CHU-NI コメディ

中二病とは… 男子が中学二年時に取りがちな痛い行動・思考 今、俺の右手が疼きだす。
白石 謙悟 9 1 0 06/04
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第一稿

『CHU−NI』

登場人物

本田 雅也(ホンダ マサヤ)…中二病患者。空想・設定好き・変態
             あまり人の話を聞かない
与那城 螢 ...続きを読む
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『CHU−NI』

登場人物

本田 雅也(ホンダ マサヤ)…中二病患者。空想・設定好き・変態
             あまり人の話を聞かない
与那城 螢(ヨナシロ ケイ)…雅也の旧友。常識人?苦労人・お節介・良い奴


ナレーション(雅也)「俺の名は本田雅也。もっとも、この名前は
この世界を忍んで生きていく為の仮の名だ。
俺の真の名は陽炎(かげろう)。
悪魔退治を生業とする一族の末裔だ。
16歳の時、俺の中で眠っていた悪魔祓い(エクソシスト)の血が突如として
覚醒したのだ。
同時に、闇で生きる運命を課せられた…。
表向きは一般的な高校生。裏では闇に紛れ、人知れず悪魔を狩る毎日。
今宵も、俺の右手が疼きだす…」

明転。校舎の屋上。
座り込み、右手を押さえて苦しそうな様子の雅也
それを怪訝そうに見ている螢

雅也「くそ…静まれ…!」
螢「おい、大丈夫か?」
雅「螢、離れていろ…。ここにいると、お前まで危険が及ぶ」
螢「どうなるんだよ?」
雅「この学校が消し飛ぶ」
螢「どんだけ全力で逃げなきゃいけねぇんだよ!手遅れだよ」
雅「うぐああ!!いかん、俺の中の魔獣が暴れ出す…!」
螢「あのなぁ、週単位で校舎吹き飛ばされてちゃあ、こっちもいい迷惑だよ」
雅「は、早く……逃げるんだ!!」
螢「はいはい、逃げます、逃げます」

その場から離れようとする螢

雅「待て」
螢「どうした?」
雅「俺の中の魔獣が静寂を取り戻した…」
螢「寂しいんなら素直に言おうなー?」
雅「寂しい…?俺はそんな感情は生憎と持ち合わせていない」
螢「なぁ、雅也。お前、その過剰な中二病体質、いい加減何とかならないのか?
  もう皆、ドン引き通り越して許容しちゃってんのもどうかと思うけど…」
雅「お前らは何もわかっていない!これが人間のあるべき姿なんだ!
  人は誰しも他人とは違う可能性を秘めている。
  それなのに、あろうことか病気扱いとは…。
  嘆かわしくて言葉もない」
螢「そこまで熱くならなくても…。まぁ、個性として受け取ってるけどさ」
雅「大体、お前もその可能性を十分に秘めていることを理解しろ、螢」
螢「は、俺?」
雅「そうだ。お前の名前は何だ?」
螢「え、螢だけど…知ってんだろ?」
雅「違うッ!フルネームで言ってみろ!!」
螢「与那城螢…」
雅「すげぇ主人公っぽい…」
螢「知らねぇよ!?お前の中の主人公の基準がわからねぇよ」
雅「俺なんか…本田で雅也だ。一般的過ぎてヘドが出る」
螢「お前、お母さんと全国の本田さんと雅也君に謝れ」
雅「まぁ、もっとも?この名前は世を忍ぶ仮の名だ。真の名は陽炎」
螢「っていう設定なんだよね?」
雅「五月蠅いぞ。ちなみに、今のうるさいは五月の蠅と書く」
螢「いちいち解説しなくていいよ」
雅「おっと、こうしちゃいられない。俺は今から放課後の悪魔退治なんだ。
  では、アリーヴェデルチ」

ハケようとする雅也。それを引きとめる螢

螢「待て待て待て?まだ昼休みだぞ?放課後には早過ぎる」
雅「エクソシストの夜は早い!見ろ、校舎内を悪魔が徘徊している!」

客席を指さす雅也

螢「やめろって!悪魔よりお前の言動が恐ろしいから!」
雅「えぇい、離せ下郎!俺はお前達のために戦っているんだぞ!
  俺が正義だ!」
螢「どこで間違ったんだろうなぁ、コイツ…」
雅「では、行ってくる」
螢「待てって。今日はテスト返却日だぞ。まだ全部返ってきてないだろうが」
雅「ぐああ…!静まれ、邪気眼よ…」
螢「聞け(雅也をどつく)」
雅「おうふ」
螢「せめてテストを受け取ってからにしろ。な?」
雅「ふん、テストなんぞで俺の力が計れるものか…」
螢「どうせ、その調子じゃ良くなかったんだろ?成績」
雅「何を馬鹿な…」
螢「これから返ってくる教科、特に難しかったもんなー…」
雅「哀れだな、螢…。お前も邪気眼使いなら、もっと堂々としていろ」
螢「お前と一緒にすんな!何だよ、邪気眼って…」
雅「邪気眼というのは、暗黒面の力だ。あまりに強大なる力ゆえ、
  酷使すると身体に影響が…」
螢「説明しなくていいっつーに。とにかくだな、俺達もう高3だよ?
  受験生だよ?もう中二からは脱却して、現実を見ようぜ」
雅「俺にはエクソシストの仕事がある」
螢「てめぇ、いい加減に目を覚ましやがれ!!」

雅也を殴る螢

雅「何をする!?」
螢「お前とは幼稚園からの付き合いだが、もう我慢の限界だ!
  親友として、お前を立派は社会適合者にしてやる!!」
雅「面白い…上等だ!」
螢「お節介焼きをナメんなよぉ…?」
雅「ククク…螢、お前の罪を数えろ…」
螢「おらあああああ!!」
雅「ぬおおおおおお!!」

喧嘩勃発。変な動きで迫ってくる雅也を冷静に対処する螢。
やがて、螢の圧勝で決着がつく

螢「…まぁ、下らないことでよく喧嘩してきたけどさ…。
  お前、ホント弱いよなぁ」
雅「…………」
螢「すまん、やり過ぎた。大丈夫か?」
雅「…ふっ、やはり封印状態では本来の力が発揮できんな」
螢「言うと思ったよ」

寝ころぶ螢。空を仰ぐ

螢「…いい天気だなぁ。それにしても、お前、屋上に上がるの本当に好きな」
雅「辺りが一望できるからな」
螢「何か意味あんの?」
雅「当たり前だ。常に監視しておかないと、いつ奴らが動き出すかわからない」
螢「奴らって、あれか?また悪魔か?」
雅「そうだ」
螢「お前、やっぱり一度病院の先生に診てもらった方がいいかもな」
雅「まだ言うのか、螢。俺を病気扱いするのはいい加減やめてもらおう」
螢「いや、冗談だけどさ。やっぱり心配になるわけよ、俺としては。
  受験を控えた親友が、今もこんな調子だとさ」
雅「お前は自分の心配だけしていればいい」
螢「やだね。知ってんだろ、俺のお節介焼き加減は」
雅「ふん…。そうだったな。お前はいつもそうさ。
  他人のことばかり考えて…。いつか損をするぞ、そんな生き方は」
螢「別に、それで損したって後悔はない。お互い、真っ当な生き方しようぜ」
雅「真っ当か…。この世界、何が真っ当か、俺にはよくわからないがな」

座り込み、空を仰ぐ雅也

雅「………いい」
螢「え?」
雅「いい!いいぞ、このシチュエーション!青空の下、天を仰ぎながら世を憂う
  主人公2人!うむ、実にいい…」
螢「待て、主人公2人っておかしいだろ!?」
雅「確かにそうだな…。よし、螢。お前は主人公である俺のソウルメイトだ」
螢「何だ、ソウルメイトって。ブロック型のお菓子的なやつ?」
雅「カロリーメイトと一緒にするな。ソウルメイトだよ!
  魂の友と書く」
螢「へぇ…それも中二病知識か」
雅「まぁ、お前ならばエターナルソウルメイトにしてやってもいいぞ」
螢「偉そうだなー…。そんなんだから普通の友達いないんだぞ、お前」
雅「時代が俺についていけてないだけだ…。それを考えると螢、お前はやはり
  素質があるな」
螢「え、褒められてんの、俺?」
雅「やはり、俺の生涯のソウルメイトにして好敵手は貴様なのか…」
螢「どう反応すればいいんだよ…」
雅「邪気眼の制御方法を教えといてやる」
螢「持ってねぇっつーの。ちょっと落ち着け」
雅「俺はいつでも冷静だ」
螢「ああ、そうかい。なぁ、雅也。もう一回聞くけど、お前、将来のこととか
  考えてる?」
雅「新世界の神となる」
螢「つまり、何も考えてないってことだろ?」
雅「エクソシストの任務にも飽き飽きしてきたところだしな…」
螢「いいか、はっきり言ってやる」
雅「ん?」
螢「お前は、中二病を盾に逃げているんだ!現実から!」
雅「何…だと…?」
螢「少なくとも、昔はここまで酷くなかった。だけど、今はぶっちゃけ痛い人を
  通り越してちょっと危ない人の域だ」
雅「違う、危ないのは世界の方だ!」
螢「逃げんな、雅也!現実から逃げんな!悪魔もエクソシストも存在しない!
  戻って来い、雅也!!」
雅「や、やめろ!それ以上、何も言うな!俺は間違っちゃいない…!」
螢「そんなんだから、彼女できねーんだよ!」
雅「やかましい!関係ねぇだろおおおおおおお!!!」
螢「ま…雅也…?」
雅「…私の名は陽炎…」
螢「うわっ、出た!都合が悪くなった時の二重人格プレイ!」
雅「雅也が世話になったね…。次は私が相手をしよう」
螢「おい、やめろって。あんまり変わってないぞ。現実逃避やめろ!」
雅「ふうい!!(螢にアタック)」
螢「いってぇ!?何だよ!?」
雅「わいを怒らせた罪は重いでぇ…!」
螢「三人目出た!おい、そろそろ収拾がつかなくなるからやめとけ!」
雅「じゃあ、逆に聞くけどなぁ、兄ちゃん…」
螢「何だよ?」
雅「あんた、将来は何になるつもりや?」
螢「俺は…普通に、一般企業とかで働けたら…」
雅「ケッ!小さいのお!」
螢「な、何!?」
雅「普通、普通て!このノーマル野郎が!男やったら、でっかく生きんかい!!
  そんなに小さくまとまって、何が楽しいんでゴワスか!?」
螢「余計なお世話だ!っていうか、口調も定まらなくなってきたな」
雅「あんたにおいどんを説教する資格も三角もないでゴワス!
  もう、わしは誰の聞く耳も持たんぜよ!」
螢「キャラも定まってないぞ、お前…」
雅「とにかくだ…。俺は誰の指図も受けない。例え、ソウルメイトの頼みで
  あろうともな」
螢「………」
雅「あばよ、ソウルメイト…。俺は先に行く。
  急がないと悪魔の犠牲者が増えるかもしれないのでね」
螢「…待て、雅也!」
雅「まだ何か?」
螢「お前、俺の夢が小さいとか抜かしたな!」
雅「ああ、言った」
螢「ふざけんな!じゃあ教えてやるよ!俺の本当の夢を!」
雅「本当の夢…?」
螢「せ、正義のヒーローだ!」
雅「は…?」
螢「小さい頃から、戦隊ものとかヒーローものとか大好きでな!
  ずっと正義の味方になりたいと思ってたんだ!」
雅「せ、正義のヒーローってお前…。その歳で何を言い出すんだ」
螢「お前だって酷いもんだろうが!?おい、何でちょっと引いてんだよ!」
雅「いや…うん」
螢「どうだ!世界中の悪を滅ぼす為に戦うんだ!小さくねぇだろ!?」
雅「螢…」
螢「誰にも言うんじゃねぇぞ!!」
雅「ああ、ソウルメイト同士の約束だ。しかし…お前にそんな夢があった
  とはな。さすがの俺も知らなかった」
螢「へっ…偉そうなこと散々言ってきたけど、結局俺もお前と同じなのかな。
  理想を追うだけの楽なスタンスでいられたら、どんなに楽しいことか…」
雅「愚か者。俺は理想で終わらせはしない。現実のものにしてみせる」
螢「だから、逃げなんだよ、それは…」
雅「よし、螢。それならお前は正義の結社を創設するんだ。
  正義結社ジャスティス!これでお前の進路は決まりだな」
螢「ははは…」
雅「俺はその結社を潰そうと目論むアンチヒーローになる」
螢「潰すのかよ!協力するんじゃないの!?」
雅「たわけ!!今、アンチヒーローは普及している。俺はダークヒーローとして
  我が正義を貫く。エクソシストは一時休業だな」
螢「本当、そういう設定作るの上手いよな、お前…」
雅「俺は本気だ!!」
螢「お前みたいな生き方ができたら楽だろうなぁ…」
雅「馬鹿野郎ッ!!(螢を殴る)」
螢「痛ぇ!?何すんだよ!?」
雅「お前はいつからそんな弱気な野郎になった!?男なら…主人公なら、
  掴んでみろ!マイ・ドリームを!!」
螢「何で英語で言った!?…そんな甘い世の中じゃねぇんだよ。
  現実はもっと厳しいんだ。お前だって、本当はわかってるだろ?」
雅「………」
螢「中二病ごっこはもうやめて、真面目に勉強しようぜ?
  いい大学に入って、いい会社に就職するのが普通の生き方さ」
雅「その為に、ヒーローの夢は捨てるのか?」
螢「ガキの頃の夢だよ。この歳になってまで、そんなこと言ってる方がどうかしてる」
雅「螢…お前は」

チャイムが鳴る

螢「あーあ、昼休み終わっちまったよ」
雅「…もうそんな時間か」
螢「もういいや、授業サボろ」
雅「いいのか?テスト」
螢「なーんか、そんな気分じゃなくなったよ。今日はお前に付き合ってやる」
雅「やめておけ、一般人が俺に深く関わるもんじゃない」
螢「ま、いいだろ。今日一日くらい理想を追っても。
  テストなんて、明日貰いに行けばいいや」
雅「命知らずな奴だ。どうなっても知らんぞ」
螢「望むところだ。むしろ、それぐらいの刺激が欲しい」
雅「行くぞ。哀れな悪魔に魂の救済を…」
螢「ホント、お前といると飽きないよな。すっげぇムカつくけど」
雅「ふん。お前はもっと素直になったらどうだ」
螢「言っとくけど、今日だけだからな。明日からは真面目に勉強する。
  お前もだぞ!」
雅「俺は誰の指図も受けんと言ったはずだ」
螢「あーくそ…何回目かなぁ、このやり取り…」

雅也と螢がハケる

雅「そこか、悪魔め!!うおおおおおおッ!!!」
螢「せ、先生逃げてーーー!!」

暗転

―完―

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