まぎれる ドラマ

圧迫面接で有名なマツミフーズに突然発覚した異物混入!損害賠償額が膨れ上がる中、松見社長はある疑いを抱き・・・
Yamaru 6 0 0 07/23
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第一稿

人 物
松見敏雄(51) マツミフーズ社長
吉岡孝介(39) マツミフーズ社員
植本英夫(48) 探偵
女学生
学生1


アナウンサー
工場 ...続きを読む
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人 物
松見敏雄(51) マツミフーズ社長
吉岡孝介(39) マツミフーズ社員
植本英夫(48) 探偵
女学生
学生1


アナウンサー
工場長

◯マツミフーズ・会議室
   リクルートスーツを身に纏った男女学生四人が体を強張らせて横並びに座
っている。その対面、役員達が座る中,中央に松見敏雄(51)がふんぞり返
って座る。その横に吉岡孝介(39)が座る。松見、鋭い眼光で学生達を見
ている。
吉岡「では、志望理由を右端の方からお願いします」
右端に座っていた女学生が背筋を伸ばす。
女学生「はい。私は学生時代より飲食業のアルバイトをしておりまして、その店
 で使っているパスタ麺が御社の製品だったのですが、御社のパスタ麺はモチモ
 チと食感が良くお客様からも大変好評で…」
   女学生、チラチラと松見を気にする。
   松見はつまらなそうに聞いている。

◯同・廊下
松見と吉岡が歩いている。
松見「食レポ始めちゃったね」
吉岡「はい?」
松見「さっきの、右端の彼女」

◯松見の回想
引きつった顔の女学生とそれを睨むように見ている松見。
女学生「御社のパスタ麺はクリームソースによく絡むんです。ソースの中でも絶
対的な存在感を演出するあのモチモチ感は…!」

◯(回想戻り)マツミフーズ・廊下
   並んで歩く吉岡と松見。
松見「結局どこでもいいんだろ、うちじゃなくても」
吉岡「途中から自分でも何言ってるか分からなくなってましたね」
松見「パッとしねぇなぁ、今年も」
松見、あーあとうなだれる。

◯同・外観
ぞろぞろと帰っていく学生達。
その中にさっきの女学生もいる。
学生1「2次で社長いるとか聞いてないよな」
学生2「すげー睨んでたし」
学生1「圧迫面接有名だよな〜ここ」
女学生、学生達の中で立ち止まり、振り返るとマツミフ—ズのオフィスを睨
み付ける。

◯同・廊下
吉岡が慌てた様子で走っている。

◯同・社長室
  吉岡が駆け込んで来る。
吉岡「社長、社長!!」
   椅子に座った松見が怪訝そうに
松見「ノックぐらいしなさい」
吉岡「あの、大変です、あの…」
松見「あのあの言うな」
吉岡「すいません、あの…とにかく見て!」
   吉岡、松見にパソコンのディスプレイを見せる。
  松見、ディスプレイを見て目を見張る。
アナウンサーの声「大手食品メーカーマツミフーズは冷凍パスタシリーズの自主
回収を発表しました」

◯マツミフーズ・営業部
テレビを集まって見ている社員達。
画面ではアナウンサーが真剣な面持ちでニュースを読んでいる。
アナウンサー「今回の自主回収はSNSサ—ビスTwitterを利用した異物混入のツイ
 —トが発端であり、マツミフーズは事実関係を調査中とのことです」

◯タクシー・車内
並んで後部座席に座っている松見と吉岡。松見は激しく貧乏ゆすりをして
   いる。車内ではラジオが流れている。
アナウンサーの声「マツミフーズの被害額は最低でも60億円に上る見通しです」
吉岡、気まずそうに松見を見る。
   松見は表情を変えず、車窓を見ている。

◯マツミフーズ・製造工場
   松見がズカズカと工場に入っていく。
   その後ろを工場長と吉岡が追いかける。
工場長「私共も何がどうしてこうなったのやらさっぱり分からなくてですね。
あ、社長除菌をお願いします」
中では作業員達がチラチラと松見を気にしつつ働いている。
   工場内は整頓されていて小綺麗。
   吉岡が松見に後ろから作業帽をかぶせる。松見は無言で工場を見渡す。

◯中野興信所・中
ソファに松見が落ち着きなさそうに座っている。
   そこに植本英夫(48)が来る。
植本「いや、大変でしたね先輩」
松見「出来るのか、出来ないのか?」
植本「うーん、こいつは写真を全く上げてないからやってみなきゃ分からないけ
 ど」
松見「けど、なんだ!?」
植本「…出来るだけの情報は探りますよ」
   植本、松見の前に腰掛け、煙草に火をつける。
植本「でも、先輩から依頼受ける日が来るなんてなぁ〜」
松見、眼光鋭く植本を睨む。
   植本、笑い
植本「だって、僕のこと見下してたでしょ、昔。昔って言うか、今もか」
   そこに吉岡が入ってきて。
吉岡「社長、そろそろ」
   松見、立ち上がる。

◯マツミフーズ・大会議室
松見が入って来る。待ち構えていた記者陣がバシャバシャフラッシュを焚
く。松見、眩しそうに顔を背ける。記者陣の前に腰掛ける松見。
   記者達が松見を睨むように見ていて、その後ろには報道カメラのレンズが
   松見を狙う。松見は不服そうにゆっくり頭を下げる。再び眩しい程に焚か
れるフラッシュ。

◯同・社長室
松見がポリ袋に入った冷凍パスタを見ている。パスタの中に小さなショウ
ジョウバエの死骸。
吉岡も疲弊した顔でそれを見つめる。
松見「こんなコバエのために数十億の損失か」
   松見、冷凍パスタを投げ飛ばす。
松見「調査の進展は?」
吉岡「はぁ、工場もハエ対策は万全に行なっているそうですが、何せ小さいの
で、検品の段階で見落としがあってもおかしくないとのことで…」
松見「植本からは?」
吉岡「ツイートされた地域は都内、フォロワ—から考えると明正大学の大学生で
 間違いないそうですが、こちらもそれ以上分からないみたいです」
松見「なんだよ、それだけか」
吉岡「…お言葉ですが、個人を特定してどうするおつもりですか?」
松見「なんだと?」
吉岡「あと、このコバエもどこで混入したとか、消費者にとってはどうでもいい
ことじゃないですか?」
松見「口答えするな」
吉岡「犯人探ししたって、冷凍パスタの中にハエの死骸、そのインパクトは何し
 たって覆せないんですから、これからのことを考えましょうよ」
松見「お前の意見は聞いてない」
   吉岡、俯く。
松見「大体、やましいことがあるから隠れてるんだろ」
吉岡「え?」
松見「混入したのはツイートした奴なんだよ」
吉岡の携帯が着信。
吉岡「はい。あ、植本さん?」
吉岡、携帯を松見に渡す。
松見「特定出来たのか?」
植本の声「こいつと会ってますよ先輩」
松見「は?」
植本の声「二次面接で落とされてるって」
   松見、ハッとする。

◯マツミフーズ・会議室
   リクルートスーツに身を纏った学生が十数人椅子に座っている。
その前に立っている松見。
松見「どうして集められたか、分かるよな」
騒つく学生達。
松見「ツイートした学生は名乗り出なさい」
   シンとする一同。一人の学生が手をあげる。
松見「お前か?」
学生3「いや、名乗り出て何になるんですか?内定くれるんですか?」
松見「冗談じゃない」
学生3「じゃあ帰っていいすか。てか、今御社の内定ほしい人なんていないか」
   学生3、席を立って出て行く。
それを見てぞろぞろ帰り始める学生達。
松見「待て、待ちなさい」
   一人残った女学生と松見、目が合う。
  吉岡が松見に駆け寄る。
吉岡「最終選考に進んだ学生が全員辞退したそうです」
松見「なんだと?」
女学生も席を立って帰って行く。松見、
それを呆然と見送る。

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