― 出会い ―
1. バス停(朝)
宗太、ベンチでため息をつく。
影子、宗太に近づく。
影子 「学校どうしたの?」
宗太 「……。誰ですか、あなた。」
影子 「あっはは!誰でもないよ。」
【女性は2つの缶飲料を片手持ちで揺らす。】
影子 「ブラックとカフェオレ……どっちがいい?」
宗太 「……カフェオ」
影子 「えぇー!!わたし飲みたかったのに!」(食い気味に)
宗太 「……ブラックで。」
影子 「おー、そう来なくっちゃ!!」
宗太 「何で選ばせたんですか?」
影子 「あれ?こんなノリ嫌い?」
宗太 「」(台詞なしで嫌そうに)
影子 「うわ露骨—、あははッ!」
影子、宗太の右隣に腰かけると右掛けに足を組む。
人差し指で2,3回ほど空振りしてから、中指で缶を開ける。
影子 「今日は中指の日かー。」
【中指の日ってなんだ……。】
影子 「で?どうしたの?」
宗太 「……関係ないでしょう。」
影子 「ま、そうなんだけどね!」
宗太 「何なんですか!」
影子 「家の人には学校って言ってあるの?」
宗太 「……いや……何も」
影子 「よし、じゃ乗って!!」
宗太 「は?!」
影子、車の助手席を開けて手招きをする。
2. 影子の車
影子 「早く!」
【送ってくれるって事だろうか……。】
宗太、影子の車に乗り込む。
影子 「じゃ、しゅっぱーつ!」
・・・・・・・・・・・・・・
【乗ったものの、女性の運転する車は学校はおろか、
見慣れた街並みからどんどん離れていく。】
宗太 「……あの!」
影子 「ん?」
宗太 「学校行くんじゃないんですか?」
影子 「え?何、行きたかったの?」
宗太 「……いえ。ただ、どこに向かっているのか分からないので。」
影子 「そうだねー、どこがいい?」
宗太 「……下ろしてください。帰ります。」
影子 「ダメだよ、誘拐してるんだから。」
宗太 「……は?!」
影子 「『は?!』って……まさか自覚なかったの?」
宗太 「」(アドリブでぽかん)
影子 「だって高校生を大の大人が、しかも他人が乗せてるんだよ?
君、警戒心ないんだね。」
宗太 「誘拐される理由がありません。」
影子 「誘拐って理由要るの?」
宗太 「いや知らないですけど!……動機とか……何かそう言うの
報道されてるじゃないですか!」
影子 「あー、そんな大それたものはないかなー、1人で車乗ってると暇だったし、
運転してて寝ちゃいそうだったし、この際誰か誘おうかなーと思ってた
ところに君がいたってわけ。」
宗太 「普通見知らぬ未成年を車に乗せますか?」
影子 「“出会いは一期一会”だよ。」
【意味がわからない……話せば話すほどこちらが馬鹿になったみたいに
感じる。 】
影子 「あ、そうそう!学校の番号わかる?」
宗太 「……はい。あ、ちょッ」
宗太、スマホを操作する。
影子、ひょいと奪い取り電話をかけ始める。
影子 「あ、もしもしお世話になってますぅ。宗太の叔母です!申し訳ないんです
がねぇ、家庭の 事情で1週間ほどお休みをいただきますのでよろしくお願い
致しますぅ。」
影子、返事も聞かないまま電話を切って宗太にスマホを押し付ける。
影子 「よーし!これで1週間は休めるから、引っ張り回すよー!!」
宗太 「はぁあああ!!???」
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