それ、空港前離婚って事だよね? ドラマ

東京の雑誌編集者に憧れる主山優紀(27)は地方の報道記者。 出した名刺は捨てられ、返しの名刺はもらえない。恋人にはフラれ済み。 いつか、東京の雑誌記者になる事を目指して! 女子はハイヒールをはく・第4話。
流合マキ 25 2 1 02/05
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第一稿

〇島役所・全景(朝)
  まばらな住人の出入り。
  (インサート)1997年11月19日

〇同・記者室ドア前(朝)
  ドア札には『記者室』と書いてある。
  島職 ...続きを読む
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〇島役所・全景(朝)
  まばらな住人の出入り。
  (インサート)1997年11月19日

〇同・記者室ドア前(朝)
  ドア札には『記者室』と書いてある。
  島職員が通りかかる。
優紀の声「うっそー!!」
  島職員、またかという顔で通りすぎる。

〇同・記者室内(朝)
  壁にぐるりの各社デスク、真ん中にソファセット。中を見渡すドア側の机。
  主山優紀(27)が、ソファに座って新聞を放り投げている。
  矢山時子(37)がドア側の机で書類に手書きのペンを走らせている。
優紀「結婚式、来月じゃん?今さら?」
時子「大きな声、やめて。もう」
  『空港まで来て離婚』ドラマの宣伝が流れるテレビ画面。
優紀「時子さん…… 知ってたよ。時子さんが面食いって事。でも、今さら?」
  点滅する電話の内線ランプ。
  優紀、時子を遮り受話器を取る。
優紀「あぁ広報部?時子さんは、取り込み中! 市の広報の部数数え? 手が空き次第行けるよ うに伝えます」
時子「もう、勝手に出ないで」
優紀「それどころじゃないじゃん。婚約者の顔が気に入らないって、分かってた事なのに。安定とったんじゃなかったの?」
時子「顔って…… そう聞こえた? あの人ったら実は、」
   優紀のポケベルが鳴る。
優紀「本社だ! ありえない! 無視」
   記者室内のFAXが一斉に動き出す。
   時子、FAXを一枚取って優紀に渡す。
時子「はい、お仕事! 行ってらっしゃい」
   優紀、しぶしぶ部屋を出ようとして振り返り、
優紀「今やってるドラマ、見た? 空港のやつ!あれ、ありだよね!」
時子「こら。思い込みやめて。でもありがと」
   優紀、うなだれて出ていく。

〇国道
  事故現場。警察のパトカー、警官に、元県警の中村涼平(39)、
  記者に混じって田島登(31)大木巌(62)の読よみ新聞記者コンビがいる。
  バス停のベンチに犬が繋がれている。
  優紀、無言でベンチを見て、映像を撮っている。
優紀「…… お疲れ様です」
田島「お疲れ様です。今から?」
大木「お嬢ちゃん、遅かったなー?別の現場か?」
優紀「お嬢ちゃん、じゃありません!」
大木「こわ。先にいくぜい」
優紀「もう、いつまでお嬢ちゃんなのよ! あったまきちゃう」
田島「そうかな? 新聞記者が、別の現場に行ってないか探るって、相当、認めてるよね」
優紀「何ソレ? 意味わかんない」
田島「わかんないって……」
  田島、むっとして去る。
  中村が話しかけてくる。
中村「おはようございます」
優紀「あ、おはようございます。何で?」
中村「何でって? とっくに島署に移動になってるのに、未だに驚くんですね」
優紀「いやあ、まあ、イメージもあるし。本当は私のせいなのかな? とも思ったり」
中村「あぁ、4年前のガサ? まさか! 情報リークの責めを受けてって事? 自分で希望したんですよ」
優紀「するかな? こんな移動」
中村「しますよ。自分の誇りのために、仕事を選ぶ事はあります。この4年でいろいろあったんですよ」
  警官や記者が撤収し始める。
中村「時間あるなら、座りませんか?」
優紀「ここ? いいんですか?」
中村「現場検証、終わってるんで。記事は大丈夫ですか?」
  中村と優紀、バス停のベンチに座る。
時子「時間的に昼ニュースには間に合わないので。夕方のになるかな。あの、この犬」
中村「被害者の犬みたいですね。誰かが、繋いだみたいです。亡くなってるとも知らずに、ずっと、被害者の側にいました」
優紀「あぁ、もう、これだから嫌なのよ。ちょっとお散歩に出たら終わる命がある。死ぬって事が身近すぎて」
中村「身近すぎて、なんですか?」
優紀「私の内面にずかずか入って来ないでください!」
中村「じゃあ、別の質問をしますね」
優紀「だめだめ!」
  中村、ふっと笑って、
中村「インタビューされる側になると拒否って? そりゃないですよ。まあ、答えたくなかったら、いいんですけど……」
  警官が来て、犬を連れて、敬礼して去る。
中村「事故現場で、」
優紀「聞くんだ?」
中村「はい、記者さんたちに影響うけちゃって、って事で」
中村「事故現場で、手を合わせる記者さんをたまに見かけますけど、主山さんは、しないですよね。なぜですか?」
優紀「聞くよね…… 聞きにくい事、聞くよね」
中村「まあ、記者さんの影響って事で」
中村「…… 答えはどっちでも、」
  優紀、かぶせる様に答える。
優紀「死んでるから。悼む姿も、故人には見えないから。何にもならないのよ、私が悼んでも。助からないし、どうにもならないから」
中村「それは、」
優紀「変に、解釈して慰めようとは思わないでください。それじゃ」
  優紀、立ち上がり、パトカーを見る。
  警官が、犬をパトカーに乗せている。
優紀「あれは、あなたの指示?」
中村「犬ですか? はい。遺族が落ち着くまで署で預かろうかと」
優紀「ありがとうございます」
  優紀、その場を離れる。
  中村、赤くなる頬に手を当てて、
中村「参ったな……」
  優紀を見送る。

〇喫茶こごろー前(夕)
  優紀が石を蹴りながら歩いている。
  大木が出て来る。
大木「お、お嬢ちゃん! もう帰りか?」
優紀「夕方のニュース終わったんで」
大木「時子さんの婚約者、消えたぞ。女と」
  優紀、びっくりして駆け去る。
大木「記者は冷静さが大事なんだがな。まだまだだぜぃ」

〇居酒屋(夜)
  角のコーナー上に、テレビがある。
  優紀と時子がテーブル席で飲んでいる。
優紀「顔も悪くて、女癖も悪いって、なんなのさ」
時子「やっぱり、どうせ騙されるなら、カッコイイ男がいいわよね」
優紀「それも、ひっく、どうかと、ひっく」
時子「妥協はダメ! やめる! 今後も顔で選ぶ!ことを宣言しまーす」
優紀「それもどうかと」
時子「島署のさ、中村さん、かっこよいんじゃないのぉ?」
  優紀、赤くなる。
時子「あ、赤くなった!」
優紀「お酒のせいだもん…… って、あれ、時子さん?」
時子「好き、だったの……」
優紀「え?」
時子「好きになってたの……」
優紀「あの、顔が、えっと、個性的な方?」
  時子、大笑いする。
時子「それ、最初に言ったやつ。初めて会わせたときにね」
  優紀、周りを見回す。
  テレビに『空港まで来て離婚』のドラマが映っている。
優紀「お酒! 生中!」
  テーブルに運ばれる生中。
優紀「ささ、生ビール来ましたよ。乾杯しよ」
時子「何に?」
優紀「空港『行く前』離婚に!」
  時子、テレビを観る。
優紀「テレビ、観よっ! お酒、飲も!」
  うつ向く時子の肩を撫で、窓の外を見る優紀。
  ガラス越しの三日月。

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コメント

  • はじめまして
    翻訳家をしております、岩崎と言います

    突然なのですが、流合さんの脚本を海外の映画祭に出品したいとは思いませんか?
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