ピアノ ドラマ

ーー僕にはピアノしかないの 高校生になった奏は自分の人生に疑問を抱き始める。指を失った元ピアニストの母から受けた教育虐待。でも、どうしようもなく難しい、ピアノと母から離れるのは。 コメントご意見お願いします。
松岡奈々 46 0 0 09/19
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第一稿

【人物】
草薙奏(17)高校2年生。ピアニスト
草薙琴子 (47)奏の母親。元ピアニスト
石崎優衣 (17)奏のクラスメイト


○コンサートホール・ステージ
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【人物】
草薙奏(17)高校2年生。ピアニスト
草薙琴子 (47)奏の母親。元ピアニスト
石崎優衣 (17)奏のクラスメイト


○コンサートホール・ステージ
   ステージ上でグランドピアノを体全体
   で弾いている草薙奏(17)。
   舞台袖から草薙琴子(47)が見ている。
   奏が弾き終わると、観客が立ち上がり、
   拍手する。
   奏は立ち上がり、琴子の方を見る。
   琴子は無表情で袖から去る。
   奏は客に頭を下げ、舞台を去る。

○同・楽屋
   右薬指、右小指が無い手で髪をかき上
げる琴子は、深くため息をつく。
   奏がひっそり入って来る。
   琴子は振り返り、
琴子「自分で分かってるよね?」
   奏は視線を彷徨わせる。
琴子「後半のあの集中力の無さは何?」
奏「……ごめんなさい」
琴子「今日の演奏は0点。いや、マイナスよ」奏は顔をしかめ、俯く。
   琴子は奏を睨み、出て行こうとする。
奏「あの、母さん」
琴子「何?」
奏「その、来月の」
琴子「コンクール。までに、しっかり集中して、練習しなさい」
   琴子は出て行く。
   奏の手が前に伸び、
奏「……あ」
   伸びた手を強く握りしめる奏。

○弥生高校・通学路(夕)
   奏と肩が触れそうな距離を歩く、石崎
優衣(17)。
優衣「えー、まだ言えてないの?」
   奏は頷く。
優衣「行きたいんでしょ? 修学旅行」
奏「だ、大丈夫。今日ちゃんと話すから」
優衣「(笑って)やっぱり奏くんとお母さん
て、面白い」
奏「そ、そう? どこが?」
優衣「なーいしょ」
   優衣が走り出す。
奏「(笑って)待ってよ」
   優衣を追いかける奏。

○草薙家・リビング(夜)
   ピアノの前に座る琴子。
   鍵盤に両手を置く。
   玄関ドアの開く音がする。
   琴子は慌てて蓋を閉め、立ち上がる。
   中に入って来る奏、琴子を見て、驚く。
奏「か、母さん、いたの」
琴子「遅い。早く練習しなさい」
   唇を噛み締める奏。
   琴子が出て行こうとする。
奏「か、母さん! 来月の修学旅行。行きた
いんだよ、僕」
琴子「修学旅行?」
   奏はゆっくり頷く。
琴子「その日はコンクールでしょ。行かないっ
て言ったのは奏よ」
奏「そ、それは」
琴子「その日は大学の先生も大勢いらっしゃ
るのよ?」
奏「知ってるよ。でも、お願い、だって」
琴子「いい加減にしなさい。推薦が取れなかっ
たら、あなたの人生終わりよ」
奏は涙を堪える。
   琴子は奏の手首を強く掴み、
琴子「あなたにはピアノしか出来ないのよ?」
   奏は掴まれた手首を見る。
琴子「ピアノがあなたの人生なの。ピアノ以
外、ないの」
   奏は放心状態。
奏「(小声で)ピアノしか出来ない?」
琴子「そうよ」
奏「何で? 僕にはピアノしかないの」
琴子「何で、ってーー」
奏「分かった。母さんのせいだ」
琴子「え?」
奏「そうだよ。母さんが僕を、ピアノしか出
来ない奴にしたんだよ!」
  奏が腕を振り払い、こける琴子。
奏「その指と、その言葉で、俺は操られてた
んだよ」
   琴子は驚きの表情。
奏「俺、ピアノ辞めるから」
琴子「ちょっと、奏!」
奏「許せないよ」
   奏は琴子を睨み、出て行く。

○弥生高校・階段
   階段に座り、スマホでTik Tok動画を撮
   っている奏と優衣と男女数人の生徒。
   楽しそうな雰囲気。
   奏は苦笑いしている。

○弥生公園・通学路・公園(夕)
   大きい滑り台に座りポーズを取る奏と優衣と男女数人の生徒。
   奏達をインスタントカメラで撮る生徒。
   奏と優衣以外の生徒が滑り、走りだす。
優衣「なに? 行かないの?」
奏「いや、行くよ」
   優衣は奏を見てから、滑り、走りだす。
   奏は虚げな表情で滑り台に座っている。

○草薙家・奏の部屋・中(夜)
   奏はベッドに座り、スマホを見ている。
   ピアノ曲の鼻歌を歌う。
   奏は何かに気づいたかのように、鼻歌
   を止め、スマホをベッドに投げる。
   トロフィーや賞状が目に入る奏、立ち
   上がり、トロフィーや賞状をなぎ倒す。

○同・同・外(夜)
   琴子が中の物音に肩を震わせる。
   琴子はドアに手を当て、苦しい表情。

○同・同・中(夜)
   ベッドの上でうずくまる奏。

○同・リビング(朝)
   朝日に当たるピアノ。
   制服姿の奏がドアの隙間からピアノを
   見るが電話が鳴り、応答し、去る。

○同・玄関・中(朝)
   奏は靴を履きながら電話する。
   琴子がやって来る。
琴子「奏、話が」
   奏は笑顔で電話をしている。
奏「うん、今から出る」
   琴子は奏を見て、ハッとした表情。
   奏は琴子に気づき、無表情になり、家
を出る。
   琴子は奏へと右手を伸ばす。

○同・同・外(朝)
   奏は閉まるドアを振り返り見る。
   奏の辛そうな表情。
   奏は前を向き、歩いていく。

○弥生高校・廊下(夕)
   鬼ごっこをしている奏、優衣を含む男
女生徒。
奏と優衣が振り返りながら走っている。
鬼役の生徒が走って来る。
   鬼は優衣を追いかけ、奏と道を別れる。
   奏は近くの教室(音楽準備室)に入る。

○同・音楽準備室(夕)
   奏は息を荒げながら、ドアを閉める。
   奏は古びたオルガンを見つける。
   埃を指で払って、蓋を開ける。
   奏は一音だけ弾く。
優衣の声「(息を荒げ)何してんの」
   廊下の窓から奏を見る優衣。
   奏は慌てて蓋を閉め、優衣を見る。
優衣「弾きたいなら弾けば?」
奏「別に、弾きたくないよ」
優衣「ふーん」
   優衣は去っていく。
   奏はオルガンを見つめる。

○草薙家・道路(夕)
   奏が憂鬱そうに歩いて来る。
   『赤とんぼ』のピアノの旋律が聞こえる。
   ピアノの旋律はゆっくりで、ミスタッ
   チの多いものである。
   奏は家の前まで走り、中に飛び込む。

○同・リビング(夕)
   奏がドアを開けると、夕日に照らされ
   た琴子が一生懸命ピアノを弾いている。
奏は鞄を落とし、
奏「(小声で)やめてよ」
   奏は琴子に近づき、腕を掴む。
奏「やめてよ、弾くなよ!」
   琴子は強引に弾こうとする。
奏「やめろって!」
   琴子は奏を振り払い、奏はこける。
琴子は両手で顔を包む。
琴子「……ごめんね」
奏は戸惑いの表情。
琴子「奏と一緒にピアノ弾くの、楽しかった。
それだけで良かったのに」
  琴子は不自由な右手をさすり、
琴子「ごめんね、奏」
奏は拳で床を殴る。

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