マーブル・ポップコーンep4【夢追い人の居場所】 コメディ

現代を生きる若者が、夢や恋、友情を通じて交流していくポップなコメディ物語。今回はルームメイトのシシがメイン。シシは何年も頑張って歌手の夢を追っているが、成果はいまひとつ……。さらに追い打ちをかけるような現実が襲ってくる。 果たして、シシの決断は……?
ぐずら 6 0 0 07/21
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第一稿

マーブルポップコーンep4 
 タイトル 【夢追い人の居場所】

※マーブル・ポップコーン 他のエピソードが
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードから ...続きを読む
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マーブルポップコーンep4 
 タイトル 【夢追い人の居場所】

※マーブル・ポップコーン 他のエピソードが
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードから読んでも特に問題ありませ
 ん。

登場人物
一条 はるか(26)『いちじょう はるか』
  女。女優を目指している。
ニック、(二宮 九太郎(36))『にのみ
  や くたろう』男。夢は小説家。フリー
  ター。
シュミレット、(三木 秀人(35))『み
  き しゅうと』男。普通のサラリーマン。
ウェス、(五十嵐 西貴(33))『いがら
  し さいき』男。ダンスレッスンの先生。
シシ、(四葉 詩詞(26))『よつば し
  し』女。はるかの親友。密かに歌手を目
  指している。

バーのマスター(60)
医者(40代) シュミレットを診る医者。シシの元恋人 
おっちゃん(50代) 野球観戦している人
看護師(20代) 
おじいちゃん(70代)
支配人(40代) ライブバーの支配人
パンクロックの男(20代)

他、
列に並ぶ客たち

『マーブル・ポップコーンep4』 【夢追い人の居場所】


〇野球スタジアム (昼)
   シェアハウスのメンバーで野球のデイ
   ゲームを観戦している。

シュミレット「やれぇ! やっちまえ! 完
 膚なきまでに叩き潰してやれぇ!」
ニック「おいおい、落ち着けよ。守備の時間
 でそこまで叫ぶなよ」
シュミレット「え? なに守備って? 投げ
 る奴の球が打たれなかったら、あの信号機
 みたいなBとかSとかに点が入っていくんじ
 ゃねぇの?」
ウェス「全然野球知らねぇじゃねぇか。よく
 それで来たな」
シュミレット「分かりにくいんだよ野球って。
 サッカーなら相手のゴールに蹴りこんだら
 一点だろ? なんでこんな複雑なルールに
 したんだ?」
ニック「さぁな。なんでも複雑にするのが人
 間社会だろ?」
はるか「あっ、次田中が打つんじゃない? 
 いけー! 田中! あなたしかいないわ~!」
シシ「はるか、やめて。恥ずかしい。名前も
 間違ってるし」
ニック「中田な。あなたしかどころか、田中
 が存在してねぇしな」
ウェス「え? はるかは俺達のライバル側を
 応援してんの?」
はるか「ううん。なんかテレビとかで聞いた
 ことある人だけ応援してるの」
ニック「おい待て、この中で野球のルール知
 ってるの俺とウェスだけ?」
シシ「私も知ってるよ。ルールだけね。選手
 とか球種みたいな細かい所は知らないわ」
シュミレット「別に知らなくても酒飲んで楽
 しんどけばいいんだよ。ほら、ユニフォー
 ム着た可愛い子も多いし、売り子もレベル
 の高い子ばっかだな」
ウェス「確かにユニフォーム着た可愛い子が
 増えたよな。おののののかの影響?」
はるか「の、が一個多いよ」
ニック「おいお前ら、何を観に来てるんだ?
 ちゃんと野球観戦しろよ」
シュミレット「出た出た、はいはい、アナグ
 ロ人間ね」
ニック「アナログだ。そんな卑猥な言葉じゃ
 ねぇよ」
はるか「そういえば、シシは作曲の方大丈夫
 なの?」
シュミレット「作曲?」
はるか「シシ、今度ライブバーでの出演が決
 まってるの」
シュミレット「へぇ~、路上ライブだけじゃ
 なかったんだ」
シシ「曲の方はもう出来てるよ。今回のは良
 い仕上がりになってる。一番の自信作かも」
はるか「すごいじゃない! その曲をライブ
 バーで歌うの?」
シシ「もちろん。今回はちょっと楽しみなん
 だ。みんなどんな反応するんだろうって」
はるか「上手くいくといいね」
シシ「うん」
シュミレット「なぁ、太鼓の音うるさすぎね
 ぇ? いつもこんなんなのか? 全くプレー
 に集中出来ない所か、耳の奥がグワングワ
 ンなるんだが」
ウェス「あれも日本野球の伝統だ。イチロー
 は嫌ってたけど」
ニック「まぁ、太鼓が鳴ろうがラッパが鳴ろ
 うが、お前は(シュミレット)全くプレーを
 知らないだろ。なんら影響ない」
シュミレット「おいおい、言ってくれるぜ。
 タバコだって吸ってない人が副流煙でやら
 れるんだ。影響ないことないだろ。いいか
 げん、野球初心者ディスりはやめろ」
ニック「何もディスってねぇよ。男のなのに
 野球のルールも知らない。驚いてただけだ。
 (小声で)女みたいだって」
シュミレット「あぁ! 次は俺を女扱いしや
 がった! お前の方がフラれた時にずっと
 ナヨナヨしてただろ! 日記にも女みたい
にダラダラ未練を書き綴ってたくせに!」
ニック「おい、まさか、お前、俺の日記を勝
 手に読んだのか?」
シュミレット「……どう捉えようとしてくれ
 てもかまわない」
ニック「てめぇ! 隠れて読んでいやがった
 な! 何だその言い方は!?」
   ニック、シュミレットに猫パンチみた
   いなのを繰り出していく。ケンカ慣れ
   してない感じ。
はるか「やめなよ二人とも!」
ウェス「そうだぜ。絡み方が女、もしくはオ
 カマみたいだぜ? こっちが恥ずかしくな
 ってくる」
   カーン、と音が聞こえる。誰かが打っ
   たホームラン級の球に観客はみんな声
   を上げる。
   飛んできた球が当たると勘違いした上
   の席のおっちゃんが自分の顔を庇う動
   作をする。
   その時に手に持っていたカップを傾け
   てしまい、中身のビールがニックの頭
   にかかる。
ニック「わぉ! 嘘だろ!」
   だが、球は全然違う方向に落ちる。
おっちゃん「はぁ、危なかった……」
ニック「危なくねぇよ! 全然違うとこに落
ちたじゃねえか!」
   シュミレット、大笑い。
シュミレット「あーはっはは! 天罰が当た
 ったのさ! ビギナーをバカにするアナグ
 ロ人間はこんなる運命なのさ!」
ニック「なんべんも言わせるなアナグロだ!
 ちくしょう間違えた! アナログだ!」
シュミレット「ダメだ! 笑いが止まらない!
 ひっーひっひっひ!」
   シュミレット、悪魔に取り付かれたよ
   うに笑う。
シュミレット「はっーはっは!」
   みんな、少し引く。
   またカーンっと音がなる。ホームラン
   級の球。
シュミレット「いーっひひ! 今の小説にか
 けよ! 絶対笑いのポイントになるぜ! 
 スカッとジャパンに送ってもいいかもな!
 三万円貰えるぞ!」
   会場のみんなが盛り上がってくる。
シュミレット「タイトルはそうだな……「調
 子のり過ぎ野郎に天罰」っでどうだ!?」
   セリフを言ったあとすぐにシュミレッ
   トの側頭部にホームランボールが直撃。
シュミレット「ごふっ!」
   そのまま倒れるシュミレット。
   みんな、無言で顔を合わせる。

〇タイトル「マーブル・ポップコーン」
   スコアボードにマーブル・ポップコー
   ンと電子盤で書かれている。

○病院 エントランス 昼
   みんなで病院に来ている。
   シュミレット、頭をアイスロン(氷枕
   みたいな)で冷やしている。
シュミレット「ちくしょう……なんでこんな
 事になるんだ?」
ニック「天罰だろ?」
シュミレット「お前もビール掛けられたろ」
ニック「硬い球に当たって病院送りになるよ
 りマシだね」
はるか「何も異常なくて良かったね」
ニック「まぁ、元から頭が異常だから、今さ
 ら異常が一つ二つ増えた所で大したことね
 ぇよこいつは」
シュミレット「お前、一命をとりとめた本人
 の目の前でよくそんな事が言えるな」
シシ「あんな倒れかたしたからヤバいかと思
 ったわ」
ウェス「そうだぜ。こんな倒れかたしたんだ
 ぜ」
   ウェス、シュミレットが倒れたシーン
   をふざけた感じで再現する。
ウェス「天罰だ! どうだぁ! バフッン!」
   それを見たニック大笑い。
ニック「はっーはっは! めっちゃ似てる!
 本当にそんなんだったぜ!」
ウェス「マヌケなヤギみたいな顔してたもん
 な」
ニック「あははは! やめてくれ! お腹痛
 い!」
シュミレット「お前ら……」
   その時、ボケてそうなおじいちゃんが
   紙コップを持って近づいてきていて、
   よろけてニックの頭に検尿をかける。
ニック「え?」
   みんな、時が止まる。状況を飲みこむ
   のに時間をかけている。
ニック「これ、まさか……あれじゃねぇよな?
 ホットリンゴジュース、だよな?」
   看護師さんが来る。
看護師「あぁ! ダメじゃない佐藤さん! 
 検尿はトイレの中で渡さないと! ほら、
 こっち来てください!」
   佐藤さん(おじいちゃん)と看護師、
   どこかへ行く。
シュミレット「……ぷっ、ぶははは! 嘘だ
 ろ? 1日に二回も頭から掛けられて、二
 回目はおしっこ掛けられてるよこいつ!」
ニック「さすがに笑い事じゃねぇだろ」
ウェス「哀れすぎる」
シシ「大丈夫? ニック」
ニック「大丈夫だ」
シシ「あぁ、ちょっと、あまりこっちに来な
 いで」
ニック「心は重症になったよ……」
シュミレット「はは! やべぇ、頭に響くか
 ら笑っちいけないのに……たまらん~」
   シュミレット、笑いを抑えている。
シュミレット「やっぱダメだ。はっーはっは!」
   その時、後ろの席にいた女の人が立ち
   上がり、持っていたお見舞いのメロン
   をカゴから落とす。
   シュミレットの頭にメロンが直撃。
シュミレット「どこぉ!」
女の人「ああ! ごめんなさい!」
シュミレット「痛った~」
ニック「ははっ、お前も1日で二回も丸いや
 つに当たってんじゃねぇか」
シュミレット「どういう事だよこれ? 神の
 提示なのか?」
   シュミレットを診てくれた医者が出て
   来る。シュミレットの所に来る。
医者「すいません、診察室にコレ(ハンカチ)
 忘れてませんでしたか?」
   シシ、その医者を見て驚く。
   医者もシシに気づく。
シュミレット「あぁ、ありがとうございます
 先生。さっきメロンがおもいっきり頭を強
 打したんですが、大丈夫ですかね?」
   医者とシシ、見つめあっている。
医者「……」
シシ「……」
シュミレット「先生?」
医者「……あぁ! すいません。私はちょっ
 と今から休憩なので……(シシに)久しぶり
 だね」
シシ「ええ、久しぶり」
医者「元気にしてた?」
シシ「元気にしてた。今は何故か健康体で病
 院にいるけどね」
医者「その、これから少し話せるかい?」
シシ「……」
   シシ、医者がしている指輪を見る。
シシ「やめとく。忙しいから。じゃあね」
   シシ、帰り始める。
はるか「え、シシ待って!」
シュミレット「え? 帰るの? まだ会計が
 終わってないんだけど」
シシ「元気じゃん? もう一人でいけるでし
 ょ」
シュミレット「メロンが頭に強打したのに…
 …冷たい奴だぜ」
   はるか、シシに歩きながら聞く。
はるか「知り合いなの?」
シシ「ちょっとね……」
   はるかとシシ、帰る。
ニック「俺も帰ろ。おっさんにビール掛けら
 れて、ジジイには小便かけられたからな」
ウェス「良かったじゃねえか。これで毎日書
 く日記が充実するじゃねぇか」
ニック「野球観戦よりインパクトが強いもん
 な」
ウェス「それにsnsにも上げれないし」
シュミレット「ウェスは残るよな? ニック、
 お前は帰っていいぞ」
ニック「やったー、帰れる」
ウェス「いや、俺も帰ろうかな?」
シュミレット「理由は?」
ウェス「特にないけど。ここにいる理由も特
 にない」
シュミレット「冷たい奴らだ! このアイス
 マクラより冷たいぜ! 俺の心を氷のよう
 に凍らせるつもりだ!」
ウェス「大きい声が出せるくらい元気だな。
 何よりだ。じゃあな」
   ニック、ウェス帰る。
ウェス「ニック、あんま寄らないでくれ」
ニック「嫌だね。抱きしめてやるよホラ!」
ウェス「うわぁ! マジでやめろ! こっち
 くんな! クソ小便野郎!」
ニック「待って~!」
   ウェス、逃げる。追うニック。
シュミレット「覚えてろよ! ゲイどもめぇ!」
看護師「病院では静かに!」
シュミレット「ごめんなさぁい!」

○公園 夜
   シシ、ギター一本で歌っている。通行
   する人が少ない。立ち止まって聴く客
   は一人もいない。
   シシは歌いながら自分の過去を思い出
   している。
   歌は、希望は宇多田ヒカルのファース
   トラブ(作者の希望)。

× × × ○回想
   シシの歌が後ろで流れている回想。
   あの医者と手を繋いで歩くシシ。
   高級そうなレストランとかでデート。
   どこかの高層ビルの上で、都会の夜景
   を見ながら寄り添うあう二人。
   医者の指には結婚指輪がしてある。
× × × 回想終わり

〇(戻って来る)公園 夜
   シシ、歌い続けている。
   徐々に暗転。

○ライブバー 店の前 夕方
   店はまだ開店していない。看板に6時
   から誰々のスペシャルサプライズライ
   ブと書かれている。
   店の前に列が出来ており、シェアハウ
   スのみんなも並んでいる。
シュミレット「ライブなんて俺久しぶりだぜ」
ニック「最後に言ったのはビートルズの日本
 公演以来か?」
シュミレット「ジジイに尿を掛けられた恨み
 があるんだろうけど、残念ながら俺は現代
 を生きるヤングだ! それにそれを言うな
 らズートルビだろ!」
ニック「ズートルビ? 何言ってるんだ?」
シュミレット「だからお前が言ってるバンド
 だろ。yesterdayとかhelpとか歌ってる海
 外のバンド」
ニック「マジかよこいつ……過ちもいいとこ
 ろだ。ホントに赤ん坊から人生やり直した
 ほうがいいぞ」
シュミレット「あん? じゃあ、強力なアポ
 トキシンをくれよ。低能で単細胞のお前に
 は作る事なんて出来ないだろうけど!」
ニック「分けわからん皮肉だな」
ウェス「逆によくズートルビが出てきたよな」
はるか「ズートルビって何?」
ウェス「昔のゴールデンボンバーみたいな感
 じの人達。コミカル系統のアーティストだ。
 いや、コメディアンだったかな?」
はるか「へぇ~」
ニック「音楽も知らないのかよお前は?」
ウェス「洋楽が知らなかっただけだろ? 日
 本の歌はちゃんと知ってるぜ!」
ニック「ズートルビだけか?」
シュミレット「だからズートルビはアメリカ
 のバンドだろ!」
ウェス「イギリスな。ズートルビじゃねぇけ
 ど」
シュミレット「何だっていいだろ! 別に知
 ろうが知らねぇが人生に全く関係ねぇじゃ
 ねぇか!」
はるか「じゃあ、とりにくって何の肉か知っ
 てる?」
シュミレット「とりにく? 鳩とかだろ? 
 その辺に飛んでるし」
はるか「鳩!? 豆食ってポー!」
ニック「嘘だろ、その辺に飛んでる鳥だと思
 ってたのか? こいつも無知の平成生まれ
 でテレビに出れるレベルじゃねぇか。生ま
 れは昭和のクセに」
シュミレット「おい! 知らなかっただけで
 そんなに責めるなよ!」
ニック「いや、責めてねぇよ。ちょっと、哀
 れだなって」
シュミレット「哀れむな! 何様のつもりだ!
 人の無知を笑う者は天罰が下るがいいわ!」
ニック「お前が何様なんだよ」
   その時、建物の屋上から大声がする。
   列に並ぶ客みんなが見上げる。
パンクスタイルの男「お前ら! そんなちん
 けなライブハウスに来るのはポンコツ歌手
 だけだ! 俺達のライブの方が百万ドル以
 上の価値があるぜ!」
ニック「何だあいつ?」
パンクスタイルの男「何も分かってねぇライ
 ブハウスとお前らに本当のロックアートを
 くれてやるぜ! くらえ!」
   パンクスタイルの男、屋上からバケツ
   で血生臭い魚のあら(魚の残骸、大量
   の血やら頭、漁師が使う大型の魚のエ
   サ)を落とす。
   列に並んでいる人達が叫ぶ。
   「きゃ~!」、全部ニックにだけかか
   る。
   ニック、血だらけのように魚の血で全
   身真っ赤になる。
   呆然とするはるか達。ニックも呆然。
ニック「……え?」
ウェス「あ~ん……キャリーを思い出したよ。
 あれは女の子で、豚の血だったけど」
パンクスタイルの男「これもくらえ!」
   パンクスタイルの男、卵を投げる。
   シュミレットの頭に落ちる。
   シュミレット、頭の上に生卵の黄身を
   乗せてみんなを真顔で見る。
パンクスタイルの男「ファックユー!」
   パンクスタイルの男、逃げる。
シュミレット「どうなってんだ? もうこれ、
 運命じゃねぇか! ニックが掛けられたら、
 次に俺が丸いものをぶつけられる!」
ウェス「ここまでくると、少し怖いな」
ニック「マジかよ、マジでどうなってんだ?!」


○ライブバー 事務所 夕方
   シシ、支配人に事務所にいる。
シシ「え? また今度に変更してくれ?」
支配人「本当にすまないね。有名なプロの歌
 手が急に出てくれる事になったんだ。予定
 が今日のこの時間しかダメだったから、ま
 た次の機会にしてくれないか? 他のアー
 ティストもみんな帰した所だし」
シシ「そんな……」
支配人「それじゃあ、また空いた日があれば
 連絡するよ」
シシ「……もういいです。ここにはもう来ま
 せんから!」
支配人「おい、ちょっと! 当てつけに屋上
 で叫んでバケツぶちまけないでね!」
   シシ、去る。
   店を出ていくシシ、シシのライブを観
   に来ようと並んでいたシェアハウスの
   みんなが発見する。
はるか「え? シシ! どこ行くの?」
   みんなで追いかける。

○シェアハウス リビング 夜
   みんなソファに座わっている。
はるか「ホントに分かってないよ! あそこ
 の店主! そりゃあ店の前に魚の残骸をぶ
 ちまけられるはずだよ!」
ニック「それを全部頭から被ったのは俺だけ
 どな。それより、はるかの言うとおりだ。
 人気だけでアート、芸術は測れないんだ。
 音楽を全く分かってないぜ」
シュミレット「そうだそうだ!」
ニック「少なくともシュミレットよりは分か
 ってるけどな」
シュミレット「何だと!? もう一回言って
 みろ!」
ニック「やめろ、もう俺達は汚れて風呂から
 上がったばっかだ。俺達がもめると……分
 かるよな?」
シュミレット「……そうだった。あはは! 
 俺とニックは仲良しだよな!?」
   シュミレット、ニックと肩を組む。
ニック「あぁ、そうだ! 神様! 見てる!?」
はるか「気にすることないよシシ。あそこの
 店主のせいなんだから」
シシ「……けど、それが社会なんだよね。結
 局、どれだけ頑張って作った歌でも、私の
 歌が稼げなきゃ誰も聴いてくれないんだよ。
 思い知らされた」
はるか「シシ……」
シシ「ごめんね、せっかくみんな来てくれた
 のに」
ウェス「いや、それはいいんだけどよ」
シシ「……もう寝るね。おやすみ」
   シシ、自分の部屋へ。

○シェアハウス 外観 翌朝

〇シェアハウス リビング(やっぱキッチン?)
 朝
   みんな朝食を食べている。
   シュミレットだけいない。
はるか「シュミレット、遅いね」
ニック「昨日遅くまでストレンジャーシング
 ス観てたみたいだぞ。止まらなくなったら
 しい」
ウェス「面白いの?」
ニック「あぁ、80年代、90年代の良作の
 作品が好きならドはまりだ。ドラマだから
 こそで成り立つ映画のようだった。ドラマ
 が好きなら観ておいた方がいいぞ。俺も脚
 本家になりたくなったよ」
ウェス「分かりにくいな。お前が脚本家にな
 りたいって所だけは分かった。とてもどう
 でもいい所だけだ。点数で言ってくれ。何
 点ぐらいなんだ?」
ニック「100点中95点」
ウェス「ニックの顔面点数より70点も高い
 のか。じゃあ観ようかな?」
ニック「あぁ、お前の顔よりも90点も高い
 から観た方がいいぞ」
   ピンポーン、と呼びベルがなる。
シシ「朝から誰だろ?」
   シシ、玄関に行く。

〇シェアハウス 玄関
   もう一度ベルが鳴る。
シシ「はいはい」
   シシ、扉開ける。開けた先にはシシの
   父が立っている。父親はスーツでしっ
   かりした服装。
   シシ、怪訝な顔になる。
シシ「え? どうしたの?」

〇シェアハウス リビング
   みんなまだ朝食を食べてる。
   遠くから声がして、そのままシシと両
   親が登場。
シシ「なんで急に来たのよ。しかもこんな朝
 早くに!」
父親「連絡はしたはずだ。何回もな」
シシ「……最近忙しかったから、(携帯)見
 てなかったわ」
ウェス「誰?(ニックに)」
ニック「知らねぇよ。彼氏じゃねぇの?」
ウェス「彼氏? そりゃあサプライズだぜ」
はるか「あ、久しぶりです」
父親「あぁ、君か。ええっと……」
はるか「シシの友人の一条はるかです」
父親「そうだったな」
   父親、シシを見る。
   シシ、何よってジェスチャー。
   父親、溜息は吐く。
父親「お前はいつまで、何をしてるんだ?」
シシ「何よ? いきなり来て、いきなり何言
 ってるの?」
父親「分かっているだろう?」
   シシと父親が何か話している時に、
   はるか達ヒソヒソ話。
ニック「(はるかにヒソヒソ声で聞く)誰?」
はるか「シシのお父さん」
ウェス「へぇ、なんか、恐そうな人だな」
はるか「うん、正直言って、恐くて色々と厳
 しい人よ。私にも子供の頃から冷たいの。
 だからちょっと苦手なの」
シシ「もう! 何回も言わないで!」
   シシの声でビックリする三人(ニック、
   ウェス、はるか)。
父親「お前がまだ分かってないから何回も同
 じ事を言うんだ。いつまでチャラついた夢
 なんて追っているんだ?」
シシ「……」
父親「お前の姉達は、お前の歳の頃にはもう
 結婚して、子供もいるんだぞ?」
シシ「姉さん達と一緒にしないで! 私は、
 私の人生を生きていたいの!」
父親「そう言って、もう七年も経つじゃない
 か。七年経って今はどうしてる? 何も変
 わってないじゃないかあの頃と。進展して
 るようには見えないぞ。何を得たんだこの
 七年間で?」
シシ「それは……」
父親「言えないだろ? いいかげん、目を覚
 まして現実を見ろ。今ならまだ間に合う。
 下らん夢なんて見ないで、まっとうに生き
 ろ。知り合いの経営者に雇い口がある。考
 え直すんだ。これからの人生を」
シシ「……」
   シシ、黙って出ていく。ギターを持っ
   て。
はるか「シシ!」
ニック「おいおい、朝から空気が重いなぁ…
 …」
ウェス「俺、ちょっとトイレ……」
   ウェス、トイレに逃げる。
   シュミレット、あくびをして起きてく
   る。父親に気づいていない。
シュミレット「ふぁ~……眠ぅ。あれから全
 部観て。興奮してエロサイトまで観ちまっ
 たぜ。本当に最高だぜストレンジャーシン
 グスは。あと、明日花キララな!」
   みんなが静まってるのに気づくシュミ
   レット。
シュミレット「みんなどうしたんだ?」
   シュミレット、ようやく父親の存在に
   気づく。シュミレットすごい驚く。
シュミレット「うわぁ! 誰!? え? ウ
 ェスなの? あれウェス?」

〇公園 夕方
   シシ、路上で歌ってる。
   切ないバラード。(歌ってる曲は、作
   者の希望はUVERworldのTHE SONGの二
   番の所から)
   シシ、途中から(サビを歌い終わるあ
   たり?)涙を流しながら歌う。
   通り過ぎる人達はシシをチラッと見な
   がら去っていく。
   そんなシシにハンカチを渡す人が。
   シシ、見上げてみると、あの医者だっ
   た。
医者「まだここで歌っていたんだね?」
シシ「……」
医者「どうしたの? なんで、今日は泣いて
 るの?」
シシ「ちょっと、色々あって……」
医者「そっか……ほら、ふきなよ(涙を)」
シシ「……」
   シシ、ハンカチを受け取る。


〇バー「マーブル・ポップコーン」 夜
   シシ、ひっそりとしたバーで一人酒を
   飲んでいる。スマホの画面を見る。
   医者の電話番号が映っている。
マスター「どうしたんだいシシちゃん? 元
 気がないじゃないか?」
シシ「うん、ちょっとね……今日は自分を忘
 れたくて飲みにきたの」
マスター「そうかい……悩みが多い年頃だか
 らね」
シシ「なんか、生きていて、人生、後悔だけ
 が増えていく感じがしてね」
マスター「……それは考えすぎだよ。後悔も
 反省も、そこから学んだものも、全部含め
 て人生なんだから」
シシ「だけど、なかなか消えない後悔も、直
 せない反省もあるもんだね」
マスター「自分ではどうも出来ない事が起こ
 るのも人生さ。自分のせいばかり責めては
 ダメだよ。運命は時に、不平等な事をする
 んだから」
シシ「……ここに来た頃は、良い歌を書くっ
 て意気込んでたの。世界をも変えるって。
 この街なら夢が叶うって。でも結局寄り道
 ばかりで、今思うと全く笑っちゃう目標だ
 わ。ホントに何も知らなかったんだなぁ、
 って」
マスター「シシちゃんの歌はとても良いよ。
 続ける価値のあるものだ。この先に、認め
 て、気づいてくれる人もいるかもしれない」
シシ「そうかもね……。次があるかも。ふぅ
 (溜め息)、そう言って、ずっと頑張って
 きたんだけど、ちょっと疲れちゃった」
マスター「夢を追う事は楽しい事ばかりじゃ
 ないからね。苦しい事も多い……。好きで
 始めた事だけど、続ける事が虚しくなって
 くる時もある……今夜は私の奢りだ。ゆっ
 くりしていきなさい」
シシ「……ありがとう、マスター」
   シシ、しばし無言でゆっくり飲む。

〇街 道 夜
   シシ、都会の夜の道を一人歩いている。
   ハンカチ(医者から借りた)を取り出
   し、スマホで見る。画面には医者のア
   ドレスが。
   シシ、医者に電話をかけようとするが、
   どこからか声が聞こえて来てやめる。
はるか「いかがですか~? 素晴らしい歌手
 の卵が歌うCDですよ! 将来スターになる
 事間違いなしですよ!」
シュミレット「これを聴くともうズートルビ
 は聴けませんよ!」
ウェス「今の時代に元々聴いてる人があんま
 いないだろ」
ニック「お前ら、遊んでねぇで真面目にやれ!」
ウェス「俺は真面目にやってんだろ? ふざ
けてんのはシュミレットだ」
ニック「あいつは天然だ。真面目がふざける
 のと一緒なんだから仕方ねぇ」
   ルームメイト、路上でシシのCDを売っ
   ている。
   シシ、ルームメイト達のもとへ。
シシ「みんな、何してるの?」
はるか「シシ! 見て見て、11枚も売れた
 よ!」
シシ「え?」
シュミレット「売れなきゃ、はるちゃんのサー
 ビスタイムがあったんだけどな!」
はるか「あははっ、全く笑えないね(笑いな
 がら)それ」
ウェス「前に路上で聴いて良かった、って言
 って買ってった人もいるぜ?」
ニック「どうだ。お前のやってる事は無駄じ
 ゃなかったぜ?」
はるか「そうよ! こんな良い歌が売れない
 わけないよ。あとは世間にどう広めるかよ!」
ニック「アイチューンでとか、ユウチューブ
 とか色々アイデア出したんだけど、とりあ
 えずこういう事からやろうってみんなで決
 めたんだ」
シュミレット「違う違う! 路上で売ろうっ
 て決めたのは俺! そこんとこちゃんとし
 ておこうぜ!」
シシ「みんな……ホントにバカだね」
シュミレット「え!? マジで!」
シシ「だけど、ありがとう! みんな大好き!」
はるか「シシ……」
ニック「おうおう! 普段シシが言わなさそ
 うな言葉を聞けたぞみんな!」
シュミレット「よっしゃあ! じゃんじゃん
売っていこうぜ!」
警察「ちょっと、君たち」
シュミレット「うん?」
   警察二人が来る。
警察「君たち何してるの? ちゃんと許可は
 取ってるの?」
   みんな、ちょっとよそよそしくなる。
シュミレット「へ? 許可? あぁん……そ
 れは……」
警察「名前は? 職業は何してるの?」
シュミレット「な、名前は……野原しんのす
 けです。職業は、木こり、です」
警察「何だって?」
ニック「やべぇな……」
シュミレット「あ! お巡りさん! あそこ
 でひったくりがだ!」
警察「え?」
   警察、指さす方へ向く。
シュミレット「今だ! 逃げろぉ!」
   みんな、逃げる。
   シシ、逃げながら笑っている。

〇ボーリング場 (翌日 昼)
   ルームメイト達全員でボーリング場に
   来ている。
   シシ、ゲームから抜け出し電話。医者
   へ。
シシ「もしもし……」
医者「はい、昨日はどうしたの? 何回か電
 話したんだけど。場所が分かりにくかった?」
シシ「ごめん、そうじゃないの」
医者「うん?」
シシ「……昨日はありがとう。けど、もうあ
 なたからの助けは何も受け取らない。あな
 たを信じた事も、あなたを愛した事も、私
 が愚かだって認めるわ。見事に私を騙せた
 わよあなた」
医者「そんな事……」
シシ「こんな茶番は終わらせるべきだってや
 っと気づいたの。私にはこれからも大事に
 したい事があるしね。確かにあなたとの事
 は楽しかったわ。でも、もう終わり。もう
 二度と会わないわ」
医者「ちょっと待って!」
シシ「ハンカチは貰っとくね? さようなら」
   シシ、電話を切る。
   シシ、ゲーム(みんなの元)に戻る。
はるか「お父さん?(シシに訊く)」
シシ「ううん、違う。けど、あとでまた電話
 かけようとは思ってる」

〇(回想)シェアハウス リビング 昼
   テーブルに封筒が置いてある。
   シシ、封筒を開ける。中には手紙とお
   金が入っている。手紙には父親からで、
   シシへ、っと書いてある。

〇(戻って来る)ボーリング場 昼
シシ「一応、お金も置いていってもらったし。
 お礼は言わないとね。黙って帰っちゃった
 けど」
はるか「けっこうキツイ事言ってたけど、や
 っぱりシシのお父さんはすごく心配してる
 んだと思うよ」
シシ「もっと言い方を変えてくれたらいいん
 だけど」
はるか「確かに高圧的ではあるね。そういえ
 ば、シシのCDも持って帰ってたよ」
シシ「父さんが?」
はるか「うん」
シシ「中途半端な金額だったからなんでだろ
 う? って思ってたけど、そのCD分も含め
 てたのね。昔から堅物は変わらないわ」
はるか「はは、そうだね」
シュミレット「シシ! 次、シシの番だぜ!」
シシ「OK! 絶対に酒は奢らないわよ!」
ニック「このままいけば、シュミレットが最
 下位だな。また美味しいビールが飲めるぜ」
シュミレット「くそ~! 初心者によく賭け
 事が出来たな!」
ウェス「いやいや、お前が言い出したんだろ?
 最下位の奴は酒を奢るって」
シュミレット「玉転がしがこんなに難しいと
 は……」
ニック「圧倒的だな。シュミレットのスコア
 が20だし」
シュミレット「何!? ストライクってやつ
 を一回取っただろ!」
ウェス「お隣さんのレーンをな。こっちも向
 こうの家族もビックリしたよ」
ニック「まぁ、こんだけ才能のねぇ奴見たの
 も初めてだ。隣のレーンに玉を飛ばすなん
 て傑作だぜ」
シュミレット「言わせておけば……そういえ
 ば、いつかのお前の日記で、はるちゃんの
 事を妄想でいやらしい事してたんだってな?」
   ニック、驚きの顔。
はるか「えぇ?!」
シシ「何それ?」
ニック「何言ってんだてめぇ! 嘘言うんじ
 ゃねぇ!」
シュミレット「他にも書いてたな、確かシシ
 の事だ。あれは……」
ニック「お前だって、シェアハウスしたての
 頃にシシに惚れてたクセに!」
   シュミレット、目を大きく見開く。
シュミレット「でたらめだ! お前なんて事
 を言ってくれたんだ!」
ニック「よく相談してたじゃねぇか? 夜に
 変なポエムも書いてよぅ!」
シュミレット「黙れ! これ以上言うとお前
 は天罰を下る事になるぞ!」
ニック「何言ってんだお前? そんな何回も
 天罰が下る事なんて……」
   コーラの缶が飛んで来てニックにかか
   る。
ニック「うわぁ!」
ウェス「おっと! すまん、ちょっと滑っち
 まった」
シュミレット「あははは! ほら見ろ! し
 っかりと天罰が……」
   ニックとシュミレット、お互い真面目
   な顔で見合う。
   シュミレット、丸い物がないか見渡す。
   ボーリングの玉しか入ってこない。
   ニック、後ずさるようにシュミレット
   から離れる。
ウェス「ちょっとコーラで玉がベトベトする
 ぜ。まぁ、いいや。よし、いくか!」
   ウェス、玉を投げようとするがすっぽ
   抜けてシュミレットの方へ飛んでいく。
シュミレット「うわぁ~!」
   っと、シュミレットの叫び声で終わる。

〇 ~~END~~

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