洗面所のメリークリスマス ドラマ

ネグレクトを受けている少女が聖夜に初めて人の優しさに触れる短編。
甲斐てつろう 39 0 0 12/28
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第一稿

【登場人物】
少女(12):ネグレクトを受ける少女
店員(20):コンビニ店員のお姉さん
母(35):少女の母
彼氏(26):母の彼氏

その他


【本編】 
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【登場人物】
少女(12):ネグレクトを受ける少女
店員(20):コンビニ店員のお姉さん
母(35):少女の母
彼氏(26):母の彼氏

その他


【本編】 
○団地 道路 自販機前
  雪の降るクリスマスシーズンの北海道。
  スーツ姿の男性が自販機で飲み物を買おう
  と財布から小銭を出す。
男性「あっ……」
  男性、小銭を雪の中に落としてしまう。
  小銭、積もった雪の中に消える。
  男性、諦めて新しい小銭を取り出し飲み物
  を買い去った。
  少女(12)、そこに走って現れる。
  素手で雪を掻き分け10円玉を手に入れ
  る。
  少女の手、真っ赤になる。
  少女、笑顔を浮かべ去る。

○コンビニ
  少女、棚にあるクリスマスセールのケーキ
  を見つめる。
  値札を見た後、10円玉を握りしめ出てい
  く。
  店員(20)、少女の背中を心配そうに見つめ
  る。

○団地 少女の家 居間
  少女、帰宅。
  母(35)、叱る。
母「こっち入って来るなって……!」
  母、少女の頭を何度も叩く。
少女「っ……」
母「これから彼氏来るんだからあっち行ってて」
  少女、洗面所に逃げ込む。

○団地 少女の家 洗面所
  少女、洗面所の棚を漁る。
  小さな籠に小銭がいくつか入っていた。
  少女、小銭を数えて溜息を吐く。
  × × ×
  少女、洗面所の床に寝転がりながら母とや
  って来た彼氏(26)の会話を聞いている。
母「えーこっちの店が良いー」
彼氏「そこ高ぇだろ、俺も金ないんだよ」
母「せっかくのクリスマスディナーなんだから
 さ、ちょっとくらい奮発しても良くない?」
彼氏「わがまま言うなよ、こっちもカツカツな
 んだ」
  彼氏、少女の存在に言及。
彼氏「そいえばアイツの飯は?」
母「あー適当にこれくらいあげとけば良いよ」
  母、洗面所の扉を開け少女に残飯を渡す。
  少女、母が去った後に残飯を貪る。

○団地 少女の家 居間(夜)
  少女、母と彼氏が寝たのを確認しTVを点
  ける。
  慌てて音量を0にした。
  クリスマス映画が放映されていた。
  少女、家族でケーキを分けるシーンを見つ
  める。

○団地 道路 自販機前(日替わり)
  少女、自販機前の雪を掻き分け100円玉を
  見つけ目を輝かせる。

○団地 少女の家 洗面所
  少女、拾った100円玉と集めた小銭を合わ
  せ更に目を輝かせた。
  居間からは母と彼氏の声が聞こえて来る。
彼氏「そろそろ行くかー」
母「ちゃんと予約できてるよね?」
彼氏「大丈夫だって」
  母、洗面所の扉を開ける。
  少女、慌てて小銭を隠す。
母「私たちディナー行って来るから、適当に冷
 蔵庫にあるもん食べて」
  母と彼氏、出て行く。

○団地 道路
  少女、小銭を素手に持ち走る。
  しかし凍った地面で滑って転んでしまい小  
  銭を側溝に落としてしまう。
  母と彼氏の乗る車、横を通り過ぎた。
  少女、目に涙を浮かべる。

○コンビニ
  少女、膝や手を擦りむいた状態で入店。
  店員、心配そうに見つめる。
  少女、トボトボと棚のケーキを見るが売り
  切れていた。
  少女、肩を落とし店を出る。

○道路
  少女、トボトボと歩く。
  店員、救急箱と袋を持ち走って来る。
店員「待って!」
  少女、立ち止まり振り返る。
  店員、少女に救急箱を見せる。
店員「これ、怪我してるでしょ?」
  店員、少女を座らせ傷の手当てをする。
店員「これでヨシっと」
  店員、少女が立ち上がると袋を差し出す。
店員「はいコレ、欲しがってたでしょ?」
  少女、袋の中を見るとケーキと蝋燭が入っ
  ていた。
  少女、目を輝かせ店員を見る。
店員「私からのクリスマスプレゼント」
  少女、目に涙を浮かべる。
店員「メリークリスマス、お嬢さん」
  少女、嬉しそうに走って帰る。
  一度立ち止まって振り返り店員に手を振っ 
  た。

○団地 少女の家 洗面所
  少女、洗面所を暗くしケーキに刺した蝋燭
  に火を着ける。
  鏡に写るケーキを持った自身の笑顔を見な
  がらそっと囁いた。
少女「……メリークリスマス」
  少女、フッと火に息を吹きかけ消した。
  洗面所は火が消え真っ暗となった。
  少女の笑顔の残像だけが残された。

               (了)

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