ポンドバッグの天使 ドラマ

池袋の不良集団『ジャスパー』に所属する久留米は、敵対組織『アルシン』との喧嘩に巻き込まれて右腕を刺される。偶然居合わせたキャバ嬢(?)天音によって一命を取り留めた久留米は、応急処置に使ってくれたハンカチを返そうと彼女との再会を望むのだった。
播磨つな 9 0 0 07/26
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第一稿

〇人物
 久留米翔(19)『ジャスパー』構成員
 由良天音(19)看護専門学生
 遠藤雄吾(17)久留米の友人
 橘ゆりか(19)天音の友人
 西原健二(18)『ジャスパ ...続きを読む
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〇人物
 久留米翔(19)『ジャスパー』構成員
 由良天音(19)看護専門学生
 遠藤雄吾(17)久留米の友人
 橘ゆりか(19)天音の友人
 西原健二(18)『ジャスパー』構成員
 茂木治(18)『アルシン』構成員
 監視員
 医者


〇池袋西口公園(深夜)
   複数の少年が殴り合いの喧嘩をしている。
   久留米翔(19)、走って喧嘩の輪へ入る。
久留米「おい!」
   人をかき分けながら西原健二⒅を探す久留米。
   輪の中心で茂木治(18)に殴りかかる西原を見つけ、背後から取り押さえる。
久留米「おい! 西原、やめろって」
西原「離せ!」
   暴れる西原。
   挑発的な表情の茂木、西原に顔を近付ける。
茂木「ジャスパーのザコが手ぶらでアルシンのテリトリーに入って来んじゃねえ」
西原「んだと・・・・・・!」
   久留米を振り払う西原。
   ポケットからサバイバルナイフを取り出し、茂木に振りかざす。
久留米「やめろ!」
   間に入る久留米、左腕を刺される。
   驚きで目を見開く西原。
   懐中電灯を持った監視員が怒鳴りながら公園に入って来る。
監視員「お前等何やってんだ。警察呼ぶぞ!」
茂木「ちっ」
   四方に逃げて行く少年達。
   地面に膝をつく久留米、左腕を押さえて息を荒げる。
   地面に落ちる血。
西原「・・・・・・くそっ!」
   呆然と立ち尽くしていた西原、ナイフを握ったまま走り去る。

〇路地裏(深夜)
   左腕を押さえ、よろめきながら歩く久留米。
   左腕から血が滴っている。
久留米「痛ってぇ・・・・・・」
   閉じたシャッターを背に座り込む久留米。
久留米「くそ、ここで死ぬとか格好悪すぎだろ・・・・・・」
   向かいのドアが開き、ドレス姿の由良天音(19)がゴミ袋を手に出て来る。
天音「ぎゃっ!」
ゴミ袋を放り投げ、久留米の元へ近寄る天音。
天音「ちょっと、大丈夫⁉」
   苦しそうに息をする久留米。
久留米「ああ、喧嘩で刺された」
   血で染まる久留米の右手。
天音「とりあえず止血しないと」
   天音、ポケットから取り出したハンカチを久留米の腕に巻く。
   ハンカチを思い切り引っ張る天音。
久留米「痛っ、痛ってー!」
   足をばたつかせる久留米。
天音「強く巻かないと血、止まんないの! 大人しくしてて」
   手際よくハンカチを結ぶ天音。
天音「スマホ借りるよ」
   久留米のポケットから取り出したスマートフォンを耳に当てる天音。
天音「救急お願いします。池袋一丁目三番地、左腕刺傷による大量出血。通報者由良天音。はい、平和通りまで連れて行きます」
   ぽかんと天音を見つめる久留米。
   電話を終えた天音、立ち上がると久留米に手を差し出す。
天音「ほら、大通りまで行くよ。立てる?」
久留米「あ、ああ」
   久留米、天音の肩を借りて歩き出す。

〇病院・診察室(朝)
   医者と久留米が向かい合って座っている。
医者「手術も済んだので今日はもう帰って大丈夫です。一週間後にまた経過観察に来てください」
久留米「あざっした」
   頭を下げる久留米。
   久留米に微笑みかける医者。
医者「今回は応急処置が適切だったので、最小限の縫合で済みました。大事に至らなくて良かったですね」
久留米「はあ・・・・・・」
   きょとんとした表情で医者を見つめる久留米。

〇池袋駅・構内
   久留米と遠藤雄吾⒄が並んで歩いている。
遠藤「にしても翔さん、本当にこの前の晩のこと、警察に言わなくて良かったんですか?」
久留米「ああ。サツに言っても話がこじれるだけだろ。あの夜は個人的に抗争を止めに行って、俺の不注意で刺された。それだけの話だ」
   ため息をつく遠藤。
遠藤「にしてもいくら同じグループの仲間とは言え『アルシン』に喧嘩売るとか西原達も頭おかしいですよね。アルシンのトップにはあの人がいるって言うのに」
久留米「『悪魔の豪』だろ」
遠藤「そう。由良豪徳。この前もあの人の力でデキシーの集会所が一晩で潰されたばっかだったのに。はあ、名前言うだけで呪われそう」
   肩をすくめる遠藤。
   久留米、橘ゆりか(19)と喋りながら歩く天音とすれ違う。
   勢い良く振り返る久留米。
久留米「あーっ!」
   振り返る天音、しまったという表情。
久留米「あん時のキャバ嬢!」
   怪訝な表情で天音に耳打ちするゆりか。
ゆりか「ちょっと天音、あの人誰?」
天音「知らない。赤の他人」
久留米「知らない訳ねーだろ! 俺、お前に言いたいこと沢山あんだよ」
天音「ああもう、分かったから!」
   天音、久留米に近付いて右腕を掴む。
   久留米を睨みながら小声で囁く天音。
天音「人前でキャバ嬢とか言うのやめて」
   天音、ゆりかの方を振り返り、
天音「ゆりか、悪いけど今日はここで」
   久留米の腕を引いて大股で歩き出す。
ゆりか「ちょっと、天音⁉」
遠藤「翔さん⁉」
   遠ざかる久留米と天音の後ろ姿。
遠藤、ゆりかと顔を見合わせる。

〇公園
   久留米の腕を引いて歩く天音。
久留米「おい、どこまで行くんだよ」
   天音、腕から手を離す。
   久留米に背を向けて話す天音。
天音「・・・・・・腕、無事だったみたいね」
久留米「ああ。『応急処置が適切だった』って、お医者せんせーが言ってたぞ」
天音「ふうん」
久留米「なあ、お前も実は医者の資格持ってたりすんの?」
天音「はあ?」
   呆れて振り返る天音。
天音「な訳ないじゃん。私はただの看護学生」
久留米「キャバクラで働いてんのに?」
天音「『ベリーニ』はキャバクラじゃないから! そもそも私、まだお酒飲める年齢じゃないし」
久留米「どっちにしろ昼は学生で夜は店で働いてるってことだろ? お前も大変なんだな」
天音「余計なお世話。人には事情がそれぞれあるの」
   天音、包帯が巻かれた久留米の左腕をちらりと見る。
天音「その傷、喧嘩で刺されたって言ってたよね」
久留米「ああ。この前うちのグループに入ったばっかの奴がアルシンの縄張りに入って殴られてよ。報復しに行くっつーから止めに行ったらこのザマだ」
   慌てて頭をかく久留米。
久留米「って、そんな話お前にしても分かんねーよな、悪い」
天音「アルシン・・・・・・」
   顔をしかめて呟く天音。
久留米「そうだ。それよりお前に渡したいものがあったんだ」
   ポケットをまさぐる久留米。
   取り出したハンカチを天音に投げる。
   キャッチしたハンカチを見つめる天音。
天音「・・・・・・これ、私のじゃないけど」
久留米「ああ。血、洗っても取れなかったのと、コインランドリーの乾燥機に入れたらしわくちゃになっちまって」
   恥ずかしそうに天音から視線をそらす久留米。
久留米「女物とか良く分かんねーけど、店員に聞きまくって選んだからそれで許してな」
   ぽかんとした表情の天音。
天音「・・・・・・馬鹿じゃないの」
   天音、呆れたように笑う。

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