【主な登場人物】
■夏那(ナヅナ/19)
大学1年生。あやめとは中学の同級生で、違う大学に通っている。ミーハーで気が強い。
コンビニでアルバイトしていくうちに同僚の千葉を好きになる。
■あやめ(アヤメ/19)
大学1年生。夏那とは中学の同級生。文学部。自分に自信がなく控えめな性格。
大学では千葉と同じ軽音サークルに所属。千葉のバンドに誘われ、その優しさに千葉のことが好きになる。
■千葉(チバ/21)
大学3年生。経営学部。誰に対しても優しく、モテる。あやめと同じ大学の軽音サークルに所属。夏那と同じコンビニでアルバイトをしている。
■翔(ショウ/21)
大学3年生。経営学部。千葉のバンド仲間。
■愛(アイ/21)
大学3年生。経営学部。千葉のバンド仲間。
■茗(メイ/21)
千葉の知り合い。
1日曜・駅前・占いの館
占い師「これを好きな人に飲ませれば、必ずあなたは幸せになれます」
占い師が夏那の前に『惚れ薬・ユニバース』を差し出す。
小さな小瓶の中に淡いピンク色の液体が入っている。
夏那(19) 、嬉しそにそれを手に取る。
2同日・同占いの館・外
夏那が浮かれた表情で歩いていると、数メートル先にあやめ(19)の姿。
夏那、あやめに駆け寄り
夏那「あやめ?」
あやめ、振り向いて夏那だと気付くと、恥ずかしそうな顔。
あやめ「久しぶり」
夏那「中学以来だよね、会うの。こんなところで何してるの?もしかして、ここの惚れ薬貰いに来たとか?」
あやめ、ますます恥ずかしそうになる。
夏那、あやめの表情を見て
夏那「えっ、好きな人いるの?」
あやめ「・・うん。」
嬉しそうな表情をする夏那。
夏那「私も今、惚れ薬貰ってきたんだ。ねえ、ちょっと一緒に話さない?」
3同日・駅前・カフェ店内
あやめが好きな人(千葉)について話し終えると、
夏那「大学の同じサークルの先輩かぁ」
あやめ「うん。夏那の好きな人はどんな人なの?」
夏那「聞きたい?」
4夏那のアルバイト先のコンビニ(数日前・回想)
夏那と千葉がレジをしている。 レジは長蛇の列。
レジに並んでいた五十代くらいの男が夏那のレジの前に来る。
夏那が急いでレジを済ましていると、
男「こんなに長いこと待たされると困るよなあ。帰ろうかと思った」
夏那「お待たせして申し訳ございません」
男「謝る暇あるなら早くしてくれよ」
夏那「は、はい」
夏那が下を向いてレジを進めていると、後ろから千葉が夏那の肩を優しくもちながら、
千葉「レジ代わるよ。隣のレジお願い」
夏那、顔を上げて安心した表情で
夏那「ありがとうございます」
3同日・駅前・カフェ店内(現在)
夏那「連絡先もこの前交換してもらったんだ。 見てみて」
夏那が千葉のアカウントを見せる。
凍りつくあやめ。
あやめ「なんで千葉先輩が」
夏那、おどけた様子で
夏那「え、もしかして知り合い?」
あやめ、夏那の持っている画面を指さし、震えた声で
あやめ「私の好きな人、その人なの」
夏那、大きく目を見開く。
夏那「私たち、同じ人好きになったってこと?」
少しの間沈黙する夏那とあやめ。
夏那、大きく深呼吸して
夏那「こうなったらどっちが先にこの惚れ薬を飲ませるか、勝負しようよ」
あやめ「勝負?」
夏那「うん。ルールはお互い千葉くんと会う時は連絡をとりあうこと。後は自由」
あやめ「そんなことしなくても、その惚れ薬あげるよ、私」
夏那、急に冷たい視線で
夏那「え、なんで?お互い情報交換できたほうが絶対いいでしょ」
あやめ口ごもりながら
あやめ「それは・・確かに」
夏那「じゃあ、決定」
驚くあやめ。
夏那が店を出る。
4同日・あやめの自宅・寝室(夜)
あやめはベッドに横たわっている。
5あやめの通う大学・空き教室(二ヶ月前・ 回想)
教室には軽音サークルに入る新入部員がそれぞれにバンドチームを組み始めている。周りには数人、先輩がいる。
あやめが誰と組もうかうろうろしていると、
千葉「君、1年生でしょ。バンド決まってないなら俺のとこ入らない?先輩いなくなって人足りないんだよね」
あやめ「でも、私キーボードしかできないですよ」
千葉、微笑んであやめの両手を握り
千葉「そのキーボードが足りなくて困ってたんだよ。助かるー!よろしくね」
あやめ「はい」
6同・大学・同場所(それから数日後・回 想)
千葉、ドラムの翔、ベースの愛とあやめが個人練習をしている。
あやめ「また同じところ間違えた・・」
肩を落とすあやめ。
そこに千葉が近寄り、あやめの頭をぽんと叩く。
千葉「力入りすぎ」
思わず顔が赤くなるあやめ。
7同・大学・同場所(それから一か月後・回 想)
バンドメンバーと全員で演奏している。
練習しながら自然と千葉を見つめていると、千葉と目が合い、思わず目を逸らすあやめ。
8あやめの自宅・寝室(夜)
あやめ「勢いで勝負受けちゃったけど、どうしよう」
枕元に置いてあるあやめの携帯の画面に 千葉からのグループメッセージが表示される。
『次の日曜、スタジオ借りられるみたい だから、そこで練習ね。場所はここ』
続けてスタジオの場所を示した写真が送られてくる。
返事をして、画面を閉じようとするが机の上にある惚れ薬を見て夏那を思い出すあやめ。
あやめ「また後で連絡すればいいよね」
9翌日・夏那のアルバイト先のコンビニ・スタッフルーム
夏那と千葉は仕事を終えて、帰り支度をしている。
夏那、千葉の近くに寄り
夏那「千葉さん、この後どこかいきません?」
千葉、困惑した表情で
千葉「ごめん。今日は家で課題やらないと」
夏那「えー、じゃあ明日は?土日でもいいですよ」
千葉「今週は厳しいかなあ。バンドの練習もるし」
夏那「バンドの練習?それ、いつですか」
急に真剣な顔つきになる夏那。
千葉「個人練習はほぼ毎日だけど、合わせてやるのは日曜かな」
夏那がすぐさま携帯を出してあやめにメッセージを打つ。
その間に「じゃあね」と言って帰る千葉。
10夏那のメールから15分後・あやめの自宅・寝室
携帯の点滅ライトに気づいて見てみると、夏那からのメッセージ。
日曜のバンド練習のことを知って、怒っている。
あやめが『そっちが勝手に変なルール決めたんじゃない』と返す。
『納得してくれたんだから守ってくれないと困る。罰としてどこで練習するか教えて』と夏那。
夏那のしつこさにうんざりし、あやめが『これでいいんでしょ』と先日送られてきたスタジオの場所の写真を送る。
『ありがと』と夏那。
あやめ「教えたところでまさか来たりしないよね」
11日曜・練習スタジオ
夏那の姿はなく、ほっとするあやめ。
× × ×
練習が終わって
千葉「近くで飲んでから帰ろうか」
それに賛同する愛・翔・あやめ。
鞄の中にある惚れ薬をどう飲ませるか考えるあやめ。
千葉の後ろから夏那が肩をつかんで
夏那「練習お疲れ様です、千葉さん」
驚く一同。
千葉「どうしたの」
夏那「実はあやめがここで練習するって聞いて来ちゃいました」
千葉、あやめの顔を一瞬見て
千葉「あやめちゃんと友達だったの?」
夏那「はい!」
千葉「これから飲みにいくけど、来る?」
夏那、目を輝かせて頷く。
呆気にとられるあやめ。
千葉「この子、俺のバイト先の後輩なんだ」
愛「そうなんだ、いいよ。行こうよ」
12居酒屋店内
右からあやめ・千葉・夏那と座り、向かいには愛と翔が座っている。
テーブルには飲み物や料理がたくさん並んでいる。
千葉を中心に夏那以外のメンバーが話している。
話しながら夏那の様子を気にするあやめ。
夏那が鞄から惚れ薬を取り出す。
それに気づくあやめ。
千葉が突然立ち上がり、
千葉「ちょっとトイレ行ってくる」
翔「はいはーい」
愛と翔は話を続けている。
あやめ、夏那の方へ向き小声で
あやめ「今、入れようとしたでしょ」
夏那「自分だってタイミング狙ってたんじゃないの?」
あやめ「それは・・」
その隙に夏那はあっという間に千葉のジョッキに惚れ薬を入れ終える。
呆然とするあやめ。
あやめ「信じらんない」
夏那「早くしないと千葉さん、戻ってきちゃうよ」
夏那は空になった惚れ薬の瓶を鞄の中にしまう。
夏那を少し睨みつけながら、あやめも鞄から惚れ薬を出し、ぎゅっと握りしめる。
あやめ「私だってずっと好きだったんだから」
千葉のとり皿に残っている料理に惚れ薬を入れるあやめ。
それを横目で見て驚く夏那。
席を外していた千葉が戻ってきて席につくと、夏那がすかさず千葉の飲み物を差出してくる。
夏那「千葉さん、まだ飲めますよね?」
夏那の様子を不信に思う千葉。
千葉「どうしたの、急に」
あやめも千葉のとり皿を差し出し
あやめ「さっきから大分飲んでますから、少し控えたほうがいいんじゃないですか」
差し出された自分のとり皿を見ながら
千葉「あやめちゃんまで、何?」
すると、千葉のポケットから携帯のバイブ音が鳴る。
携帯を見ると『茗』という人物からの着信。
千葉が電話に出る。
千葉「もしもし、茗?」
耳を傾ける夏那とあやめ。
千葉が立ち上がり、再び席を外す。
翔と愛、それに気が付く。
愛が翔に向かって
愛「また女の子から?」
翔「でも、彼女いるんでしょ」
翔の言葉に驚く夏那とあやめ。
夏那、翔に向かって
夏那「千葉さん、彼女いるんですか」
翔、呆れた顔で
翔「誰が彼女か分かんないくらいいるよ」
硬直する夏那とあやめ。
瞳に涙が溢れそうになるあやめ。
愛「私たちは学部一緒で毎日会ってるから」
翔「今日はもうお開きかなあ」
翔が千葉の残っているとり皿の料理を見つけ、
翔「残すのも勿体ないし食べちゃおう」
千葉の残っていたとり皿の料理を食べる翔。
あやめ「あ、待って」
食べ物が翔の喉を通る。
翔をしばらく見つめるあやめと夏那。
翔の様子は普段と変わりない。
あやめ「どうして?」
夏那、慌てて惚れ薬を鞄から出し、『使用上の注意』を見る。
そこには小さな文字で『この薬は容器を開けると効果がなくなります』とかいてある。
夏那「いや、飲めないじゃん!」
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