とある就活奮闘記 日常

それぞれの夢に向かう大学4年、就活生達。 苦言を漏らしながらも就活に励む者。 夢を追い、我が道を貫こうとする者。 公務員を目指し、人の為に尽くそうとする者。 ……そして、独自の価値観で奇抜な行動に出る者。 青春の1ページに刻まれる、若者達の淡い日常。
白石 謙悟 7 0 0 06/05
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第一稿

『とある就活奮闘記』

キャスト

佐藤(サトウ)…大学4年生。主人公

高田(タカダ)…大学4年生。佐藤の友人

須賀(スガ) …大学4年生。ミー ...続きを読む
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『とある就活奮闘記』

キャスト

佐藤(サトウ)…大学4年生。主人公

高田(タカダ)…大学4年生。佐藤の友人

須賀(スガ) …大学4年生。ミージシャンを目指す

中尾(ナカオ)…大学4年生。警察官を目指す

女子大生




 シーン(1)

 【大学校外】

   ギターを抱え、自作の歌を弾き語っている須賀
   そこへ、スーツ姿の高田が通りかかる

高田 「またギター弾いてんの?」
須賀 「(高田に気付き)おう、高田。お疲れ」
高田 「寒いのに、よくやるなぁ」
須賀 「外の方が気分が乗るんだよ。一曲聴いてく?」
高田 「いいよ。今日はもう疲れた」
須賀 「就活?」
高田 「そう。面接だったんだ。多分駄目だなー、手応え的に」
須賀 「ご愁傷様」
高田 「まぁ、大して行きたいところじゃなかったからいいけどさ。
    っていうか、お前、マジで就活しないの?」
須賀 「馬鹿言え、やってるよ。現在進行形で」
高田 「本当にミュージシャン目指してんだ」
須賀 「ああ。夢は武道館ライブだ」
高田 「ふ〜ん……。まぁ、頑張れよ」
須賀 「そう言えば、佐藤は?あいつ、就活上手くいってんの?」
高田 「あ〜……。佐藤は……まぁ、うん……」
須賀 「何だよ?」
高田 「あいつ、色々と馬鹿だからさ、心配だよ」
須賀 「俺はあいつの馬鹿さ加減は好きだけどな」
高田 「…………」

   近くで物音がする
   それに反応する高田と須賀

須賀 「ん?」

   物陰から飛び出し、高田達に近づく佐藤
   黒いコートにブードを被り、かなり怪しい

須賀 「(呆然)…………」
高田 「お前……」
佐藤 「殺し屋、佐藤……推参」
須賀 「佐藤、お前何その格好」
高田 「(げんなり)本気だったんだ……」

 シーン(2)

 【回想・大学校内】

   某大学の休憩所(フリースペース)
   談笑している高田、須賀、中尾
   佐藤は一人、真剣な面持ちで考え事をしている

高田 「あぁ〜、もう就活とかマジ鬱だわ。俺、一生学生がいい」
中尾 「気持ちはわかるけどな。就活氷河期じゃ、そうも言いたくなるよ」
須賀 「ふ、俺には関係ない話だ」
高田 「須賀、お前は何目指してんだよ」

   得意気にギターケースを見せる須賀

須賀 「俺はこいつで天辺を取る」
高田 「はいはい。中尾、お前は?」
中尾 「警察官」
高田 「はぁ、似合ってるわ」
中尾 「俺が警察官になった暁には、世間の犯罪者を根絶やしにしてやる」
須賀 「こりゃあ、悪いことできねぇな」

   笑い合う高田、須賀、中尾

中尾 「佐藤、何さっきから黙ってるんだよ。考え事?」
高田 「お前、進路は?何目指してんの?」
佐藤 「殺し屋」

   場が凍る

高田 「……んん?何だって?」
佐藤 「俺は、殺し屋になる」

 シーン(3)
 
 【大学校内】

   回想と同じく休憩所
   向かい合って座っている佐藤と高田
   須賀はギターの手入れをしている

高田 「馬鹿なこと言ってないで、ちゃんと就活しろ」
佐藤 「本気だよ、俺は」
高田 「殺し屋って……。何がお前をそうさせた」
佐藤 「俺はさぁ、前から裏稼業ってやつに憧れてたんだ。
    普通の仕事とか、くそくらえだ」
高田 「それで、殺し屋!?」
佐藤 「ああ、俺は闇に生きる」
高田 「ってか、その格好……」
佐藤 「形から入るタイプなんでね」
高田 「(うつ伏せに倒れ)アホか……」
須賀 「で?具体的にどんなことやってんだ?」
佐藤 「パソコンでホームページ作ってさ、依頼募集しようと思って」
高田 「通報されるって!やめとけ!」
佐藤 「大丈夫だよ。まだ作ってない」
高田 「これから作るんだろ!?」
須賀 「面白ぇ。やれやれー」
高田 「煽るなよ。本当にやるから、こいつ!須賀、お前も止めろよ」
須賀 「普通じゃいたくねえって気持ちは、俺にもよくわかる」
高田 「須賀ァ!」
中尾 「佐藤ォォォ!」

   中尾が走って佐藤達のところへやってくる

佐藤 「チッ、中尾か……」
中尾 「佐藤……逮捕だ!」
佐藤 「一丁前に警官気どりかよ。付き合ってられるか」

   一目散に逃げ出す佐藤

中尾 「待て!」

   それを追いかけて行く中尾
   その様子を見送る高田と須賀

須賀 「暑いな、中尾の奴」
高田 「はぁ、大丈夫かな、あいつ……」
須賀 「心配いらねぇよ。佐藤に殺し屋とか絶対無理だ」
高田 「でも、あいつ何考えてるかわからないところあるしさ」
須賀 「血とか、苦手だから」
高田 「は?」
須賀 「佐藤。この前、膝擦りむいてパニック起こしてたし」
高田 「え?」
須賀 「野良猫見つけたら愛でまくるし、虫も殺せないような奴だから」
高田 「……やっぱり馬鹿だ、あいつ……」

 シーン(4)

 【大学校外】

   逃げる佐藤を追いかける中尾
   やがて、佐藤が立ち止まる

佐藤 「しつこい奴だな……」
中尾 「佐藤……俺は友人であろうが、犯罪者に容赦はしない」
佐藤 「まだ誰も殺してねえよ」
中尾 「犯罪を未然に防ぐのも、警察官の務めだ!」
佐藤 「お前、警察官じゃないだろ」
中尾 「問答無用!観念してお縄につけ!」
佐藤 「言ってもわからないか。仕方ない……」

   懐からバタフライナイフ(もどき)を取り出す佐藤

佐藤 「お前が、俺の犠牲者第一号だ」
中尾 「…………!」
佐藤 「うおおおお!やぁ!」

   バタフライナイフを振るが、あっさりかわされ、投げられる

佐藤 「ぐふっ……」
中尾 「(ナイフを拾い)何だこれは、オモチャじゃないか」
佐藤 「練習中……だ……」

   力尽きる佐藤

中尾 「(ケータイを無線に見立てて)こちら中尾。
    ○○時○○分、犯人確保!」

 シーン(5)

 【大学校外】

   佐藤が一人、たそがれている

佐藤 「……依頼も来ない、中尾にも勝てない。
    もしかして俺、殺し屋向いてないのかな……」

   高田がどこからともなく現れる

高田 「そうだ!向いてないから、もうやめとけ」
佐藤 「高田……」
高田 「他に向いてる仕事、絶対あるって。真面目に就活やろうぜ」
佐藤 「…………」
高田 「おい、佐藤?」
佐藤 「嫌だ!俺は諦めねえぞ!」
高田 「佐藤、お前いい加減にしろよ。間違いが起こってからじゃ遅いんだから……」
佐藤 「心配するな。上手くやるから」
高田 「そういう問題じゃないって」
佐藤 「俺、嫌なんだよ」
高田 「何が?」
佐藤 「このまま、周りと同じように就活して、流されるまま社会人になって。
    俺にしかできないこと見つけてさ、生きてるって実感したいんだよ」
高田 「そりゃわかるけどさ、殺し屋はないだろ……」
佐藤 「とにかく、俺は諦めたくないんだ。じゃあな!」
高田 「あっ、おい!」

   その場を立ち去る佐藤
   それを複雑な面持ちで見送る高田

高田 「はあ……」

   高田の横を女子大生が通り過ぎる
   後ろから現れた男が、隙を突いて女子大生の持っていたバッグを奪い去る

女子 「あっ!」

   その場に倒れ込む女子大生
   偶然居合わせた高田が駆け寄る

高田 「大丈夫!?」
女子 「ひ、ひったくり……」
高田 「くっそ、待て!」

   男を追いかける高田。しかし、かなりの距離がある
   悠々と逃げる男

男  「へっ、楽勝楽勝……」

   前を歩いていた佐藤と、バッグに気を取られていた男がぶつかる

男  「いってぇな!おい、邪魔なんだよ!」
佐藤 「はあ?」

   振り返る佐藤
   手にはバタフライナイフ。フードを目深に被り、とても不気味な出で立ち

男  「ひぃ……っ!?」
佐藤 「ごめん……何か言った?」
男  「いや、その……す、すみませんでしたぁぁぁぁ!」

   バッグをその場に置いて逃げ出す男
   何だかよくわかってない佐藤
   高田が追いつく

高田 「はぁ、はぁ……佐藤、こっちに男走って来なかった!?」
佐藤 「え?ああ、来たかも」
高田 「どっちに行った!?」
佐藤 「あっちだけど」
高田 「ひったくり犯なんだよ、そいつ!」
佐藤 「えぇ!?っていうか、何か落としていったけど……」
高田 「あっ!それ……。佐藤、ナイスッ!」
佐藤 「お、おう……」

   女子大生が追いつく

女子 「あっ、それ……」
高田 「良かったね。こいつが取り返してくれたよ」
佐藤 「は、はあ……」
女子 「あ、あの……助かりました。本当に、ありがとうございます!」
佐藤 「いやぁ、うん」

   深々とお辞儀をし、その場を去る女子大生

高田 「やるなぁ、お前。少し見直したわ」
佐藤 「…………」
高田 「おい、どうした?」
佐藤 「……悪くない」
高田 「は?」

   一方、ギターを抱え、一部始終を見ていた須賀

須賀 「……やるじゃ〜ん」

 シーン(6)

 【大学校内】

   大学内の休憩所
   談笑している高田と須賀

高田 「あいつも、意外とやるときゃやるんだな」
須賀 「そうだな。だからまぁ、何とかなるさ」
高田 「でもなぁ、まだ殺し屋続けるとかほざいてんのかな〜……」
須賀 「さあな」

   ため息をつく高田
   そこへ警官のコスプレをした佐藤がやってくる

高田 「うわっ!?おい、佐藤、今度は何だ、その格好!?」
佐藤 「俺が間違っていた」
高田 「え?」
佐藤 「今日から、俺は市民の安全と平和に尽くすよ」
須賀 「それで、警官か?」
中尾 「その通り!」

   満足そうに近付いてくる中尾

中尾 「佐藤は改心してくれたんだ。俺と共に警察官を目指すって言ってくれてな。
    うんうん……(泣き真似)」
高田 「何でまた急に……?」
佐藤 「人に感謝されるのも……悪くねえなって思って!」
高田 「単純だな〜……」
中尾 「よし!そうと決まれば筋トレだ!体力つけないと、受からないぞ!」
佐藤 「おう!」
高田 「勉強もしとけよ」
佐藤 「おう!」
中尾 「走り込み、行くぞ!」
佐藤 「よっしゃぁぁぁ!」

   外に向かって走っていく佐藤と中尾

須賀 「一件落着?」
高田 「だな。さて、俺も次の会社の面接対策でもやるか!じゃあな、須賀」
須賀 「おう、またな」

   その場を去る高田

須賀 「……俺も、いっちょ頑張るか」

   ギターケースを持ち、その場を去る須賀
   エンドロールが流れる

 シーン(7)

 【大学校外】

   エピローグ
   走り込みをしている中尾と佐藤
   佐藤の方はかなり疲労している

佐藤 「無理……。マジ、もう無理……」
中尾 「コラァ!そんな様で警察官なれると思ってんのか!?根性見せろ!」

   先に走っていく中尾

佐藤 「はぁ……やっぱ、やめようかなぁ……」

   再び走り出す佐藤
   その時に、ポケットからバタフライナイフが落ちる
   佐藤はそれに気付かず走り去る
   
                                           
                            完

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