10年の未練をも消す人 ドラマ

高2から10年間片想いだった未女への未練が吹っ切れた!と断言する仮男(27)。彼の未練は本当に無くなったのか…。ある研究所で実証がはじまる
古堅元貴 7 1 0 07/02
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第一稿

○高校・部室(朝)
高2の仮男(17)。朝練終わり。テニスウェアから制服に着替えている。
仮男、ガラケーのLISMOミュージックから音楽を大音量で流している。
ダンス&ボーカ ...続きを読む
「10年の未練をも消す人」(PDFファイル:323.46 KB)
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○高校・部室(朝)
高2の仮男(17)。朝練終わり。テニスウェアから制服に着替えている。
仮男、ガラケーのLISMOミュージックから音楽を大音量で流している。
ダンス&ボーカルグループ・VVV(スリーブイ)の曲だ。
部員1「(仮男に)毎朝それ流さないと、教室いけないんすか?」
部員2「聴きすぎて、サビ完璧に覚えたんだけど」
仮男「めっちゃいいから。この曲最高だから!」
仮男、サビがきて歌う。
部員3、停止ボタンを押す。
仮男「(停止に対して)ちょ!?」
仮男、再び再生ボタンを押し、歌う。
部員3、停止ボタンを押す。
仮男「だからちょい!?」
部員4、自身のガラケーからRIP SLYMEの曲を流す。
仮男「!?」
部員5、自身のガラケーからアンジェラ・アキの曲を流す。
部員6、自身のガラケーからサラ・ブライトマンの曲を流す。
室内にはVVV、RIP SLYME、アンジェラ・アキ、サラ・ブライトマンの曲が同時に流れている状況。
部員ら「うるせえぇえええ!」
仮男「うるせえぇええええ!」
×     ×     ×
部室外。多くの朝練終わりの生徒達が、音漏れが激しいテニス部の部室に目をやっている。その中に耳を澄ましている高2の水泳部・未女(17)。
×     ×     ×
それを見ている現在の仮男(27)。
仮男(現)「入りは最高だった」

○同・2年A組教室(昼)
授業を受けている生徒達。その中に仮男。室内の時計を凝視している。
仮男「(あと30秒‥10…2,1!)」
昼休みのチャイムが鳴る。
仮男「(ダッシュで教室を出る)」

○同・廊下
全速力で購買へ向かう仮男。
途中、数名の全速ダッシュの生徒が現れる。購買へ向かう生徒ら。
まるで映画『300』のメインビジュアル並みの熱気を帯びている生徒ら。

○同・購買コーナー
2番目に到着する仮男。
仮男「(ものすごい息切れ)」
仮男が凝視してるのは、砂糖や黒糖がまぶして一袋に大量に入っているパンの揚げ耳(1つ90円)。
そして仮男の番になり、
仮男「(店員に)すいません!揚げ耳の黒糖味1つ!」

○同・2年A組教室(昼)
昼休み。昼食を食べている高2の仮男とクラスメイト。多くが弁当なのに対し、仮男は揚げ耳のみを食べている。
仮男、半分ほど食べた所で揚げ耳の袋を閉じる。
友人A「(仮男に)残りはまた明日?」
仮男「もち!2日分の昼飯を90円で済ませるために買ってるんだから!」
「揚げ耳争奪戦は校内で唯一のデスゲーム」などと語っている仮男の背後には現在の仮男。
仮男(現)「(高2の仮男に呆れてる)」
女子Aが未女を連れて教室に入ってくる。
女子A「(仮男を指し、未女に)あれだよ」
未女、仮男のところまで近づいてくる。
仮男「(それに気づいて)?」
未女「ね!仮男くんって、VVV好きなの!?」
仮男「え?」
未女「部室でかけてた!曲!」
仮男「え、そう。なんで…」
未女「めっちゃ音漏れしてた!私も好きなの!」
仮男(現)「この瞬間好きになった」

○同・廊下(数日後・夕)
放課後。CDの貸し借りをしている仮男と未女。

○駅前コンビニ(数日後・夜)
部活終わり。仮男、店内を物色していると偶然、未女と鉢合う。
仮男「!?」
×     ×     ×
レジでスイーツを2つ買っている仮男。
未女「(仮男に)ありがとう!」
仮男「全然いいよ」

○自宅(夜)
未女とメールのやり取りをしている仮男。
仮男「(ニヤついてる)」
その背後には現在の仮男。
突如、天の声が現在の仮男に語りかける。
天の声「結局付き合えては無いんですよね?」
仮男(現)「(天の声に)え!?」
天の声「あ、すいません」
仮男(現)「いえ…はい」
天の声「フラれたんですか?」
仮男(現)「いや…」
天の声「好きなのに付き合えてないって事はフラれてますよね?」
仮男(現)「いや…あの、この時は告白してないんです…」
天の声「はい?」
仮男(現)「えっと…好きだったんですけど、部活にも集中したいって気持ちもあって…」
天の声「はい?」
仮男(現)「彼女は作らないで部活に集中したいとも思ってて」
天の声「はい?」
仮男(現)「…MAJORって漫画の主人公知ってますか?」
天の声「はい?」
仮男(現)「…茂野吾郎っていう主人公なんですけど、ほんとに野球一筋で肩壊しても利き腕変えてピッチャーして160㎞投げたり、チームメイトだったライバルと戦いたいからって野球部のない高校にわざわざ転校して一から野球部を作って、そのライバルと大会で戦って、あと…」
天の声「はい?」
仮男(現)「つまり恋愛とかせずに野球一筋の茂野吾郎に憧れていて、自分も部活終わるまでは恋愛はしないと入学のときから決めてて…」
天の声「あなたの部活は恋愛禁止だったんですか?」
仮男(現)「…全く。…MAJOR知りませんか?」
天の声「それで告白はしなかったと」
仮男(現)「…はい」
天の声は無反応になり、場面が切り替わる。

○テニスコート
高3の仮男、最後の大会に負け、コートで崩れ落ちている。
天の声「…負けたんですか?」
仮男(現)「…はい」
天の声「これはインターハイの決勝ですか?」
仮男(現)「いえ…県大会の1回戦です…」
天の声「茂野吾郎って県大会の1回戦で負けるんですか?」
仮男(現)「いや…」
天の声「でもこれで恋愛は解禁されたわけですよね?自身で決めた恋愛禁止ルール。県の1回戦で負けた奴の恋愛禁止ルール」
仮男(現)「すいません、誰に対しても(天の声は)こんな当たり厳しいんですか?」
天の声「この先のサービスをしっかり行うための聴取です」

○予備校・自習室(夕)
受験勉強している仮男。それを見ている現在の仮男。
高2の仮男、ふと室内の窓を見ると、未女とギターマンドリン部の特男が手を繋いで歩いているのを目撃する。
仮男「!?」
直後、仮男は失神。
天の声「結局告白は出来なかったと。恋愛禁止ルールを解禁したのに」
仮男(現)「(何も言えない)」
天の声「未練は益々膨らんでいるように見えますが」
仮男(現)「ここから消えていきます!それを証明するために来たんですから!」

○ライブ会場
大学2年の仮男。未女含めた男女4人でVVVのライブに参戦している。
天の声「この状況は?」
仮男(現)「付き合ってはないです。VVV好きの高校の同級生でライブに行ったんです」
天の声「まだ接点はあった」
仮男(現)「共通の趣味に助けられました」
天の声「この時に告白して?」
仮男(現)「いえ、してないです…」
天の声「はい?」
仮男(男)「出来なくて…」
天の声「また新たな恋愛禁止ルールですか?」
仮男(現)「この時は勇気がでなくて…」
天の声「こんなことしてるから未練募るんじゃないんですか?」
仮男(現)「でもこっから消えるんです!」

○自宅
社会人1年目の仮男(23)。スマホで
仮男「久しぶり!元気?(とLINEで未女に送る)」
それを見ている現在の仮男。

○自宅
1年後。社会人2年目の仮男(24)。スマホで
仮男「ご無沙汰!仕事どう?(とLINEで未女に送る)」
それを見ている現在の仮男。

○自宅
3年後。社会人4年目の仮男(27)。スマホで
仮男「だいぶご無沙汰!チャイラテ好きって言ってたじゃん!南青山に美味しいチャイラテのお店見つけたんだけど、どう?(とLINEで未女に送る)」
それを見ている現在の仮男。
天の声「(現在の仮男に)これ毎年送ってたんですか?」
仮男(現)「毎年ではなくほぼ毎年…」
天の声「返信あるんですか?」
仮男(現)「有り難い事に返信してくれて…。でもこのチャイラテの年に既読スルーになりました」
天の声「消えてないですよね未練?」
仮男(現)「募ってますね…。ただついにエンディングです」

○結婚式場・披露宴ホール
1年後。着座している仮男(28)。
天の声「(現在の仮男に)あなたの結婚式では…確実にないですね」
仮男(現)「…確実ではないですけどね。年齢的にも経済面からみても(と強がる)」
新郎新婦の席には高校時代の同級生・匿男とその妻・匿女。
仮男(現)「新郎は高校時代のクラスメイトで、ギターマンドリン部の匿男です」
天の声「ギターマンドリン部?ということは…」
仮男(現)「はい、特男がいます」
別の新郎友人テーブルには、特男がいる。
天の声「(特男は未女と)まだ付き合ってたんですか?」
仮男(現)「一度別れた後に付き合って、今は結婚も視野に入れてるみたいです」
天の声「これ、この後、特男さんとあなたがこの会場で殺し合って、最終的には未練がなくなったって、結末じゃないですよね?」
仮男(現)「安心してください」

○同・トイレ
小便をしている仮男。そこにギターマンドリン部の同級生1、2が入ってくる。
同級生1「(仮男)久々!」
仮男「お!ほんとよ!いつ以来?」
同級生2「卒業振りじゃね!」
仮男「いや、成人式で会ったよ!」
同級生1「え?会った?」
同級生2「仮男とは会ってない」
仮男「いや!会ったわ!今完全思い出した!」
同級生1「(仮男に)未女のこと好きだったんだなー」
仮男「(突然の話題に)え?」
同級生2「高校のときからだったんだー」
仮男「まあ…え!なんで!?」
同級生1「そりゃ懲りずに連絡してたら伝わりますよ」
天の声「たしかに」
仮男/仮男(現)「…」

○同・入口(夕)
披露宴後。
帰ろうとする仮男。そこに同級生1、2と特男が近づいてきて、
仮男「(特男に気づいて)…ごめん、ねえ!なんか何度も懲りずに連絡しちゃってて…(まだ未女と)付き合ってたんだな!」
特男「うん…」
仮男「申し訳ない!未女さん大丈夫?」
特男「いやいや全然」
仮男「…ごめん」
同級生1「でもそこまで想ってるとはな」
同級生2「それ驚いた!おまえ一途なんだなー」
仮男「ん?」
同級生1「仮男の好感度あがったわ」
仮男「え?」
特男「そうそう。それ思った」
仮男「(そう捉えられたことに驚き)」
同級生1「今度その話も含めて飲み行こうぜ」
同級生2「いいね!」
特男「うん」
仮男「お、おう」
同級生1「久々に会えてよかったわ!」
同級生2「高校のときより好きになったよ」
特男「またね」
仮男「(彼らに感謝して)ありがとう」
仮男(現)「この日、未練が消えたんです」

○現在・某室内
無機質な空間。等間隔に数名がさまざまな機具に繋がれて、別世界の体験をしている様子。
天の声・タガミ、仮男の身体全身に取り付けられた機具を外す。
現実世界に戻った仮男(30)。
仮男「ある意味、告白できたからだと思います。本人にではなくその彼氏ですけど…」
タガミ「あそこまで連絡してたら、もう告白と同然だと思いますけど。あ、勇気使ってない告白か」
仮男「…痛いこと言いますね」
タガミ「それで?」
仮男「あ!あの…未練、僕なかったですよね!?」
タガミ「分かりません」
仮男「いやいや!一緒に過去辿ったじゃないですか!?第三者目線で判断してくださいよ!そういう利用もできるサービスですよね、ここ?」
タガミ「(豹変し)五月蠅えななあ!未練がないことを証明するために、ここ来ちゃったら未練があるのかと思うだろうがぁああ!なあ、それってなあ、ネットでもう誹謗中傷やめようぜとかポストしてるくせに、次のポストは芸能人の不倫ニュースをリポストしてる匿名アカと同じだからなあああ!」
仮男「それめちゃくちゃ支離滅裂な奴じゃないすか………」
タガミ「そうだよ!お前もだよ!今日からおまえの名前、匿アカにすっぞ!はよ帰れ!テメェの未練なんてノーノットイエットだけどな、式場でおまえに声かけた同級生はアブソリュートやさしい人間だから、いつかおまえの奢りで飲み会開いてやれ!それ実現した時が人生の面白い側面だァあぁあ!」
仮男「…え、あ、オッケ…イエスッい!」
逃げるように出ていく仮男。

おわり

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