ボーイズ・ミート・ガール ドラマ

2020年。高3の祐と泰平は、卒業式に‘ある計画‘を立てていた…。だが、新型コロナの流行によって卒業式は中止。‘ある計画‘も無くなってしまった。 2023年。突如、祐の前に現れた、泰平。半ば強引に拉致され、走り出す軽トラ。レインボーブリッジ→ディズニーランド→アクアラインを通り、向かう先は、千葉・君津。そこは祐が片想いしていた同級生・七瀬のいる場所であった…
古堅元貴 72 0 0 08/22
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第一稿

「ボーイズ・ミート・ガール」
■登場人物
瀬戸祐( 21) 法明大学経済学部2年/千葉中央高校卒業生
野木泰平( 21)無職 /千葉中央高校卒業生
佐久間七瀬( 21)事務 ...続きを読む
「ボーイズ・ミート・ガール」(PDFファイル:516.69 KB)
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「ボーイズ・ミート・ガール」
■登場人物
瀬戸祐( 21) 法明大学経済学部2年/千葉中央高校卒業生
野木泰平( 21)無職 /千葉中央高校卒業生
佐久間七瀬( 21)事務職員/千葉中央高校卒業生


〇千葉中央高校・3年F組教室( 朝)
2020年2月28日。
朝のホームルーム。教室内の全員がマスクを着けている。
担任「新型コロナウイルスの影響による国からの要請で明日から臨時休校になりました。そして苦しい決断だが、皆の命を最優先にして卒業式は中止する事になった」
頭を下げる担任。泣いてる、唖然しているなど、生徒の反応はそれぞれ。その中の一人、瀬戸祐( 18) は無表情だ。

〇校門前( 午前)
祐と同級生・野木泰平( 18) が下校している。
泰平「どうすんだよ?」
祐「何が?」
2人の先には、同級生・佐久間七瀬( 18) 。女子生徒数名と歩いている。
祐「無理だろ」
泰平「今日いかなかったら、一生言えないぞ?」
祐「・・・」
七瀬が校門を出て、道を曲がる。2人の視界から七瀬が消えた。

〇東京・法名大学・入口( 午前)
2023年6月。
多くの学生が出入りしている。路肩に1台の軽トラが止まる。車から作業着姿の男が出てくる。

〇校舎内( 午前)
不慣れな様子で辺りを見渡す作業着男。不審に彼を見ている数名の学生。
「学生窓口」という標識を見つける。男、そこへ向かい、中に入っていく。
×     ×     ×
学生窓口。男、受付の事務員に声をかける。
男「すいません。経済学部2年の教室って?」
事務員「あなた、ここの学生ですか?」
男「いや・・・」

○入口前
立ち尽くしている男。
×    ×    ×
軽トラの荷台を漁っている男。しわ皺のシャツとジーパンを見つける。

〇校舎内( 午前)
Tシャツ、ジーパン姿でしらみつぶし教室を覗く男。誰かを探しているようだ。

〇大教室( 午前)
200名以上の生徒が授業を受けている。だがスマホいじったり、喋っていたりなど、授業を聞いていない生徒がほとんど。
その中に大学3年の祐(21)。友人と喋っている。
友人1「サークルいく?」
友人2「今日違くね?はるると咲ちゃん飲み行くってよ」
友人1「まじ。そっち合流しよ」
友人2「おっけ。聞いてみる」
友人2はスマホを打つ。
友人1「あざ。祐も行くっしょ?」
祐「え、ああ、行く」
教室後ろからこっそり侵入する作業着男。祐を見つけ、近づく。
周りの学生達は不審すぎる作業着男にざわついている。作業着男は、遂に祐の背後につく。
男「祐」
祐「ん?」
振り向く祐。そこには野木泰平( 21) 。
祐「えっ?泰平・・・?」
泰平「行こうぜ」
祐「は?」

〇入口前( 午前)
校舎から出てくる祐、泰平。
祐「何!?」
泰平「ドライブ行こうって」
祐「授業あるから」
泰平「聞いてなかったじゃん」
祐「いやあ」
泰平「おれは失望したよ。大学生の実態に」
祐「おまえだって高校の時、聞いてなかっただろ」
泰平「だとしても、もっと堂々としてたな。なんか卑怯っていうか、ダセえ」
祐「仕事は?」
泰平「あ、クビんなった」
祐「はぁ!?」
泰平「慰めとして付き合ってくれよー」
軽トラに乗り込む泰平。
泰平「な?」
校舎に戻ろうとする祐。
泰平「首都高からのレインボーブリッジ最高だぜ」
祐「は?」
泰平「その後箱根まで行って、アウトレットに、最後は温泉」
祐「(少し揺らぐ)」
泰平「帰りは助手席でビール飲みながら夜景見てね」
祐「(揺らぐ)」
泰平「助手席のビールってたまんないんだよな」
祐「・・・」
×     ×     ×
走り出す軽トラ。
タイトル「ボーイズ・ミート・ガール」

〇車内(午前)
首都高を走っている車。運転席に泰平、助手席に祐。車は皇居外苑から、銀座、浜松町を経由し、首都高に乗り、レインボーブリッジ方面へ走る。
泰平「卒業以来?」
祐「会うのは」
泰平「そんな振りかー」
軽トラの車内をまじまじと見る。砂や泥跡で汚れている座席。足元には雑誌や空缶、ボトルなど。後ろの荷台はブルーシートで覆われている。
祐「我孫子から通ってんの?ってかまだ我孫子いんの?」
泰平「いるよ。今一人暮らし」
祐「え?意味なくない?」
泰平「なんで?」
祐「実家と同じ市で一人暮らしするんだったら、もう少し離れろよ」
泰平「現場も近いし、離れると家賃あがるじゃん」
祐「じゃあ実家でよくない?」
泰平「そこは自立だよ。もう社会人なんだから」
祐「・・・実家から貰ってるだろ米とか」
泰平「貰うというより行ったら貰えるんだよ」
祐「週に何回実家行ってる?」
泰平「週末帰るくらいだけど」
祐「何が自立だよ。すねかじりまくってるな」
泰平「かじってねえよ。顔出す事が親孝行だろうが」
祐「支援物資目当ての?」
泰平「・・祐は仕送りとか貰ってないのかよ?」
祐「貰ってるよ。おれは一人暮らしだけど自立出来てるなんて思ってないから」
泰平「どこで一人暮らししてんの?」
祐「葛飾」
泰平「我孫子の横じゃねえかよ。おれと変わんねーだろ」
祐「いやいや。葛飾区都内だし、そもそも地元から出てるから」
泰平「一人暮らしは地元から出なくちゃいけないのか?」
祐「だったら実家にいた方が節約にも親孝行にもなるんじゃないって・・・」
泰平「まあまあ!久々だよ。我孫子と葛飾は置いといて、外見てみ」
芝浦ふ頭を通過する車。車外の景色に驚き、興奮してる祐。レインボーブリッジが目の前に現れる。
泰平「行くぜー」
レインボーブリッジ上を走る車。興奮する2人。
泰平「どうよ?」
祐「やばい」
泰平「来てよかったろ?」
窓を全開にする泰平。車内に風が吹き込む。
祐「最高」
泰平「ふぅーーー」
レインボーブリッジからの景色に浸っている祐。
×     ×     ×
レインボーブリッジを越えた車。
泰平「いやー最高だった」
祐「めっちゃテンション上がった」
泰平「それな」
祐「こっからの箱根?」
泰平「うんうんそう」
祐「いいねー。温泉の前にうまいもん食おうよ。箱根って何有名なんだっけ?」
スマホで「箱根、ごはん」と検索する祐。
車は首都高の有人料金所に付く。
料金所係員「1320円です」
財布の中身を見る泰平。
泰平「(手が止まるが)」
料金を払う泰平。再び車を走らせる。道路上には千葉方面の標識。

〇車内( 昼前)
車は台場から品川→羽田空港方面を走る。
スマホで「箱根 ごはん」の検索を続けている祐。
祐「箱根って意外にご当地グルメ的なのないね」
泰平「そう言われるとコレって飯、思いつかないな」
祐「でもいいお店結構あるよ。高そうだけど」
泰平「箱根で飯はきついかもなー。おれ無職だし」
祐「・・・そうだった」
×     ×     ×
アクアラインに入る車。
車外からはディズニーランドや葛西臨海公園など、いわゆるザ・千葉方面の景色。
祐「え箱根だよね?」
泰平「ん?」
祐「あれ」
車外からはディズニーランドや葛西臨海公園。
祐「千葉だよね?」
泰平「ディズニーランドって東京のシンボルだよね?」
祐「浦安だよ」
泰平「ああ!言ってなかった、今ここアクアラインっていう
んだけど」
祐「知ってる」
泰平「アクアライン使った方が早く着くんだよ、箱根は」
祐「え?」
泰平「そうなんだよ。安くもなるし」
祐「そうなんだ」
泰平「まあ車乗らないんなら、知らなくてもいいんだけど。
知っといてもいいんだけど」
祐「どっち」
泰平「とにかくアクアラインはやばい。景色最高だろ?」
祐「・・たしかに」
泰平「な!」

〇車内( 正午)
アクアライン。東京湾一面の景色が車窓から広がっている。
祐「ダッシュしたなー」
泰平「チャイム鳴る前に教室のドアにスタンバってさ」
祐「じゃなきゃ揚げ耳は手に入れられないからな」
泰平「別に家でも作ろうと思えば食えるのに。食パン揚げて砂糖振るだけ」
祐「あの時は揚げ耳の見えない何かに取りつかれてた」
泰平「間違いない」
祐「ってかさ、やたら購買の列の先頭とってた奴」
泰平「あっ、黒田?デブで眼鏡」
祐「そう!あいつ揚げ耳ある日に限って、列の先頭いるんだよ。教室も遠いし、走りも遅いくせに」
泰平「それ、カラクリあるんだよ」
祐「え?」
泰平「あいつ揚げ耳ある日は、体調悪いとかで保健室行って、昼めし直前に元気になったとか何とかって、教室戻る振りして、購買の列並んでるんだよ」
祐「ずりっ!それ偽ルートじゃん。揚げ耳はチャイムが鳴ってから教室を出るという正規ルートで獲得するからこその価値なんだよ」
泰平「あいつの揚げ耳は本来のおいしさの6割減になってるよ」
祐「間違いない」
泰平「そういやこの前仕事で高校通りかかった時、購買のおばさん見たわ」
祐「坂井真紀?」
泰平「それ自称だろ?」
祐「そうなの?」
泰平「あのおばさん、本名勝俣美奈代だよ」
祐「一文字も被ってないじゃん」
泰平「でもあのおばさん見て色々思い出しちゃったわ」
祐「もう2年も経つのかー」
泰平「早えー。最後突然だったしな」
車内のCDデッキのボタンを押す泰平。
TRFの「BOY MEETS GIRL」のイントロが流れる。
祐「え!?」
泰平「入れといたんだよTRF。好きだったろ?」
祐「びっくりしたー」
泰平「おれら世代でTRF好きとか珍しすぎでしょ」
祐「まあ」
泰平「合唱コンクールの曲もTRFにしようって言ってたもんな」
祐「・・言ってた」
泰平「DJKOOのラップ部分も皆で合唱して、ダンスパートはピアノ弾き続ければ合唱曲になるって」
祐「はずっ、ならねーよ」
泰平「そういえば佐久間さんもTRF好きだったよな」
祐「・・・ああ」

〇千葉中央高校・教室( 昼)
2018年7月。昼休みの教室。
昼飯を食べている高2の祐(17) と泰平(17) 。
「かなみ!」
教室のドアから佐久間七瀬( 17) が声をかけ、教室に入ってくる。七瀬は同じ陸上部の同級生・佐藤かなみの席へ行く。七瀬を見てしまう祐。
七瀬「はい、部活ノート」
かなみ「ありがと」
七瀬「聞いた、TRF?」
かなみ「まだ」
七瀬「聞いてよー。ちょーいいよ」
かなみ「DJKOO、メンバーにいるんだね。ってかあの人グループ所属してるんだ」
七瀬「KOOさんかっこいいでょ」
かなみ「七瀬、古くない?」
七瀬「全然古くないから!」
七瀬を見ている祐。

〇祐の部屋( 夜)
2018年7月。
スマホでTRFと検索する祐。検索トップに「BOY MEETS GIRL」が出る。
サイトを開くとPVと共にイントロが流れ始める。
曲を聴く祐。

〇千葉中央高校・教室( 昼)
2018年9月。昼飯を食べている祐と泰平。横の席には女子4、5人のグループ。その中に七瀬がいる。
泰平「あー揚げ耳」
祐「黒星続いてんなー」
泰平「あの先頭にいた奴。あいつやたらいるんだよ」
七瀬「(祐に)あの」
祐「え?」
七瀬「瀬戸君ってTRF好きなの?」
祐「え?・・・うん」

〇車内(正午)
2023年現在。アクアラインを走っている車。
泰平「告ってたらなー」
祐「そんな事あったな」
泰平「卒業式無くなったからって、やめてさ。卒業式とか関
係なく、告れよ」
祐「あの時はそんな状況じゃなかったろ」
泰平「告白に状況なんて関係あるのかよ」
祐「あるだろ。親戚の法事の前日に告れるか?」
泰平「そういう事じゃなくて。今未練たらたらじゃん」
祐「そんな事ない」
泰平「彼女いんの?」
祐「今?いや」
泰平「いい感じの子は?」
祐「別にいないけど。何?」
泰平「それ未練。佐久間さんが残ってんだよ」
祐「なんだよそれ」
泰平「今電話してみ」
祐「嫌だ」
泰平「TRF被りなんてこの先ないぞ」
祐「うっせーな。泰平どうなんだよ?」
泰平「おれ?いねーよ!金ない、職ない、女もいないから、未来見えない男だぜ」
祐「かっこよくないから」
スマホで佐久間七瀬のLINEアカウントのトップ画を見ている祐。

〇海ほたるPA・フードコート( 昼)
海鮮丼を食べている祐。そばを食べている泰平。
泰平「うま!」
祐「その店我孫子にもあるよ」
泰平「いや美味さが違う!」
祐「そんなわけないだろ。チェーン店なんだから」
泰平「食べてみ?」
泰平のそばを一口食べる祐。
祐「(我孫子の店より美味い) 」
泰平「・・・思ったな」
祐「いや」
泰平「ロケーションの力だよ!旅によって味も変化するんだ
よ」
祐「まあそれは」
泰平「つまりな、祐。お前はこの旅に来て良かったと思っている」
泰平のそばをもう一口食べようとする祐。
泰平「おい!」
祐「何がロケーションだよ。味なんて変わんねーんだよ」
泰平のそばをもう一口食べようとする祐。それに抗う泰平。
×     ×     ×
完食している祐と泰平。
泰平「どうよ大学」
祐「楽しくはないな」
泰平「そうなんだ。すげー自由って聞くから楽しいのかと思った」
祐「確かに授業も自分で組めるし、サークルも、誰といるか
も自由だけど、主体性と積極性無い奴は終わるね」
泰平「(祐に)ある方だろ?」
祐「高校の中ではね。でもその程度じゃ周りに吞まれるな」
泰平「(祐の大学の授業風景を思い出し)確かに呑まれてたな」
祐「おれの周りにいる奴は皆自由を履き違えてるから。まあおれがそうだから周りもそういう奴しか集まってこないんだけど」
泰平「自己分析ふぅー!大学生が大好きな奴」
祐「就活で必ず聞かれるからな」
泰平「まあ大学楽しくするのならそこ変えるしかないんじゃね。大好きなともえちゃんに高い授業料払ってもらってるんだから」
祐「うちの母親、下の名前で呼ぶな」
泰平「ともえちゃん元気?まだ仲良し?」
祐「仲良くねーよ」
泰平「祐ってそういうの隠すよなー。佐久間さんのも」
祐「隠してない。ってか何でクビになったんだよ?」
泰平「話変えた」
祐「これは聞かなくちゃだろ」
泰平「まあ人員削減。コロナでどの業界も規模縮小したり、人手も最低数になったろ。建築業も年々コンパクトになってるみたいでさ。その状況に現場が無いのが重なって。新人をクビにしたって変わらないのによ。むしろ新しい人材育たなくて、より厳しくね?って」
祐「おれらの就活も他人事じゃないよ」
泰平「まあクビの全てがコロナのせいだとは思ってないけどさ」
祐「・・・」
泰平「だめだ、働くイコールしんどいしか出てこない。こんなしんどさ待ってるんなら、せめて最後はちゃんと卒業したかったよー」
祐「・・・まあね」
泰平「おれにとっては、高校が学生最後だったからさ。最後があれはたまんねーなー」

〇海ほたるPA・駐車場(午後)
車へ向かう祐と泰平。
アクアラインの道路案内図に目が留まる祐。
祐「ん?・・箱根無くない?」
泰平「え?」
道路案内図をまじまじと見ている祐。
祐「箱根。これ千葉の下の方向かってね?」
泰平「・・・」
祐「箱根行くんだよね?」
泰平「ごめん!金無くて千葉にした!いざ行くとなると高速代も飯代も高くて。無職だからさ」
祐「なら途中で言えよ」
泰平「箱根、ごはんで検索したり、温泉楽しみにしてる感じ見たら言えなくなった」
祐「それは箱根、温泉、帰りのビールで煽るからだろ」
泰平「じゃなきゃ来なかったろ?」
祐「まあ」
泰平「だろ」
祐「じゃあいいよ。で、千葉のどこ?」
泰平「え、えっと・・・、とりあえず下に?」
祐「どこだよ」
泰平「・・まあ男旅なんだから、とりあえずで行こうぜ」
祐「とりあえずって」
泰平「とりあえず最高!ほら?」
祐「・・・」
×     ×      ×
軽トラ車内。車内は汚く、座りづらい祐。
祐「片付けとけよ」
泰平「すまんすまん」
祐、車内の物を座りやすいように助手席のグローブボックスに入れようとすると、中に『謎の死を遂げた偉人・有名人の秘密』というタイトルの本が入っている。
祐「(悪い予感)」

〇車内(午後)
アクアライン半ば。
祐「(欠伸する)」
泰平「いいよ。起こすから」
祐「寝たらどこ連れてかれるか分かんねえから」
泰平「赤い霊柩車か!」
祐「なにそれ?」
泰平「いや大丈夫」
祐「・・・泰平、なんで来た?」
泰平「え?」
泰平を凝視する祐。
泰平「・・・いや、祐とドライブしたいなって思ったからだよ」
祐「どこ行くんだよ?」
泰平「とりあえず下に」
祐「箱根行くって言って、千葉の下向かったよな。そもそも金ないのにドライブって。教えろよ」
荷台のブルーシートがなびいている。そこからかすかに見えるスコップやロープ。
アクアラインを越える車。進行方向には木更津、袖ケ浦の進路標識。
祐「・・・死ぬつもり?」
泰平「・・・んん?」
祐「千葉の僻地か?樹海とか、深海とか。・・・おれは一緒に死なないからな」
泰平「何いってんだよ?」
祐「じゃあどこ行くんだよ!」
助手席のグルーブボックスから『謎の死を遂げた偉人・有名人の秘密』のタイトルの本を取り出す祐。
泰平「あ・・・」
祐「これなんだよ?」
泰平「・・・君津」
祐「君津?」
泰平「佐久間さんの所向かってる」
祐「え」
泰平「卒業式のリベンジ」

〇コンビニ駐車場( 午後)
高速道路を降りた袖ヶ浦市内のコンビニ。車から出てくる祐と泰平。
祐「勝手な事すんなよ」
泰平「まだ好きだろ?」
祐「おまえこの為に来たの?」
泰平「佐久間七瀬に告白しろよ」
祐「しないから。いつの事言ってんだよ」
泰平「言わないと一生後悔するぞ」
祐「なんで今更」
泰平「思い出したんだよ。卒業式の日に祐が佐久間さんに告るって約束。おれにとっての高校卒業には、祐の告白も含まれてんだよ」
祐「意味分からん。勝手に巻き込むな」
泰平「あの時、告白出来なくて本当に後悔してないか?」
祐「・・・」
泰平「確かに卒業式、いや学校自体が無くなってそれどころじゃ無かったかもしれない。でもあの時言うべきだった」
祐「・・・」
泰平「・・・後悔してんだったら、言ったほうがいい」
祐「もう遅いよ。向こうも新しい生活あるだろうし」
泰平「・・・それは佐久間さんの為を想って?」
祐「今さら行くとか向こうに迷惑だろ」
泰平「・・・分かった」
泰平は車へ向かうが、扉前で立ち止まる。
泰平「もし!・・まだ好きなら今日が最後のチャンスだ」
祐「・・・」
泰平「他の女と付き合っても、デートしてる時も、抱いた時とか・・・」
祐「何言ってんの?」
祐「思い出すよ。今のままだと、どの女といても佐久間さんだったらって」
祐「・・・」

〇車内(午後)
木更津市内の一般道を走っている車。進行方向の道路標識には君津市の文字。
車内ではTRFの「Survival dAnce~no no cry more~」が流れている。
ニヤついている泰平。
祐「なんだよ」
泰平「いやぁ」
祐「とりあえず行くだけだから」
泰平「おう」
祐「なんで知ってんの、佐久間さん君津いること?」
泰平「フェイスブック」
祐「ああ」
泰平「友達と出掛けた写真とか、それこそ君津の景色とか載せてる」
泰平「そうなんだ」
泰平「祐やってたっけ?」
祐「やってないよ」
泰平「・・・もしかして検索したことあった?」
祐「えっ?」
泰平「残念、漢字じゃネットで検索しても出ないんだな。アカウント名ローマ字だから」
祐「へえー」
泰平「したことあったな」
祐「(図星)」
泰平「やっぱ未練たらたらじゃん」

〇君津市(夕)
車から「君津市へようこそ」の道路標識。

〇大田原建設・入口前( 夕刻前)
大田原建設と書かれた建物前で停車する車。
祐「ここ?」
泰平「事務員やってんだって」
車を降りようとする泰平。
祐「ちょっ!」
泰平「何?」
祐「どこ行くの?」
泰平「行くんだろ」
祐「何言ってんの。今働いてるでしょ」
泰平「あ、そっか」
祐「職場乗り込む気かよ」
泰平「じゃあどうする?」
×     ×     ×
1時間後。車内から建物入り口を見ている祐と泰平。
泰平「・・・いつ出てくるんだ」
祐「まだ定時にもなってないから」
泰平「持久戦かー」

〇公園(夜)
日は沈みかけている。大田原建設前の公園のベンチに缶ジュースを飲み、腰かけている祐と泰平。
泰平「これから大変だな。君津まで通うことになるんだから」
祐「え?」
泰平「付き合ったら。祐が行くだろ。君津まで」
祐「そこはお互いの中間の場所とかさ」
泰平「向こう仕事してるんだから」
祐「おれだって大学あるよ」
泰平「おまえの佐久間さんへの想いはそんなものなのかよ」
祐「そもそもまず付き合えるかなんて・・・」
泰平「今くらい明るい未来の予想しようぜ」
祐「まあ」
泰平「でも、たとえフラれたとしても、おまえかっこいいよ」
祐「かっこよくないだろ」
泰平「フラれることはかっこ悪くねえから・・あっ!」
会社から出てくる七瀬。それに気づく2人
祐「・・・来た」
泰平「行ってこい」
歩み出せない祐。遠ざかっていく七瀬。
泰平「祐」
祐「分かってるって」
卒業式の日がフラッシュバックする祐。
その日を払拭させるため、恐る恐る七瀬の方へ向かっていく。そして七瀬の後ろから声をかける祐。
祐「(七瀬に)あ・・・お、おう」
七瀬「え・・・瀬戸?なんで?」
祐「・・・久しぶり」

〇ファミレス(夜)
店名は「BOY MEETS GIRL」
×     ×     ×
ご飯を食べている祐、泰平、七瀬。
七瀬「びっくりしたよー」
泰平「祐とドライブしようって鴨川の方行こうとした途中で通ってさ」
祐「え?そう」
泰平「それで待ってたら来るんじゃねって。佐久間、ベストタイミング」
七瀬「なんで知ってるの職場?」
泰平「フェイスブックで出してたじゃん」
七瀬「ああね」
泰平「おい」
祐「何?」
泰平「静かだな」
祐「あーそうなんだーって聞いてたんだよ」
七瀬「2人は今、大学?」
祐「おれはそう。泰平は無職」
泰平「雑だな説明」
祐「事実だろ」
七瀬「無職なの?」
泰平「まあ今は。先週いきなりクビにね」
七瀬「やば」
泰平「建築やってたんだけど、人員削減。コロナで色々削られた影響だよ」
七瀬「影響あるよね。私も受けたからさ」
泰平「そうなの?」
七瀬「私大学行ってたんだけど、学費出せなくなって。母親いないし、お父さんも飲食で働いてて、仕事無くなって」
祐「そうなんだ」
七瀬「そうそう。で私も働かなきゃで今の所。あ、実は今の仕事、タクキムが紹介してくれたんだよね」
泰平「タクキムって、体育の木村?」
七瀬「そう。3年の担任。色々探してくれたみたいで」
泰平「タクキムいい奴だな」
七瀬「ね」
泰平「おれ最後の日、先生にちゃんと挨拶できなかったり、なんで卒業式やらないんだよとか言ってさ。それは先生たちも同じなんだよな。・・・そっかコロナ無かったらな」
七瀬「ね。卒業式したかったよ」
泰平「(祐と七瀬)2人ってクラス一緒になったこと無いんだよね?」
祐「そうだね」
泰平「接点何なの?」
七瀬「きっかけなんだっけ?」
祐「えTRF?」
泰平「(大げさに)TRF!?」
七瀬「(祐に)珍しいよね」
祐「そっちこそ」
七瀬「部室で歌ってるの丸聞こえだったからね。survival dAnce」
祐「好きだから」
七瀬「今年ライブやるんだよ」
祐「え、そうなの?」
七瀬「知らないの?」
祐「知らない」
七瀬「去年は無くなっちゃったから。今年こそみたいんだよ
ね、生で」
祐「生すごそうだね」
七瀬「チケット申し込みもうすぐ終わっちゃうよ」
祐「まじ?申し込もうかな」
泰平「おい」
泰平は祐に合図を送る。
祐「何?」
泰平は察しろと言わんばかりにさらに合図を送る。
祐「え・・・なら一緒に行こうよ」
七瀬「いいね」
祐「ならチケット申し込んどいて」
七瀬「私?瀬戸が申し込んでよ」
祐「ファンクラブ入ってる方が取りやすいじゃん」
2人のやり取りを微笑ましく見ている泰平。

〇ファミレス・外( 夜)
ファミレスから出てくる祐、泰平、七瀬。
七瀬「ごちそうさまでした」
泰平「いえいえ」
祐「泰平ほとんど出してないだろ」
七瀬「なんか一気に高校時代に戻ったー」
泰平「そう!おれ達はまだ卒業をしていない!」
祐「(七瀬に)ずっと言ってんだよ」
七瀬「(泰平に)仕事見つけてね」
泰平「やめろ!」
七瀬「ごめんね」
祐に視線を送る泰平。
祐「・・・」
七瀬「今度同窓会やりたいよねー」
泰平「確かに。祐、企画しろよ」
祐「おれそんなキャラじゃないだろ」
七瀬「その時は蘇我あたりでやってね」
泰平「祐、送迎してやれよ」
祐「おれ免許持ってない」
泰平「男は持っとかないと」
七瀬「運転できる人はポイント高いです」
祐「考えておきます」
泰平「それ絶対取らないやつじゃん」
笑っている七瀬。十字路に着き、
七瀬「(2人に)じゃあ」
歩き出す七瀬。
泰平、七瀬を引き留めろと祐を促す。
泰平「(七瀬に)あ!送ろうか?」
七瀬「大丈夫。近いよ」
泰平「でも夜物騒だし」
七瀬「君津はその辺安心」
泰平「いや!わざわざ押しかけて、ここまで付き合わせたのに1人で帰らせるのも。(祐に)な」
祐「え送るよ」
七瀬「じゃあお願いします」
泰平「お願いします祐」
祐「(泰平に)え」
泰平「おれアピタで買い物したいから。もうすぐ閉店なのよ」
祐「・・・送るよ」
七瀬「うん」
泰平「(祐に)頼むな。送ったら車回すわ」
車の所へ向かって走り去る泰平。残された祐と七瀬。

〇歩道( 夜)
歩いている祐と七瀬。
七瀬「君津何もないでしょ?」
祐「まあ。でものどかでいいね」
七瀬「ね。空とかすごい綺麗だよ」
空を見上げる2人。
祐「凄いね」
七瀬「凄いでしょ」
近くには川が流れている。
七瀬「部活帰り被って、何回か一緒に帰っ事あるよね」
祐「コンビニのスイーツおごらされた時とか」
七瀬「そうそう。バレてたか」
祐「分かりやすすぎ」
七瀬「・・・大学どう?」
祐「うーん、ちゃんと自分で考えなくちゃなって思ってる」
七瀬「ん?」
祐「いや、ずーっと周りの奴のせいにしたり、時間が何とかしてくれるとか思ってて。でもそうじゃなくて自分で考えて、動かなくちゃ楽しくも、勉強にもならないって」
七瀬「おお大学生」
祐「・・・そっちは仕事どうなの?」
七瀬「わたし?楽しいよ。やっと慣れてきたし、自分の案件
も持てるようになって」
祐「さすが。世渡り上手な感じするもんね」
七瀬「嫌味で言ってない?」
祐「褒めたつもりだけど」
七瀬「棘あるなー」
祐「そんな事ないです」
七瀬「瀬戸、彼女いるの?」
祐「え、今はいないよ」
七瀬「えー、出会い沢山あるでしょ大学」
祐「そういうとこじゃないから大学」
七瀬「でもうらやましいな。わたしの分までキャンパスライフしてくださいな」
祐「・・・はい」

〇七瀬のアパート前( 夜)
到着する祐と七瀬。
七瀬「ありがと」
祐「いえいえ。おれらこそいきなりごめん」
七瀬「いえいえ楽しかったよ。あTRFチケット頑張ってとるね。連絡先変わってないよね?」
スマホを取りだし、祐のアカウントを探す七瀬。
祐もスマホを出す。画面を見ると、泰平から「ぶつかってこい。終わったら焼肉行こう」のLINEメッセージ。
七瀬「これだよね?」
祐のLINEアカウントを見せる七瀬。
祐「あっ、・・そう」
七瀬「りょうかい。じゃあありがとね」
アパート内に入っていく七瀬。
七瀬の姿が遠くなるにつれ、高校最後の日を思い出す。
祐「ねえ!これ」
七瀬「ん?」
祐「LINEのアカウント背景。赤い霊柩車?」
七瀬にスマホを見せる祐。画面は七瀬のLINEアカウント。その背景は多くの君津市民の真ん中に片平なぎさ、その横に七瀬が写っている集合写真。
七瀬「そう!君津にロケ来たの。その時撮ってもらった」
祐「すげー片平さんの隣いるじゃん」
七瀬「片平さんちょー綺麗だったよ」
祐「芸能人すげーな」
七瀬「オーラあった」
祐「オーラってほんとにあるんだ」
七瀬「私もはじめてみた。そこら辺の話今度しよ。また3人でご飯いこ」
祐「・・そうだね」
七瀬「うん。じゃあまた」
祐「・・・あのさ」
七瀬「ん?」
祐「・・・TRF」
七瀬「え?」
祐「2年の時、うちのクラスよく来てたじゃん」
七瀬「あ、かなみいたからね」
祐「その時、TRFの話よくしてたから、それでおれも聞いてみたらハマっちゃって」
七瀬「そうだったの?じゃあ私のおかげだ」
祐「うん」
深呼吸をする祐。
七瀬「・・・」
祐「あの時からさ・・・」
七瀬「・・・」
祐「・・・ずっと好きでした」
七瀬「・・・」
祐「付き合ってください」
七瀬「おそいよ」
祐「ごめん」
七瀬「今彼氏いるんだ」
祐「・・・そっか。そうだよね」
七瀬「・・・うん」
祐「・・・いきなり来て、こんなこと言って。ほんとごめん」
七瀬「ほんとだよ」
祐「・・・」
七瀬「・・・ありがとう」
アパート内に入っていく七瀬を見送る祐。

〇車内( 夜)
運転席には泰平、助手席には祐。
車は君津市から袖ケ浦を通り、一般道で葛飾方面に走る。

〇ラーメン屋(夜)
千葉市内。テーブル席でラーメンを待っている祐と泰平。
祐「・・・」
泰平「・・・」
祐「・・・焼肉じゃないのかよ」
泰平「付き合ってたらだから、焼肉は」
祐「LINE嘘かよ」
泰平「いや、焼肉重いだろー。フラれた時はラーメンくらい
がちょうどいいんだよ」
祐「・・・」
泰平「ごめんな」
祐「ん?」
泰平「いや、焚きつけたのはおれだから・・・」
祐「謝るんだったら最初っから言うなよ」
泰平「そうだな。・・・男いたかー」
祐「いるだろ」
泰平「いけると思ったんだけどなー」
祐「・・・」
泰平「・・でもすげーよ。かっこよかった」
祐「・・・」
ラーメンを運んでくる店員。
店員「お待たせしました。ラーメン、麺大盛、野菜、ニンニク増し」
戻る店員。
泰平「食うか」
祐「おう」
ラーメンを食べる2人。

〇車内(深夜)
葛飾方面に向かって走り続けている車。
祐「絶対、泰平だった」
泰平「おれじゃないって」
祐「キングダムの単行本に進撃の巨人の落書きするのおまえくらいしかいないから」
泰平「おれの画力知ってるだろ?あの巨人はおれの巨人じゃない」
祐「ほんとかよ」
泰平「まじで」
祐「いくら賭ける?」
泰平「・・・200円?」
祐「おまえじゃねえか」
泰平「まじ違う!」
祐「・・・今日ありがとな」
泰平「え?」
祐「やっと言えた」
泰平「・・・おれもやっと卒業できた気がする」
祐「仕事どうすんの?」
泰平「探すかー。学生の余韻はこれで終わり。社会で生きなきゃな」
祐「まあ何かあったら言えよ」
泰平「金貸してくれんの?」
祐「金は貸さない」
泰平「じゃあ今度は祐の運転でドライブな」
祐「免許取らないから」
走り続ける車。

○駐車場
翌朝。泰平のアパート前。軽トラ内を整理している泰平。
『謎の死を遂げた偉人・有名人の秘密』の本やロープ、
スコップなどをごみ袋にまとめている。
泰平は死ぬことをやめた。

〇千葉・我孫子・オフィス(午前)
2年後。2025年・春。
オフィス内は電話対応やPC入力など幾人もが慌ただしい。その中に泰平(23) がPCで入力作業をしている。
泰平「(溜息)」

〇葛飾・一般道
レンタカーナンバーの一台の軽自動車が走る。
進行方向の道路標識には我孫子の文字。

〇オフィス・エントランス( 昼)
多くの社員、アルバイトが昼休憩の為、外に出る。その中に一人で歩いている泰平。すると「おい」と声をかけられる。声の方向に向くと、スーツ姿の祐(23) が立っている。
泰平「え?」
祐「おう」
泰平「あ、おう」
入口前には一台の軽自動車。
泰平「(免許)取ったのか」
祐「行くか」

おわり

「ボーイズ・ミート・ガール」(PDFファイル:516.69 KB)
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