■登場人物
笹原 矢恵(17)……ロングヘアーの病弱的な青白さを持つ、心を閉ざした一匹狼。
佐倉 瑠美(17)……アイドル級のかわいらしさを持つ、素直で純粋かつ友達想い。
速水 千鶴(17)……瑠美の友達、グループのやさしいお姉さん的存在。
長谷 砂雪(17)……瑠美の友達、少しおっちょこちょいのムードメーカー的存在。
笹原 静江(49)……矢恵の叔母、一人息子を溺愛中。
笹原 稔(23)……静江の息子、矢恵の従兄。
中木 涼平(故10)……矢恵の兄、やさしく温厚で、妹想い。
〇 青空
ナレーション「あたしたち、大きくなっても、お友達でいよーねっ」
ナレーション「ずっと、ずーっと一緒に……」
ナレーション「るみちゃん」
ツボミのままの花、中央に咲いている。
〇 真っ暗
大人女性のシルエットのみ、映し出す。
ナレーション「……さようなら」
ナレーション「あなたのせいで、私は……」
ナレーション「えっ?」
ナレーション「さようなら」
大人女性のシルエット、徐々に消えていく。
ナレーション「ま、待ってよ、ねぇ、お願い。待ってよぉ!!!」
ツボミ、中央で赤く染まっている。
タイトル「ツボミ」
〇 自室(現在)
顔が青ざめた感じで勢い良く起き上がる高校2年生の少女・矢恵(17)。
身体を両手で抑えながら、
矢恵「はぁ、はぁ、はぁ……」
カーテンから朝の光が差しむ。
矢恵「夢……か」
ベッドの隣に置いてあるデジタル時計をちらっと見る、矢恵。
時刻「6時50分」
矢恵「……」
〇 リビング
制服姿の矢恵以外、誰もいない。
テーブルの上に、1枚の紙とラップがかかった状態の軽食(パン1個とか、サラダとパン1個とか)が置かれている。
矢恵、その手紙を片手で取り、無表情で見つめる。
手紙「今日も遅くなります。 余計なことしないように 静江」
少し間をとった後、手紙をグシャっとし、そのままゴミ箱に捨てる、矢恵。
矢恵、鞄を持ち出ていく。
〇 教室
生徒が続々と入ってきては、挨拶を交わす。
瑠美「おはよー」
千鶴「あっ、おはよー」
足音が聞こえ、むぎゅーと後ろから瑠美を抱きしめる。
瑠美「きゃあっ!」
砂雪「おはよ、瑠美♡」
瑠美「さ、さっちゃん……」
千鶴「もう、砂雪! 朝から何やってるのよ」
砂雪「ごめんごめん。今日の瑠美の後ろ姿もかわいいなぁって思ってさ」
砂雪、瑠美から離れる。
瑠美「そんなことないよぉ~……」
砂雪「あははっ。あ、それより今日から転校生がくるみたいだね」
瑠美「えっ、ウチのクラスに?」
砂雪「うん」
千鶴「なんで、知ってるの?」
砂雪「昨日の帰り、たまたま先生たちが話してるのを聞いちゃったの」
瑠美「そうなんだ。男の子? 女の子?」
砂雪「なんとか、ヤエさんらしいから、女かな?」
瑠美「……ヤエ?」
千鶴「ん、知ってる子?」
瑠美「いや、たぶん知らない子だと思うけど……」
瑠美M「小さい頃、仲良かった子とおんなじ名前……元気にしてるかな?」
ナレーション「ガラッ」
教室のドアが開き、担任の先生が入ってくる。
先生「さあ、ホームルームはじめるぞ!」
生徒たち「はーい」
返事しながら、自席に戻る生徒たち。
全員が座ったタイミングで、
先生「起立!」
生徒、立ち上がる。全員立ち上がったタイミングで
先生「礼!」
生徒、マチマチにお辞儀をする。
先生「着席」
生徒、マチマチに着席。
先生「えー、家庭の事情で、今日からこのクラスに新しい仲間がやってきたぞ。今から、紹介するからみんな、仲良くするように。では! 笹原、どうぞ」
ナレーション「ガラッ」
ストレートロングヘアーの黒髪で、
全体的に痩せていて病弱そうな白さの笹原矢恵、入ってくる。
先生の隣に立つが、軽くうつむいている矢恵。
先生「笹原矢恵さんだ。自己紹介を頼む」
矢恵、目線はみんなを見ていない。
どこか遠いところ見ている。
矢恵「あ、はい。……笹原です」
先生「ん、それだけか?」
矢恵「……はい」
先生「そうか。まあ、緊張もしてるだろうし、いいだろう。では、笹原の席は……佐倉の前が空いてるからそこで。佐倉、仲良くしてあげろよ」
瑠美「あ、はい……」
矢恵、言われた席に向かうが、瑠美の顔を間近でみて、足が止まる。
矢恵「……え?」
瑠美「ん?」
矢恵「あ、あなた。佐倉さんって言ったわね。もしかして瑠美……ちゃん?」
瑠美「そうだけど、なんでわたしの名前を……って、矢恵ちゃん!?」
矢恵「やっぱり、そうなんだ。雰囲気変わってなかったから……すぐわかったわ」
瑠美「わあっ!! わたしは全然わからなかったよぉ。でも、あのときの矢恵ちゃんなんだね!」
矢恵「え、ええ……」
瑠美「しかも、同じクラスになれてうれしい!! これからよろしくね」
矢恵「こ、こちらこそ」
瑠美、握手を求める。
矢恵、瑠美の手を握ろうとするが、
矢恵「……っ!」
瑠美の手を握らず、席に着く矢恵。
以降、後ろを振り向かない矢恵。
瑠美「え?」
瑠美の心の声「って、あれっ。笹原さん? 」
チャイムが鳴る。
〇 教室(お昼休み)
瑠美、前に座っている矢恵の肩をたたこうとするが、矢恵スーっと立ち上がる。
瑠美「矢恵ちゃん! 良かったら一緒に……」
矢恵「ごめんなさい。行くところあるんで」
矢恵、カバンを持って教室を出ていく。
瑠美「えっ」
千鶴と砂雪、不思議そうに顔を見合わせる。
瑠美、下を向いて落ち込む。
〇 屋上
矢恵、音楽を聴きながら、ぼーっと外を見ている。
矢恵、座っている。
〇 車中(過去)
運転席に大人男性、助手席に大人女性。
後部座席に男女の子どもが座っている。
後部座席の男女の子ども、流れている曲を楽しそうに歌っている。
涼平「ボク、この曲すっごい好きなんだっ!」
矢恵「あたしも~!」
涼平・矢恵「やさしさと~♪」
運転席と助手席の父母、その姿を見てニッコリ微笑んでいる。
〇 真っ暗(過去)
ナレーション「ドンッ!!!」
救急車の音、鳴り響く。
ナレーション「あなたのせいよ……」
〇 屋上(現在)
矢恵「……っ!」
慌てて、イヤフォンを取る矢恵。
〇 教室(夕方)
ナレーション「ガラッ」
先生、入ってくる。
先生「ホームルームはじめるぞ。みんな、座れー」
生徒たち「はーい」
先生の後ろから矢恵が現れ、自席に座る。
瑠美「あっ」
矢恵、後ろは振り返らず。
瑠美「……」
× × ×
矢恵、鞄を持ち、立ち上がる。
瑠美「あ、あのっ!」
矢恵、気づかない振りをして教室を出ようとする。
瑠美「ちょっと待って!」
瑠美、矢恵の腕をつかむ。
矢恵「……っ!!」
矢恵、瑠美の手を払う。
瑠美「えっ?」
矢恵「触らないで!」
瑠美「ご、ごめん」
矢恵「……お願いだから、あたしにかかわらないで」
瑠美「でも!」
矢恵「もう昔のあたしじゃないの」
瑠美「矢恵ちゃん……?」
矢恵「ごめんなさい」
矢恵、瑠美の目を見ず、走って教室を出る。
瑠美、矢恵の後ろ姿を悲しそうな表情で見るだけでその場から動けず。
千鶴と砂雪もふたりの様子を困惑そうに見ている。
〇 住宅街(夕方)
矢恵、電信柱に支えられながら息を整える。
ナレーション「ブルブル~♪」
矢恵の携帯が鳴り、鞄から携帯を取る。
着信画面「親戚の兄」
矢恵「……はい」
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