マーブル・ポップコーン ep6 ~最終回~ コメディ

現代を生きる若者が、友情を通じて交流していくポップなコメディ物語。彼らは恋愛や夢、人生に不安を抱えながらも、明るく楽しく過ごしていく。「マーブル・ポップコーン」最終回! バカげた話もこれで終了。25年後の未来から始まる今回、果たして夢や恋、キャリアを追った若者達はどうなっているのか?
ぐずら 5 0 0 01/30
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第一稿

マーブルポップコーンep6 ~最終回~ 


※マーブル・ポップコーン 他のエピソードが
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードから読んでも特に問題ありま ...続きを読む
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マーブルポップコーンep6 ~最終回~ 


※マーブル・ポップコーン 他のエピソードが
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードから読んでも特に問題ありませ
 ん。

登場人物
はるか(26)女。主人公の位置。女優を目指している。
ニック(36)男。夢は小説家。フリーター。
シュミレット(35)男。普通のサラリーマン。
ウェス(33)男。ダンスレッスンの講師の仕事している。
シシ(26)女。はるかの親友。密かに歌手を目指している。

マスター(65)バーのマスター。
占い師(60代)

他数人……


~マーブル・ポップコーン ep6 ~最終回~ 


〇T「2045年……」

〇どこかの家 室内 リビング 昼
   暗転からあけて二人の少女(19)と
   少年(16)がソファで座っている。
   少女と少年は未来のはるかの子供。
   未来のはるかが子供達に語り始める。
   はるかは映像には映らない。
はるか(51)の声「今からアナタ達に、信
 じられない話をするね。これはお父さんと
 お母さんがどういう形で恋に落ちたのかっ
 ていう話よ」
少年「え? そんなの聞きたくないよ」
はるかの声「ダメ。聞きなさい」
少女「長いの?」
はるかの声「少し」
少年「ってかこの感じ、ママが好きな海外ド
 ラマに似てない? ほら、何だっけ? マ
 マと恋に……」
   少年にクマのぬいぐるみか何かが激し
   く飛んできて、ぶつけられる。
少年「うわっ!」
はるかの声「余計な事言うな(小声で凄み)」
少年「はい……」
はるかの声「始めるわね? 今から25年前、
 26歳。まだ将来や人生に夢ばかり見てい
 た頃よ……」
少女「26で夢ばかり見てたの?」
   少女と少年、映像には映っていないが、
   怒りに満ちた母の表情を見て、しまっ
   た! っていうジェスチャーをする。
少女「続けて」
はるかの声「そう、お父さんとのきっかけは
 ……」


〇写真を数枚流していく。
   現代のはるかとルームメイト達の楽し
   そうな写真を何枚か流していく。
未来はるかの声(M)「あれは2020年よ。
 ちょうど二回目の東京オリンピックがあっ
 た頃。あの時の私達はすごく人生を楽しん
 でいたわ。お金はあんまりなかったけど、
 夢と将来への希望があって、親友達が居た。
 不安もあったけど、親友達のおかげで楽し
 く過ごせた。過ごせてたんだけど、ある日、
 本当に運命が動き出したって思える出来事
 が起きたの」

〇街 路上 昼
   都会の路上を歩いているはるかとシシ。
   買い物帰り。
はるか「あ!」
   はるか、何かを見つけて走り出す。
シシ「ちょっと、何?」
   そこには路上で占いをしている人がい
   る。
   占い師は60代くらいの女。水晶を置
   いていかにも占い師。
はるか「占いだ! ねぇ、寄ってこうよ?」
シシ「私はいいよ(否定)。お金かかるんで
 しょ?」
占い師「一人千円だよ」
シシ(高っかぁ!)
はるか「安いじゃん!」
シシ「えぇ!」
占い師「今なら特別に980円にしてあげる
 よ」
シシ「特別感ないなぁ……」
はるか「私やります!」
占い師「あいよ。そこに座って」
   はるか、椅子に座る。占い師と対面。
シシ「ノリノリだな……」
   占い師、はるかの手相を見たり、水晶
   で見たりしている。
はるか「……どうですか? 特に恋愛運が知
 りたいんですけど」
占い師「まぁ待ちな。順番に見ていくよ。…
 …仕事運はまずまずだね。来月中にも自分
 の思い描く形になってくるよ。全体運もま
 ぁまぁ……うぅん?」
はるか「え? 何ですか?」
占い師「あぁ……これは、ちょっと……言え
 ないかもねぇ」
はるか「言えない!? 言ってくださいよ!」
占い師「あんた、今彼氏いないでしょ?」
はるか「え? はい、いません」
占い師「まずいね……」
はるか「何がですか?」
占い師「今月中に、あなた誰かと付き合わな
 いと……」
はるか「付き合わないと……?」
占い師「あなた、死ぬわよ……」
   はるか、占い師、一瞬止まる。
はるか「……あーはっはっはっ!」
   はるか、しばらくの間笑い続ける。
占い師「……」
はるか「あははは……はい?」
未来はるかの声(M)「よく思えばここから
 運命が動き出したわ」

〇タイトル「マーブル・ポップコーン ~EP6 最終回~」


〇街 パチンコ屋の前 昼
   ニック、パチンコ店から出てくる。
ニック「ちっくしょう……全然ダメだったぜ。
 けど、こんだけダメだったんだ、この後は
 良い事が起こる気がするぜ……」
   ニック、路上でやっている占い師を発
   見。
ニック「イッチョ試してみるか」
   ニック、占いのイスに座る。
占い師「いらっしゃい」
ニック「占ってくれ。なんかこれから奇跡的
 な運命が始まる予感がするんだ」

〇シェアハウス リビング 昼
   ニック、絶望した表情(死んでる目と
   か)でソファに座っている。
   シュミレット、ウェス登場。そんなニ
   ックに気づく。
ウェス「うわっ、暗っ! 亡霊が座ってると
 思った」
シュミレット「どうしたニック? まるで占
 い師に死の宣告食らったような顔だな」
ニック「……」

× × ×

シュミレット「え?! 今月中に誰かと付き
 合わないと死ぬ!」
ニック「あぁ、まさかこんな運命が動き出す
 とは夢にも思わなかったぜ」
ウェス「けど、占いだろ?」
シュミレット「どうするんだよ? お前、奥
 さんと別れてからまだ一人も付き合った事
 ないんじゃねぇか?」
ニック「あぁ……なんならまだ少し引きづっ
 てるし」
シュミレット「まずいなぁ~」
ウェス「え!? 信じる方向に行くの!」
ニック「何かいい手はないか? さすがにま
 だ死にたくない」
シュミレット「小説も鳴かず飛ばすで、奥さ
 んにも逃げられ、今年36で将来へ希望も
 何も無いのに、一か月の余命宣言。全く笑
 えないな」
ニック「おい、あらためて俺の過去を振り返
 って語るんじゃねぇ。悲しくなるじゃねぇ
 か」
ウェス「たんなる占いだから気にすんなよ。
 大切なのは自分の信じる未来にどうやって
 向かうかだろ? たかが占いでこれからの
 可能性を潰される方がダメなんじゃねぇか?」
   一瞬だけ、みんな黙る。
シュミレット「……仕方ない。俺の知り合い
 の知り合いの知り合いに、超モテモテにな
 るテクを知っている人がいるんだ。その人
 に当たってみよう」
ニック「助かるぜシュミレット!」
ウェス「おい、俺の言う事聞いてただろ二人
 とも?」
ニック「けど、知り合いの知り合いって、も
 う他人じゃねぇか?」
シュミレット「知り合いの、知り合いの、知
 り合いだ」
ニック「他人だよね? それ?」
ウェス「おーい! 聞こえてる!? え!?
 俺、ここに居るよね! 消えてるの!?」
ニック「まぁ、いいや。何でも」
シュミレット「ああ、さっそく連絡してみる」
ニック「サンキュー」
ウェス「何故だぁー! なぜ俺の声が届かな
 いぃ!」

〇バー 外観 昼
   カフェバー「マーブル・ポップコーン」
   と書かれた看板。

〇バー 中 昼
   まぁまぁ賑わっているカフェバー。
   はるかとシシ、座ってコーヒーを飲み
   ながら会話している。
はるか「どうしようシシ……私、死んじゃう
 ……」
シシ「大丈夫よはるか。ただの占いなんだか
 ら気にしなくていいよ」
はるか「けど、はっきり意思強めで真正面か
 ら言われたのよ? あなた、死ぬわよ、っ
 て」
シシ「あの占い師も胡散臭そうだったじゃん。
 普通占いでそんな事言う?」
はるか「分かんないじゃん! 本当に起きた
 らどうすんの? 誰にも未来なんて分から
 ないんだから!」
シシ「うん、あなたが今言った通りよ。未来
 なんて誰も分からない」
はるか「まだ夢も叶ってないし、結婚もして
 ないのに。はっ! 彼氏もいないからこん
 な状況になったんだった! どんだけ私に
 仕打ちを与えるだろうか? 神よ! 運命
 よ!!」
シシ(だんだんシェイクスピアみたいになっ
 てきてるじゃん)
シシ「分かったわよ。私も協力してあげる。
 知り合いに良い人いないか聞いてあげる」
はるか「シシ……ありがとう! やっぱり私
 の親友はシシしかいないわ!」
シシ「はいはい、そのセリフ何回も聞いたわ。
 あなたの口から」
   シシ、カップの飲み物を飲む。
はるか「……」
   はるか、シシをじっと見ている。
シシ「……何?」
はるか「いや、まだかなって……」
シシ「まさか、今すぐに連絡するの?」
はるか「なんたって、一か月だよ?」
シシ「……分かったわよ」

〇シェアハウス リビング 昼
   ニック、ウェス、ソファに座りながら
   テレビで映画を観ている。
   観ながら会話。
ウェス「で? 彼女探さなくていいのかよ?」
ニック「もしダメだった時に大好きな映画や
 本を読んどくのもいいだろう?」
ウェス「ふ~ん、そんなもんか」
ニック「あぁ」
ウェス「所でこの映画、ターミネーターとジ
 ョーズをミックスしたような映画だな」
ニック「……おい、俺は一映画ファンとして、
 その説明が一番嫌いなんだ」
ウェス「うん?」
ニック「脚本のバイブル「セーブオブザキャ
 ット」を書いたブレイクシュナイダーも言
 っていた事だ。映画を本当に愛している者
 をおちょくっている言い方だ。とな」
ウェス「知らずに悪かったな。俺もブレイク
 なんちゃらは知らないからな」
ニック「ふんっ! だからにわか映画ファン
 は!」
ウェス「はいはい、すんません。けど、タイ
 トルがジョーズネーターになってんだけど」
ニック「……日本の配給会社め」
   シュミレット、登場。
シュミレット「おいニック! 知り合いの、
 知り合いの、知り合いの知り合いの鬼モテ
 るホストにモテる第三ヶ条を聞いてきたぞ!」
ニック「ああ、他人だな、それ。それとひそ
 かに知り合いのまたぎが一個増えてるし」
シュミレット「よく聞け。お前の運命がかか
 ってるんだ」
ニック「俺の運命はその他人の助言にかかっ
 てるんだな? よし、聞こう」
シュミレット「これを守ればお前はモテモテ
 になって、女の一人や二人簡単さ!」
ニック「分かったから早く教えてくれ!」
   シュミレット、ポケットからメモ紙を
   出す。
シュミレット「モテる三ヶ条は、1にスーツ
 を着る」
ニック「OK」
シュミレット「2に毎日風呂に入る」
ニック「……OK?」
シュミレット「3が前の二つを忘れるな、だ」
ニック「……」
ウェス「それって、普通の男なんじゃね?」
シュミレット「よく考えろ。ニックはスーツ
 を着てない。見た事ない。風呂も二日に一
 回。な?」
ニック「よく思い出せ。1にお前は俺のスー
 ツ姿を見た事ある。2に、二日に一回は冬
 だけだ」
シュミレット「……」
ウェス「……」
ニック「……オーケイ。スーツ着て、風呂入
 ればいいんだろ」
シュミレット「そうだ。あと、眉も整える、
 だそうだ」
ニック「4つあるじゃねぇか。もしくはそれ
 を3にしろよ。何カッコつけて前の二つを
 忘れるなだ」
シュミレット「眉は俺が整えてやるよ。その
 ボサボサの眉は超イケてる風にしてやるよ」

〇街 屋外 夜
   都会の夜の空撮影。

〇レストラン 夜
   はるか、デート相手の男とディナー中。
   テーブルに座って食べている。
   デート相手の男はパーカーとカジュア
   ルな服装。
はるか「ありがとうございます。急だったの
 に来てもらって」
男1「今夜っていきなり言われてビックリし
 たけど、まぁ暇だったから全然OKだったよ」
はるか「休みの日とか、何してるんですか?」
男1「休みの日? 休みの日は、公園で凧揚
 げかな」
はるか「……た、凧揚げ?」
男1「そう、昔っから凧揚げが大好きなんだ。
 電線に何回ひっかけた事か」
はるか「そ、そうですか……」
男1「凧の事になると熱くなる癖があって。
 うまくいかなかったり、風が吹かない無風
 の時は怒って街中のゴミ箱を蹴りまくって
 歩いたよ」
はるか「それは、あまり良くない事かもしれ
 ませんね……」
男1「いつか世界的な凧職人になって、世の
 中の戦争を終わらせるんだ」
はるか「壮大な夢ですね……凧でどうするの
 かは分かりませんが……」
男1「凧はね、人生なんだ」
はるか「はぁ……」

× × ×
   ※場面切り替え。同じ場所で瞬時にデー
   ト相手の男だけが変わる(男が喋って
   る途中で)。はるかは服装だけ? 変
   わる。
   次はメガネを掛けてスーツを着た男。
男2「右翼と左翼の両方の問題を抱えるよう
 に、日本の欠点は他の偉人たちの改良を促
 して来ただけの忌々しい過去からの脱却を
 思考していかなければいけない。というの
 もこれからの時代……」
   はるか、男2の話に飽きている。
はるか「はぁ……」

× × ×
   ※同じく場面切り替え
   次はラッパーな服装の男。
   男3、ラッパー口調で喋る。
男3「俺の言葉からはいつもライム(韻)、
 リゾットにぶち込むこのライム(食べ物)、
 バカの頭の中はスライム、オールウェイズ!
 ウオッチング! アマゾンプライム! 
 (いつも観ているアマゾンプライム)」
はるか「……」
   はるか、驚いて何も言えずに引いてい
   る。

〇(違う)レストランの前 夜
   ニック、女(紹介された人)と居る。
女1「ごめんなさい、途中で帰る事になって
 ……」
ニック「ああ、いいよ。よくある事さ。ディ
 ナー中に緊急の連絡が入る事なんて。ドラ
 マとか映画の世界ではな」
女1「そ、それじゃあね……」
   女1、去る。
   ニック、去る女に無感情に小さく手を
   振り、肩を落とす。


〇シェアハウス ベランダ 夜
   はるか、ベランダで家から見える夜景
   を見ながら物思いにふけっている。
はるか「はぁ、なかなかうまくいかないなぁ
 ……いきなり付き合うって無理だよ~……
 やっぱり気持ちとかもあるし……」
   ニック、ベランダに来る。
ニック「……おぅ、こんな所にいたのか」
はるか「ちょっと、夜風に当たって考えたく
 てね……」
ニック「そっか、俺と同じだな」
はるか「? ニックも悩み事?」
ニック「まぁな」
   しばらくお互い夜風に当たりながら無
   言。
はるか「何も上手くいかない時はね、考えち
 ゃうの。そんで全部嫌になっちゃう」
ニック「全部?」
はるか「全部。なんかね、夢とか恋愛とか、
 本気になればもっと出来るもんだと思って
 た。けど現実は厳しいね」
ニック「そうだな……」
はるか「この街に来る前は、私は他の人と違
 う、特別で輝いた人になるんだ! って息
 込んでたのに。現実は全然ダメね。公言し
 てなくてよかった。悔いが一つ増える所だ
 った」
ニック「俺もだよ。夢を目指す奴はそんな奴
 ばかりさ。現実にぶつかって、学んでいく
 んだ」
はるか「恋愛も難しいもんだね……」
ニック「あぁ、思い通りにいかないもんさ。
 俺も今日は全く上手くいかなかった」
はるか「そうなんだ。ニックもデートだった
 の?」
ニック「あぁ」
はるか「……この歳になっても何も持ってな
 い自分が嫌になってくるわ」
ニック「おいおい、俺なんてアラフォーにな
 っても手に入れたもんなんて何もないぞ?
 失ったモノはいっぱいあるけどな」
はるか「奥さんに、お金に、若さ?」
ニック「的確過ぎて涙が出そうだ」
はるか「はははっ」
ニック「笑いごとじゃねぇよ。そういうもん
 だろ? 大抵の奴は」
はるか「ははっ、そうかな? そんなに失う
 かな?」
ニック「うるせい」
はるか「ははは」
   二人、しばらく無言。
ニック「寒くねぇか?」
はるか「少し冷えるね」
   ニック、はるかにジャケットをかける。
   はるかとニックの後ろ姿を撮影。会話
   中も後ろ姿。
はるか「前から聞こうと思ってたんだけど、
最近、何でずっとスーツ着てるの?」
ニック「これは、まぁ、イメチェンだ」
はるか「眉毛も変だよ」
ニック「……あぁ、分かってる。俺もうすう
 す気づいてた」
はるか「それも何かを失くしたものの一つ?」
ニック「違う」

〇シェアハウス リビング 朝
   はるか、ニック、シュミレット、ウェ
   ス、くつろいでいる。
   シシ、登場。
シシ「はるか、今夜こそ正真正銘の男よ!」
はるか「ホントに!? 凧職人とかラッパー
 とか、レジスタンスじゃなくて?」
シシ「それは酷かった。ごめんね。今夜行け
 そう?」
はるか「もちろんよ」
シュミレット「(ニックに耳打ち)なぁ、も
 ちろんって、モロチンに聞こえない?」
ニック「黙れ」
シシ「今夜こそは頑張りなさいよ!」
はるか「うん!」
   ニック、はるかを見つめている。
   シュミレット、そんなニックを見てい
   る。

〇レストレラン 夜
   はるか、デート相手と穏やかに会話し
   ている所を撮影。
   (フラッシュで)はるか、時折ニック
   の事を顔を思い出している。

〇シェアハウス 夜
   ニック、シュミレット、ウェス、シシ、
   ソファに座り映画を観ている。
ウェス「なんかこの映画、ホームアローンの
 設定にグレムリンをミックスしたような映
 画だな」
ニック「おい、前も言っただろ? その説明
 はストーリーを考えるものとしては侮辱の
 言葉だぞ」
ウェス「……」
ニック「シ、シカトかよ……」
シュミレット「そういえばニック、今夜もは
 るちゃんデートしてるけどいいの?」
ニック「なんだよいきなり? はるかがデー
 トなんて知ってる事だろ?」
シュミレット「本当にいいのかよ?」
シシ「え? どういう事? ニックははるか
 が好きなの?」
ニック「ははは! 何言ってんだよ? なわ
 けねぇだろ!」
シュミレット「急がねぇとはるちゃん、彼氏
 作っちゃうぜ」
ニック「あいつの勝手だろ。まだ若いんだし、
 彼氏の一人や二人いいじゃねぇか」
ウェス「ニックの方はどうなんだよ? 上手
 くいってんのかよ?」
ニック「全然ダメ。誰かに変な眉毛人間に改
 造されてからみんな俺を避けていく」
シュミレット「眉毛のせいにするんじゃねえ
 よ。自分の魅力がないせいだろ」
ウェス「今月中に誰かと付き合わないと死ぬ
 んだろ? 変な眉毛のせいにしてるヒマは
 ないぞ」
ニック「変な眉毛じゃなかったらもっと上手
 くいってたかもな」
シシ「ちょっと待って、ニックは今月中に誰
 かと付き合わないと、死んじゃうの?」
シュミレット「ああ、そうらしいぜ。気分ル
 ンルンで占い師に占ってもらったらまさか
 の余命宣告。笑えるだろう?」
シシ「それ、どこの占い師?」

〇住宅街 道 夜
   はるか、トボトボと歩いている。デー
   トは上手くいったが、何故か浮かない
   様子。
はるか「あっ!」
   はるかの目線の先に、ニックがいる。
ニック「よぅ」
はるか「どうしたのニック?」
ニック「遅くなってるから、みんなが迎えに
 行けってさ。行こうぜ?」
   ニック、歩き出す。はるかも歩き出す。
× × ×
   はるかとニック、住宅街を歩いている。
はるか「ありがとうニック。迎えに来てくれ
 て。けど、ニックだけなんだね」
ニック「みんな俺と映画観るの嫌なんだって
 さ」
はるか「それで、ハブられたの?」
ニック「そんなとこ」
はるか「ニック、映画にうるさいからね」
ニック「ラーメンにうるさい店長よりマシだ
 ろ?」
はるか「あんま変わんないかな?」
ニック「マジかよ。それより、どうだったん
 だ? 今夜は?」
はるか「良い感じだったよ。良い人だったし、
 上手くいきそうな気がする。だけど……」
ニック「だけど?」
はるか「私の気持ちはどうなんだろう? っ
 て。変だよね。私から急いで紹介してって
 頼んだのに。……アレがなかったらどうだ
 ったんだろう?って」
ニック「アレって、なんだ?」
はるか「……ううん、何でもない」
ニック「……」

× × ×
〇(回想)シェアハウス リビング 夜
ニック「え?! はるかもその占い師に同じ
 事言われた」
シシ「うん。そうよ。だから最近はるか、男
 探しを頑張ってるの。ニックにも同じ事を
 言ってたなんて。完全に占いの手抜きね」
ウェス「ほら言っただろ? 占いなんてあん
 まり信じるなって。よかったじゃねぇか。
 これで付き合わなくても死ななくて済むぞ」
シュミレット「分かんねぇぞ。たまたまニッ
 クと同じ占いになってしまったのかもしれ
 ない」
ウェス「え? どこまで信じるの? 何か弱
 みでも握られたの?」
シシ「はるかに言わないとね」
ニック「けど、はるかも頑張ってんだろ? 
 想いの形は違うかもしれねぇけど、真剣に
 誰かと付き合おうと頑張ってるならそれで
 いいじゃね?」
シシ「まぁ、そうだけど……だけどなんか、
 やっぱりはるからしくないっていうか、自
 分を失ってる気がして心配だったの。今夜
 のデートは、それでも上手くいけばっては
 思ってるけど……」
ニック「ならいいじゃねぇ? 上手くいくん
 だったら言わなくてもいい。ダメだったら
 言ったらいいよ」

× × ×
〇(戻って来る)住宅街 夜
ニック「……上手くいきそうだったら、良か
 ったじゃねぇか」
はるか「うん……」
   はるか、ニックの帰り道を歩く後ろ姿。
   フェード暗転。

〇シェアハウス リビング 昼
シシ「え!? まだ付き合ってない!」
はるか「うん」
シシ「けど、いい感じなんでしょ?」
はるか「うん、とても」
シシ「ならなんで付き合わないの? それに
 もうあと一週間しかないんじゃないの? 
 占いで言ってた日」
はるか「そうなんだけど、ギリギリまで考え
 ようかと思って……」
シシ「本当にギリギリじゃない。なんで?」
はるか「すごくいい人なんだけど、私の気持
ちが追い付いていないっていうか、なんだろ?
 なんか分かんないけど、これで付き合うの
 は違う感じがして……」
シシ「もしかして、好きな人でもいるの?」
はるか「好きな人っていうか、気になる人か
 な?」
シシ「それってもしかして、映画にうるさく
 て、売れない小説書いて、お金もあんまり
 もってない、離婚歴がある人?」
はるか「わぁ、肩書きみたいに聞くと付き合
 っちゃダメな人みたいだね」
シシ「で? どうなの?」
はるか「う~ん……どうなんだろ? ホント
 に分からないや」
シシ「……」

〇バー 夜
   カフェ&バーの『マーブル・ポップコー
   ン』にニックともう一人女性が席に座
   って、コーヒーを飲みながら会話して
   いる。
   女性は30代くらいでメガネをかけた
   地味な人。
女性「あなたって、素敵ね」
ニック「え? マジで?」
女性「別れた元旦那に少し似てるわ」
ニック「へぇ、そう?」
女性「特にその鼻とか。可愛い鼻だわ。食べ
 ちゃいたい」
ニック「食べられたら、同居人の足の匂いを
 嗅がずに済むな」
女性「アハァーハッハ! イッヒッヒッ!(
 魔女のような大げさ笑い方)」
   ニック、女性の笑い方に驚いて引く。
女性「本当に素敵な鼻……」
ニック「ははは……」

〇シェアハウス はるかの部屋 夜
   はるか、ベッドで寝転び、ただ天井を
   眺めている。
   プルル……とスマホから電話がかかっ
   てくる。かけて来たのはデート相手の
   男性。電話に出る。
はるか「もしもし……はい、大丈夫ですよ。
 はい……来週の土曜日ですか?」

〇バー 店内 夜
   ニック、店内で一人コーヒーを飲んで
   考えている様子。
   マスター、カウンター内で作業をして
   いる。(コップを拭いたりとか)
マスター「……良い感じだったじゃないか」
ニック「あぁ、良い感じだよ。また土曜日に
 会おうだって。今にも付き合えそうな感じ
 だぜ」
マスター「日曜までかい? 期限は?」
ニック「うん……うん? マスター何で知っ
 てるんだ?」
マスター「シュミレットから聞いてねぇ」
ニック「あのお喋りめ~」
マスター「運命はいきなり私達に問題を突き
 付けるね。急がされて、心乱され自分自信
 を見失ってしまう。あれはこの歳になって
 も驚かされてしまう」
ニック「まぁ、エセ占い師の確率が高いけど
 な。そっちの方が助かったぜ。さすがにま
 だ死にたくねぇ」
マスター「次に会ったら告白するのかい?」
ニック「……ひでぇ話、死ぬぐらいなら誰で
 もいいから付き合った方がいいと思ってよ
 ぅ。悪い事してるのは分かってんだけどな」
マスター「悪いのは運命と、そのエセ占い師
 さ。誰だって死ぬぐらいならそうするさ。
 それに、付き合ってみて、もしかしたら相
 手を本気で好きになる事もあるかもしれな
 い。人生、何が起こるかなんてみんな分か
 らないのさ」
ニック「そうだよな……」
マスター「何か他に、思い悩む事があるのか
 い?」
ニック「……あるっちゃあるけど、これもど
 うする事も出来ねぇんだ。今さら伝えるの
 も遅すぎるし、もうあんまり悩ませたくな
 いんだ」
マスター「そうかい。ニックがそう考えるな
 らそうした方がいい。だけど、あんまり自
 分を殺し過ぎるのもよくない。その瞬間の
 気持ちを伝えるのも大事な事なんだ。伝え
 ずに終える後悔は、とても辛いからね。あ
 の時に言っておけば……って何度も繰り返
 すよ」
ニック「マスターもそんな後悔があるんだな」
マスター「だいぶ前に妻が亡くなってね……。
 あの時にちゃんと心からの言いたい言葉を
 伝えとけば良かったって、今でも思い返し
 ているよ」
ニック「そうだったのか……軽く聞いてすま
 なかった」
マスター「いや、いいんだ。私が言いたかっ
 たのかもしれない。聞いてもらう事でほん
 の少し救われるものもあるからね」
ニック「俺は神父のように聞いてて正解なん
 だな?」
マスター「あぁ、それを仕事にすればいいか
 もね」
ニック「(鼻で笑って)はっ、考えとくよ」

〇シェアハウス リビング 夕方
   メンバー全員リビングに居る。テレビ
   を観たり、雑誌を読んだりしている。
シシ「はるか、今夜デートなのよね?」
はるか「うん……」
シシ「今夜は勝負しないとマズいんじゃない?」
はるか「そうだね……うん、今夜決めてみせ
 るわ!」
シシ「そう、その意気でいかないとダメよ。
 なんかキレイめの服装ないの?」
はるか「キレイめの服装? オーバーオール
 ぐらいしかないわ」
シシ「志村どうぶつ園のロケか!」
ウェス「いいじゃねぇか。俺は悪くないと思
 うぜ?」
   ウェス、偶然にもオーバーオールを着
   てる。
シシ「うるさい! パン君もどき!」
ウェス「え? どういう事?」
ニック「チンパンジー並みの頭脳って事じゃ
 ね?」
シュミレット「いや、見た目じゃね」
ウェス「どっちもひでぇ」
シシ「仕方ない、私のを使いないさい。部屋
 に来て」
はるか「え?」

× × ×
   はるか、シシ、リビングに登場。
   はるか、カジュアルドレスのような恰
   好で登場。いつもと違った感じで綺麗。
   みんな驚く。
シュミレット「わぉ……」
ウェス「やるじゃん」
 ニック、はるかの魅力に感嘆している。
シシ「ニックはどう思う?」
ニック「……いいんじゃねぇか? すごく魅
 力的だ」
はるか「ウソ? へへっ、いけるかな?」
シシ「これで大丈夫よ。決めたなら自信を持
 って、やりきりなさい」
はるか「うん!」
   ニック、優しい笑顔ではるかを見つめ
   ている。
ニック「さぁ、俺も用意するかな……」
シュミレット「ニックも今夜デートなのか?」
ニック「ああ、最後まで抗うつもりだ」
はるか「何に抗うの?」
ニック「そりゃあ……何でもねぇ」
はるか「何それ?」
ニック「とにかく、今夜はお互い頑張ろうぜ」
はるか「うん」
ニック「健闘を祈る」
はるか「健闘を祈る」
   はるか、ニック、笑顔で見つめ合う。
   シシ、シュミレット、その様子を歯が
   ゆい感じで見ている。

[音楽流す 静かな恋愛の曲]
〇レストラン(ちょっと高そうな) 夜
   はるか、デート相手とディナーをして
   いる。

〇映画館 夜
   ニック、デート相手の女性と映画を観
   ている。
   デート相手の女性、上映中にニックの
   手を握りニックに笑顔を向ける。
   ニック、苦笑いを返す。

〇リバーサイドの道 夜
   夜景が綺麗な川沿いの道を歩くはるか
   とデート相手。
   はるか、浮かない様子。

〇地下鉄 夜
   ニック、デート相手の女性と電車を立
   って待っている。
   デート相手の女性はずっとニックに喋
   りかけているがニックは上の空。

〇リバーサイドの道 夜
   都会の夜景が見える所の川辺の手すり
   にもたれるはるかとデート相手。
   はるか、腕時計を見る。

〇地下鉄の駅の前 夜
   ニック、女性と地下鉄から降りてスマ
   ホで時間を確認する。

〇両画面、左右に映像を分ける。
   片方はニック、片方ははるか。
   ニック、はるかM(あと、一時間か…
   …)

〇片方の映像、ニックの方に映像がいく。
女性「ねぇ、夜景が見える所に行かない?」
ニック「あぁ、……いいよ」

[音楽停止]
〇リバーサイドの道 夜
   はるか、デート相手と歩いている。
デート相手「綺麗だね」
はるか「うん……」
デート相手「ごめんね。こんな遅くまで相手
 してもらって」
はるか「いえ、全然かまわないです」
デート相手「今夜は君に言いたい事があるん
 だ……」
はるか「はい……」
はるか(来た……)
デート相手「もしよかったら、俺と……」
はるか「……」
   告白を待っているはるかにガバっと誰
   かの腕がはるかの首元を掴む。
強盗「おい! 金を出せ!」
   強盗、はるかの顔に銃を突き付ける。
はるか「え? えぇ~!」
デート相手「う、うそ……」
強盗「早く金を置いてあっちへいけぇ! お
 前も撃たれたいのか!」
   強盗、デート相手に銃を向ける。
デート相手「わ、分かりましたぁ! 撃たな
 いでください!」
はるか(なんでこのタイミングにこんな事が
 起きるかな!)
   はるか、捕まりながらも時計を見る。
   (腕時計でも街にある時計台でも)

× × ×
〇(フラッシュ)占い師の顔

× × ×

はるか(はっ! まさか、……これが占いの
 事!? え! 私、死ぬの!?)
はるか「早く、早くさっきの続きを言って!」
デート相手「え?」
強盗「何言ってんだお前?」
はるか「早く、さっき何言おうとしたの!?」
デート相手「え? この状況で?」
はるか「早く」
強盗「何度も言わせるな! 金を置いて向こ
 うへ行け!」
   強盗、再びデート相手に銃を向ける。
デート相手「はい~!」
   デート相手、去る。
はるか(えぇ~!)
   走って去っていくデート相手の姿。
はるか(置いていかれてしまった……)
ニック「はるか……?」
はるか「え?」
   ニックがデート相手の女性と登場。
ニック「ええっと、どうなってんの? それ?」
はるか「ニック!」
強盗「何だお前! 近寄るな!」
ニック「おいおい、マジかよ。まるでドラマ
 だな」
   ニック、ジリジリと近寄る。
強盗「近寄るなって言ってんだろ!」
ニック「日本で銃なんてありえねぇぜ。それ、
 偽もんだろ?」
強盗「悪いが改造したモデルガンだ。人の体
 くらい貫通する」
ニック「おぅ、やるねぇ……まるでドラマだ」
   ニック、ちょっと下がる。
強盗「お前らも金を置いてさっさとどこかへ
 行け!」
デート相手の女性「行きましょう?(ニック
 に)」
ニック「いや、行けるわけねぇよ」
女性「なんで?」
ニック「ありゃあ、俺のルームメイトだ」
女性「え?」
強盗「早くしろ!」
ニック「まぁまぁ、目的は金だろ? 金なら
 やるから、そいつを離してやってくれねぇ
 か?」
強盗「お前らがこの場から去った時に解放し
 てやる」
ニック「俺が代わりの人質じゃダメか?」
強盗「ダメだ。お前、男だろ?」
ニック「男だけど、女みたいなパンチしか出
 せないぜ? ほら」
   ニック、女みたいなパンチのをする(
   シャドーボクシングで)。
強盗「気分的にお前なんか掴みたくない」
ニック「あぁ、こんな傷つつくとは思わなか
 った。もしかして心もか弱いのかも?」
女性「早く行こうよ!」
ニック「だから出来ねぇって!」
   遠くから警察の声が。
警察「何してんの!? 君!」
   警察、はるかのデート相手の男と登場。
強盗「ちっ! お前らがチンタラしてるから!」
ニック「初めて俺のクダクダ感が役にたった
 ぜ」
警察「その子を放しなさい!」
強盗「向こうにいけ! さもないと本当に撃
 つぞ!」
警察「放しなさい!」
   警察、拳銃を抜いて強盗に向ける。
女性「きゃあ!」
ニック「待ってくれ! 拳銃を下げてくれお
 巡りさん!」
警察「え?」
ニック「はるかに当たっちまうかもしれねぇ
 だろ!」
強盗「そうだ! 人質がいるんだぞ!」
ニック「なぁ、強盗さん、話を聞いてくれ」
強盗「あぁん?」
ニック「なんか辛い事があって強盗してるん
 だろ? けど、目的は金でいいはずだ。金
 なら何とかしてやる。ここにいる奴全員か
 ら俺が奪ってあんたに渡してやる。だけど、
 そいつだけは放してやってくれないか?」
強盗「お前、こいつの(はるか)何なんだ?」
ニック「……俺の、大切な人なんだ。放して
 やってくれ。頼むよ」
はるか「ニック……」
強盗「……」
シュミレット「聞いただろ!? その子を放
 せ!」
ニック「え?」
   シュミレット、シシ、ウェスが登場。
はるか「どうしたのみんな!」
   シュミレット、シシ、ウェスは財布を
   強盗の足元に投げる。
強盗「なんでこうワラワラ人が出てくるんだ!」
シュミレット「俺達の金も置いてくんだ。そ
 れで十分だろ?」
シシ「そうよ! 早くはるかを放せこのクソ
 男!」
シュミレット「シシちゃん? あんまり刺激
 しちゃあダメだよ?」
ウェス「ほらよ、いっぱい財布をゲットだ。
 良かったな。ちなみに財布だけは返してく
 れないか? 茶色の財布だ。高かったから
 な」
シュミレット「卑しい事するんじゃねぇ!」
ウェス「財布ぐらい返してもらってもいいじ
 ゃねぇか!?」
強盗「うるせぇ! 黙れお前ら!」
シュミレット「はいぃ! 黙ります黙ります!
 みんな黙れ! 口にチャック!」
強盗「みんなそこに集まれ!」
   みんな、強盗の言われた通りにする。
   警察も渋々従う。
強盗「お前ら動くなよ」
   強盗、みんなの財布を拾って、はるか
   を放し逃げる。
警察「待てぇ!」
   警察、逃げる強盗を追っていく。
デート相手の男「大丈夫かい? かなり怖か
ったんじゃ……」
   はるか、デート相手の横を通り、ニッ
   クに抱きつく。
はるか「ふぇ~ん! 怖かったよぅ!」
ニック「よしよし、怖かったよなぁ」
シシ「はるかぁ!」
   シシ、ニックとはるかが抱きついてい
   る所に抱きつく。
   シュミレット、ウェスも抱きつく。
シュミレット「よかった、よかった! 俺な
 んて少しチビッたもん」
ウェス「えぇ!」
   ウェス、シュミレットから離れる。
シシ「あぁ! あと二分よ!」
はるか「(泣きながら)えぇ?」
シシ「早くどっちでもいいから告白しなさい!」
   ニック、時計を見て、はるかを見る。
ニック「……こんな時になって初めて気づい
 たよ。俺はお前を失いたくない。どんな形
 でも」
シシ「早く! 死ぬよ!」
ニック「分かった! 付き合ってぇ~!」
ウェス「オネェみたいな告白!」
はるか「いぃいぃよぅ~!」
シュミレット「かくれんぼ?」
   バンッ!   っと銃声。
   弾丸は時計に当たって火花が散る。
ニック「うわぁ」
はるか「きゃあ!」
   みんな、驚く。
   遠くの方で声が聞こえる。
警察の声「銃を奪え!」
   警察のサイレンの音も聞こえてくる。
   はるか、ニックと顔を合わせる。
ニック「……助かったぁ!」
はるか「やったぁ!」
   喜ぶルームメイト達の周りが警察や市
   民で慌ただしくなってきている。
   カメラは上に引きで暗転フェードアウ
   ト。

〇シェアハウス リビング 昼
   ルームメイトみんなで、リビングで映
   画を観ようとしている。
   シュミレット、DVD映画を選んでいる。
シュミレット「どれにする?」
ニック「大迫力の『ワイルドスピード スカ
 イミッション』でいいんじゃね?」
シュミレット「OK!」
ウェス「スナック取ってくる。あと酒もいる
 人いる?」
シシ「チューハイお願い」
ウェス「あいよ」
   ウェスはスナック(ポップコーン系)
   を取りに行く。
ニック「……で? そういや、なんでお前達
 があそこにいたわけ?」
シュミレット「あそこ?」
ニック「川辺の道だよ。あんな夜中にお前達
 がいるって変だろ?」
シュミレット「そりゃ、まぁその……たまた
 ま?」
ニック「嘘だろ絶対。つけてたのか? どっ
 ちを?」
シシ「まぁまぁ、とにかく二人が付き合えて
 良かったね。私達も嬉しいよ」
ニック「ごまかしやがって」
はるか「なんか久々にみんなとこうやって映
 画観る気がする」
シュミレット「最近、はるちゃんだけ観れな
 かったもんね」
はるか「ごめん、出会いに忙しかったから。
 やっぱり、みんなとこうやって映画を観る
 方がいいや」
シシ「だね」
はるか「そういえば、この映画どんな感じな
 の?」
ニック「あぁ~、簡単に言えば007の世界
 感にダイハードを足したような……」
   ニックの後ろでウェスがスナックと酒
   を持って固まって驚いている。
   それを黒いテレビの画面ごしに気づく
   ニック。
ニック「……なーんてね!」
   みんなが一時停止した映像。
未来のはるかの声(M)「そんあこんなでパパ
 とママは付き合って、運命を間逃れたのよ。
 そして、もう一つの運命が動き出したの」
未来のはるかの子供(少女)(M)「最後の
 パパの映画の話、いらないんじゃない?」
未来のはるかの声(M)「だって、なんか面白
 いでしょ?」

〇T「2045年~」

〇どこかの家 リビング 昼
   暗転からあけて、はるかの子供の二人、
   少女(19)と少年(16がソファで
   座っている。
   未来のはるかもいるが映像には映らな
   い。
はるか(51)の声「これでこの話は終わり」
少女「その時に一緒に暮らしたメンバーがパ
 パのお葬式に来てたの?」
少年「あぁ~、ママが楽しそうに会話してた
 人達か」
はるか(51)の声「そう、あれから色々あ
 って、みんな離ればなれになったけど、ず
 っと連絡を取り合っていたわ」
少年「ママが言ってた、シュミレットとシシ
 って言う人、何年か前に手紙であった結婚
 してる二人?」
はるかの声「そうよ。よく覚えてるわね」
少女「ウェスって言う人はどうしてるの?」
はるかの声「現在はどこかの国の偉い人にな
 って結婚して三人の子供がいるわ」
少年「へぇ、すごいね」
はるかの声「時代も、私達の事情も変わって
 いったけど、ずっとあの日々を思い返す事
 が出来るわ。とても楽しい日々だった。そ
 の日々があったから、私とパパも今の幸せ
 に繋がってるの」
少女「……」
少年「……」
はるかの声「パパが亡くなったのは確かに悲
 しいけど、ずっとあなた達が笑ってなかっ
 たらパパは悲しいわ。パパはあなた達にず
 っと笑って生きててほしいって願ってたわ。
 それにパパは幸せだったのよ? あなた達
 に会えて、あなた達と過ごせて」
少年「ホントに?」
はるかの声「ホントよ」
少年「よかった……」
はるかの声「それに、パパが残してくれたお
 金がいっぱいあるから心配いらないしね」
少女「結局、そっちにいくのね」
はるかの声「よかった。パパの小説が売れて
 くれて」
少年「俺も、小説書こうかな?」
はるかの声「やめときなさい。すごく大変な
 思いするわ」
少年「え? 応援してくれないの?」
はるかの声「ホントにやりたかったらやって
 もいいわよ」
少年「なんだよそれ」
少女「どうせパパみたいに上手く書けないよ」
少年「うるせぇ」
はるかの声「ははっ……」
   映像フェードアウト。

   映像フェードイン。
〇室内 窓のあたり 昼
   窓が開け放しており、白いレースがひらひ
   ら揺れている。
   窓枠か窓の近くの棚にニックの写真が
   飾ってある。
   はるか(未来)、写真を手に取る。は
   るかは映さない。
はるかの声(未来)(M)「あなたがいつし
 か言ってた事を思い出している。どちらが
 先でも、お前には笑っててほしい。……そ
 の通りになったよ。あなたが先に行ってし
 まってすごく寂しいけど、あなたとこの人
 生で残せた物があって、私はとても幸せだ
 よ。私達の子供たちと笑い合ってるし、こ
 れからも強く生きていく。いつか私もそこ
 に行くわ。その時には、またそこで会おう
 ね。ありがとう。一緒にいてくれて……」
   白い光でフェードアウト。

〇バー 『マーブル・ポップコーン』
   いつしかのルームメイトと過ごしたバー
   での映像。
   みんな笑い合っている。マスターの姿
   も。
   最後に、その姿で停止して終わり。

~~END~~

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