みかん ドラマ

両親と仲違い中の一人暮らしの青年、慎太郎のある年越しの話。
Joe 8 0 0 04/09
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第一稿

登場人物

牧野慎太郎(23)…社会人
萩田莉菜(23)…社会人。慎太郎の幼馴染。
牧野裕子(48)…慎太郎の母親。みかん農家。
牧野清雅(51)…慎太郎の父親。みかん農 ...続きを読む
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登場人物

牧野慎太郎(23)…社会人
萩田莉菜(23)…社会人。慎太郎の幼馴染。
牧野裕子(48)…慎太郎の母親。みかん農家。
牧野清雅(51)…慎太郎の父親。みかん農家。

1.○慎太郎の家・夜
  こたつの上の籠には、みかんが一つある。
  散らかった部屋、こたつに入り年末特番のTVを見ている牧野慎太郎(23)。
TV「明日は大晦日! 視聴者の方は年越しの準備はできましたか〜?」
  みかんを手に取り、皮を剥く慎太郎。
慎太郎「…できてねーよ」
  母親の裕子(48)から電話が掛かってくる。
  電話に出る慎太郎。
慎太郎「もしもしー。あ、母さんか。何?」
裕子(声)「あんた明日こっち帰ってくるの」
慎太郎「あー」
  慎太郎、みかんを食べる。
慎太郎「多分帰らんかも」
裕子(声)「何で」
慎太郎「ダチと過ごすかも」

2.○牧野家実家・夜
  裕子、炒め物をしながら電話をする。
裕子(声)「正月は帰ってきぃ。あんたの好きなみかんもいっぱいあるよ」
  裕子、火を消す。
慎太郎「父ちゃん機嫌悪うなるだけやん。みかんもそんな好きやないし。あったら食うくらいよ」
裕子(声)「嘘付きなさんな。あと、子の顔見たくない親なんていないよ。てか、あんたが継がなかったことが悪いことじゃないし。(夫に向かって)父ちゃーん! ご飯できたよー! (慎太郎に向かって)どうせウチのみかん農家は先が無いからね」

3.○慎太郎の家・夜
  慎太郎、みかんを頬張る。
慎太郎「だって父ちゃん、あん時俺の事もう息子と思わんって怒鳴ってたやん」
裕子(声)「言いすぎたって反省してんのよ」
慎太郎「嘘付きぃ。とにかく、俺は帰らんから」
  電話を切る慎太郎、溜め息を吐く。
  慎太郎、LINEのトーク欄を見る。
  友人たちは皆実家で過ごすと言っている。
  慎太郎、溜め息を吐き、みかんを食べようとするが、皮しか無い。
  慎太郎、皮をゴミ箱に捨てる。
  みかんの箱を確認する慎太郎、中身は空。
  慎太郎、財布と上着を取り、家を出る。

4.○スーパー前の道路・夜・同日
  信号待ちをしている慎太郎。
莉菜「慎ちゃーん」
  慎太郎、声のする方を見ると莉菜(23)が手を振りながら近付いてくる。
莉菜「どうしたの? こんな時間に」
慎太郎「別に。莉菜こそどうしたんだよ」
莉菜「仕事帰り」
慎太郎「あー、お疲れさん」
莉菜「本当疲れた。あ、慎ちゃん今日暇?」
慎太郎「…用件による」
  莉菜、歩き始める。付いていく慎太郎。
莉菜「疲れたから慎ちゃん家で飲もうよ」
慎太郎「何自分ん家みたいに言ってんだよ」
莉菜「良いじゃん。最近行ってないんだし」
慎太郎「今日はダメだ。部屋汚いから。ってかお前実家帰らんのか」
莉菜「大晦日までしっかり仕事だから帰れん」
慎太郎「あー。じゃあ、俺んちで年越ししないか」
莉菜「良いね! ってか、慎ちゃん帰らんの」
慎太郎「…知ってて言うな」
莉菜「裕子おばさん、会いたがってたよ」
慎太郎「は? お前連絡取り合ってんの?」
莉菜「そりゃあ幼馴染のママですから」
慎太郎「母ちゃんに変なことは言うなよ」
莉菜「オッケ〜。ま、明日楽しみにしとくよ」
  莉菜、足を止める。
莉菜「親が元気な内は会いに行きな。私みたいに、いなくなってからじゃ遅いよ?」
  莉菜、悲しげに微笑む。
  慎太郎、一瞬驚き、目を伏せる。
慎太郎「…あぁ」
  T字路で別れる二人。
  慎太郎、家まで歩き始める。
  莉菜からLINEが来る。
莉菜【布団ってあったっけ】
慎太郎【無い】
莉菜【あー、オッケ!】
  慎太郎、未読のまま携帯を仕舞う。
  母親から着信が入る。電話に出る慎太郎。
慎太郎「何?」
  慎太郎、アパートの階段を登る。
裕子(声)「もしもし。父ちゃんに聞いたんだけど、何とも思ってないって言ってたから帰ってきなさい」
慎太郎「何とも思ってないのもどうなの。てか予定出来たからどの道帰らんわ」
  慎太郎、家の扉を開ける。

5.○慎太郎の家・夜・同日
裕子(声)「莉菜ちゃんとかい?」
慎太郎「っ違ぇよ! あいつ明日も仕事あるし。兎に角、帰らんからな」
  慎太郎、電話を切り、溜め息を吐く。
  上着を脱ぎ、こたつに入る慎太郎。
  みかん籠に手を伸ばす。
慎太郎「あっ、みかん買ってねぇや」

6.○慎太郎の家・昼・翌日(大晦日)
  起きる慎太郎。こたつの電気を点ける。
  みかん籠を見る慎太郎。籠は空。
慎太郎「あっ」
  頭を掻き、溜め息を吐く慎太郎。
 ×    ×    ×(時間経過)
  慎太郎、こたつに入り昼ごはんを食べる。
 ×    ×    ×(時間経過)
  慎太郎、部屋の掃除をする。
  莉菜から電話が掛かってくる。
  電話に出る慎太郎。
莉菜(声)「ごめん、仕事残りすぎて帰れん」
慎太郎「あー、マジか。……こっちは大丈夫だから、仕事頑張ってくれ」
莉菜(声)「ありがと〜。でもマジ最悪。会社で年越しなんて」
慎太郎「確かにそれはしんどいな。ま、俺も一人で年越すし最悪だよ」
莉菜「…誰か来るかもよ?」
慎太郎「…は? 何言ってん」
  インターホンが鳴る。
慎太郎「え?」
莉菜(声)「私仕事に戻るね。良いお年を!」
慎太郎「おいっ、ちょっ」
  莉菜、電話を切る。
  慎太郎、溜め息を吐く。
慎太郎「はい? どちら様」
裕子(声)「慎太郎っ、開けて」
慎太郎「え?」
  扉を開けると裕子と清雅(51)がいる。
慎太郎「何でいんの…?」
裕子「あんたが来んから来たんよ。ほら」
  裕子、清雅の背中を叩く。
清雅「(軽く咳払いをし)…これ」
  清雅、みかんが入った袋を差し出す。
清雅「お前の好きなみかん、持ってきたぞ」
  慎太郎、鼻で笑い口角を上げる。
慎太郎「…だからそんな好きじゃねぇって。今切らしてっからありがてぇけど」
  灌漑深く笑んで二人を見つめる裕子。
裕子「さっ。入らせてもらうよ。あんたの家で年越し正月やんだからね」
  裕子と清雅、リビングに入る。
慎太郎「あっ、そういうことなの」
裕子「そうよ。布団も持ってきたんだから」
慎太郎「あっ! また莉菜からか」
裕子「当たり前じゃない」
慎太郎「やっぱあいつとは縁切っとくか」
  清雅、みかん籠にみかんを入れる。
清雅「この籠小さいな。三つしか入らんぞ」
慎太郎「しゃーないだろ。一人暮らしだし」
  清雅、籠に三つみかんを入れる。
裕子「さっ、年越しそば作ってあげるからね」
  裕子、キッチンを整理し始める。
  慎太郎と清雅、こたつに入る。
清雅「こたつも小さいな。足がぶつかる」
慎太郎「だーかーら」
清雅「(照れて)…悪いとは言ってないだろ」
慎太郎「(照れて微笑み)…なら良い」
  包丁で野菜を切る裕子。
  TV番組を見ている慎太郎と清雅。
  こたつの上の籠にはみかんが三つある。
  〈了〉

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