故意に恋して 学園

石田輝久(12)はひょんな事から、この春からクラスメイトとなった安田健司(12)の恋の応援をする事になって……。
マヤマ 山本 20 0 0 09/22
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第一稿

<登場人物>
安田 健司(12)中学1年生
熊野 武(12)同、安田の舎弟(?)
石田 輝久(12)同、安田のクラスメイト
高木 理央(12)同、同
木下 菜々(12)同 ...続きを読む
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<登場人物>
安田 健司(12)中学1年生
熊野 武(12)同、安田の舎弟(?)
石田 輝久(12)同、安田のクラスメイト
高木 理央(12)同、同
木下 菜々(12)同、石田や高木の幼馴染



<本編>
○メインタイトル『故意に恋して』

○中学校・外観
   チャイムの音。

○同・廊下
   談笑する生徒達。
   木下菜々(12)の元にやってくる石田輝久(12)。
石田「あ、ナナ~、いい所に。数学の教科書、貸してくんない?」
菜々「テルも忘れたの? さっき理央に貸しちゃったよ」
石田「マジかよ~。うわ、もう絶望的だし」
菜々「ドンマイ。じゃあね」
   その場を去っていく菜々。
石田「ヤベェし。マジどうしよ?」
   石田の元にやってくる安田健司(12)。石田よりも背が低い。
安田「おい、石田何とか」
石田「お前は……安田健司!」
安田「へっへっへ。俺っちも有名になったもんだぜ」
石田「せっかく出席番号一番になのに、背の順で二番になっちまうなんて、許せねぇし」
安田「……何だかよくわかんねぇけど、とにかく、木下菜々ちゃんは俺っちが先に目をつけてたんだ。諦めてもらうぜ!」
石田「……は?」

○同・教室・中
   大柄な生徒、熊野武(12)と石田の間に立つ安田。
安田「という訳で、俺っちに協力してくれる事になった、テルだ」
石田「石田輝久だ。よろしく」
安田「こっちは、俺っちの舎弟のクマ」
熊野「熊野武だ」
石田「(安田と熊野を見比べ)舎弟?」
熊野「らしい」
安田「それより、テル。どうやったら俺っちとナナちゃんは付き合えると思う?」
石田「そうだな~。まずはヤスの顔と名前を覚えさせねぇとな。ナナは初対面の奴への警戒心高ぇし」
安田「わかった。行ってくる!」
   勢いよく教室から出ていく安田。
石田「え、いや、おい……。何だアイツ。マジ面白ぇし」
熊野「……なぁ、石田」
石田「テルでいいよ」
熊野「テルは、何でヤスに協力する気になったんだ?」
石田「そりゃあ『一目見てビビビッと来たんだ』なんて言われちまったら、協力しねぇ訳にはいかねぇし。一世一代の大勝負。まさに青春、って感じだし」
熊野「そうか……」
石田「それがどうかしたのか?」
熊野「先に謝っとく。すまん」
石田「何だよ。別に謝る事じゃ……」
   二人の元に戻ってくる安田。
安田「おい、テル~。今ナナちゃんに自己紹介したら、めっちゃ変な目で見られちまったぞ~?」
石田「だから俺、さっき『初対面の奴への警戒心高ぇ』って言ったし」
安田「え~!? おいおいおい、どうすんだよ~!?」
石田「落ち着けって。後で俺が間に入ってやるし」
安田「本当に!? やった! 持つべきものはテルだぜ!」
   二人の様子を傍観している熊野。

○同・外観(夕)

○同・教室・中(夕)
   一人立っている安田。そこに菜々を連れてやってくる石田。
石田「おう、ヤス。待たせたな」
安田「お、俺っちも今来たところだから」
菜々「(思い出して)あ~、昼間の。何、テルの友達?」
石田「そういう事。まぁ、ちょっと話聞いてやってよ。(安田に)じゃあ、頑張れよ」
安田「ちょっ、テル。俺っちを置いていくのかよ?」
石田「俺いたら意味ねぇし。しっかりな。ビビンなよ?」
   教室から出ていくテル。
   向かい合う安田と菜々。
安田「(緊張して)あ、あ、あ……」
菜々「……ごめん、名前何て言ったっけ?」
安田「(緊張して)えっと、あの、その」
菜々「(気まずい)」
安田「き、君の作ったみそ汁を、毎日飲みたい」
菜々「……はい?」
安田「えっと、だから、初めて会った時から……」
菜々「会ったの今日初めてじゃん」
安田「だから、その、お、俺っちとおちゅきあいを……」
菜々「え?」

○同・同・前(夕)
   聞き耳を立てている石田とその後ろに立つ熊野。
安田の声「だ、第一印象から決めてました」
石田「それじゃ『ねるとん』だし。なぁ、クマ。ヤスの奴大丈夫か?」
熊野「まぁ、いつもの事だ」
石田「いつも?」
   そこにやってくる高木理央(12)。
高木「おい、テル。ナナどこ行ったか知らねぇか?」
石田「え? ナナならこん中だし」
高木「そうか」
   中に入ろうとする高木。
石田「(高木を止めながら)おいおい、何してんだし」
高木「は? ナナに借りた教科書返しに来ただけだっつーの。つーか、テルこそ何してんだよ」
石田「説明は後。とにかく、今は入っちゃダメ。いい所なんだし。なぁ、クマ?」
熊野「……」
高木「……つーか、誰?」
石田「クマだし」
高木「いや、人だろ?」
石田「いや、まぁ、そうだけど……」
   と言っている間に教室に入る高木。
石田「って、オイ!」

○同・同・中(夕)
   向かい合って立つ安田と菜々。そこに入ってくる高木。
高木「あ~、いたいた」
安田「(驚いて)ふ、不良?」
菜々「理央、どうしたの?」
高木「『どうしたの』じゃねぇよ。つーか、お前が今日中に返せって言ったんだろが」
菜々「借りといて随分偉そうじゃん」
   高木から教科書を受け取る菜々。
   その瞬間、二人の間に入り、高木の頭を叩く安田。
菜々「(驚いて)!?」
安田「ナナちゃんから手を離せ~!」
   床に落ちる教科書。
安田「不良め。この俺っちがいる限り、ナナちゃんには指一本触れさせないぜ!(菜々に)ナナちゃん。安心して。君の事は、俺っちが必ず守るから!」
菜々「(ため息交じりに)知~らない」
   髪の毛を気にする高木。
高木「つーか、乱れちまったんだけど」
安田「ん? 何を言ってるかわからねぇけどこれでもくらえ~」
   高木に殴りかかる安田。その安田を蹴り飛ばす高木。吹っ飛ぶ安田。
安田「うげっ」
   倒れる安田に、さらに殴りかかろうとする高木。
高木「こんなもんで済むと思うなよ?」
   後ろから高木の腕を攫む熊野。熊野を睨む高木。無言で首を横に振る熊野。
高木「(熊野の強さを感じ取り)ちっ」
菜々「すごい、理央を止めた……?」
    ×     ×     ×
   座り込む安田を囲んで立つ菜々、石田、熊野、高木。
菜々「ごめん。私、自分からケンカを売るような人は、ダメなんだ」
安田「……はい」
菜々「じゃあ、私はこれで」
   高木を一度睨み、出ていく菜々。
   安田の肩を叩く石田。泣き崩れる安田。

○同・外観
   T「翌日」

○同・教室・中
   安田の席の前に立つ石田。その脇には熊野と高木も座っている。
石田「は? どういう事?」
安田「だから、女バス(=女子バスケットボール部の略)の古橋先輩。ビビビッと来てさ。運命かもしんねぇ。協力してくれよ、な?」
石田「『な?』って、まだ昨日の今日だし」
   恐る恐る熊野を見る石田。
熊野「こういう奴だ」
石田「マジかよ~。協力して損したし」
熊野「だから言っただろ。『すまん』って」
   ため息交じりに安田を見る石田と高木。ウキウキしている安田。
                  (完)

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