことあるかナ-。親しい間柄じゃないから、真実わからんけど」
竹内M「そ、あんま知らん人の噂話広げんの、よくないからやめな」(書き文字)
 むしゃくしゃしながら体よりも大きいキャンバスの前であぐらを描きながら制作する春。
 春「実家、寺? なのになんで銀髪でロン毛なんだよ。わけわかんねー。何でなんも接点ねえ俺に目ぇつけてきてんだろ。課題進まなくてイラついてんなら、仏壇でお経あげてストレス還元しろや」
 ガシガシ言いながら動く筆。
春「あーあ、なんか気に入らねえ絵できちまった。やっぱ精神状態悪いと思うようにいかねえな」
花見「ほんと、クソみたいな絵だな(ボソ)」
春「え?」

7 振り返ると、煙草を咥えた花見が上半身だけつなぎを脱ぎ、半袖シャツになってズボンのポケットに両手を突っ込んで立っている。
春「お前……」
 春が立ち上がると、花見は真顔で何も言わずに去っていく。
 春、呆然とする。
春「まじ、何なんあいつ……」
 花見の背が闇に溶けていく。タバコの煙だけが漂っていて、座ったまま正面を向いた春を覆う。

8○文化祭展示室
油絵画科「最初にこの第一ホールの展示を学生課に予約取ってたの俺らなんすけど、なんで日本画科が使ってんすか?」腕を組んで怒りながら。
日本画科「は、黙れや。ここは暗闇の中に上手い具合に照明が当たってる感じとか、日本画の展示にぴったりやねん。他の展示室で試してみたけど、ここが一番具合が良かったんや。絵のためを思ったら、日本画科に譲るんが画家として筋ってもんやろ」
油絵「ふざけんな! そんな理屈通ると思ってんのか! 社会人になってもそんなこと言ってたらお前ら終わりだぞ。事前に許可取ってた側が使えるに決まってんだろが」
日「はっ、わてらは社会人なんかならへん。画家の卵の集まりやろうが。クリエイターはクリエイターらしく、臨機応変に対応せんかい。将来急にギャラリーが使えんくなった時の予習になるやろ」
油「てめえ、舐めんなや!!」
油が日の胸ぐらを掴もうとする。
春、静かにやってくる。「どしたん?」キャンバスを抱えながら。

9油「あ、辻元くんいいところに! おい、日本画! ここにおわすのは油絵科のエース、辻元春一郎くんだ!!」
手で春をひらひら輝かせる。
真顔の春。
油「頼むよお。辻元きゅん。君の画力でこいつらわがままな日本画科を黙らせて帰らせてくれ!! 先に油絵学科場所取りしてたところに、後から日本画科が予約入れてきて、今渋滞中なんだよー」
春「は、まじ、、、、」(めんどくせーことに巻き込まれた。寄んなきゃ良かった)
春M「面倒ごとは嫌いなんで、適当にやり過ごして、隙見て逃げよ)
日「は!黙れや! そしたらうちのエースも投入するわ! おい花見! こっちゃこい!」(見てろよ、激強だかんな(書き文字)

10花見(声)「めんどくせえ事に関わりたくねえから、そっちで済ましてくれや。俺関係ねえ」(画面全体に平筆を塗って上半身裸にタオルを首にかけている) 
日「後でインドカレー奢ったる。大学からひと駅離れた超美味いって有名な店。しかもかわいー女の子いんの」(花見の耳元で囁きながら)
花「花見、いっきまーす」気だるそうにひとを押し分けて前に出る花見。ズボンに両手を突っ込んで脚を前に出す。

11油(背ぇたか!!)恐怖で顔を青ざめさせる。(大コマ)
花「あー」真顔で。
春「あ」気まずそうに。少し花見の影がかかっている。

花「誰かと思ったら、女の股開いてる裸の絵ばっか描いてる変態少年か」
春「少年?」ぴくりと反応する。

12春「俺今年で二十歳なった青年なんすけど」
花「へー。辻元くんだっけ。君さあ、今までの経験人数何人? あ、大人のお店はノーカウントで」
春「は? え……、本気のふたり」(指を出す)
花「あーごめん。俺4人」(笑顔で四本指)
春「経験人数でマウント取られたん、初めてなんだけど」(怒りマークで笑顔)
13花「お前結構有名よ。油絵画科に、どんな課題出されても裸の女で勝負してくる学生がいるって」
春「だからなんなの? 俺が裸婦画描いてることが、なんかお前の日常に影響あんの?」
花「お前の絵、ちょっと見たことあるけど、鼻につくんだよな。女のこと、自分は全部わかってますって感じがありありと出てて。俺は女の奥ゆかしさとか、恥じらいの中に生まれるエロスを描こうと苦心してるってのに」
春「……だから? そんなことで、いっつも俺のこと嫌味な顔で睨んできてたんだ」
花「あ?」

14春「俺も知ってるよ。お前のこと。図書館の二号館のカウンターでバイトしてる花見玄だろ」
春、花見を下から睨み上げて「俺はお前の描いてる絵なんか興味ねぇし、見たこともねぇけど」

15春、花見1枚「俺がセックスする時の女の絵ぇ描いて何が悪いんだよ!」
油「ちょ、ちょ、ちょっと辻元くん! 大勢の人がいる前で大声でセッ、、、」

16花、真顔。 一拍置いて怒りでニヤケ笑い。
一度春の胸ぐらを掴むが、春の真剣な顔を見て、投げ捨てる。
花「お前の絵は、昔の女への執着が強いつまらねえ絵だ。今まで抱いてきた女と、抱けなかった女への妄想が入り混じってる。歪んだ性欲ダダ漏れなんだよ。見ていて不快だわ」
尻餅をつく春。
油、春を助ける。
日「おい、花見!」
口を拭う春。
花見のうなじ。

17○アトリエ
 壁に立てかけた大きいキャンバスに向かって筆を動かす春の手。
 悩ましげな顔。(俺の絵は、昔の女への執着と、妄想の入り混じった不快な絵……か)
 筆を動かす手が止まる。
 春、ため息をつく。
 春「だってこれしか描きたいものが今ねえじゃん。なんだよ、ここから花の絵描いたり、空の絵描いたり、モチーフ変えてみろってことか? できねえよ。興味ねえもん。」
 春、再び筆を持つ。
 筆を動かす手が早くなる。
 
18白目になっている春、背景に女たちの裸が走馬灯のように流れてゆく。
 奈保美の後ろ姿。
 筆をばんっ!と叩きつけるようにキャンバスに置く。
 春「あーまじ腹立つ……怒りぶつけながら描くのよくねえわな。」

19 汗まみれになり、エクスタシーに達したような春の顔。
 「やっぱ女の裸描くのが、一番気持ち-もん」歪んだ笑顔。

20○文化祭展示室
M「学祭当日」
油絵画「結局展示室は、油絵科と日本画科の共同で使うことになりましたね」
日本「まあ、それがいっちゃんいい方法やからね。あとで油絵科の島根くんと、ゲーセンでマリカで勝負しまして、4回戦って2対2ぃで引き分けやったから、こうなりましてん」
嫌そうな顔をしながらも、向き合ってコーヒーを同時に飲む油絵科と日本画科。
市川「なんだかんだ言って丸くおさまって、油絵科と日本画科もちょっと仲良くなるきっかけになって、良かったんじゃねえの」呆れ顔。
春「興味ねー。俺は俺の絵が描ければそれでいいから」
市川「あ、これ件の花見玄の絵じゃね? 春ちゃんみてみ」
春「え、どこ」ぴょんぴょんする春。
横尾、手で人ごみをかき分けて「辻元くん、こっちから入れるよー」
春「あー、横尾あんがと」
横尾「辻元くん背ぇ低いからさ。背伸びしても見えないっしょ」
春「うっせ💢 そのセリフは余計だ」

21横尾のおおった手をくぐって中に入る。
人混みから顔を出す春。
 春、絶句。

22 慧可断臂図を模したような、花見の日本画(絵は映さず、ざわつく観衆と春の顔だけ)
 徐々に落ち着いてくる。

23 春、ひとごみから離れて後ずさる。とんと、背中に衝撃。
 ふと振り返る。高い背。
 花見、一拍置いて、「あれ」
 春「花見じゃん……」
 花見 振り返る花見、すごい形相をしている。徐々に落ち着いてくる。「あー……」
 花見「お前の絵見たわ」
 春「え」

24 花見「絵ってギャグかよ」
 春「は? 単純に驚いただけだわ……」
 花見「な……んか、よかった」頭ゴシゴシ片手でかきながら。
 (回想)人がまばらにいる。立ち尽くす花見。様々な女たちが連なり、空の雲や地に広がる草花のようになっているのに驚いて口を開けている。
 春、真顔。
 春「どうよかった?」さらに春から目をそらして
 花見「あー……まあ」
 「勃起した」
 口に手をあて、顔を赤らめて汗で濡れた花見の顔。
 春、目を見開き、ぶるりと震える。そして「はは」と笑う。

 ◯校舎・裏
 ◯空・煙草のけむりが浮いている。
 春「花見の絵も良かったわ。なんか慧可断臂図みてーで」

25 ふたり並んで座っている。春、足を広げている。花見立っている。
 花見「お前ただでさえちびなんだから、並ぶときは立てや……」
 春、たばこを指で口から離し、花見をみる。
 「あれ、何の画材使って描いたん」
 花見「あー、普通に炭と岩絵具と、隠し味に精子ぶっかけた」
 春「ぶふっ」むせる春。
 春と花見の背中。
 花見、ちらと春を見下ろす。

26 花見「……誰かから聞いたかもしんねーが、俺の実家は寺だ」
 春、顔をあげる。
 花見、壁に腰をつけ、かるく背を曲げて煙草をゆびに挟む。
「俺さぁ、大学卒業したら、寺継がなきゃいけなくて。大学生が、人生でほんとに好きなことに挑戦できる最後の時間なんだよね」
春「……長男なん?」
花「んいや、次男」
春「なんで次男なのに寺継ぐん。あ、上の兄貴がだらしねぇとか」

27花、驚いた顔で。「てめぇ頭いいな……。『勘のいいガキは嫌いだよ』って、俺の好きなマンガに出てくるセリフ言いてぇ。そ。上の兄貴が寺継ぐはずだったんだけど、女に孕ませて、夜逃げしたんよね。だから残った俺に、その役がまわったの。マジとばっちりだわーはは」
花見、笑いながらしゃがむ。
春「兄貴のこと、恨んでね-の」
花「は? 恨んでんに決まってんだろ。未だに兄貴ころしてーもん」
花、煙草をくわえながら瞼を伏せる。(アップ)
春、煙をみつめて、神妙な顔。
花「……服着た女にさ」
春「あ?」

28花「服着た女に、いちばん美を感じんだよね」まぶたを開ける。「だからお前にいちゃもんつけたくなった。裸の女ばっか描いてちやほやされてるし。俺なんか大学4年しかないのに、まだ描きたいものも明確にしてなかったのに、描きたいものがはっきり決まってて、きらきらしてて。イライラした。そんなお前と、お前に嫉妬してる汚ねぇ俺自身に」
春「……きらきらなんかしてねぇよ。どろどろだよ。俺の絵みりゃ、わかんだろ。お前言ってたじゃん。今まで抱いた女と、抱けなかった女への執着が入り混じった絵だって」
花「え? そんなん言ったっけ。忘れた」ケロリとした顔で。
春「おい💢 あの後すげぇ気にしてたんだけど」
花「ま-言ったかも。気にしてたんなら謝るよ。ごめん。でも、その時の俺にはそういうふうに見えたってことだから、鑑賞者の意見として、ちゃんと受けとめたほうがいいよ」
春「はあ。まあそうだけど」

29花「俺は、自分が何者でもなかった時に描いた絵を残しておきたいって気持ちが強かった。だから今と地続きで、アーティストとして未来あるお前に嫉妬してたところもあったのかも。「最近描けなくなってたのもあったからね」
春「未来ねえよ。描き続けなきゃ。壊れない程度にな。絵の道ってさ。乗るのは簡単じゃん。でもそこからずっと止まらない列車に乗ってるみたいな感覚になる。やめたら終わりだって、走り続けてるやつ見て嫉妬して、手を動かし続けてないと、評価され続けていないと、描いてる意味ねぇって。一種の強迫観念なんだよ。絵描きはみんな。だから性格悪いやつ多いの。俺や花見みてぇに」
爆笑し合うふたり。

30花「やっぱお前おもしれぇな。図書館で目ぇつけといてよかったわ」
花「俺さ。ほんとは将来、映画監督か漫画家になりたかったんだよね。でも住職になったらなれねえじゃん」
春「……寺で作ってりゃいいじゃん。兼業で」
花「ははっ、そうできたらいいんだけどね。まーむずかしいかな」
春「俺もあったよ。描けなくなった時。高校んときな。あれさぁ、誰でもくんのよ多分。描けない、描けないってなんじゃん。そうなったときに、公園散歩して、ゲーセン行って、カラオケ行って、アニメ見たり音楽聞いたり、本やマンガ読んだりして、好きなもん食って、空見上げんの。そしたらアラビックリ。また描けるようになんのよ」
春、手のひらを目の前に出して笑う。
花、「……いい話聞いたわ。肝に命じとく」
花も、手を目の前にかざす。神妙な顔。「今はすがるもの、これしかねーもんな……」
花「ところでお前さぁ」
春「なに」

31花「最近セックスしたのいつ?」
たばこを吹きだす春。
花「俺、最後にすきになった子と別れて以来、してないのよ」
春「その子はどんな子だったの」
花「あー本番ありの風俗嬢。何回か寝て、結婚申し込もうと店行ったら辞めてた」
春「江戸時代の身請け話みたいなことしてんな」
花「だから、またするようになればストレスとか消えて絵も良くなんのかなって」

32春「セックスしたかった女はいたけど」
花「えー未遂で終わったんだ」
春「未遂っつーか、まあ……」
奈保美が服脱ぐシーン。回想。

34花「その人にまた会いたいとかないの」
春「いや、もう連絡先も知らない年上のひとだったからね……。てか変なこと思いださせんなよ」
「あー、もう恋愛とかしないで、絵だけ描いて生きていきてぇわ」苦笑いしながら。
花「闇ふけぇな、おい……」(空にセリフと煙浮く)


35◯図書館

図書館員A「……あー、すみません。図書館の本持って出てませんか?」
春「いえ、持ってないです」
図書館員「すみません。スマホが反応しちゃってるのかもしれないですねー。このままどうぞ!」
春「すみません。今回で6回目なのに」
花「ブッ(笑い声)」
春、花見を見てわらう。
スキンヘッドに、トライバルの入れ墨を頭から肩にかけて入れた花見。


36☓   ☓   ☓
(回想)食堂「おい、花見お前……なんだよそのあたま」
花「モード系の坊主がいてもいいっしょ」
春「寺どうすんの」
花「激怒した親父に勘当された。入れ墨落とすまで家帰ってくんなって」
春、唖然。「ここにも頭おかしいやつがいたよ……」

37花、薄笑い。「俺にも、もうこれしかねえわ」
目の前で広がる花見の手。

☓   ☓   ☓

38春、笑いながら図書館を出てゆく。(了)

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