カーツ惑星調査団♯4『心霊現象 in 惑星ハワ』 SF

訳あって、惑星ハワに不要不急の着陸をしたカーツ惑星調査団。しかし、いざ離陸しようとすると、船が怪獣の怨霊に憑りつかれてしまう。幽霊相手では、いくらタノク・M・イリウス(20)の影を巨人化させても手の出しようがなく……。
マヤマ 山本 7 0 0 08/08
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第一稿

<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父 ...続きを読む
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<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
 
矢浦(26)宇宙探偵
田尾(22)矢浦の世話係、女性型アンドロイド
 
怨霊獣・トーグ



<本編>
○(夢の中)惑星ペユワー・某所
   轟音が響く。

○(夢の中)ツエーツ号・共同スペース
   轟音に気付き、窓の外を見やるナサマチ・F・ダラ(17)、テシ・Y・ケルナー(8)、ナサマチ・F・ルギエバ(46)。ナサマチはシェフの服装、ダラとテシは私服姿。
   窓の向こう、体長五〇メートル程の怪獣・クグノワ(ここではシルエットしかわからない)が暴れている。
ダラ「何がどうなって……」
ナサマチ「ワイが様子を見てくる。二人はここに居るんや」
ダラ「ウチも行く」
ナサマチ「あかん。ダラはケルナーを見とくんや。ええな」
   出て行くナサマチ。
テシ「(怯えながら)ダラちゃん……」
   テシを抱きしめるダラ。
ダラ「大丈夫。きっと、大丈夫や……」
   窓の向こう、暴れ続けるクグノワ。

○矢浦号・ゲストルーム
   無機質な部屋。
   ベッドに横になるダラ、目を覚ます。
ダラ「夢、か……。ここは……?」

○航行する矢浦号
   ツエーツ号と比べると小さいシャトル型宇宙船。

○矢浦号・生活スペース
   入ってくるダラ。
   朝食が準備されたテーブルに、すでに席に着いている矢浦(26)と、その脇に控える女性型アンドロイド・田尾(22)。
ダラ「おはようさん」
矢浦「良く眠れたかい? 我が妻よ」
ダラ「誰が妻や、アホ」
田尾「(機械的に)おはようございます。ダラ様」
ダラ「……え~っと、名前何やったっけ?」
矢浦「小生専属のサポートロボ、名は田尾」
田尾「タオです」
ダラ「せやったな。おはようさん」
矢浦「もちろん、小生の専属という事即ち其方の専属。小生達はもはや、旅のパートナー」
ダラ「『次の惑星に着くまでの』いう単語が抜けとるで」
矢浦「それは失礼。それではまず、付き合ってもらおうか、朝の儀式」
ダラ「朝の儀式?」

○同・撮影スタジオ
   ダラと矢浦の写真を撮る田尾。様々なポーズで、何枚も。

○同・生活スペース
   入ってくるダラと矢浦。
ダラ「何なん? あの儀式」
矢浦「其方達は撮らないのか、遺影を?」
ダラ「は? 遺影? 気ぃ早すぎひん?」
矢浦「いつ訪れるかわからないだろう、死は? だから遺しておくのだ、遺影と、遺骨」
   矢浦の指す先、棚の上に置かれた二本の肋骨入りのケース。
ダラ「(驚き)骨!?」
矢浦「(腹部を指し)二本ほど抜いてあるのだ、あばらの骨を」
ダラ「考えられへん……」
矢浦「さて、そろそろ始めなくていいのかい? 父上への、朝のご挨拶」
   矢浦の指す先、球体の移動式カメラ。

○航行するツエーツ号

○ツエーツ号・共同スペース
   作戦机を囲むタノク・M・イリウス(20)、テシ、ナサマチ。モニターにはカメラから受信した映像が映っている。
テシ「あ、ダラちゃん映ったよ」
ナサマチ「おぉ、ダラ。ダラぁぁぁあああ!」
タノク「朝からうっせぇな」
   そこにやってくるラヤドケ・S・リオト(33)。
ラヤドケ「それにしても、何を話しているんでしょうね?」
タノク「改めてプロポーズ、とか?」
ナサマチ「何やて!?」
テシ「毎日僕の為に味噌汁を食べてくれないか?」
タノク「どこでそんな台詞覚えんだよ。……っていうか、微妙に違ぇし」
テシ「え、そう?」
タノク「それより腹減ったんだけど。団長、飯まだ?」
ナサマチ「(聞いておらず)おぉ、ダラぁぁぁあああ!」
ラヤドケ「どうやら、何も用意していないようですね」
タノク「嘘っ!? うわ、死ぬ……」
   ラヤドケの見つめる先、何やら喋っている様子の矢浦とダラ。

○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
   T「♯4 心霊現象in惑星ハワ」

○矢浦号・生活スペース
   向かい合って座るダラと矢浦。ともに味噌汁を飲んでいる。傍らに立つ田尾。
矢浦「では、続きを話してもらおうか、昨夜の」
ダラ「えっと……どこまで話したんやったっけ?」
矢浦「クグノワ事件」
ダラ「せやったな。……そんな話聞いて、どないすんのや?」
矢浦「一言で現すなら、興味」
ダラ「興味て……」
矢浦「其方達の仕事、惑星調査。何をしてきたのか、詳細」
ダラ「『してきた』か……。それはほんまに知らへんねん。ウチが入る前の話は」
矢浦「では、何故している、惑星調査を?」
ダラ「それも知らんけど、移住でも考えてるんちゃう? ウチの星、エネルギー不足でな。まぁ、怪獣も居らへんから平和でええねんけど」
矢浦「では、戻すとしよう、話を。その、クグノワ事件の後。生き残ったのが、今の五人」
ダラ「せや。元々調査団のメンバーだったのがリオトさんとイリウスだけやけど」
矢浦「イリウスというのは、タノク・M・イリウス。サーゼシステムを使い、影になれる唯一の男」
ダラ「元々は一番下っ端の隊員やったんやけど、今は記憶があらへんねん」
矢浦「もう一人のリオトというのは、ラヤドケ・S・リオト」
ダラ「元々は小隊長やってたんやけどな。クグノワ事件で足をケガしてもうてからは、現場から外れて後方支援にまわってくれとる」
矢浦「が、副団長なのだな、役職は」
ダラ「今の団長はウチのオトン、ナサマチ・F・ルギエバ。元々はただのツエーツ号専属シェフやったんやけどな。最年長やから隊長になっただけやと思う」
矢浦「其方の方が、よほど『らしい』な、調査団員。ナサマチ・F・ダラ」
ダラ「ウチは元々、調査団志望やからな。一八歳いう年齢制限があったから、まだ見習い扱いやったけど」
矢浦「小生が一番気になっているのは、最年少が。テシ・Y・ケルナー。子供のようだが、どうなっている、彼の現場での役割は?」
ダラ「ウチらには真似できん。不思議な力を持っとんねん」
矢浦「不思議な力?」
ダラ「ケルナーは、惑星カーツの少数民族の子なんよ。そういう特殊能力を持っとる」
矢浦「それは、例えばこういう事は可能かな? 生物を、別の生物の中に閉じ込める事」
ダラ「さぁ? 見た事あらへんな」
矢浦「承知。では……むっ?」
   窓の向こうに見える、灰色の惑星ハワと、そこに向かっているツエーツ号。
矢浦「どうやらこの惑星に入るようだ、ツエーツ号は」
ダラ「? もうエネルギー切れやろか?」
矢浦「否。おそらく、其方を返してもらうためだけの、寄り道」

○惑星ハワ・丘
   小高い丘の広場に並んで停泊するツエーツ号と矢浦号。眼下に広がる、ビルも多く立ち並ぶ現代的な街並。
   T「惑星ハワ」
   それぞれの前に立つタノク、ナサマチ、テシとダラ、矢浦。
ナサマチ「ほな、約束や。娘は返してもらうで」
矢浦「『次にエネルギーを補給するまで』と解釈していたのだが、よほど信用が無いようだな、小生は」
ナサマチ「何や、文句あんのか?」
矢浦「否。少なくとも、理論上は」
ナサマチ「え……せ、せやろ? 話わかるやないか」
矢浦「(ダラに)さぁ、戻りたまえ。其方の船へ」
ダラ「(矢浦を見つめ)……」
   ダラに抱きついてくるテシ。
テシ「ダラちゃん、お帰り」
ダラ「あぁ、うん。ただいま」
ナサマチ「大丈夫やったか? 変な事されてへんか?」
ダラ「大袈裟な。ただ……飯はオトンが作るもんの方がええな」
タノク「あ~、それ大事だよな」
ナサマチ「よっしゃ、早速腕によりをかけて作ったるわ」
タノク「やっとか~。もう腹減って腹減って」
   ツエーツ号に戻ろうとする四人。
矢浦「おっと、其方達。忘れ物」
   球体カメラをナサマチに渡す矢浦。
ナサマチ「せやったな。おおきに。ほな」
   全員がツエーツ号に乗り込み、ドアが閉まる。その様子を見ている矢浦。
矢浦「上々の出来だろうか、第一段階は」

○ツエーツ号・共同スペース
   席に着き、ベルトをしている四人とコクピット前に座るラヤドケ。
ナサマチ「ほな、無事に全員揃ったいう事で。ツエーツ号、発進や」
ラヤドケ「発進、了解です」
   操作するラヤドケ。少し浮上した後、動かなくなるツエーツ号。
タノク「……ん?」
ラヤドケ「おかしいですね……」
   再び操作するラヤドケ。動かないツエーツ号。
ダラ「何や、まさかエネルギー切れか?」
ラヤドケ「いえ、エネルギーは充分にあります。僅かに浮上していますし。何か外から影響を受けているんでしょうか」
ナサマチ「……まさか、あの男か?」

○惑星ハワ・丘
   ツエーツ号から出てきて、外に立つ矢浦の元に歩み寄るナサマチ。
ナサマチ「おい、矢浦はん。何してくれはったんや?」
矢浦「何も。小生は無関係」
ナサマチ「ほな、何で……」
矢浦「よく見てみるといい、周囲を」
   顔を上げるナサマチ。ツエーツ号を霧のようなものが包んでいる。
ナサマチ「な、何や……?」
    ×     ×     ×
   浮上するツエーツ号、霧から出ようとすると動かなくなる。
   その様子を離れた場所から見ているタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、矢浦。
ナサマチ「原因は、あの霧か……」
テシ「何なの? アレ」
タノク「案外、お化けとか?」
ダラ「アホな事ぬかすな」
矢浦「否、一言で現すなら、正解」
ダラ「え?」
矢浦「かつて遭遇した事がある、似たような事件に」
ナサマチ「またまた。矢浦はん、幽霊なんて居る訳が……」
矢浦「ならば、するがいい。刮目を」
   念仏を唱える矢浦。霧が徐々に固まり、体長四五メートル程の怪獣の幽霊・トーグの姿になる。
ダラ「怪獣……いや」
テシ「怪獣さんの、お化け?」
ナサマチ「ほんまもんかいな」
矢浦「してもらえただろうか、納得を」
ダラ「まぁ、そうと分かれば話は早い。任せたで、イリウス」
タノク「え~、結局俺? でもほら、今の状況じゃサーゼボックスも出せないんじゃね?」
ナサマチ「ナサマチからツエーツ号へ」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るラヤドケ。
ラヤドケ「了解。ツエーツ号、発進します」

○惑星ハワ・丘
   浮上するツエーツ号。サーゼボックスを下ろせるギリギリの高さ。

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るラヤドケ。苦悶の表 情。
ラヤドケ「くっ……」

○惑星ハワ・丘
   何とかサーゼボックスを降下させ、その脇に降りるツエーツ号。
ラヤドケの声「(荒い息で)こちらツエーツ号、サーゼボックス、降下、完了です」
タノク「マジか……やんなきゃダメ、だよな?」
ダラ「ここまで来て何言うとんねん。早よ行きや」
タノク「ちぇっ」
   グータッチをし、サーゼボックスの中に入ってくタノク。
ナサマチ「ダラ、サイズは四五や」
ダラ「四五、了解。サーゼボックス、起動!」
   出現する影タノク。
影タノク「さて、と。どっちが勝っても恨みっこ無しだぜ?」
影タノクの素手による攻撃は、全てトーグの体をすり抜ける。
影タノク「あれ?」
   攻撃を続けるも、結果は同じ。
影タノク「何これ、ダメじゃん。おい、ダラ。寄越せ」
   出現した黒い剣を手に取り攻撃するも、結果は同じ。
影タノク「これもダメか……って、え、どうすんの?」
   口から光線を出すトーグ。
影タノク「うわっ、ヤベッ」
   身構える影タノクをすり抜ける光線。
影タノク「……ん? あ、ソッチの攻撃も当たんねぇのか。案外、フェアだな」
   サーゼボックスの脇に立つダラ。
ダラ「一体、何がどないなって……」
ラヤドケの声「ダラさん、一旦システムを停止してください」
ダラ「了解。サーゼシステム、停止」
   消えて行く影タノク
    ×     ×     ×
   レーザー銃で幽霊を銃撃するダラ。攻撃はすり抜けて行く。
ダラ「やっぱり、か。となると、プワツナー砲もアカンやろな」
テシ「試してみる?」
タノク「止めとけ。燃料の無駄」
ナサマチ「ところで、矢浦はん。アンタが前に似たような事件に遭遇した時は、どうやって解決したんや?」
矢浦「別に、遭遇しただけだ、小生は。残りの仕事をしたのは、専門家」
ダラ「専門家て……幽霊とか、そういう?」
矢浦「いかにも」
タノク「この惑星に、そんな奴居んのか?」
   街並を見下ろすタノク。
矢浦「調べてみてはどうかな、この惑星を」
ダラ「え?」
矢浦「惑星調査団なのだろう? 其方達は」
ナサマチ「……せやな。調べに行こか」
テシ「うん」
ダラ「了解。行くで、イリウス」
タノク「……って、え、俺も? 今めっちゃ疲れてんだけど」

○同・各地
   タノク&ダラ、テシ&ナサマチの二手に分かれ、寺院等をまわり聞き込みをする。

○同・丘(夜)
   並んで停泊するツエーツ号と矢浦号。
   眼下の街は、ネオン等でまぶしい。

○ツエーツ号・共同スペース(夜)
   作戦机を囲むタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ。
ナサマチ「あの幽霊自体は、随分前から目撃情報があったらしいで」
ダラ「せやけど、結局打つ手がない言うて、現在に至ってるんやて」
ラヤドケ「今まではどのようにして解決を?」
ナサマチ「気ぃ付いたら、居らんくなってたそうや」
タノク「待つしかない、って事だろ?」
テシ「待つって、どれくらい?」
ダラ「短ければ一年くらい、やて」
ラヤドケ「……長いですね」
   沈黙。
タノク「あ~、もう。休憩しようぜ、休憩。疲れちったよ」
ダラ「ちょっ、イリウス」
   出て行くタノク、追いかけるダラ。

○惑星ハワ・丘(夜)
   出てくるダラ。トーグを見つめているタノク。
ダラ「イリウス、何してるん?」
タノク「……バチが当たったのかな?」
ダラ「え?」
タノク「俺達、今まで何匹もの怪獣をぶっ殺してきただろ? ソイツらの怨念が、今こうやって形になってんのかもな、って。何かそう思えてきちまってさ」
ダラ「考えすぎやて」
タノク「でも怪獣側から見りゃ、俺らはただの怪獣殺し。犯罪者だろ?」
ダラ「!?」
タノク「……って事は、犯罪者と戦うこの幽霊は、正義の怪獣か」
ダラ「……そんな訳ないやろ」
タノク「ん?」
ダラ「ウチらは犯罪者ちゃう。ウチらは正義や!」
タノク「? どうした、ダラ?」
ダラ「……別に。何でもあらへんわ」
矢浦の声「どちらにあるのか、正義は」
   そこにやってくる矢浦。
矢浦「全くもって無意味だ、その質問は」
タノク「まだ居たのか」
矢浦「小生は興味がある、この行く末に」
ダラ「無意味て、どういう事や?」
矢浦「(ネオン街に目を向け)其方達は悪だと思うか、あの街の輝きを?」
ダラ「別に、悪ぅないやろ?」
矢浦「しかし、この惑星では見る事ができない、夜空の星を」
タノク「確かに」
ダラ「それだけで『悪』言うんか?」
矢浦「否。しかし、光を消すは影や闇にあらず、別の光。光の敵は、光」
タノク「光の敵は光……」
矢浦「小生は同様だと考える、正義も」
タノク「正義を消すのは、別の正義……」
ダラ「正義の敵は、正義……。それが、今回の件と何の関係があんねん?」
矢浦「少なくとも、今回の件の話をしたつもりはない、小生は」
タノク「じゃあ、何の話をしにきたんだよ?」
矢浦「(ダラを見つめ)それでは、祈っているよ。其方達の、健闘を」
   去って行く矢浦。
タノク「光の敵は光。俺は影だから、俺の敵は影ってことか?」
ダラ「……知らんわ。あんな奴の言う事。……ん? 影? ……せや、それや!」
タノク「?」

○同・同(朝)
   臨戦態勢のダラ、テシ、ナサマチ。その脇にはサーゼボックスがある。
ナサマチ「上手くいくとええんやけどな」
テシ「怪獣さん、かわいそう」
ダラ「何言うてんねん。もう死んどるわ」
   そこにやってくる矢浦。
矢浦「これはこれは、お揃いで、浮かんだのかな、良い作戦?」
ダラ「まぁ、見とき」
ナサマチ「ナサマチから各位、ただいまよりプランF、開始や」

○サーゼボックス・中(朝)
   隅っこに立つタノク。
ラヤドケの声「プランF開始、ラヤドケ了解」
タノク「タノク了解」
   中央に立つタノク。光に包まれる。

○惑星ハワ・丘(朝)
   サーゼボックスからタノクの影が伸びる。サーゼボックスにかけよるダラ。
ダラ「サイズ四五。サーゼシステム、起動」
   影タノクが出現する。
影タノク「さて、と。上手くやれよ、ダラ」
ダラ「安心しぃ」
   ミニサーゼをセットするダラ。銃口をトーグの幽霊体に向ける。ミニサーゼから発する光がトーグの全身を照らす
ダラ「ミニサーゼ、起動!」
   電撃が走り、トーグの幽霊体が実体化する。驚き戸惑うトーグ。
ダラ「よっしゃ、成功や」
矢浦「なるほど、応用したのか、サーゼシステムを」
ナサマチ「せや。影を実体に出来るんやから、幽霊も実体化できるんやないか、ってな」
テシ「ダラちゃんのアイデアだよ。凄いよね」
矢浦「確かに興味深い、サーゼシステム」
    ×     ×     ×
   対峙する影タノクとトーグ。
影タノク「さぁ、これで思う存分戦えんな」
   トーグと戦う影タノク。優位に進める影タノクだが、トーグが口から発射した光線が直撃し、吹っ飛ばされる。
影タノク「ぐあっ! そっか、コッチも実体化しちまうんだよな。……ん?」
   影タノクを無視し、ツエーツ号に向かって進撃するトーグ。
影タノク「おいおい、人の船になにしようってんだ?」
   トーグを蹴り飛ばす影タノク。二体の戦いを見上げているダラ、テシ、ナサマチ、矢浦へ向け、手を伸ばす。
影タノク「おい、ダラ。寄越せ」
ダラ「無理やで」
影タノク「そうか、無理か。……って、は?」
ダラ「見たらわかるやろ? (ミニサーゼを指し)今使ってもうてるやんか」
影タノク「は? じゃあ俺、今日丸腰?」
ナサマチ「別に怪獣倒さんでも、遠ざけとってくれればええんやし」
影タノク「でもコイツ、俺よりツエーツ号に興味持っちゃってんぞ?」
   そう話している間にも、ツエーツ号に向けて進撃するトーグ。それを行かせまいと立ちふさがる影タノク。
影タノク「言ったそばから、ったく。何がしてぇんだよ、お前は」
テシ「もしかして怪獣さんも、ツエーツ号に乗りたいんじゃない?」
影タノク「んなバカな……」
   動きが止まるトーグ。
影タノク「え、そうなの?」
   影タノクを見つめるトーグ。
影タノク「お前、もしかして、自分が生まれた星に帰りてぇのか?」
   頷くトーグ。
影タノク「そっか……。けど、悪ぃな。それは無理だ。俺達の船にお前は乗せらんねぇし、そもそもお前、もう死んでんだ。な? 分かってんだろ?」
   頷くトーグ。
影タノク「けど、化けて出てきちまう気持ちもわかんだよな。だからよ……」
   トーグに耳打ちする影タノク。
影タノク「その代わり、一発だけだぞ?」
   頷くトーグ。町側に立つ影タノク。
影タノク「さぁ、来いや」
   影タノクに向けて光線を放つ。それを避ける影タノク。結果、光線によって町が次々と破壊される。
ナサマチ「なっ!?」
ダラ「イリウス、町が!」
矢浦「(笑みを浮かべ)ほう……」
   破壊された街並みを見下ろす影タノクとトーグ。満足げなトーグの肩に手を置く影タノク。
影タノク「これで、恨みっこなしだ」
   頷くトーグ。
影タノク「じゃあ、おとなしく成仏しな」
   頷くトーグ。成仏するように消えていく。
   同時に消えていく影タノク。

○航行するツエーツ号

○ツエーツ号・共同スペース
   作戦机を囲むタノク、テシ、ナサマチ。部屋の隅にいるダラ。コクピット前に座るラヤドケ。タノクのみ食事中。
ダラ「イリウス、アンタどんだけ食べんねん」
タノク「いいだろ? 今回の俺の活躍っぷり、忘れたのか?」
ナサマチ「せやけど、町をあんなんにしてもうて、まずかったんちゃうか?」
ラヤドケ「まぁ『あくまで攻撃を避けただけ』という形をとっていたので、我々の責任問題にはならないと思いますが」
タノク「上手くやったっしょ?」
テシ「でもさ、あの怪獣さん、どうやってあの惑星に行ったの? 渡り獣みたいに翼も生えてないのに」
ナサマチ「多分、人間に連れてこられたんやろ」
テシ「でも、それって、惑星間怪獣……なんだっけ?」
ダラ「惑星間怪獣流通禁止法」
テシ「そう、それ。それに違反するんじゃない?」
ナサマチ「だから、その法律が出来る前の話なんやろうな。あの惑星の奴らが連れてきたのか、また別の奴が連れ出してあの惑星の奴らに売りつけたのか、そこまではわからんけど」
テシ「怪獣さん、かわいそう」
タノク「結局、俺達とあのお化けは一緒だった訳だ。あの惑星から出たいもん同士。俺達の正義とあの幽霊の正義がぶつかってただけなんだよな。正義の敵は正義、光の敵は光」
テシ「何の話?」
タノク「さぁな」
   その様子を見ながら部屋を出るダラ。

○同・廊下
   一人で歩くダラ。
ダラ「ウチらの正義……」
矢浦の声「おそらく、其方を返してもらうためだけの、寄り道」

○(回想)矢浦号・生活スペース
   向かい合うダラと矢浦。
矢浦「では、到着する前に話しておこう、最も大事な話を」
ダラ「最も大事な話?」
矢浦「知りたくないかい? 小生の正体を」
ダラ「矢浦はん、やろ?」
矢浦「いかにも、小生の名は矢浦。職業は、宇宙探偵」
ダラ「宇宙探偵?」
矢浦「そして小生の今の任務は、とある犯罪組織の正体を暴く事」
ダラ「とある犯罪組織?」
矢浦「その犯罪組織の名は……カーツ惑星調査団」
ダラ「え!?」

○ツエーツ号・安置室・前
     一人で歩くダラ。
ダラ「正義の敵は……正義」
   「関係者以外立入禁止」の張り紙。
               (♯5へ続く)

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