白い殺意 ドラマ

雪国の生活に憧れ東京から移住してきた菅井一家。しかし妻・祐実(40)は、隣家の町を牛耳る室田茂男(72)の排他的な嫌がらせに悩まされていた。そしてある事件をきっかけに祐実は室田に殺意を抱く…。
大川晃弘 26 0 0 08/31
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第一稿

※登場人物
 菅井祐実(40)主婦
 菅井義明(38)祐実の夫
 菅井星羅(8)祐実の娘
 室田繁男(72)菅井家の隣住人。町内会長
 望月海人(8)星羅の同級生
 海 ...続きを読む
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※登場人物
 菅井祐実(40)主婦
 菅井義明(38)祐実の夫
 菅井星羅(8)祐実の娘
 室田繁男(72)菅井家の隣住人。町内会長
 望月海人(8)星羅の同級生
 海野祐一(35)星羅の担任教師
 医師
 男子A

〇山の麓の町・全景(朝)
 雪一面覆われた町。遠くには雪山が
 聳え立ち、稜線に朝日が差し込む。室田繁男(72)、雪山に向かって合掌している。

〇同・住宅街(朝)
 雪で埋もれた道路が走っている。その脇に『山岳信仰の聖地・新越町 移住者募集』と書かれ
 た看板。

〇同・室田家前(朝)
 玄関に『室田林業』『新越町町内会長』と書かれた看板。室田繁男(72)、玄関前で雪かきを
 している。スコップで雪を放った後、背筋を伸ばし腰の辺りを擦る。すると隣の菅井家から、
祐実の声「少しは手伝ってよ!」
 と怒鳴り声が漏れてくる。室田、その声に気づき菅井家へ近づく。玄関前には雪だるまが作ら
 れている。

〇菅井家・裏手(朝)
 スコップを持ったまま室田やってくる。
 窓から室内のキッチンを覗き込むと菅井祐実(40)と菅井義明(38)、菅井星羅(8)が食卓を囲
 んでいるのが見える。

〇同・キッチン(朝)
 義明、食事しながらノートPCで作業。
 星羅は黙々と食事している。
義明「雪なんてほっとけば無くなるだろ?」
祐実「無くなんないわよ、あなたはそうやってリモートワークだからいいだろうけど、玄関塞が
 れて、星羅が学校行けないでしょ? それに隣のジジィがうるさいのよ」
義明「室田さんか? 俺あの人苦手だな」
祐実「私もよ、よそ者扱いしてくるし本当田舎モンって大嫌い! あ~あ、何でこんなとこに越
 して来ちゃったんだろ……」
義明「お前がここがいいって言ったんだろ?雪景色が綺麗だからって」
祐実「この町は好きよ。でも隣のジジィが……キャッ!」
 祐実、窓に室田の顔が張り付いてるのに気づき驚く。
 室田、窓をガラガラと開けて、
室田「今朝いっぺえ降ったがら、さっさと雪がきさしろ。夫婦喧嘩はその後だ!」
祐実「ハ、ハイ……わかりました」
 室田、窓を閉めずに立ち去る。
 祐実、慌てて窓をピシャリと閉める。
祐実「ったく気味が悪い!」

〇同・玄関前(朝)
 室田、玄関前に戻ってくる。道路の雪をスコップですくうと雪だるまに勢いよく放る。
 崩れる雪だるま。

〇小学校・校庭
 雪で一面真っ白になった校庭で児童たちが遊んでいる。多くの児童が友達とはしゃぎながら遊
 んでいる中、星羅は校庭の隅で一人雪だるまを作っている。
 そこへ突然、星羅の顔に雪玉が投げつけられる。見ると望月海人(8)ら男子グループが立って
 いる。
海人「やい! よそ者! おめんちの親、仲悪りぃんだろ!」
 海人たち、星羅をからかう。男子A、石を雪にくるんで海人に渡す。海人、それを思いきり星
 羅に投げつける。それが星羅の左目の辺りに当たる。
星羅「痛っ!」
 星羅、左目を抑える。

〇病院・診察室
 室田、ベッドに横になっている。
 看護師に腰にコルセットを巻きつけてもらっている。医者、カルテを見ながら、
医者「会長、あまりご無理なさらないで下さい。雪かきは腰に大きく負担かかるんで」
 室田、ゆっくり起き上がりながら
室田「だがらって、やんねえわげいかんだろ」
医者「業者とかご近所に頼むとかなさったらいかがですか? ほら、お隣に東京から若い夫婦が
 引っ越してきたでしょ?」
室田「フン! あいづらよそ者なんかの世話になっでたまるか!」

〇同・ロビー
 人々が行き交っているロビー。星羅、頭から左目にかけて包帯を巻き座っている。傍に海野祐
 一(35)と海人。
祐実の声「星羅!」
 祐実、走ってきて祐実を見る。
祐実「どうしてこんなことに!」
海野「幸い、左目の上を数針縫っただけですので失明の心配はありません」
 祐実、海野を睨みつけ大声で、
祐実「幸い? 大怪我じゃないですか!」
 周囲の人たちが祐実たちを見る。
 その時、ちょうど診察室から出てきた室田も気づく。海野、周囲を気にしながら、
海野「お母さん、落ち着いて下さい。望月君の話によると雪の中に石が入ってるのを知らなくて
 投げてしまったそうです」
祐実「何で石を投げつけられなきゃならないんですか! 先生、学校で苛めがあるんじゃないで
 すか? こっちに越してきてから星羅ずっと元気がないんですよ」
海野「いえ、当校に苛めなどは決して……」
 祐実、星羅の肩を持って
祐実「星羅、あなた苛められてるんでしょ?」
 星羅、何も答えず下を向く。祐実、今度は海人へ
祐実「ウチの娘苛めてるんでしょ!」
海野「お母さん、や止めて下さい!」
祐実「私、この件、保護者会で報告します!」
 その時、祐実の背後に室田がやってくる。海野と海人、気づくが祐実は気づかず怒鳴り続けて
 いる。
祐実「学校が取り合ってくれないなら、教育委員会に訴えて調査してもらいますから!」
室田「奥さん」
 祐実、室田の声にハッとなり振り向く。
室田「こごは病院だ。あんまり騒ぐでねえ」
祐実「あ……す、すいません……」
室田「話はすっがり聞いた。いいかえ奥さん」
 室田、祐実にグッと近寄り、
室田「海人の親父はウヂで働いてる真面目な男さ。その息子が苛めなんかするわげねえ」
祐実「え?」
室田「今の教育長は昔俺が色々世話してやった奴だ。俺から話せばあんたら夫婦、この町で居ず
 らくなっぞ!こごは山の神様に守られた静かな俺の町だ。面倒事起こすんなら、村八分にして
 やっぞ」
 室田、祐実を睨みつける。周りの人々も遠くから祐実を見てコソコソ話している。
祐実「は、はい。すみません……」
 海野と海人、ニヤリとする。

〇菅井家・軒下(朝)
 朝日が差込んでいる。すると屋根から雪の塊が勢いよく落下。
 
〇同・キッチン(朝)
 祐実と義明、食事をしている。義明はノートPCを見ながら食事。
祐実「星羅、朝から熱出てるのよ」
義明「ふ~ん……」
祐実「今日は休ませるわ。怪我も心配だし」
義明「あっそ……」
 祐実、突然テーブルに食器を叩きつける。義明、ビックリする。
祐実「あの娘のこと、心配じゃないの!」
義明「な何だよ? 心配してるよぉ」
祐実「だったら何なのその態度。仕事のことばっかり!今日は雪かきぐらいやってよね!」
義明「わ分かったから八つ当たりすんなよ」
祐実「ったく、どいつもこいつも……」

〇同・玄関前(朝)
 義明、玄関から出てくる。隣家を見ると室田が自宅前を雪かきしている。
義明「あ、ど、どうも……」
室田「今朝は喧嘩しなかったみてえだな?」
 室田、腰を擦って再び雪かきを始める。
 すると室田の家の屋根から巨大な雪の塊が落下。
室田「うわぁ!」
 下にいた室田に直撃。下敷きになる。それを目撃した義明。その時、ちょうど祐実が玄関から
 出てくる。慌ててる義明を見て
祐実「どうしたの?」
義明「む室田さんが、し下敷きに……ど、どうしよどうしよ!」
 義明、室田の元へ駆け寄ろうとするが祐実、義明の体を引っ張る。
祐実「ほっときましょ」
義明「は?」
祐実「事故で死んでくれるかも……」
義明「え? 何言ってんだ?」
祐実「あいつがいる限り、星羅は学校で苛めを受け続ける!私たちだって村八分よ」
 祐実、周りを見渡して、
祐実「誰も見てない、私も見てない、そしてあなたも見てない、いいわね?」
 祐実、遠くの雪山を眺めて、
祐実「罰が当たったのよ、山の神様の」
 祐実、義明の体を強引に引っ張り、扉を閉め家の中へ引っ込む。と再び扉が少し空いて祐実が
 顔を出す。雪に埋もれた室田の方を見ると顔を引っ込めて扉をピシャリと閉める。

〇室田家前(朝)
 落下した雪の近くに室田が履いていた長靴が転がっている。

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