なりすましの偶像。 ドラマ

若い世代を中心に人気を誇る、男性アイドルグループ〈コズミック〉。 だが、彼らの煌びやかなステージと笑顔の裏側には、とある陰鬱とした秘密があった。 ―それは、各々が他人になりすましているということ。 何故、彼らは他人を演じるのか。 彼らの過去に、いったい何があったのか。 絶対羨望の偶像が今、動き出す。
白夜 9 0 0 05/16
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第一稿

登場人物

・怜央〈レオ〉(18)・人気三人組アイドルグループ、〈コズミック〉のアイドル。寧王〈ネオ〉の双子の弟。ネオを演じる。

莉緒〈リオ〉(16)・〈コズミック〉のア ...続きを読む
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登場人物

・怜央〈レオ〉(18)・人気三人組アイドルグループ、〈コズミック〉のアイドル。寧王〈ネオ〉の双子の弟。ネオを演じる。

莉緒〈リオ〉(16)・〈コズミック〉のアイドル。レオを演じる。ネオとレオの弟(?)

類〈ルイ〉(18)・〈コズミック〉の新人マネージャー。

―本編―

〇アパート・レオの部屋(ネット配信中)
   スマホの前、レオとリオ、手を振る。
   ルイ、撮影。
レオ「…ではでは、〈コズミック〉のネオとレオでした!皆、またねー!」
リオ「またなー」

   ルイ、配信を切る。スマホを操作する。
ルイ「…はい、カット!いやぁ、お二人ともお疲れさまでした。今日も素晴らしい放送でしたよ。…あ、ひとまずアーカイブは残しておきますね」
レオ「…」
ルイ「あぁそういえば、今回の配信の合計視聴者数、見ました?五万人ですよ!お二人が生歌を披露する時には七万人までいってたくらいで!…あ、ほら、見てください!さっそくファンの方が、ネットで感想を書いてくれてますよ…って、うわぁ、すごい!べた褒めじゃないですか!うーん、やっぱり、たくさんの人に喜んでもらえるのは嬉しいものですね。ネオもそう思いません?」
レオ「…」
ルイ「…ネオ?どうかしました…って、うわぁっ」
   
   レオ、ルイを突き飛ばす。
レオ「あーもう鬱陶しい。っつーか、配信の時以外はネオって呼ぶなって、いつも言ってるだろうが。いい加減にしろ」
ルイ「そ、そうでした…。すみません、レオ」
レオ「ったく、どいつもこいつもネオ、ネオ言いやがって…。いったいアイツのどこがいいんだか」
   リオ、自分のスマホを眺めながら言う。
リオ「…やっぱり顔じゃない?アイドルなんて皆そんなもんでしょ」
ルイ「え、ちょっ、リオさん•••?」
リオ「だってそうじゃん。不祥事起こして、無断でグループ逃げ出すようなヤツが、お世辞にも性格いいなんて言える?」
レオ「まぁ•••確かにそうだな」
ルイ「ちょ、ちょっと。やめましょうよ、ネオさんを悪く言うのは。ネオさんはお二人のお兄様でしょう?それに、〈コズミック〉がここまで人気になれたのは、あの方の力があってこそですし…」
リオ「…でも、その〈コズミック〉を壊したのもあの人でしょ。そもそもあの人がいなければ、俺たちはこんな目に遭わずに済んだだろうし」
ルイ「り、リオさん…」
リオ「•••ルイもさ、いい加減あの人庇うのやめなよ。君も分かってるでしょ。あの人さえいなければ、レオはネオを演じる必要なんてなかったし、俺だって、レオになりすましてアイドルなんかやる必要なかったの。…メンバーになりすまして、たくさんの人を騙して、ファンから金をかすめ取ることになんてならなかったんだよ!!」
ルイ「リオさん•••」
レオ「•••リオ、少し落ち着けって。いくらなんでも、ルイに当たるのは違うだろ」
リオ「•••じゃあどうすればいいんだよ。俺、もう限界だよ•••。これ以上、ファンを騙しきれない•••」
レオ「•••リオ」
リオ「•••ねぇ。今日の配信のコメント欄、見た?」
ルイ「え、コメント•••ですか?」
リオ「うん。『最近のレオは、まるで別人だ』•••ってさ。やっぱり、ファンの何人かはもう気づいてるんだよ•••俺がレオじゃないってこと。声も喋り方も顔つきも、昔と全然違うって」
ルイ「そ、そんなはずは•••」
リオ「•••まぁでも、そうだよね。だって俺は、レオじゃないもん。いくらファンが求めてるレオを演じてたって、俺は所詮、リオなんだから•••」
レオ「•••」
リオ「いくら真似たところで、俺はレオにはなれないのに•••。なのに、どうして事務所はこんなこともわかってくれないんだろ•••。そんなにネオが大事なの•••?あの人の地位を守る為だったら、ファンも俺たちも蔑ろにしてもいいって、そんな訳ないでしょ•••」
ルイ「り、リオさん•••」
リオ「•••コメントを貰う度、いつも思うの。あぁこの人達が好きなのは、俺じゃないのにって。好きって言ってもらえる度に、応援してますって声をかけてもらえる度に、いつもいつも苦しくて•••もう•••もう、おかしくなりそうなの!レオを演じるのは、もううんざりなんだよ!!」
レオ「•••」
リオ「あああぁぁぁもうほんとに嫌だ•••。ネオも<コズミック>も事務所もみんな嫌い。大っ嫌い!!もういい加減にしてよ•••」

   リオ、両手で顔を覆う。
ルイ「•••あの、レオさん」
レオ「•••なんだよ」
ルイ「少しお聞きしたいのですが•••。お二人がかつての<コズミック>になりすますようになったのは、ネオさんの脱退が原因なんですよね?不祥事を起こしたと聞いていますが、具体的にネオさんは、いったい何をしたんですか?」
リオ「•••は?君、事務所から何も聞かされてないの?何も知らないくせに、<コズミック>のマネージャーになるなんて言ったの!?」
ルイ「い、いえ、そういうわけでは•••。ですが、僕も事務所から自動的に配属されてマネージャーになっただけなので、詳しくは教えて貰えなくて•••」
レオ「•••またいつもの隠蔽か。ったく、事務所には頭の固い馬鹿しかいねーのかよ」
リオ「•••<コズミック>はもともと、俺たち兄弟で結成したグループだったの。レオとネオの双子を売りにして歌って、裏では俺がマネージャーをやってた」
ルイ「•••え、リオさんって、もとはマネージャーだったんですか?」
リオ「•••そうだけど」
ルイ「な、なるほど•••。じゃあ僕が事務所からこのグループのマネージャーに配属されたのは、リオさんの代わりになる為だったんですね•••」
リオ「•••<コズミック>は徐々に人気を高めていった。でも、有名になっていくにつれて、グループは実質、ネオの独り舞台になっていったの。ネオの人気だけ高まって、<コズミック>としての知名度やレオの存在は、影に隠れるようになったんだよ」
ルイ「•••そんな人気絶頂の中、ネオさんは問題を起こしてしまったんですね?」
レオ「•••そ。他のグループのヤツと衝突して、殴っちまったんだってさ。殴られた相手は、全治2週間の鼻骨骨折。和解も出来なかったから、俺たちの間では大きな問題になったな」
ルイ「傷害事件だった•••ってことですか?」
レオ「あぁ。でも、事務所はネオを<コズミック>から密かに脱退させただけで、事件を起こしたことは世間に公表しなかったんだ。それどころか、事務所はアイツの穴埋めとして、俺たちに今まで通りの<コズミック>を演じるよう強要してきた」
ルイ「それで、レオさんはネオさんに、マネージャーだったリオさんはレオさんになりすまさなければいけなくなったんですね•••。ですが事務所側は、何故そんな無謀な要求をしたのでしょうか•••」
リオ「•••ネオの評価を守るためでしょ。当時、事務所に所属するアイドルで一番人気があったのは、あの人だったし。事務所としても、ネオを失うわけにはいかなかったんじゃない?」
ルイ「なるほど•••。それでお二人に、ネオさんの代わりを演じるように言ったんですね」
リオ「•••でもさ、なんで事務所はネオをわざわざ脱退させたんだろ。隠蔽工作の得意な事務所のことだから、当時もてっきりまた隠し通すんだとばかり思ってたけど•••」
ルイ「い、言われてみれば、確かにそうですね•••。何か理由でもあったんでしょうか」
レオ「•••俺が告発したんだよ」
ルイ「え•••?」
リオ「•••レオ、今なんて?」
レオ「•••だから、俺がマスコミに告発したんだよ。まぁ結局、事務所が賄賂渡すなりなんなりして口止めされて、報道はされなかったけど。だけど、外部にネオの不祥事が漏れて事務所側はアイツを解雇する他なくなった」
ルイ「え、そ、そうだったんですか!?」
リオ「•••ちょっと待って。じゃあ、レオがマスコミに告発さえしなければ、ネオは脱退しなかったってこと!?俺たちも、こんな目に遭わずに済んだってことなの!?」
ルイ「でも•••。レオさんのことですから、ネオさんの不祥事がもみ消されてしまうのは、あらかじめわかっていたはずですよね?•••それなのに、どうしてわざわざ告発なんてしたんですか?」
リオ「•••そうだよ。いったいどうして•••」
レオ「•••だっておかしいだろ。俺から人気も仕事も全部奪っていったくせに、罪を犯しても断罪すらされないなんて」
ルイ「え?」
レオ「報道されないのは目に見えていたさ。でも、だからって見過ごすのはすっげー癪だったんだよ。アイツの人気だけ高まって、俺の仕事やファンがぶんどられたのも気に食わなかったし。•••少しは痛い目みればいいって思ったんだよ」
リオ「•••」
レオ「•••まぁでも結局、こんなことになっちまったけど。ネオの脱退のきっかけを作った俺はまだしも、リオまで巻き込んじちまって•••。リオだって、女の子なのに•••」
リオ「•••レオ、それは言わない約束でしょ。レオがネオになるって決めた時から、俺も自分の性別は捨てるって決めてたんだからさ」
ルイ「え?•••え!?ちょっと待ってください!リオさん、女の子だったんですか!?」
リオ「は?そうだけど?•••何、今更気づいたの?遅くない?」
ルイ「い、いやだって•••声も低いですし、てっきり男性の方だと•••」
レオ「•••俺に似せようとして努力したんだよ、コイツは。俺も少しでもネオに近づこうとしたけど•••結局駄目だった。やっぱり俺は、ネオにはなれなかったんだよ」
ルイ「で、でも、僕は•••そうは思いません」
レオ「え•••」
ルイ「僕もネオさんのことはテレビでしか見たことありませんが、<コズミック>として配信していた時のレオさんは、どこから見ても、僕にとっては正真正銘のネオさんでした。リオさんだって、そうです。お二人はファンを騙していると仰っていましたが、ファンを楽しませていたのも、お二人だけだったと思うんです」
リオ「•••でも」
ルイ「たしかに、他人を演じるというのは辛いことかもしれません。•••でも、僕はお二人が作る<コズミック>のステージが大好きです。お二人と、もっと仕事がしたいです。•••お二人はいつも自分のことよりもファンのことを第一に考える、優しい方たちですから•••」
レオ「•••」
ルイ「だからもう少しだけ•••頑張ってみませんか?僕も全力で頑張りますから•••」
リオ「•••俺はいいよ。ルイがそこまで言うなら」
レオ「え、リオ?」
リオ「どうせ解散なんてできないし。俺も気は乗らないけど•••ルイが頑張りたいって言ってるなら、それを無下にはできないでしょ?」
レオ「そ、それはそうだけど•••」
ルイ「レオは•••どうお考えですか?やっぱり、嫌ですか•••?」
レオ「•••いや。<コズミック>をここまで滅茶苦茶にしちまったのは俺だし•••。リオがいいなら、俺はそれで••••」
ルイ「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
リオ「じゃ、ひとまず明日の配信の打ち合わせでもしようか。内容とか曲とか、色々決めなきゃいけないでしょ」
ルイ「そうですね!ではさっそく、企画を立て始めましょう!」
   三人、和気あいあいと企画を立て始める。

〇同・レオの部屋(レオ、リオ不在)
ルイ「•••ふふ。なーんて、ね。あぁ二人とも、本当に可愛いなぁ。僕のこと、すっかり信じ込んじゃって。新人マネージャーのアヤセ ルイなんて、存在しないのにね。んふふ、僕がネオだって知ったら、二人ともいったいどんな顔するんだろ•••?」   END

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