漢字遣艇2・三連鄭和 SF

江島たちは、日中米の密約により発足した漢字考古学センター(HAC)で研究をすることになった。重力区画を備えた探査船・三連鄭和で『管』の本格的に探査に乗り出し、第二距越管を発見した。その中に入るが、途中で迷ってしまう上に、米・中の乗組員たちが反目する事態になった。江島はそれをいさめ『管』の謎をいくつか解明し、ラグランジュ点に戻ると、新たなHACの拠点の建造が始まっていた。
中野剛 9 0 0 11/03
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第一稿

■漢字遣艇2・三連鄭和

主な登場人物
江島良一     日本人漢字学者
劉麗花      中国人漢字学者 HAC第一主事
郭大元      台湾人漢字学者
許沢一   ...続きを読む
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■漢字遣艇2・三連鄭和

主な登場人物
江島良一     日本人漢字学者
劉麗花      中国人漢字学者 HAC第一主事
郭大元      台湾人漢字学者
許沢一      中国航天軍大佐
シャロン・スミス アメリカ宇宙軍少佐 軍医
王成柱      中国航天軍少将 HACセンター長


●1.漢字考古学中心のゲート前
  中国航天軍の将軍クラスが乗るバンがゲートを通過する。
  ゲートには『漢字考古学中心』で『漢』の字は簡体字表記の中国語。
  『漢字考古学センター』と日本語。
  『Hanzi Archaeologocal Center』と英語。
  3つの表記が並ぶプレートが掲げられている。
  バンはゲートの監視建屋の先にある正面の丘に掘られたトンネルに入って行く。

●2.HACのメインホール
  ホールには、江島たちを含むセンターのスタッフたちが100人ほど立っている。  
江島のスマホの王の声「皆さんもご承知の通り、この遺跡管理施設は漢字考古学センターとな
 り、略称はHACとなりましたが、本日付でセンター長には、自分、中国航天軍少将、王成柱
 が着任します」
  王は江島たちを含むセンターのスタッフをたちを威厳を保ちながら見回している。  
江島のスマホの王の声「施設内のことは元施設長で今日から副センター長の陳に聞き、間違いの
 ないようにするつもりです。よろしく頼みます」
  江島はスマホの感度を調整している。江島の隣には大柄のアメリカ人女性士官が立ってい
  る。
江島のスマホのスミスの声「私のスマホは感度が悪くて」
  小声でささやく英語の声と、スマホの日本語の声が聞こえてくる。
  横を見る江島。王の中国語の挨拶に拍手が沸き起こる。
    
●3.HACのメインホール
  新センター長の歓迎セレモニーが終わり、スタッフたちは、担当部署に戻ったり、その場に
  残って話をしていたりしている。  
江島のスマホのスミスの声「私はアメリカ宇宙軍少佐のシャロン・スミスです。あなたが江島博
 士ですね」
江島「ここで漢字を研究しています江島良一です。アメリカ人が来ると聞いていましたが、あな
 たでしたか」
江島のスマホのスミスの声「私は軍医なので、生物学や医学的な分野で何か助けになるかもしれ
 ません。よろしく」
江島「それは助かるかもしれません。意識体の通信機みたいなものがあるものですから」
江島のスマホのスミスの声「意識体ですか…」
  江島とスミスが話しているのを劉は遠目で見ている。

●4.HACの地下3F分析室
  江島、劉、郭は、立体投影されている『管』のネットワーク図を見ている。
江島のスマホの郭の声「どうやら『管』のことは『距越管』と呼ばれることが多くないかな」
江島のスマホの劉の声「まさに距離を超越する管ということね」
  江島は郭や劉が見ている所と違うところを見ている。
江島「この5番目の穴に『彼地棲極良悪』と示されているが、この『棲』は『居住可能』な惑星
 があるのではないかと思うが」
  郭と劉が江島の方を見る。
江島のスマホの劉の声「『悪』とあるから住めない惑星もあるのじゃないかしら」
江島「『悪』には古来、今で言う『!』に相当する感嘆詞として用いられることがあるから、も
 しかすると非常に素晴らしい所なのかもしれない」
江島のスマホの郭の声「確かに、その可能性もありえる」
江島「ぜひとも、そこに行って見たいが、センター長はゴーサインを出してくれるかな」
江島のスマホの劉の声「それはエジが言うより、私が言った方が良いでしょう」
江島「俺のお目付け役の申し出だから、裏はないと思うだろうな」
江島のスマホの劉の声「監視役と言う程ではなのよ。中国のルールから逸脱しないようアドバイ
 スするだけよ」
江島「難しい役回りなのは理解しているよ」

●5.地球軌道上にある三連鄭和
  鄭和を3つ重ねた船体になっている。
  中央の船体には『漢字遣艇・三連鄭和』と書かれている。  
  中央船体からワイヤーでつながっている1号船体と2号船体が分離し、それぞれ反対方向に
  離れていく。
  ほぼ560メートル離れた所で分離が止まり、1号船体と2号船体の側面にある姿勢制御ロケ
  ットが噴射される。
  ワイヤーでつながった1号船体と2号船体は、ゆっくりと回転を始める。
  中央船体は回転軸の位置にある。

●6.三連鄭和の1号船体内
  江島、スミス、許は、林の中国語の説明を聞いている。
江島のスマホの林の声「1号船体と2号船体は回転による遠心力で1Gを生み出しています。ど
 うです江島博士、宇宙酔いは楽になりませんか」
江島「まだほんの数分しか経っていないので、あまり変化はないです」
  林のスマホに江島の声が届き、訳している。
江島のスマホの林の声「ですから中央船体は無重力区画になります。そこへは与圧シューターを
 伝わって移動します。また穴を通過する際は3つの船体を分離するか合体させることになりま
 す」
江島のスマホのスミスの声「シューターと言っても、1号船体からだと上っていく感じよね」
江島のスマホの林の声「戻って来る時は降りる感じになりますから、シューターとしています」
  林は、シューターのハッチに向かおうとしている。

●7.三連鄭和の中央船体にドッキングしている軌道連絡船内
  三連鄭和のハッチの前に浮遊している江島、劉、郭。    
江島「これで、穴に迷わず戻れるビーコンマーカーも積み込んだし、準備万端整ったな」  
劉「一緒に行きたい所だけで、私と郭は地上スタッフということだから戻るわね」  
郭「3人乗りなんだから、我々3人でも良かったのにさ」
江島「センター長の方針だから仕方ないよ。でも三連鄭和の見学はできたろう。それじゃ行って
 くる」
  江島はハッチを潜り三連鄭和側に漂っていく。

●8.三連鄭和
  1号船体と2号船体を分離し回転させている三連鄭和は、薄緑色の空間となる『管』内をゆ
  っくりと進んでいる。

●9.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スミス、許、江島は並んで座っている。
  それぞれ自分の席の前にあるモニター画面を見ている。  
  顔色の良い江島は、モニター上の『管』ネットワーク図を拡大させている。
江島「そろそろ5番目の穴が見えてくるはずだが、まだ何も反応がないな」
  操縦レバーと噴射レバー操作している許は何も言わず操縦に専念している。
江島のスマホのスミスの声「センサーに反応があったわ。たぶんこれね」  
江島も自分の前のモニターにスミスが見ているものと同じものに切り替え見る。
江島「こういう時ってアメリカ人はビンゴって言うのかな」
  江島の声はスミスのスマホに届き訳される。
江島のスマホのスミスの声「そう言う時もあるけどね」
  江島は5番目の穴の潮流周期を測定するドローンを発射させる。
江島のスマホの許の声「博士、穴の通過となると合体するから1Gはお預けになりますけど、い
 いですか」
江島「ダメって言ったら、何とかなりそうかな」
江島のスマホの許の声「いや無理です」

●10.少し青みがかった恒星が輝く恒星系
  宙域が歪むと合体した三連鄭和が現れる。
  三連鄭和はビーコンマーカーを放出し10キロほど進むと停止する。
  そこで1号船体と2号船体を分離し始める。

●11.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スミス、許、江島は並んで座っている。
江島「穴を通る度に3時間程、無重力になるのか」
江島のスマホのスミスの声「ちょうどよい、イベントじゃない」
江島のスマホの許の声「アメリカ人は楽天的で良いですな」
  許とスミスは、ちょっと目を合わせてからそらしている。
  江島はモニター画面を凝視している。
江島「ああ、ダメだ。海洋が見られる惑星があるのだが、だいたいここから地球と土星ぐらいの
 距離がある。とても三連鄭和では辿り着けそうにない」
  許とスミスも自分のモニターで確認している。
江島のスマホの許の声「それでも博士の言う居住に適している惑星はあったわけですか」
江島「それも怪しいでしょう。実際に行って見ないと」
江島のスマホのスミスの声「江島博士、センサーで詳しく分析できないのですか」
江島「長距離センサーは、今回は搭載していないので」
江島のスマホのスミスの声「中国は儲かっているのに意外とケチなんですね」
江島のスマホの許の声「アメリカが嫌がらせをしているから儲かってませんよ」
  スミスと許はにらみ合っている。
江島「あのぉ、ここでもめてもしょうがないでしょう。ここは一つ穏便に」
  江島は船内のデータメモリーからバッハの『G線上のアリア』を選び船内スピーカーに流
  す。
江島のスマホの許の声「何をやっているのですか」
江島のスマホのスミスの声「なんでバッハなの」
江島「いゃー、バッハは心に滲みるねぇ」
  江島はとぼけた顔をしている。

●12.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  許と江島は並んで座っている。
江島のスマホの許の声「アメリカ人は、どこに行ったんですか」
江島「2号船体の食事コーナーに行くって言ったけど、コーヒーでも飲むんでしょう」
江島のスマホの許の声「気楽なもんです。だいたいあの女、何の役に立つでしょうか」
江島「軍医で生物学者とかでして」
江島のスマホの許の声「それじゃ、ケガや病気をしたら、あの面を見なきゃならないのか」
  江島の前のモニターには『重力場変異』の文字が反転している。
江島「おっ、ここからだいたい7日程の所に別の穴があいているようだ」
江島のスマホの許の声「我々が出てきた穴じゃないのですか」
江島「三連鄭和をそちらに向かわせてもらいますか」
江島のスマホの許の声「了解。今コースを設定します」

●13.三連鄭和の2号船体内の食事コーナー
  江島とスミスがテーブルをはさんで座っている。
江島「別の穴に三連鄭和は向かっていますが、その穴はたぶん、太陽系とはつながっていない別
 の『管』の可能性が非常に高いのです」
江島のスマホのスミスの声「そんな所に入って、出られなくなることはないのですか。あの中国
 人と心中はゴメンです」
江島「まずドローンを入れて様子を見てから、入りますから危険はありません」
江島のスマホのスミスの声「それじゃ、そこまでの7日間は一日3交代でいいんじゃないの。そ
 の方が顔を突き合わせることはないし」
  江島は考え込んでいる。
江島「一応、船長の許に言ってみます」
江島のスマホのスミスの声「江島博士が、この探査を取り仕切っているんじゃないの」
江島「あくまでも探査に関してで、操船は許なんです」
  スミスは軽くうなづく。スミスはコーヒーを飲み干すと立ち上がりコーヒーカップを洗浄器
  に入れる。

●14.三連鄭和の2号船体内の江島の個室
  カプセルホテルの一室のようなものに掘りごたつ式の机が付いている。
  江島は机でノートPCに日誌を打ち込んでいる。
  『許もスミスも仲悪過ぎで参った。こいつらの代わりに劉と郭がいれば大助かりだ…』
  江島はそこで手が止まる。。  
  『こんなクルーのことよりも書き記さなければならないことがあった。新しい管は穴の直径
  は80mはありそうだ。それは…』
  江島のキーボードを叩く手が軽やかになっている。

●15.少し青みがかった恒星が輝く恒星系
  合体した三連鄭和は僅かに歪む穴に入っていく。
  船体全てが穴に中に入ると三連鄭和の姿は宇宙空間に消える。

●16.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  許と江島は並んで座っている。
江島「我々が入った穴の潮流周期は3.8時間程だから、第一距越管の穴とほぼ同じと言える」
江島のスマホの許の声「それじゃ、今いるのは第二距越管となるのか。いつの間に命名したんで
 す」
江島「今です」
  コックピットに入って来るスミス。
江島「少佐の当直は俺の後でしょう。大佐と交代するのは俺だけど」
江島のスマホのスミスの声「なんか2号船体で変な音がしたから、隕石でもぶつかったかと思っ
 て確認に来たんだけど」
江島「船外センサーや船外カメラには、何の反応もないけど、どんな音がしたんだ」
江島のスマホの許の声「どうせ気のせいだろう」
  スミスは許を無視している。
江島のスマホのスミスの声「何かが当たって引っかかったような音だったわ」
  江島は2号船体の船外カメラの映像を確認する。
江島「ちょっと待った。第二距越管内だから薄緑色のはずなのに真っ黒だ。カメラの前に黒い物
 体が引っかかっているようだ」
江島のスマホの許の声「ちょうど交代の時間だから、後は頼みました」
江島のスマホのスミスの声「江島博士に船外作業をやらせるわけ」
  スミスと許の視線がぶつかる。
江島「多目的ロボットにやらせるから問題はない」
  まず許がコックピットを出て行く。
江島のスマホのスミスの声「ロボットの操作を手伝うわ。あいつが個室に入った頃に戻りたいか
 ら」
江島「くれぐれも2号船体でもめないでください」
江島のスマホのスミスの声「わかっているわよ」

●17.三連鄭和の1号船体内の分析ブース
  座布団1枚ほどの大きさの石板の破片を見ているスミス。江島はコックピットから分析ブー
  スに入って来る。
江島「三連鄭和はオートパイロットだから、覗きに来た」
江島のスマホのスミスの声「これが多目的ロボットが取ってきたものなんだけど」
江島「石板の破片らしいな。第二距越管内にあるとは意外だな」
江島のスマホのスミスの声「漢字らしいものが書かれているけど、江島博士はわかるの」
  江島はその破片を手にしてみる。
江島「思ったよりも全然軽いな。石板というよりはプラ板のようだ」
江島のスマホのスミスの声「多目的ロボットの分析によると材質は何らかの樹脂製らしいわ」
  江島は石板に書かれた完全な一字『岐』と獣偏しか残っていない文字を見ている。
江島「樹脂製か。標識のようなものかな」
江島のスマホのスミスの声「それじゃ、あたしは、この後の当直に備えて個室に戻るわ」
  スミスは分析ブースを出ていく。

●18.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島は、モニターに映る第二距越管の行く手が二つに分岐している箇所を見つめている。
  左の方は太く本線のようになっていて、右の方は若干細くなっている。
  江島は三連鄭和を停止させている。

●19.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スミス、許、江島は並んで座っている。
江島「こうして3人が並ぶの久しぶりな気がする」
江島のスマホのスミスの声「そうでもないでしょう」
  許は黙ってモニターを見ている。
江島「皆さんの意見を聞こうと思って、集まったわけですが、右か左かどちらを探査しますか」
江島のスマホの許の声「探査は博士に任せているから、私はなんとも言えません」
江島のスマホのスミスの声「そうですね。探査ですからね。でも左の方が広いから良くないかし
 ら」
江島「ドローンで調べた限りでは、右の方にだいたい1日行ったところに穴があるんだけど。俺
 としては、そこを探査したら、地球に戻ろうと思うがどうでしょう」
江島のスマホのスミスの声「左の方には穴はないの」
江島「全く穴が確認できなかった」
江島のスマホの許の声「それなら、早く帰れる右の方に賛成です」
江島のスマホのスミスの声「あたしも、早く帰れるなら右ですかね」
江島「珍しくお二方とも意見が一致しましたね」
  許とスミスはそっぽを向いている。
江島「それで、なんですが、探査にあたっては3交代の当直制はやめて、船内昼時間に全員で作
 業に取り掛かりたいのですが、良いですか」
江島のスマホの許の声「博士の指示に従いますから指示してください。取りあえず一人でできる
 作業がいいです」
江島のスマホのスミスの声「江島博士が指示してください。それ以外は従いませんから」

●20.第二距越管内の穴付近
  三連鄭和は薄緑色の空間で停止している。

●21.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スミスと江島が並んで座っている。
江島「昨日通過しはずの分岐点からビーコンが届いていない」
江島のスマホのスミスの声「そんな馬鹿な。数時間前まで届いていたのに」
  スミスは船内コンピューターに再チェックをコマンドしている。
  許はトイレから戻ってくる。江島は許の方に振り向く。
江島「ビーコンがなくても、分岐点に戻れますか」
江島のスマホの許の声「穴とは違うからたぶん大丈夫でしょう」
  許は席に座り、操縦パネルをチェックする。
江島のスマホの許の声「三連鄭和の方位が全然わからない、第二距越管に対して水平なのか垂直
 なのかもわからない。どうしてなんだろう」
江島「センサーが狂っている可能性がある。これじゃ穴を潜って探査どころじゃないな」
江島のスマホのスミスの声「多目的ロボットに調べさせましょう」
江島「船のことは大佐が船長だけど…頼みます」
  江島が許の方を見ると許は軽くうなづいている。
  スミスはコックピットから出ていく。

●22.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  許と江島が並んで座っている。
江島「センサーの故障なら良いが、違うとなると面倒なことに」
江島のスマホの許の声「あのアメリカ人に任せられるかな。自分の目で確かめたい」
江島「いや、あの人だって、地球に早き帰りたいのだから、見落としなどはないでしょう」
  江島は急に思い立ったように分析ブースに向かう。

●23.三連鄭和の1号船体内の分析ブース
  江島は石板の破片を見ている。石板にあるただの擦り傷のような線が指でなぞっている。

●24.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島はコックピットに戻ってくる。
江島「迂闊だった。石板には甲骨文字の中でも最も古い書体で『右』とあった。獣偏の文字は何
 を意味するのかはわからないが、獣偏ということは、危険を示唆している可能性が高い」
江島のスマホの許の声「博士、とにかく危険な方に進んだってことでしょう」
  多目的ロボットを操作していたスミスが戻ってくる。
江島のスマホのスミスの声「センサーやアンテナにこびりついている黒っぽい砂のようなものが
 取れないのよ」
江島のスマホの許の声「それじゃ空間そのものがどうこうではなく、機器が働いていないだけだ
 な。それなら船体を合体させて目視で操縦すれば戻れるな」

●25.第二距越管内
  三連鄭和はゆっくりと進んでいる。岩石片が散らばる空間に突っ込んでいく。ギリギリの所
  をかすめていく岩石片。段々岩石片の密度が濃くなっていく。
  岩石片が三連鄭和に激突する。

●26.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  警報が鳴り、許は慌てている。江島はモニターを見つめ、スミスは、頭を抱えている。
江島「岩石の欠片が当たったようだ。今被害状況を分析中」
江島のスマホのスミスの声「任せろって言った癖に、全く」
江島のスマホの許の声「なんであんなものが浮遊しているんだ。来た時はなかったのに」
江島のスマホのスミスの声「目視でも方向が間違ってるからよ」
江島のスマホの許の声「しかし、あそこに分岐点が見えるではないか。あれっ、消えていく」
  江島は茫然としている許をしり目に警報を解除する。
江島「あぁ、さっき衝突で、中央船体の給水タンクに亀裂が生じている」
  江島は亀裂から霧状に水が噴出している状況を外部カメラで確認している。
江島のスマホのスミスの声「最悪だわ。とにかく多目的ロボットで補修させるわ」
  キーボードを素早く打つスミス。
  許は三連鄭和を反転させて停止する。

●27.三連鄭和の1号船体内の分析ブース
  船内のデータベースにある安陽の石板の映像を分析している江島。
  江島は文字列の中の『…有歪四拾弐加伍分四…』に注目している。
  江島はニヤリとしてからコックピットに向かう。

●28.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  許は3D化されている『管』のネットワーク図を見ている。
  スミスは多目的ロボットの遠隔操作をしている。
江島「聞いてくれ、ビーコンは42.8度ズレて届いている可能性がある。全く消えてしまったわけ
 ではないはず」
江島のスマホのスミスの声「なんでそれがわかるの」
江島「地球の石板をいろいろと読み返してみたら、この数字があったんだ」
江島のスマホの許の声「第二距越管では、分岐点も穴も全て42.8度ズレているのか」
江島「たぶん、そうじゃないかな」
江島のスマホの許の声「「ビーコンが消えたことに気が付いた位置に戻って、そこから分岐点と
 42.8度ズレている位置に三連鄭和を移動させてみます」
江島のスマホのスミスの声「それがわかってビーコンが拾えても、タンクの水は戻らないわ」
  許は江島の方を見る。
江島「大佐、とにかく移動させてくれます」

●29.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スミス、許、江島は並んで座っている。
江島のスマホのスミスの声「ビーコンのズレがわかったから、もう迷うことないけど、早いとこ
 水を確保しないと」
江島のスマホの許の声「この穴もダメか。次で12コ目だ」
  許は操縦パネルを操作している。
江島「合体の無重力には、また酔いが回ってきた。次の12コ目の穴で今日の水探しは終りにしよ
 う」
江島のスマホの許の声「そうと来たら、早いとこ済ませましょう」

●30.青白い恒星が輝いている恒星系の外縁部
  合体している三連鄭和は、穴から一番近いガス惑星の輪に向かっている。
  遥か彼方の点のような惑星は赤く光っている。

●31.ガス惑星の輪
  ドローンは輪の中に入る。
  直径50m大の岩石の欠片に接近し、岩石の表面に爆薬をセットする。

●32.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  岩石の欠片が爆発し粉々になる映像をモニターで見ているスミス、許、江島。
江島「この中に氷の欠片がどの程度あるかと…、あぁ結構ある」
江島のスマホのスミスの声「これを回収すれば水が補えるわ」
江島のスマホの許の声「良かった」
  許は心からほっとしている。
江島のスマホのスミスの声「今からドローンと多目的ロボットで回収させようと…、ドローンに
 作動エラーが出てる」
江島「ドローンが爆発の破片で故障した可能性があるな」
江島のスマホのスミスの声「それなら有人探査機にロボット載せ替えればいいんじゃない」
江島のスマホの許の声「あれは一人乗りですから自分が行ってきます」
江島「大佐、それは助かります。大佐なら、作業がはかどります」
江島のスマホのスミスの声「どうだか。今度は失敗しないでもらわないと」 
  スミスは許の方を見ずに言っている。

●33.ガス惑星の輪の中
  アポロの地球帰還船のような三角錐の有人探査機は、30~50センチ大の氷の欠片に接近す
  る。探査機とワイヤーでつながる多目的ロボットが氷の欠片を抱え、探査機に括りつけてあ
  る網に入れる。

●34.有人探査機内 
  許は、操縦レバーを目まぐるしく操作している。彼の正面にある窓ガラスの端には、ディス
  プレーとして距離や速度などの様々なデータが投影されている。
  作業を続けているうちに、窓の外に見えるロボットの動きが止まる。
  許は中国語で一人罵ってから、通信機をオンにする。

●35.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  スマホの翻訳機能をリンクさせて通話ボタンを押す江島。
  スミスは周辺の隕石などの動きをモニターしている。
江島「大佐、なんかありましたか」
スマホ経由の許の声「ロボットが故障した」
江島「今現在、回収量はどのくらいですか」
スマホ経由の許の声「目標の80%というところです」
江島「それじゃ、引き揚げますか」
江島のスマホのスミスの声「いゃ、ダメよ。この先、氷など入手できないかもしれないから、
 90%はないと」
  江島は考える。
江島「大佐、ロボットを直せそうですか」
スマホ経由の許の声「自分は、ロボットは苦手で…」
江島のスマホのスミスの声「私が行って直すべきかしらね。でも私だって専門ではないけど」
スマホ経由の許の声「「アメリカさんの手助けは、いらない。宇宙服もあることですし、自分が
 回収します」
江島「大佐、大丈夫ですか」
スマホ経由の許の声「船外作業は何度もやっているので大丈夫です」

●36.ガス惑星の輪の中
  有人探査機からワイヤーでつながる宇宙服の許。
  岩石片が付着している氷の欠片を抱えて網の中に入れている。
  許の背後に20センチ大の氷の欠片が突き進んで来る。
  許の足に欠片の一部が衝突し5つの欠片に砕ける。
  欠片の一つが許の脇腹辺りを引っかいて通り過ぎる。
  許の宇宙服の太ももの部分と脇腹の部分から、空気が漏れ始める。
  許は宇宙服のポケットから修繕パッチを取り出し、太ももの部分に貼る。
  脇腹にも貼ろうとすするが、手元が震えてきれいに貼れない。
  なんとか貼りつけるが、それでも隙間から空気がわずかに漏れている。

●37.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  コックピットには警報が鳴っている。江島とスミスはモニターを食い入るように見ている。
江島「大佐の生体モニターに警報だ」
江島のスマホのスミスの声「あの人、宇宙服に穴が空いている。それに生体反応が弱まってい
 る」
江島「まずいな」
江島のスマホのスミスの声「またしても、手間がかかる人だわ」
江島「そんなこと言っている場合じゃないでしょう。軌道連絡艇で助けに行く」
江島のスマホのスミスの声「連絡艇を使うの」
江島「三連鄭和は危険にさらせないし、それしか乗り物がない」  
  江島はコックピットの隣にある軌道連絡船のハッチ室に行く。

●38.軌道連絡船内
  江島は、許の宇宙服のヘルメットを外している。
江島「大佐、大丈夫ですか」
  江島は日本語のまま言ってしまう。
  許は力なく微笑んでいる。江島は船内服のポケットを探る。
江島「日本語じゃわからないだろうが、スミスが手当てしてくれるだろう」
許「スミス…」  
  首を横に振るが、言葉はでない。

●39.三連鄭和の2号船体内の医療処置コーナー
  簡易ベッドに横になっている許。スミスは足の骨折部分を見ている。
江島のスマホのスミスの声「江島博士、固定プラスター包帯を取って」
  江島は医療キットが入っている引き出しから包帯を出す。
  スミスは、手早く骨折部分を固定する。
江島のスマホのスミスの声「後、火傷用の軟膏も」
  スミスは感情を押し殺した医者の目で許を見ている。

●40.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島とスミスは修理した多目的ロボットを使って氷を溶かし給水作業をしている。  
江島のスマホのスミスの声「「これでタンクの水は92%になったから、地球に帰るまでもつでし
 ょう」
江島「大佐、無事だし、水も確保できた。良かった」
江島のスマホのスミスの声「参ったわ。江島博士も探査どころじゃなかったでしょう」
江島「まぁ、探査なんてこんなもんでしょう。次は第二距越管に入って穴から出て第一距越管に
 戻らないと」
江島のスマホのスミスの声「まだ道のりは長そうね」
  スミスは頭上を仰ぎ見る。

●41.第二距越管内
  合体している三連鄭和は、穴を通過して薄緑色の空間に姿を現す。

●42.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島とスミスが座っている。
江島「穴を通過するたびに無重力になるのには、閉口するよ」
江島のスマホのスミスの声「仕方ないでしょう。我慢してもらわないと」
  江島が振り向くと許が浮遊してくる。
江島「大佐、何しに来たんです」
江島のスマホの許の声「博士、無重力の間にありがとうが言いたくて」
江島「俺は、連れ戻しただけで、処置はスミス少佐だけど」
  許はスミスの方を見る。スミスは、ちょっとどぎまぎしている。
江島のスマホのスミスの声「何よ」
江島のスマホの許の声「あんたのおかげで助かったよ。博士共どもありがとう」
江島のスマホのスミスの声「医者として任務を全うしただけ」
  許は照れくさそうに手を差し伸べようとするが、引っ込める。
江島「なんだかな」
  江島はスミスの手をつかみ、もう一方の手で許の手をつかむ。
江島「握手は、こうやるんだよ」
  江島が二人の手を離しても、スミスと許はしばらく手を握ってから離す。
江島のスマホの許の声「それじゃ博士、少佐、自分は重力が戻る前に2号船体に戻ります」  
江島のスマホのスミスの声「途中で重力を戻すような嫌がらせはしないわよ」

●43.第二距越管内
  各船体を分離させている三連鄭和は薄緑色の空間を進む。分岐点を過ぎ、太い本線に戻る。
  本線をゆっくりと進む。

●44.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島とスミスが座っている
江島「センサーやアンテナについていた黒っぽいものはなんだったんだろう」
江島のスマホのスミスの声「わからないけど、問題はなさそうだし、、あっ、本線に戻ったらな
 くなっている」
  スミスはモニターに映し出されている船外カメラの映像を見ている。
  江島は別の画像を目の前にモニターに映し出し見ている。
江島「こんな所に未発見の穴がある。来る時には気が付かなかったものだ」
  スミスは江島が見ている画面を覗き込む。
江島のスマホのスミスの声「見落としかしら」
江島「そんなことあるかな。センサーが重力場の変異とか記録しているはずだけど」
江島のスマホのスミスの声「ついでだから、探査してみる。本線ならビーコンのズレもないでし
 ょう」

●45.輪のないガス惑星のそばの宙域
  船体を分離させた三連鄭和の中央船体から有人探査機が飛び立つ。
  ガス惑星の7つある衛星のうち、一番外側にある衛星に向かっている。

●46.有人探査機
  江島は、ぎこちなく操縦レバーを操作している。
江島「こちら江島、7番衛星を周回中。今、氷原の領域にさしかかっている」
スマホにリンクされた通信機のスミスの声「石板のようなものはないのね」
江島「所々石板の材質に近い物質の反応があるけど、加工前の原石か何かでしょう」
スマホにリンクされた通信機のスミスの声「何もないならさっさと引き揚げましょう」
江島「いゃ、降り立ってその石板の原石を採取しようと思う。この衛星は重力も小さいし、探査
 機で降りても問題ない」

●47.7番衛星の表面
  氷原がまばらに広がり、所々黒っぽい岩石の山が顔を出している。
  宇宙服を着た江島は、工具と採取箱を持ってふわふわと歩いている。
  手近の岩山の壁面を削り、岩の欠片を採取箱に入れる。
  宇宙服のヘルメットの頭上には、巨大なガス惑星の姿がある。

●48.輪のないガス惑星を持つ恒星系
  第二距越管につながる穴に向かう合体した三連鄭和。
  船の進行方向にある歪んだ空間が消える。
  周囲のどこにも空間の歪みがない。

●49.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島、スミス、許が座っている。
江島「おいおい、消えちまったよ」
江島のスマホの許の声「あれ、どこにもない。痛ぇ」
許は驚きのあまり、足を動かし操作盤にぶつける。
江島のスマホのスミスの声「何で消えるのかしら」
  3人は顔を見合わせる。
江島のスマホのスミスの声「この穴がなきゃ、帰れないじゃないの。江島博士が、探査に行かな
 きゃ、こんなことには…」
江島のスマホの許の声「博士を責めてもしょうがないでしょう。少佐も同意してるんだから」
江島のスマホのスミスの声「だって、あぁ、これが私の悪いところね…。しかしどうしよう」
江島「ここでしばらく様子を見よう。周期的に穴が開閉するのかもしれない。だから行きに見落
 とした可能性がある」
江島のスマホの許の声「リーダーが言うならそうしましょう」
江島「え、俺がリーダー。階級は大佐でも少佐でもない民間人だけど」
江島のスマホのスミスの声「江島博士がいないとまとまらないから」

●50.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島、スミス、許が座っている。
江島のスマホのスミスの声「やっぱり江島博士の言う通り、穴が開いたわね」
江島「5.6時間周期のようだ」
  江島はモニターのタイマー表示を見ている
江島のスマホの許の声「でも、直径が小さ過ぎるようですが」
江島「んー、センサーによると合体したままでも通過は無理だな」
江島のスマホのスミスの声「もっと大きくなる周期があるんじゃないの」
江島「そうかもしれないが、その周期が1年後だったらどうする。今なら、各船体、完全分離し
 て別々なら通過できる」

●51.輪のないガス惑星を持つ恒星系
  三連鄭和は、1号船体、2号船体、中央船体に完全分離される。
  ワイヤーやシューターは収納される。

●52.中央船体内の倉庫ハッチ前
  壁面の操作パネルの前に浮遊している江島。
  通信機にスマホをリンクさせ通信機をオンにしている。
江島「分離した各船体は出力がほぼ3分の1になるから、引き潮の間に急ごう。まず大佐の1号
 船体から、続いて少佐の2号船体、最後に中央だ」

●53.輪のないガス惑星を持つ恒星系
  船体の大きさギリギリの歪みの空間に入っていく、1号船体、2号船体。
  中央船体も2号船体の後に続く。
  しかし速度が徐々に遅くなる。

●54.中央船体内の倉庫ハッチ前
  小さい画面のモニターで外部状況を見ている江島。
江島「まずいな、押し潮になってきた。大佐、少佐、牽引ワイヤーで捕まえてくれ」
通信機の許の声「了解」
通信機のスミスの声「了解したわ」
  すぐに中央船体に牽引ワイヤーが引っかかる音がする。
  江島は操作盤のレバーを『最大』にセットする。
  エンジンの振動が伝わってくる。
通信機の許の声「1号船体、エンジンフルパワー」
通信機のスミスの声「2号船体、マックスよ」

●55.第二距越管内
  穴から半分だけ中に入っている中央船体。それをワイヤーで引っ張る1号船体、2号船体。
  ほぼ停止している状態になっている。

●56.中央船体内の倉庫ハッチ前
  小さい画面のモニターを食い入るように見る江島。
江島「押し潮が強力過ぎる」
通信機の許の声「軌道連絡船を分離して、ワイヤー牽引に加えてます」
通信機のスミスの声「それはナイスだわ」
江島「おお、動いたぞ、中に入れる」
  江島は中央船体の燃料計を見る。
江島「まもなく空なる。後は神頼みだ」
  操作パネルから警告音が鳴る。燃料計がゼロを指す。
  江島は倉庫の窓に浮遊する。
  中央船体は、全部が薄緑色の空間内にある。穴は塞がっている。

●57.第二距越管内の本線
  1号船体と2号船体を回している三連鄭和は薄緑色の空間を進んでいる。

●58.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島、スミス、許が座っている。
江島のスマホのスミスの声「これで合体しても出力3分の2ってわけね」
江島「中央船体は空だからな。しかし大佐が機転を利かしてくれたので助かりました」
江島のスマホの許の声「できることをやったまでです。昇進につながると良いんですが」
江島「俺が王少将に報告するから」
江島のスマホのスミスの声「わたしのことも上官に報告してよ」
江島「わかってますけど、誰にでしたっけ」
江島のスマホのスミスの声「地球に戻ったら教えるわ」

●59.地球と月のラグランジュ点付近の宙域
  合体した三連鄭和が歪んだ空間から出てくる。
  その近くには、宇宙構造物を作ろうとしている現場がある。
  現場には『安全第一』『天帝飯店』『中美日共同開発計画』などの立札が浮遊している。

●60.三連鄭和の1号船体内のコックピット
  江島、スミス、許が座っている。
江島「いつの間に、こんなことを始めたんだ」
江島のスマホの許の声「天帝ホテルなんてものを作って人は来るのかな」
江島のスマホのスミスの声「かなり大きなものになりそうね」
江島「世界中の金持ち相手なら、バンバン来るんじゃないか。意外とおいしい商売になりそうだ
 けど」

●61.HACの地下3F分析室
  劉、郭、江島の前の作業台には、江島が持ち帰った原石が置いてある。
  ピープ音が鳴ると分析器にかけたデータがモニターに映し出される。
江島のスマホの劉の声「これがエジが苦労して持ち帰った石ですね」
江島「石英が主成分かな。石板はこれに何らかの樹脂が混ぜられているようなんだ」
江島のスマホの郭の声「それはそうと、今度できる天帝ホテルにHACの拠点が移るの知ってま
 した」
江島「えっ、そうなの。天帝ホテルは、帰って来る時に工事現場を見たけど、凄くデカそうだっ
 たけど」
  劉は余計なことを言ったなという顔を郭に向けている。
江島のスマホの劉の声「近いうちに発表があると思うわ」
江島「それで、話を戻すけど、第二距越管内には危険な分岐点があったんだが…」
江島のスマホの劉の声「エジが行った後に我々もそれに気が付いたけど、もう遅かったわ。ビー
 コンのズレは42.8度でしょう」
江島「なんだ。やっぱり君らと行った方が良かったな。スミスも許も仲違いばかりしてたから」
江島のスマホの郭の声「針の筵ってわけですか」
江島「それでも、最後は仲良くなったけど」
江島のスマホの劉の声「そうなの」
  劉は素っ気なく言う。

●62.HACのメインホール
  ホールには、江島たちを含むセンターのスタッフたちが100人ほど立っている。  
江島のスマホの王の声「皆さんもご承知の通り、この漢字考古学センターは、第一距越管に近い
 ラグランジュ点に第二拠点を設けることになりました。現在建設中の天帝ホテル内です。です
 から、こちらは地上の施設としてそのまま存続します。それに伴う一部引越しは、来年初を予
 定しています」
  王は江島たちを含むセンターのスタッフをたちを威厳を保ちながら見回している。  
江島のスマホの王の声「天帝ホテルは、我々の開発費を稼ぐ場所でもあるので、非常に重要な施
 設となります。HAC天帝センターのセンター長には、現在ここの副センター長の陳栄光氏が
 着任する予定です。それで…」
  江島のスマホにメールの着信がある。
  『意識体通信器につながる一文を解読した。大里』とある。
  江島は足が出口に向かいかけるが、劉が動くなと言わんばかりに見ている。  

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