わしと太陽王子 ドラマ

落ち目の漫画家・不和花月(43)は、編集長の東山(39)から最後通告を受ける。過去に受けた中傷から漫画を描く意味を見失い、自暴自棄になる不和。しかし、そんな不和に寄り添おうとする正義の味方・太陽王子が不和を再起させる鍵となる。
浦崎一也 50 0 0 07/01
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第一稿

【登場人物】
不和花月(43)(8)漫画家
太陽王子(10)正義の味方
東山(39)講演社漫画部編集長
小学生
消防隊員



〇講演社ビル・外観
   高層ビ ...続きを読む
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【登場人物】
不和花月(43)(8)漫画家
太陽王子(10)正義の味方
東山(39)講演社漫画部編集長
小学生
消防隊員



〇講演社ビル・外観
   高層ビル。
   スーツ姿の人、ベレー帽を被った人が行き交う。

〇同・漫画部編集長室・外
   漫画部編集長室と書かれたプレートが入口に掛けられている。

〇同・同・内
   東山(39)は豪華な椅子に座り、机の上で手を組んでいる。
   対面上にあるソファにはテーブルに足を置いて東山を睨んでいる不和花月(43)。
不和「おい、東山。もういっぺん言うてみい」
東山「ですからあなたとの契約を打ち切ると言っているんですよ、不和先生」
不和「はあ? お前誰のおかげでここまでやってこれたと思ってんねん」
   不和、目線を棚に向ける。
   棚には「黄金の海 作・不和花月」と書かれた漫画やトロフィーが並ぶ。
東山「確かに小さな出版社だった我が社がここまで大きくなったのには不和先生の力があったからだと思います」
   鼻で笑う不和。
東山「しかし長編黄金の海が完結して以降、あなたの作品はどれも読者の心を掴む事ができず、打ち切り続き。そしてここ数年はまともに漫画を書こうとしていない」
   不和、目を逸らし舌打ちする。
東山「おまけにギャンブルで多額の借金、他の漫画家に悪影響が出る前にあなたには舞台から退場して欲しいんです」
   不和、東山に近づく。
不和「俺の作るもんはおもろい。おもんないのはお前らや」
   東山、不和を見据える。
東山「あなたは何を伝えたいんですか?」
   不和、編集室を出て行こうとする。
東山「ああそうだ」
   不和、足を止める。
東山「今度の特大号で読切の枠が一つ空いているんですよ。退職金っていう訳ではありませんが、もし描きたければ近日中に一報を」
   不和、勢いよく扉を開け出ていく。
   東山、棚に目を向ける。
   棚の奥に若かりし頃の不和と東山が写った写真がある。

〇公園・内
   子供達が砂場や滑り台で遊んでいる。

〇同・ベンチ
   ベンチに座りタバコを吹かす不和。
太陽王子の声「どうしたの?」
   不和、声のする方を怪訝な表情で見る。
   太陽王子(10)が立っている。
   太陽王子の顔は黒い靄に覆われて見えない。
不和「どうしたやない、どっかいけ」
   太陽王子、不和の隣に座る。
太陽王子「僕は正義の味方だから困っている人を見捨てられない」
   舌打ちをする不和。
不和「お前はわしの幻覚やろ。わし以外誰にも見えへん」
太陽王子「そうだね。だからこそ君の事をよく分かってる……花月、もう一度漫画を描こう」
不和「黙れ」
太陽王子「君は怖れている。読者の期待に応えられず落胆されるのを。でもそれじゃあ君が伝えたかった事は誰にも伝わらないよ」
不和「うっさい」
   通りすがりの小学生がベンチ横のゴミ箱に漫画雑誌を捨て去っていく。
小学生「つまんね」
   捨てられた漫画に目をやる不和。
不和「しょせん漫画なんか消耗品や。おもろいもん描こうがすぐに忘れ去られる。そんなもん意味ないやろ」
太陽王子「違う、意味はちゃんとある!! 読者だけじゃない、君にも」
   不和は立ち上がり怒鳴る。
不和「いいかげんにせえ! 幻覚の分際でわしにとやかく言ってからに。何が太陽王子や、目ざわりなんじゃ、はよ消えろ」
   太陽王子から涙が零れ地面に落ちる。
太陽王子「言われなくても僕はもうすぐ消える。でも君の口から言われるとやっぱり悲しいよ」
   不和、太陽王子から目を逸らす。
   もう一度太陽王子に目を向けると、太陽王子の姿はなくなっている。

〇不和家・外観(夜)
   古民家。不和という表札が掛けられている。

〇同・作業室(夜)
   本棚には漫画や資料がぎっしり並んでいる。
   不和、作業机の前に立ち、ペンを見ている。
   恐る恐るペンを取る。

〇(フラッシュ)編集室
   大量の読者アンケートの前で茫然としている不和。
   アンケートには「つまらない」、「がっかり」などの辛辣な言葉が記載され
   ている。

〇元の作業室(夜)
   不和はペンを落とし、奥歯を噛みしめ
   る。

〇公園・ベンチ
   不和、ベンチに座りタバコをふかす。
   子供がまばらに遊んでいる。
不和「ほんまに出てこんのか……あいつ」
   不和、タバコを地面に叩きつける。

〇住宅路
   不和が暗い表情で歩いている。
   突然消防サイレンが聞こえてくる。
   音のする方に不和が目を向ける。
   目線の先、空に煙が上がっている。
   不和、急に走り出す。

〇不和家・外(夕)
   家の前に消防車が止まっており、やじうまが様子を伺っている。

〇同・作業室(夕)
   作業場の半分が焼け焦げている。
   消防隊員が立ちつくす不和に声を掛ける。
消防隊員「原因は漏電によるものでした。幸いボヤで済みましたが、お気をつけください。書類などの提出はまた後日に。では」
   消防隊員が出ていく。
   不和、焦げた本棚を触る。
   本棚から焦げた落書き帳が床に落ちる。
不和「これはわしがガキの頃の……」
   不和、落書き帳を手に取りページをめくる。
   不和の表情が強張る。
   落書き帳には太陽王子にそっくりな絵が描かれていた。顔は焼け焦げていて見えない。
不和「お前、こんな所におったんか」

〇回想・学校・教室
   不和花月(8)が楽しそうに漫画を描いている。
   不和の周りにはクラスメイトが集まり、驚いたり笑ったりしている。
   不和、落書き帳を片手にクラスメイトに語っている。

〇元の作業室(夕)
   夕日が部屋に差し込む中、不和花月(43)は落書き帳をじっと見ている。
不和「おもろいこと……笑いを伝える。それがわしの漫画……やったな」
   不和、携帯を取り出し、電話を掛ける。
不和「おう、東山。特大号の読切、わしに描かせろ」

〇不和家・同(夜)
   不和はペンを手に取り、力強く握る。
   紙にペンを走らせ始める。
不和「お前は消えてへん。今ここで生まれるんや」
   不和、太陽王子を描こうとするが、上手く掛けず紙をくしゃくしゃに丸める。
不和「違う! 思い出せ、わし!」
   不和、机に前のめりになる。
   時計の針が進んでいく。
   丸めた紙は山となる。
   イラつく不和は唸り、タバコに火をつけようとするが、
   部屋の現状を一瞥しタバコをしまう。
   何度も何度も紙に太陽王子を描き続ける不和。

〇同・同(朝)
   雀の鳴き声が作業室に響き、朝の日射しが窓から入りこんでくる。
   日射しは作業机に差し込んでくる。
   不和、机につっぷし眠っている。
   不和の手は墨で真っ黒、ペンは握られたまま。
   寝言を言う不和。
不和「わしの漫画はおもろい」
   朝の日射しがスポットライトの様に机の上の紙を照らす。
   紙には笑顔の太陽王子が描かれている。

<終>

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