何者でもない私たち ドラマ

もしも大事な人に大事な家族がいたならば。 あきらめきれないその想いは「不倫」「浮気」なんて安っぽい言葉で消えてしまうんだろうか。 この想いは恋ですか、それとも…
奈々瀬りん@脚本家志望 25 1 0 05/12
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第一稿

人物
山口幸恵(48)
山口弘明(49)
山口奈緒(18)
本庄沙也加(25)
原田尚志(56)
槙島透(30)
細川毅(25)
アナウンサー

〇深山家・外観 ...続きを読む
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人物
山口幸恵(48)
山口弘明(49)
山口奈緒(18)
本庄沙也加(25)
原田尚志(56)
槙島透(30)
細川毅(25)
アナウンサー

〇深山家・外観
二階建の庭付きの一軒家。
 ×  ×  ×
庭で花に水をやっている山口幸恵(48)。
考え込んでいる様子。
スマホを取り出し、SNSの山口弘明(49)のアカウントを開く。
そこには見知らぬ女(本庄沙也加)とワイングラスを笑顔で乾杯する写真が投稿されている。ハッシュタグには「妻とデート」の文字。
幸恵「誰なんだろ…」

○深山家・外(夜)
弘明「ダメだよ…こんなとこじゃ娘にバレる」
×  ×  ×
塾帰りの山口奈緒(18)。 
×  ×  ×
奈緒、家に着く。
人の話し声。
庭を覗き込む奈緒。
沙也加「じゃあね」
孔明に抱きつく本庄沙也加(25)。
抱き合っている二人。
家の陰に隠れる奈緒。
壁に背中を貼り付けてもう一度二人を見る奈緒。
奈緒「…嘘でしょ」

○高校・映写室・中
沙也加と奈緒が一枚の写真を挟んで向かいあっている。
奈緒「どういうことですか!?」
沙也加「(冷たく)だから見たままじゃない」
沙也加、奈緒の手に握られた写真を見る。
奈緒「だってうちの父と先生がこんなこと…こんなの、」
沙也加「まるで不倫みたい?」
奈緒「…っ!(沙也加をにらみつける)」
沙也加「(くすりと笑って)だから何?」
奈緒、沙也加に摑みかかる。
奈緒「なんとも思わないんですか!?教師として!人として…」
奈緒の手を掴む沙也加。
沙也加「(優しく)私はね教師である前に女なの」
奈緒の手を下ろして映写室を出て行く沙也加。
奈緒「…最低」
呆然と立ち尽くす、奈緒。

○新聞社・会議室・中(夕)
原田尚志(56)と槙島透(30)、細川毅(25)が机を囲んでいる。
原田「なんかこう、最新のいいネタはいいのないのか」
荒っぽく机を叩く原田。
顔を見合わせる槙島と細川。
原田「お前ら、それでも記者だろ!ネタの一つや二つ、見つけてこいよ!」
イライラしたように貧乏ゆすりをする原田。
槙島・細川「(顔を見合わせて)はぁ…」

〇バー・中(夜)
  カウンターで一人で飲んでいる弘明。
原田の声「よお」
  原田の声に振り向く弘明。
原田「ひさしぶりだな」

〇深山家・リビング(夜)
  暗い顔をした奈緒が入ってくる。
  封筒を手にもって動かない幸恵。
奈緒「(幸恵の顔をのぞき込んで)ただいまー」
  青ざめた顔の幸恵が振り向く。
奈緒「どうしたの」
幸恵「…いや、何でもない」
  手に持っていた手紙をタンスにしまってキッチンに入っていく幸恵。
幸恵「ご飯、準備するね」
  幸恵の封筒を取り出す奈緒。
  宛名のない封筒。
  封筒の中には「偽人妻」の文字と一緒に幸恵を盗撮した写真が入っている。
奈緒「お母さん、この封筒…」
  キッチンに入っていく奈緒。
  奈緒を振り向く幸恵。
幸恵「(気まずそうに)あ、えっと…びっくり
よね。なんでうちの住所わかったんだろ」
奈緒「誰か心当たりは?」
幸恵「ないのよ。いたづらじゃない」
沙也加の声「教師である前に女なの」
  奈緒の脳裏にフラッシュする沙也加の顔。
奈緒「もしかしてあの女…」
  こぶしを握り締める奈緒。

〇本庄家・中
  薄暗いワンルームの室内。
  間接照明しかついていない室内の中で沙也加は左手の薬指のデザインリングを見ている。
沙也加「弘明さん…大好きだよ」
  室内には大量の弘明との写真。
  デザインリングをスマホで撮る沙也加。
  SNSに「念願の指輪!」と投稿する沙也加。

〇バー・中(夜)
  スマホを見てくすりと笑う弘明。
原田「(怪訝そうな顔で)何笑ってんだよ」
弘明「いや、かわいいなあと思って」
原田「何が?」
弘明「今付き合っている彼女?」
原田「は?」
  手に持っていたピーナッツを落とす原田。
原田「お前既婚者じゃないの」
弘明「嫁さんいるよ?」
原田「彼女もいるの」
弘明「うちはほら、互いに無干渉だからさ」
原田「嫁さん、それでいいのか」
弘明「いいんじゃない?」
  そういってピーナッツをほおばる弘明。
弘明「そういえば、俺、今面白いことしてんだ」
原田「(身を乗り出して)ネタになる?」
弘明「(ニヤリとして)それはプロに任せる」

〇山口家・リビング・中(夜)
  思いつめた顔で食卓に座っている幸恵。
弘明「ただいま」
  リビングに入ってくる弘明。
幸恵「おかえりなさい」
  上着を幸恵に渡す弘明。
弘明「もう寝るから」
幸恵「そう」
  リビングを出ていこうとする弘明。
弘明「そうだ。明日時間ある?」
幸恵「え?」
弘明「合わせたい人がいるんだ」
幸恵「別にいいけど」
  キョトンとする幸恵。

〇同・廊下
  寝室に入ろうとする弘明。
奈緒の声「お父さん」
  振り向く弘明。
弘明「…なんだ」
奈緒「先生とどんな関係?」
弘明「先生?」
奈緒「浮気なんて最低…」
  奈緒、そういうと自分の部屋に戻っていく。
弘明「…何の話だ」

〇喫茶店・中
  幸恵と沙也加が並んで座っている。
  目の前には原田。
沙也加「で、私を弘明さんが?」
  沙也加と向かい合っている原田。
原田「そうなんですよ。いやももう奥さんも
実にきれいな方でびっくりしました!」
幸恵「…」
  沙也加をにらんだまま無言の幸恵。
沙也加「ほんとですよ!入籍されてるだけでもうらやましいのに、さらにきれいだなんて!ねえ」
  そういって店員を呼ぶとカップケーキを頼む沙也加。
沙也加「私、甘いの好きなんです」
幸恵「あの」
  幸恵を振り向く沙也加。
幸恵「先生は…主人とどんな関係なんですか」
  ニヤリとする沙也加。
沙也加「知りたいですか」

〇山口家・廊下・外(夜)
幸恵の声「あんたあの高校教師と浮気してたのね、この変態!」
弘明の声「そんな言い方ないだろ!彼女は…」
幸恵の声「事実婚したお嫁さん?そんなの私信じると思う?」
  弘明と幸恵の口論を唇をかみしめて聞いている奈緒。
幸恵の声「そんなに彼女が好きなら、離婚しましょう」
  幸恵の声に玄関を飛び出していく奈緒。

〇同・リビング・中(夜)
  バタバタという音に同時に振り向く幸恵と弘明。
幸恵「今の…」
弘明「聞いてたみたいだな」
  幸恵、弘明を見る。
幸恵「どうしてくれんのよ。あんたがめちゃくちゃなことしなければこんなことには…」
弘明「そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
  上着を羽織る弘明。
弘明「雨降ってるからな。迎えに行ってくる」
  傘も持たず玄関を出ていく弘明。
幸恵「(あきれたように)傘忘れてるし。そのまま風邪ひけば?」

〇街路地(夜)
  土砂降りの街中。
  がむしゃらに人をかき分け、傘もささず走っている奈緒。

〇歩道橋(夜)
  橋の上でうずくまっている奈緒。
弘明の声「(息を切らして)ここにいたのか…」
  弘明の声に顔を上げる奈緒。
奈緒「…お父さん」
  傘をさしていない弘明の姿。
  弘明、奈緒に上着をかける。
弘明「いきなりの話でびっくりしたろ。家に帰ろう。」
奈緒「やめて」
  かけられた上着を払う奈緒。
弘明「風邪、ひくだろ」
奈緒「…ひかないから」
  弘明をじっと見る奈緒。
弘明「なんだ」
奈緒「お父さんにとって私は何?」
弘明「大事な娘に決まってんじゃないか。急にどうしたんだ」
奈緒「いや、別に」
  弘明のポケットでなる着信音。
  顔をしかめて着信を切る弘明。
奈緒「お母さんから?」
弘明「いや…」
奈緒「じゃあ先生から?」
弘明「(ぎくりとする)」
奈緒「誰から?」
弘明「いや別に…」
  奈緒から顔をそらす弘明。
奈緒「大事な娘に嘘つくんだ」
弘明「違う。そんなんじゃ」
奈緒「そんなに先生がいいんだ」
弘明「…」
奈緒「どうかしてるよ。お父さんも先生も」
  そういって走っていく奈緒。
  取り残される弘明。

〇街路地
  泣きながら走っている奈緒。

〇本庄家・中
  ソファに並んで座っている弘明と沙也加。
沙也加「で、逃げられちゃったんだ」
弘明「あの手紙は君が?」
沙也加「うん」
弘明「何で。君とは事実婚という形で妻として認めてるじゃないか」
沙也加「事実婚ねえ…奥さんいるのに?」
弘明「何か不満か」
沙也加「そうだな…奥さんと入籍してなかったら納得できた。でも…」
  ×  ×  ×
  笑顔で原田と話す幸恵の顔。
  ×  ×  ×
  こぶしを握り締める沙也加。
沙也加「あんなすてきな奥さんいるのに、無下にしちゃだめだよ」
  沙也加から顔をそむける弘明。
弘明「わかった。ちゃんと話し合うよ」

〇山口家・リビング・中(夜)
  食卓でスマホを眺めている幸恵。
  濡れたままの奈緒が入ってくる。
幸恵「おかえりなさい」
  笑顔で出迎える幸恵。
奈緒「お父さんは…あの」
幸恵「出ていった?別にいいわよ。気にしてないわ」
奈緒「あの…怒ってたりとか…」
幸恵「しないわよ」
奈緒「本当に?」
幸恵「帰ってきたりとかしたら話は別だけどね」
  そういって真顔になる幸恵。
  幸恵をじっと見る奈緒。

〇高校・教室・中(夕)
  奈緒が教室に入ってくる。
奈緒「…あ」
  黒板を消している沙也加。
沙也加「…あ。忘れ物?」
奈緒「はい」
  自分の机へ歩いていく奈緒。
  扉の前で待っている沙也加。
奈緒「…なんですか」
沙也加「この間はごめんなさい。言い過ぎたわ」
奈緒「…」
沙也加「生徒にあんなこと言うもんじゃなかったわね。ごめんなさい。お父さん、元気?」
奈緒「…父が帰ってこないんです」
沙也加「え?」
奈緒「こないだ、両親が喧嘩してそれで帰ってこなくなって。先生、何も知らないですよね」
沙也加「…(考え込む)」

〇商店街・中(夕)
  ぼんやりとしながら歩いている幸恵。
奈緒の声「お母さん!」
  振り向く幸恵。
幸恵「あら、おかえり」
奈緒「お父さん、帰ってきた?」
幸恵「まだかな」
奈緒「お父さん、お母さんほっといてほんともう何やってんだろう」
幸恵「大丈夫よ。あの人は最後には正しい判断ができる人だって信じてるから」
奈緒「何それ。のろけ?」
幸恵「そうかもね」
  苦笑いする幸恵。
幸恵「でもほらきっと…」
弘明の声「本日開店でーす」
  ステーキハウスの前で呼びかけをしている弘明。
  奈緒と幸恵に気が付く弘明。
弘明「…え?なんで」
幸恵「(奈緒に向かって)神様ってこういう時見てたりするのよ」
  弘明に駆け寄っていく幸恵。
  少し離れたところで3人の様子を見ている沙也加。
沙也加「…なんか馬鹿みたい」
  沙也加、自分の連絡先から弘明の電話番号を消す。

〇新聞社・会議室・中
  取材の準備をしている原田と槙島。
槙島「よくこんな短期間で見つけましたね!」
原田「だろ。このご時世一夫多妻制をリアルでやってて不倫になってない夫婦なんていないからな。愛人の心境はいかに!ってか」
  笑う原田。
  ノックされる部屋のドア。
沙也加の声「失礼します」
  室内に入ってくる沙也加。
  
〇山口家・リビング・中
弘明「あー最高」
  リビングに入ってくるなりソファーに寝転ぶ弘明。
奈緒「何勝手にくつろいでんの」
弘明「いいじゃないか俺んちなんだから」
幸恵「よくない。きちんとして」
  幸恵の言うことを無視してテレビをつける弘明。
  テレビ画面に映る沙也加。
沙也加の声「女の人にとって結婚はそんなに大事じゃありません」
奈緒「え?先生じゃん。何やってんの」
  テレビの前に座り込む奈緒。
  弘明と幸恵もテレビに目を向ける。
アナウンサー「でも、偽装結婚ということは他人と同居生活していたんですよね。その点については?」
沙也加「ただの暇つぶしです」
  くすりと笑う沙也加。
沙也加「だってそんな20歳も歳離れた人に夢中になるわけないじゃないですか」
  顔を見合わせる幸恵と弘明。
沙也加「あんなくず、こっちから願い下げだっつうの!」
  思わずテレビを消す奈緒。
  テレビを消した奈緒の手がわなわなと震えている。
幸恵「…どうしたの」
奈緒「こんなの、見なくていいよ」
  そういうと飛び出していく奈緒。
弘明「…あいつどうしたんだ」
幸恵「さあ」
  顔を見合わせる弘明と幸恵。

〇学校・校門前(夜)
  走ってくる奈緒。
  一人たたずんで桜の木を見ている沙也加。
沙也加「(奈緒に気が付いて)桜ってね、一年中咲いてるんだってよ」
奈緒「…え」
沙也加「すぐ散っちゃうくせにつぼみとして何年も残る。ほんとに頑固で美しくて儚い花。桜」
奈緒「…はあ」
沙也加「まるであなたのパパと私みたい」
奈緒「…」
沙也加「あんたのバイト、学校に隠しといたの誰だと思ってんの。この私よ」
奈緒「そんなことありましたっけ」
沙也加「私、気持ちだけは買ってると思ったんだけどな」
奈緒の後ろから追いかけてくる幸恵と弘明を見て苦笑いする沙也加。
沙也加「弘明さん。私失恋しちゃった」
  にこやかに笑う沙也加。

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