【人物関係表】
野呂 唱 (15)中学3年
清原 ゆうみ(15)中学3年
門間 壮亮 (15)中学3年
伊沢 理久 (30)教師
緒方 青 (25)警官
野呂 警児 (50)探偵 唱の父
高橋 (46)会社員
漣 (15)中学3年
凛太朗 (15)中学3年
南野 恵 (50)唱の母 警児の元妻
○ トンネル内(深夜)
壁に型紙を使って、様々なスプレーを噴射させている全身黒ずくめの人物。
× × ×
壁には、人が人を必死に追いかけているような、グラフィティアートの絵が描かれている。バンクシーにも似たテイストで、かなりのクオリティだが。
黒ずくめ「(嗚咽している)」
〇 清原ゆうみの部屋(朝)
1月7日。制服にスカーフを通している清原ゆうみ(15)。
壁掛けカレンダーの3月17日には、羽の生えたドクロが飛び立つ絵が描かれている。それを見ているゆうみ。
ゆうみ「・・・」
〇 通学路(昼)
学校に向かって、走っている野呂唱(15)。
唱「(焦っている)」
近くの工場から、正午のチャイムが漏れ聴こえる。
唱「(道に迷い)え、どっち・・・」
〇 通学路~トンネル内(昼)
頭を抱えている警官・緒方青(27)。壁には大きなグラフィティアートの落書き。
急いで学校へ向かっている唱。トンネル内に入ると、落書きに気づき、思わず足を止めると。
緒方「(唱に気づき)こんにちは」
唱「こんにちは、あ!あの・・・流山中ってどっちですか?」
〇 流山中学校・外観(昼)
〇 3年1組教室(昼)
担任の伊沢理久(30)が、帰りのホームルームを行っている。生徒の中の1人にゆうみ。
伊沢「あと二か月少しで卒業です。31、いや32人全員が元気に卒業できるように、過ごしていきましょう。じゃあ、号令」
日直の生徒が号令をかけ、生徒たちが立ち上がると。
教頭「(扉を開け)伊沢先生」
伊沢「はい」
教頭の横には、汗だくの唱。
伊沢「(やっと来た・・・!)」
教室を出る伊沢。
教室内では「あれ転校生?」、「初日から遅刻!?」などとざわざわしている生徒たち。その中で、ひと際うるさい門間壮亮(15)。
黙って座っているゆうみ。
ゆうみ「(早く帰りたい)」
× × ×
教壇。伊沢の横には唱。生徒と対面している。
唱「あ・・・野呂唱です。寝坊しました。すいません」
リアクションに困っている生徒たち。
伊沢「初日って緊張して寝れなくなってしまって、遅刻してしまうことあるよね」
唱「冬休みボケです」
教室内に変な空気。
伊沢「うん、そうなんだね」
唱「そうなんです」
教室内に変な空気。
ゆうみ「(早く帰りたい)」
〇 通学路(昼)
下校中。ひとり歩いている唱。途中、歩いていると、壁にグラフィティーアートのような落書きを見つける。
トンネル内で見た落書きと、同一人物が描いたとみられる絵。
唱「・・・」
そこに自転車に乗り、巡回している警官・緒方が近づき。
緒方「学校、見つかった?」
唱「あ!はい、ありがとうございました」
緒方「よかった。もう帰り?」
唱「今日は始業式なので」
緒方「あーそっか。もしかして・・転校生?」
唱「はい。なのに遅刻しちゃって」
緒方「じゃ後輩だ」
唱「え?」
緒方「僕、卒業生。流山中の」
唱「おお!先輩だ」
緒方「何かあればいつでも」
唱「はい。(落書きを指さし)あ、ここにも」
緒方「最近多くて、この落書き。同じ奴だよ」
唱「バンクシー(と呟く)」
緒方「ん?」
唱「あ、いや。引っ越し先が落書きの多い町ほど、萎える事無いです」
緒方「刺さるな・・取り締まり、頑張ります」
唱「はい!」
〇 公園(夜)
鉄棒に寄りかかっている壮亮(15)。
壮亮「周囲に誰もいないのを確認して)」
鉄棒に手を掛けようとすると、公園を横切っている唱を見かける。
壮亮「(あいつ、今日の転校生だ)」
レジ袋を持って家に向かっている唱。辺りをキョロキョロしている。
壮亮「(あいつ何してんだ?)」
唱「(道に迷っている)」
〇 3階建てのアパート・入口(夜)
唱「(やっと着いた・・・)」
階段を上り、自身の自宅である203号室へ向かう唱。
〇 同・唱の自宅・リビング(夜)
帰宅する唱。テーブルには「仕事で帰るの遅くなる。夕飯先食べて!すまん」の紙。おつりを紙の横に置く唱。
2つ買った弁当の一つを冷蔵庫に入れ、もう一つは食べる。
〇 流山中学校・外観(日替わり・朝)
〇 3年1組教室(朝)
授業中。ゆうみの席の隣には、唱。
英語教師「Please read in pairs」
隣の席の人と、教科書の英文の読み合わせをはじめる生徒達。
唱「あ、お願いします」
ゆうみ「(小さく会釈)」
× × ×
教科書の英文を読み合う2人。
唱「クッジュ?・・・ウ?・・・」
ゆうみ「Could you like」
ペアワークが終わり、どんどん座っていく周りの生徒たち。
唱「クッ・・・ジュウ?・・・で合ってる?」
ゆうみ「Could you like」
最後のペアになっている唱とゆうみ。
皆の視線が2人に集まっている。
唱「(気にせず)クッジュウ?・・・」
ゆうみ「・・うん、クッジュウ」
× × ×
理科の授業。ペアで実験をしている唱とゆうみ。三角フラスコ内の溶液の経過を観察している。
唱「(真剣に見ている)」
ゆうみ「・・・」
× × ×
音楽の授業。ペアになり、ギターで「Let it Be」の練習をしている唱とゆうみ。
唱「えっと・・・C(のコード)が・・・」
Cのコードをゆっくり弾くゆうみ。
唱「(たどたどしくCを弾き)で、次が・・・」
ゆうみ「G」
唱「G・・・」
Gのコードをゆっくり弾くゆうみ。
唱「前の学校だと木琴やってたから」
ゆうみ「・・・」
またCのコードを弾く唱。
ゆうみ「いやG。それCになってるから」
唱「あ、Gか!Gね!・・・んGって?」
ゆうみ「・・・」
唱「この学校、ペアワーク多くない?」
ゆうみ「(心の中でため息)」
2人のやり取りが目に入る壮亮。
〇 流山中学校・外観(放課後)
帰りのホームルームのチャイムが鳴る。
× × ×
部活動へ向かったり、下校する生徒達。
〇 通学路(夕)
自宅に向かっているゆうみ。途中、壁に描かれたグラフィックアートの落書きが目に入る。
ゆうみ「・・・」
唱「あ、おう」
斜め後ろには唱がいる。
ゆうみ「(うわ、帰り道も同じ!?)どうも」
唱「帰りこっち?」
ゆうみ「え」
唱「いや!知りたいとかじゃなく」
ゆうみ「・・・」
唱「じゃあ、また」
去っていく唱。
ゆうみ「・・・」
〇 ゆうみの部屋(夜)
受験勉強をしているゆうみ。壁掛けカレンダーの3月17日を見る。
ゆうみ「・・・」
〇 トンネル内(深夜)
トンネル内の落書きを見ている全身黒ずくめの人物。
〇 校庭(日替わり・朝)
サッカーの授業をしている1組の男子。
体育教師(男)「パス練習」
「ピッ!」ホイッスルの音でペアを作り、パス練習を始める生徒たち。奇数で1人残った唱。
唱「(また2人組だ・・・)」
体育教師(男)「野呂さんは、先生とやろう」
唱「お願いします」
〇 体育館(朝)
バスケの授業をしている1組の女子。
体育教師(女)「パス練習」
「ピッ!」ホイッスルの音でペアを作り、パス練習を始める生徒たち。奇数で1人残ったゆうみ。
体育教師(女)「清原さんは・・・(あるペアを指さし)あそこの組入ろうか」
ゆうみ「・・・はい」
〇 大食堂(昼)
給食の時間。3年生全員がクラスごとのテーブルに分かれて食べている。
× × ×
黙々と食べているゆうみ。少し離れた位置に壮亮。漣(15)と凛太朗(15)と喋りながら食べている。
凛太朗「引退試合の時より、今日の方が調子よかったろ」
漣「それはガチよりのガチ」
壮亮「全然本調子じゃねえわー、現役だったらあと2点はドリブル突破で行けたわー」
壮亮、喋りながらさりげなくゆうみを見ている。
ゆうみ「(黙々と食べている)」
ゆうみから、少し離れた位置に唱。
ゆうみ、ちらっと唱を見る。周囲など全く気にせず、黙々と食べている唱。
ゆうみ「(少し共感)」
〇 3年1組教室(昼休み)
教室に戻ってくる唱。室内には数人の生徒。その中に、机に伏せて寝ているゆうみ。
唱「・・・」
× × ×
数分後。起きるゆうみ。ふと横を見ると、机に伏せて寝ている唱。
ゆうみ「(少し共感)」
再び机に伏せ、寝るゆうみ。
横並びで机に伏せ寝ている唱とゆうみ。
〇 流山中学校・外観(昼)
5時間目開始のチャイムが鳴る。
〇 3年1組教室(昼過ぎ)
国語の授業。寝落ちしている唱。
唱「(小さな寝息)」
ゆうみ「(赤ちゃん並みに寝るじゃん・・・)」
国語教師「隣の人と話し合って。ヒアウィーゴ―」
ペアワークをはじめる生徒たち。唱が寝ているので、なんとなく教科書を眺めていると。
国語教師「(ペアワーク)やって下さい」
ゆうみ「寝ているので・・・」
国語教師「起こしなさいよ」
ゆうみ「・・はい。(唱に)起きて」
起きない唱。
国語教師「もっと強く言いなさい!(大声で)ウェイクアップ!」
目を覚ます唱。
唱「あ!?え、もう英語?今6時間目!?」
国語教師「・・・まだ5時間目の国語です」
クスクス笑う他の生徒達。
ゆうみ「(笑み)」
〇 スーパーマーケット・店内(夜)
スナック菓子コーナーの棚を見ているゆうみ。
× × ×
レジで会計しているゆうみ。かごの中には、チョコやガムが沢山入っている。
〇 同・出入口(夜)
エコバックに商品を入れ、店から出るゆうみ。すると出口で買い物を終えた唱と偶然鉢合う。
ゆうみ「うわ」
唱「あ」
〇 帰り道で通る公園(夜)
家の方向が同じなので、なんとなく一緒に歩くことになる唱とゆうみ。
ゆうみ「(唱の方を振り返る)」
唱「・・・俺も家こっちだから」
ゆうみ「・・・」
唱「・・・」
ゆうみ「(唱のレジ袋を見て)それなに」
唱「え、ああ今日の晩メシ」
レジ袋の中を見せる唱。
ゆうみ「(レジ袋を見て)サラダ買いなよ」
唱「弁当に付いてるよ」
唐揚げ弁当の小さなサラダスペースを強調する唱。
ゆうみ「1日分の野菜足りてないよ」
唱「1日分の野菜って両手3倍分だからね」
ゆうみ「そうなの?」
唱「無理だよ、食べるの」
ゆうみ「・・・(たしかに)」
唱「そっちは?何買ったの」
× × ×
鉄棒に手を掛け、逆上がりをしようとする壮亮。
壮亮「(恐怖心でためらう)」
すると唱とゆうみが話しながら、歩いているのを目撃する壮亮。
壮亮「・・・」
〇 通学路、ある小売店(深夜)
辺りを気にする黒ずくめの人物。人通りがないことを確認。周囲に防犯カメラが無い事も確認。シャッターにグラフィティアートを描き始める。
× × ×
翌朝。店のシャッターに大きな落書き。
× × ×
落書きをされた店の店主に聞き込みをしている緒方。
店主「防犯カメラ無いのよー、防犯ステッカーは貼ってあるけど」
緒方「ステッカーでは、もう防犯になる時代じゃないっすよね」
店主「そうよーむしろ防犯カメラはないから、ステッカー貼ってますよ、って言ってるようなものよ」
緒方「そんな悲しい事、言わないで下さい」
店主「悲しいわよ!こんな落書きされて。すごくアーティスティックな描き方なのが、またなんとも・・・」
緒方「こういうのはアーティスティックとは言わないですよ」
店主「言ってないわよ!落書きにしてはって意味でよ!こんな落書き認めるわけないでしょ!犯人捕まえてよ!」
緒方「すいません・・・」
少し離れた所から、自転車を止め、落書きを見ている野呂警児(50)。
警児「・・・」
〇 3年1組教室(朝)
朝のホームルーム前。自席で自主学習をしているゆうみ。唱、登校してきて。
唱「おはよう」
ゆうみ「・・・おはよ」
直後、ゆうみの前へ来る壮亮。
壮亮「清原さ、放課後空いてる?」
ゆうみ「え、なに」
壮亮「話しあってさ、あの」
ゆうみ「え、なに」
壮亮「それをね、放課後に」
ゆうみ「え、ほんとなに」
壮亮「いや・・・じゃいいよ」
自席に戻る壮亮。
ゆうみ「・・・」
再び自主学習をするゆうみ。
唱「・・・」
○ 流山中学校・外観(夕)
帰りのホームルームのチャイムが鳴る。
〇 3年1組教室(放課後)
ホームルームが終わり、足早に教室を出るゆうみ。
壮亮「(ゆうみを気にしている)」
唱「(ゆうみと壮亮を見ている)」
伊沢「野呂さん」
教壇へ向かう唱。
伊沢「進路についてなんだけど」
唱「あっ」
伊沢「転校してきたばかりで、大変だとは思うけど、願書提出も迫っているから」
唱「決めなきゃですよね・・・」
〇 昇降口(放課後)
下校する唱。すると壮亮が近づいてきて。
壮亮「ちょっといいか」
唱「!?」
〇 河川敷(夕)
江戸川沿い。対面している唱と壮亮。
壮亮「(身体をモジモジさせている)」
喧嘩前のウォーミングアップにも見える壮亮の様子。
唱「(喧嘩?転校生だよ、勘弁してよ・・)」
壮亮「・・・清原と付き合ってるの?」
唱「え」
壮亮「付き合ってはない?」
唱「うん。え?」
壮亮「でも距離感近けーよね」
唱「それは隣の席だから」
壮亮「そこの距離じゃねーよ」
唱「・・・ごめん」
壮亮「てかおまえがどういう状況だって、俺に脈がないことには変わんねえな」
唱「・・・」
× × ×
土手に座っている唱と壮亮。
唱「(これは・・・どういう状況?)」
壮亮「うおおおぉ・・・(と悶える)」
唱「大丈夫?」
壮亮「おかしくなりそうだ」
唱「・・・どこが、好きとかあるの?」
壮亮「あ?」
唱「・・・ごめん」
壮亮「・・・自分をちゃんと持ってる感じ。俺にはないから」
唱「そうなんだ」
壮亮「あと大人っぽい感じ。俺にはないから」
唱「うん(まだ言うの?)」
壮亮「あと何考えてるか、俺には分からないミステリアスな感じ。俺にはないから」
唱「うん(どこまで言うの?)」
壮亮「あと目。ほんと目がキレイ」
唱「・・・門間君も目、きれいだよ」
壮亮「あ?」
唱「ごめんごめん、冗談」
壮亮「冗談なのかよ」
唱「でも、いきなり聞いてそんなに好きな所出るのすごい」
壮亮「好きだから。おまえはどうなんだよ、好きな人」
唱「いないよ。転校生だし」
壮亮「関係ねえだろ、気になってる人は?」
唱「いないいない」
壮亮「清原は?気になってもないの?」
唱「え、ないよ」
壮亮「は?今のなんの、え、だよ!」
唱「ほんとに、ほんとに!」
なんだか楽しそうな2人。
〇 マンション・エントランスのポスト(夜)
ポストの中を確認するゆうみ。都内の私立高校の願書が届いている。ゆうみの第一志望の高校の願書だ。
ゆうみ「(気が締まる)」
ポストにはもう1枚入っている。見ると、「その悩み、捜査します」というキャッチコピーの探偵事務所のチラシ。
ゆうみ「(軽く見て、横のごみ箱に捨てる)」
〇 唱の自宅・リビング(夜)
台所でぎこちなく料理をしている警児。テレビを見ながら、横目で警児のことを気にしている唱。
唱「(大丈夫?・・・)」
警児「おっけーい」
テーブルに料理を並べ始める警児。
警児「ご飯だ、ご飯」
まずはボウル一杯のサラダを出す警児。
警児「緑食えー野菜食え」
唱「こんな食べれない」
警児「いつも食ってないんだから。貯金、野菜の体内貯金」
唱「野菜は貯金にならないよ」
〇 ゆうみの部屋(夜)
受験勉強をしているゆうみ。部屋の外から。
ゆうみ母(声)「ごはん、置いとくよ」
ゆうみ「うん、ありがと」
勉強が捗らず、ノートにペンで、グシャグシャと落書きをするゆうみ。
〇 流山中学校・校門近く(深夜)
ある壁を見ている黒ずくめの人物。手にはスプレーなどが入っているカバン。
× × ×
朝。校門横の壁に落書き。人がゴミの山に火を投げ、燃やしているようなグラフィティアート。
× × ×
ゆうみ、通りかかると生徒達の群れ。どんどん集まってくる生徒たち。
「集まってこない!」、「教室入りなさい」などと注意する教師ら。
教頭らと話している警官・緒方。
ゆうみ、落書きを見ていると。
唱「(落書きを見て)うわ」
ゆうみ「(唱に気づく)」
唱「落書きのクオリティじゃない。バンクシーのクオリティ」
ゆうみ「は?」
唱「知らない?バンクシー」
ゆうみ「だから?」
唱「だからバンクシーに憧れてる人が描いてるのかなって。それともバンクシー本人?」
校内へ入って行くゆうみ。
〇 美術室(朝)
美術の授業。模造紙にデッサンをしている生徒たち。校門横の落書きを真似るように描いている壮亮。
凛太朗「(壮亮の絵を見て)さっきのじゃん」
漣「壮亮上手っ」
壮亮「バンクシーの模倣だよ」
凛太朗「なにバンクシーて」
漣「バウンディ?」
凛太朗「それ歌手。怪獣に花唄歌わせる人」
漣「あれって、怪獣を手懐けた歌なの?」
壮亮「画家。バンクシー。正体不明の路上アーティスト」
ゆうみにも聞こえるボリュームで、バンクシーの雑学を語っている壮亮。
全く気にも留めず、絵を描いているゆうみ。生徒たちの絵を見ている伊沢。壮亮の絵を見て、立ち止まる。
伊沢「・・・」
× × ×
唱とゆうみが描いているテーブル。
唱「(ゆうみの絵を見て)上手いね」
ゆうみ「別に」
唱「(うまく描けず)ああーーー」
唱の絵を見るゆうみ。
ゆうみ「(リアクションに困る・・・)」
唱「すごいよ、ここからさらに、絵の具でより作品壊れていくから」
ゆうみ「誇ることじゃない」
唱「あの落書きの絵」
ゆうみ「え(描く手が止まる)」
唱「もったいないよな。もっと別の所で描けばいいのに」
ゆうみ「(絵を描き続ける)」
〇 公園(夜)
人目を気にしながら逆上がりの練習をしている壮亮。何度もトライしようとするが、恐怖心で回ることが出来ない。
唱「何してるの」
壮亮「うおぉ!?」
× × ×
鉄棒に寄りかかりながら、話している唱と壮亮。
壮亮「むしろ得意だったんだけど、小3のときに連続逆上がりやってたら、頭から落ちたのよ。それ以来出来なくなって」
唱「そうなんだ」
壮亮「今だったら出来るかなと思って、最近練習してるんだけど、やっぱ怖いな」
唱「それは怖いよ」
壮亮「絶対言うなよ」
唱「言わないよ。言う人もいないし」
壮亮「清原ゆうみがいるだろ」
唱「え?」
壮亮「仲いいじゃん」
唱「それは席が・・・」
壮亮「近いだけじゃねえよ。おまえらは」
唱「え?」
壮亮「お互い転校生だからかー」
唱「ん?そうなの?」
壮亮「ちょうどおまえの1年前だよ。清原が転校してきたの」
唱「・・・転校生なんだ」
壮亮「今年クラス一緒になってさ。ほとんど話したこと無いのにどんどん好きになって」
唱「おお」
壮亮「で、2学期のはじめに席隣になってさ!だからと言って、喋れたわけじゃないんだけど、でもペアワークのとき、俺全然できないのに、優しいんだよ!」
唱「出た、ペアワーク」
話が止まらなくなっていく壮亮。
〇 ゆうみの部屋(夜)
勉強の休憩中。ベッドで横になり、スマホでバンクシーの絵を見ているゆうみ。
〇 通学路近くのある道(深夜)
黒ずくめの人物、周囲に人がいないのを確認し、かばんからスプレーを出そうとすると、遠くから人影。
黒ずくめ「!?」
自転車に乗った警児が向かってくる。
黒ずくめ「(警児に気づき、立ち去る)」
何事もなく、自転車で走っている警児。
〇 あるマンションのポスト(深夜)
各ポストにチラシを入れている警児。
〇 唱の自宅・リビング(朝)
寝起きでリビングにやってくる唱。テーブルに突っ伏して寝ている警児。
唱「・・・」
× × ×
制服に着替え、玄関を出る唱。
依然、テーブルに突っ伏して寝ている警児。毛布がかけられている。
〇 3年1組教室(朝)
ホームルーム前。唱の前に来る壮亮。
壮亮「ういすー」
唱「おはよう」
横席のゆうみを意識してしまう壮亮。
壮亮「・・・おまえんちって探偵?」
唱「え?」
チラシを出す壮亮。そこには「その悩み、捜査します」のキャッチコピーのチラシ。探偵会社名は「野呂探偵事務所」と記載されている。
唱「(チラシの存在を知らず)!?」
壮亮「野呂って。野呂だろ、おまえ」
ゆうみ「(あのチラシ、そうだったんだ・・・)」
唱「・・・父親が探偵なんだよね」
壮亮「すげー」
唱「全然。そのせいで引っ越したし」
壮亮「引っ越してきたのは事件とかで?」
唱「いや、親が離婚して。それで」
壮亮「・・・ごめん」
唱「いやいや。親が探偵っていうのもねー」
ゆうみ「・・・」
〇 美術室(朝)
美術の授業。絵を描いている唱とゆうみ。
ゆうみ「家にもチラシ入ってた」
唱「どこまで配ってるんだ・・・」
ゆうみ「探偵ってどんな仕事なの?」
唱「え?浮気、不倫、二股の調査とか」
ゆうみ「それって違いあるの」
唱「知らない」
ゆうみ「将来は探偵になるの?」
唱「え、いやいやいや・・・」
○ 3階建てのアパート・入口(昼)
203号室のポストには「野呂探偵事務所」の表札。
○ 同・唱の自宅・リビング(昼)
依頼主の女性と対面している警児。
警児「では浮気の方を・・」
依頼人「不倫です。主人はそいつと肉体関係を持っています。その証拠を掴んで下さい」
警児「・・・失礼いたしました。では不倫調査ということで進めさせていただきます」
〇 公園(夜)
買い物帰りの唱。公園を横切ると、鉄棒に寄りかかり、うなだれている壮亮を目撃し。
唱「おう」
壮亮「・・・撃沈した」
唱「え?」
× × ×
ベンチに座っている唱と壮亮。
壮亮「分かってたけどさ、まあ・・・」
唱「すごい」
壮亮「え?」
唱「告白できたことない、俺」
壮亮「俺も初めてだよ。初が撃沈・・・」
唱「告白の成功率って4割らしいよ」
壮亮「なんだよ、その慰めにも嫌味にも取りづらいビミョーな数字」
唱「いや、慰めのつもりで・・・」
壮亮「でも何か、勇気のレベルはかなり上がった気がする」
唱「うん」
壮亮「試合のときの勝負強さも、二段階くらい上がった気がする」
唱「いいね」
壮亮「でもやっぱ辛れえああー!(と鉄棒を掴み、勢いで逆上がりをする)」
唱「(逆上がりが出来たことに)あ」
壮亮「え・・・今、出来たよな?」
唱「うん」
壮亮「(うれしさで叫ぶ!)」
唱「すごい」
壮亮「告白して、フラれたら、出来た!?」
2人して喜ぶ唱と壮亮。
壮亮「あのさ!・・・」
唱「?」
〇 河川敷(深夜)
高架下の壁に落書きをしている黒ずくめの人物。
× × ×
横のゴミの山に、ライターで火をつける黒ずくめの人物。
× × ×
燃えるゴミの山。異変から、近くのホームレスがテントから出ると
ホームレス「え、あああ!?」
川の水などを利用し、なんとか消火しようとするホームレス。
× × ×
朝。パトカー数台が止まっている。現場検証をしている刑事ら。その中にホームレスに話を聞いている緒方。
壁には、人がゴミの山に火を放っているようなグラフィティアートの落書き。
○ 流山市内・景観(夜~朝)
夜から朝に変わっていく街並み。
○ 通学路近くの道(朝)
制服姿の壮亮。だが学校とは反対の方角に歩いていく。
〇 3年1組教室(朝)
朝のホームルーム中。壮亮の席は空席。
唱「(壮亮のことを気にしてる)」
ゆうみ「(壮亮のことを気にしてる)」
× × ×
授業中。すると窓際の席の凛太朗が。
凛太朗「ん、煙?」
漣「マジじゃん!?火事」
窓に向かう生徒たちの視線。
〇 同・校門近くの道(朝)
道路に面したゴミ捨て置き場から火が
出て、燃えている。それは校門横に描かれた落書きと、同じような描写だ。
× × ×
夕方。スマホで落書きを撮影している女子高生たち。それを注意する緒方。
緒方「はい、撮らない!どうせ撮ったって見返さないだろ!」
「インスタ用だしー」、「今ビーリアル来て!」などとふざけてる女子高生ら。
〇 3年1組教室(日替わり・朝)
朝のホームルーム。昨日の放火事件について喚起している伊沢。
伊沢「皆さんも気を付けて下さい」
唱「・・・」
ゆうみ「・・・」
× × ×
ホームルーム後。美術室へ向かう生徒達。壮亮の所に凛太朗、漣やってきて。
凛太朗「壮亮、昨日どうしたの?」
壮亮「いや、普通に体調崩してさー」
漣「まじか、もうちょいで皆勤賞だったのに」
壮亮「別に狙ってねえし。あんなもん取れれば出し。てか皆勤賞って必要あるか?」
○ 美術室(朝)
美術の授業。絵を描いている唱とゆうみ。
唱「絵を注目してもらうために、燃やした」
ゆうみ「なに?」
唱「落書き。絵を評価してもらいたくて、でも皆は落書きとしか思ってくれなくて、だから落書きの通りに、事件を起こした」
ゆうみ「それ推理?やっぱり探偵になりたいんだ」
唱「・・・いやあ」
○ 大食堂(昼)
給食の時間。壮亮、凛太朗、漣が喋りながら食べていると。
壮亮「(見られてる?)」
他クラスの生徒から視線を感じる壮亮。
○ 校庭(昼休み)
3人でサッカーをしている壮亮、凛太朗、漣。時より他の生徒からの視線を感じる壮亮。
壮亮「・・・なんかあった?」
凛太朗「え?」
壮亮「いやあ、すげえ見られてるというか、ザワザワされてる感じが」
漣「・・・壮亮、なんで休んだの」
凛太朗「いいだろ・・・」
壮亮「ん?」
漣「この前、校門近くのゴミ捨て場で放火あった日」
壮亮「ああ、あの日なのか、放火あったの」
漣「壮亮がやったんじゃないかって」
壮亮「え、待て待て。なんで」
漣「描いてただろ、美術の時間。校門前の絵」
壮亮「え?あー、え!それで?」
漣「・・・じゃあなんでその日休んだの?」
壮亮「それは・・体調悪くて」
漣「その日、壮亮があの辺歩いてたの見たって人もいるんだよ」
壮亮「・・・なんだよそれ」
凛太朗「なわけないだろ」
漣「あいつならやりかねないって、言われてるんだよ」
壮亮「・・・は?どんなこじつけだよ・・・」
険悪なムードの3人。
○ 公園(夜)
公園を通る唱。鉄棒のところには誰もいない。
唱「(壮亮が気になる)」
○ 通学路、ある小売店(夜)
シャッターに描かれた落書きを見ている唱。
○ 河川敷(夜)
壁の落書きを見ている唱。
〇 トンネル内(夜)
トンネルの壁に描かれた落書きを見に来た唱。するとそこには、落書きを見ている伊沢。
伊沢「(唱に気づき)野呂さん?」
唱「あ・・・こんばんは」
伊沢「こんばんは。何してるの?」
唱「散歩してて・・・先生は?」
伊沢「これから帰るところ。少し気になってしまって・・・」
唱「え?」
伊沢「いや、美術をやっている端くれとして、見入ってしまって・・よくないね、落書きなのに」
唱「・・・」
伊沢「もう遅いから、野呂さんも気を付けて」
唱「・・・はい」
○ 大食堂(昼)
給食の時間。黙々と食べている壮亮。
凛太朗「(壮亮を気にしている)」
漣「(壮亮を気にしている)」
ゆうみ「(壮亮を気にしている)」
唱「(壮亮を気にしている)」
○ 廊下(昼休み)
教室へ向かっている壮亮、凛太朗、漣。通り過ぎる生徒たちの視線が気になってしまう壮亮。
壮亮「(皆が自分の噂をしているような感覚)」
凛太朗「気にすんな」
漣「・・・」
漣、SPが警護対象者を守るような立ち位置になり、壮亮を生徒達の目線から隠す。
漣「おれSP向いてるかもなー」
凛太朗「あ、SPなんだ。コミケの行列を規制してる係員さんかと思った」
漣「おまえぶっ飛ばすぞ!」
壮亮「(ありがとう)」
〇 美術準備室(放課後)
壮亮の描いた絵を見ている伊沢。
伊沢「・・・」
〇 校門近くの道(夜)
茂みから校門を見ている唱。全身黒ずくめでマスクをしている。巡回中の緒方、不審者だと思い、声をかける。
緒方「こんばんは、ちょっといいですか」
唱「(緒方に気づき、マスクを外し)」
緒方「おお!君か」
唱「・・・張り込んでるんです」
× × ×
スナック菓子を食べて、伊沢が出てくるのを待っている唱。
× × ×
受験勉強として教科書を読みながら、伊沢を待っている唱。だがすぐ飽きる。
× × ×
眠気と寒さに耐えながら、伊沢を待っている唱。すると校門から出てくる伊沢。
唱「(ようやく!?)」
時計を確認すると、時刻は21時。
唱「(こんな時間まで・・・)」
〇 通学路~駅までの道のり(夜)
駅へ向かう伊沢を尾行している唱。
× × ×
壁のグラフィティアートの落書きで立ち止まり、見ている伊沢。その姿を見ている唱。その背後で、唱を追う人影。
〇 駅前(夜)
伊沢を尾行している唱。すると。
男「なにやってんだ」
唱、振り返ると、自転車に乗った警児。
唱「うわ!?」
警児「せめて自転車で尾行してる奴には気づけ」
唱「うるさい」
警児「(伊沢を見て)探偵ごっこか、あの人は違う」
唱「なにが?」
警児「感覚で分かる」
唱「え?」
警児「肌感覚で分かる」
唱「なにそれ」
警児「ご飯作ったから、帰るぞ」
唱「・・・」
警児「いいから。ご飯作ったから」
帰路へ向かう唱と警児。ふと後ろを振り返る伊沢。
伊沢「・・・」
〇 3年1組教室(昼休み)
自席で話している唱とゆうみ。
ゆうみ「先生、尾行したの?」
唱「尾行っていうか、なんというか・・・」
ゆうみ「尾行。はっきり言うとストーカー」
唱「・・・」
ゆうみ「なんで知り合いの中から犯人探しするかな。探偵とか、中学生とかって」
唱「え?」
教室に入って来る壮亮にザワザワする数名の生徒。
壮亮「(視線を感じるが、気にしない)」
ゆうみ「人の噂だけで事実って決めつけるの、ほんと悪だよ」
唱「・・・」
〇 通学路、ある小売店(放課後)
歩いている唱。途中、シャッターの落書きを消している店主を目撃する。
唱「・・・」
唱、一度は通り過ぎるが引き返して。
唱「あの・・・」
店主「はい?」
唱「手伝えることありますか」
× × ×
店主と一緒に落書きを消している唱。
店主「ありがとうね」
唱「いえ」
× × ×
夜。シャッター前を通りかかる黒ずくめの人物。
黒ずくめ「!?」
落書きはかなり消えている。
黒ずくめ「(怒り)」
〇 唱の自宅・リビング(夜)
ご飯を食べている唱と警児。
唱「・・・あのさ」
警児「?」
唱「・・・犯人、どうやったら捕まえられる?」
警児「ん?何を言ってんだ」
唱「同級生、疑われてるんだ」
警児「・・・」
〇 流山中学校・校門(日替わり・夕)
校内へ入ろうとする警児。校門前には警備員。
警備員「ご用件は」
警児「探偵です」
警児を止める警備員。
警児「あ、(保護者プレートを出し)保護者です」
〇 応接室(夕)
伊沢、教頭、警児が話している。
「探偵 野呂警児」と書かれた名刺を見ている教頭と伊沢。
警児「野呂警児です。探偵です」
教頭「・・・」
警児「探偵です」
教頭「分かりました」
警児「あ、名前が警児(刑事)なので、混同してしまう方もいて、探偵と2回言いました」
教頭「はい」
警児「あ、3年1組の野呂唱の親です」
伊沢「いつもお世話になっております」
教頭「で、お問い合わせいただいた件ですが」
警児「予言の落書きの件、私の方でも調査できればと思いまして」
見積書を提示する警児。
教頭/伊沢「・・・?」
警児「校門横の落書きも拝見しました。一刻も犯人を捕まえないと、より被害は深刻に」
教頭「(見積書を指し)これは?」
警児「通常の見積もりよりも、だいぶお値引させてもらっています。息子が通ってるのもありますし」
教頭「ん、私たちに営業をしてます?」
警児「営業って言い方はー。世間的に見るとそうかもしれません。ただ、ココとココの間柄があるからといって、ボランティア的な関わりをすると、逆に関係性が崩れることってあるじゃないですか。友人同士だったのに、いや友人同士だからこそ、対価を曖昧に、仕事が絡んだ関わりをした途端、関係性が崩れて、二度と・・」
教頭「私とあなたは友人ではないですよ」
警児「それは・・・そうですよね」
教頭「はい」
〇 昇降口(夕)
唱、帰ろうとすると、職員出口から出てくる警児を見かけ。
唱「え!?」
警児「(唱に気づき)おお」
唱「なにしてるの?」
警児「調査だよ、調査。予言落書き事件の」
唱「・・・営業したでしょ、学校に」
警児「んん?」
唱「やめてよ、恥ずかしいなー」
そこに通りかかるゆうみ。
ゆうみ「(唱と目が合い)え・・・じゃあ」
唱「じゃ・・また明日」
警児「(話を逸らすように、ゆうみに)お友達?」
ゆうみ「え・・・はあ」
〇 通学路~自宅までの道(夕)
歩いている唱、ゆうみ、警児。
警児「隣の席なのか、唱の」
ゆうみ「はい」
警児「迷惑かけられてない?こいつ勉強できないし、しないから」
唱「いいから」
ゆうみ「まあ」
警児「だよね、ごめんね、しかも受験もあるこんなタイミングに転校してきて」
唱「それは父さんのせいだろ」
警児「・・・すまない」
ゆうみ「・・・私も転校生なので。1年前にですけど」
警児「そうなのか。唱と仲良くしてくれてありがとうね」
分かれ道。
ゆうみ「私こっちなので」
警児「よかったらお茶でも。お菓子出すよ」
ゆうみ「え」
唱「(警児に)もういいから」
警児「転校してから、唱が家に友達呼ぶなんてことまだないから」
ゆうみ「・・・」
警児「それに探偵事務所、入ったこと無いでしょう」
ゆうみ「・・・まあ」
○ 3階建てのアパート・入口(夕)
歩いている唱、ゆうみ、警児。
203号室のポストに「野呂探偵事務所」の表記。
〇 同・野呂探偵事務所(夕)
(室内は唱の自宅・リビングと部屋と全く同じ)。
棚には「名探偵コナン」、「金田一少年の事件簿」など、探偵モノの漫画がずらりと並んでいる。眺めているゆうみ。
ゆうみ「(探偵漫画しかない・・・)」
× × ×
警児「どう」
事務所宣伝用の自撮り動画をゆうみに見せる警児。
ゆうみ「・・・どうなんですかね」
唱「それ聞きたかったから呼んだんだろ」
警児「まずはアカウント作って、この動画を流そうと思ってるんだ」
ゆうみ「すいません、私も疎いので」
警児「そうかー、でもこんなの流したところで、タピオカ飲みながら踊ってみた動画に埋もれて終わりだよなー」
唱「変に混ざってるから。タピオカと踊ってみたは別だから」
警児「それに、いくらクオリティが良くても、既に世の中にあるもの作っちゃ、世間にとっては必要ないモノなんだよ。だって私がiPhoneを自作で作れても、需要ないだろ?」
唱「え、なに?」
警児「世間が必要としてる、違うモノを生み出さなきゃ。バンクシーに似たモノ描いたって、そりぁ評価されない」
ゆうみ「・・・」
警児「これはアイツに言ったんだよ、予言落書きの犯人」
唱「んどういうこと?」
警児「私も頑張るべきところは、ティックトックではないな」
唱「・・・」
ゆうみ「・・・」
○ 公園(夜)
連続逆上がりをしている壮亮。買い物帰りの唱、通りかかり。
唱「壮亮」
壮亮「おおっ」
× × ×
ベンチに座っている唱と壮亮。
壮亮「逆上がりだけが、今の俺の気分転換」
唱「・・・言わなくていいの?」
壮亮「え」
唱「言ったら誤解、解けると思う」
壮亮「でもな・・・」
公園内を通りかかるゆうみ。
唱「あ」
壮亮「あ」
ゆうみ「(2人に気づいて)あ」
× × ×
ベンチに座っている唱とゆうみ。鉄棒に寄りかかっている壮亮。
唱「今日ごめんね。父さん、意味わかんなかったでしょ」
ゆうみ「いえいえ」
壮亮「え、何?」
唱「今日家来てくれて。いや入れてしまって」
壮亮「おまえら!?ズブズブじゃねえか」
ゆうみ「色々意味履き違えてる」
唱「うん、ほんとに!」
壮亮「・・・まあ、もう俺なんか・・・犯人候補にもなってるし」
ゆうみ「それさ、ほんとクソだよ。言ってる奴らが」
壮亮「・・・ありがとう。でも一度言われちゃったら、もう消えないからさ」
ゆうみ「・・・大丈夫、この人探偵だから」
唱「え!?・・・うん、俺は壮亮がやってないの知ってるし」
自転車に乗った警児、唱を見つけて。
警児「唱!」
壮亮「・・・誰?」
唱「父さん・・・」
壮亮「え!?探偵の!」
警児、やってきて。
警児「買い物行くって言って、全然帰ってこないから。ご飯作って待ってるのに」
ゆうみ/壮亮「こんばんは」
警児「お、ゆうみちゃん。さっきはどうも。(壮亮を見て)君も唱のお友達?」
壮亮「はい!」
唱「(うれしい)」
警児「(壮亮に)いつもありがとうね。(唱に)帰るぞ、ご飯作ったんだから」
唱「はいはい」
警児「皆も夜遅いから、帰りは気を付けて」
それぞれの方向へ帰っていく面々。
〇 トンネル内~家の近く(夜)
家へ向かって歩いているゆうみ。トンネル内に人影。落書きの色落ちした部分を、スプレーで塗り足している黒ずくめの人物。
ゆうみ「え・・・」
目が合うゆうみと黒ずくめ。来た道を引き返すゆうみ。すると付いてくる黒ずくめ。
ゆうみ「!?」
走って逃げるゆうみ。
〇 暗い路地(夜)
依然、走って逃げるゆうみ。途中、階段の段差で足を滑らせ、転倒する。
ゆうみ「!?」
立ち上がろうとするが、足を捻ってしまい、中々立ち上がれない。巡回中の緒方、数十メートル先のうずくまっている人影を確認し、自転車で直行。
緒方「(ゆうみに)大丈夫か!?」
震えているゆうみ。
〇 3年1組教室(日替わり・朝)
朝のホームルーム。連絡事項を伝えている伊沢。ゆうみの席は空席。
唱「・・・」
伊沢「ここのところ物騒な事件が増えています。特に夜間は気を付けるように」
× × ×
ホームルーム後。伊沢に駆け寄る唱。
唱「先生」
伊沢「うん」
唱「清原さんって・・・」
〇 通学路~ゆうみの家の近く(放課後)
分かれ道。一方を曲がれば、ゆうみの家だが。
唱「・・・」
もう一方を曲がり、自身の家へ向かう。
〇 ゆうみの部屋(夕)
受験勉強をしているゆうみ。
手と足数箇所に包帯をしている。
○ 流山中学校・校門前(朝)
天候は雨。登校しているゆうみ。
〇 3年1組教室(日替わり・朝)
教室に入ってくるゆうみ。未だ包帯をしている箇所はある。生徒達の視線がゆうみに集まっている。
自席に着席するゆうみ。
唱「おはよう」
ゆうみ「おはよ」
× × ×
朝のホームルーム後。ゆうみに駆け寄る壮亮。
壮亮「・・・大丈夫?」
ゆうみ「・・・うん、ありがと」
ゆうみに話しかけた壮亮に、ザワザワしている数名の生徒。
生徒1「(小声で)フラれたから、突き飛ばしたってマジ?」
生徒2「(小声で)それに落書きに注目してほしいから、火までつけたんだろ。承認欲求すげえな」
凛太朗「(大声で)なら本人に直接聞けよ」
漣「それ誰が言ってんの?」
生徒1「おれらも噂回って聞いただけで・・」
壮亮「・・・」
ゆうみ「・・・門間君じゃなよ。姿分からなかったけど、もっと全然大人な感じした。それに突き飛ばされたんじゃなくて、追いかけられて転んだの」
生徒1「・・・でも休んだ日にゴミ捨て場の近くで見かけたって・・・」
壮亮「あの日休んだのは・・・オーデイション受けて・・芸能事務所の」
一同「!?」
壮亮「・・・中学卒業したら、俳優になりたくて・・・それで・・ここなら受かるかもって事務所受けたら、その場で不合格って言われて・・・学校休んで受けたのに、落ちたの恥ずかしくて・・・言えなかった」
一同「・・・」
壮亮「それで休んだんだよ・・・」
凛太朗「その場で不合格言われるって・・ロクな事務所じゃねえ、クソ事務所だろ」
漣「・・落ちてよかった!落ちるべきだった!」
壮亮「え・・・」
唱「当日に合否出す芸能事務所は、レッスン料とかのお金目当てだから、受かっても気を付けろって、前の学校の先生も言ってた」
漣「すげーな!その先生!」
凛太朗「どんな学校だよ」
込み上げる想いが溢れる壮亮。
○ 流山中学校・外観(昼~夕)
雨が止み、陽が差し込む。そして夕方になり、帰りのチャイムがなる。
〇 3年1組教室(夕)
ホームルームが終わり、下校していく生徒達。自席で考え込んでいる唱。
ゆうみ「・・・帰らないの」
唱「うん、ちょっと」
× × ×
誰もいない教室。
ひとり、考え込んでいる唱。
○ 唱の自宅・リビング(夜)
防寒着に着替え、玄関に向かう唱。
警児「どこいくんだ」
唱「ちょっと、散歩」
警児「・・・気を付けて行けよ」
唱「・・・うん」
〇 路上~小売店~河川敷~校門前(夜)
それぞれの場所で描かれた落書きを見ている唱。時折、唱の後ろに人影。
〇 トンネル内(夜)
23時過ぎ。壁の落書きを凝視している唱。すると
警児「この時間に、中学生が1人での外出は禁止だ」
振り返るとそこには警児。
○ トンネル近くの茂み(夜)
茂みから、トンネル内の人通りを覗いている唱と警児。
警児「なぜここなんだ」
唱「清原が言ってた。犯人は、ここの落書きの色を塗り足そうとしてたって」
警児「うん」
唱「犯人は絵を注目してもらいたい。だから絵の通りに燃やしたりした」
警児「うん」
唱「えっと・・他の場所の絵も見たら、クオリティは、どんどん落ちてきてる気がして」
警児「警戒されて、絵にかけられる時間も減ってるだろう」
唱「うん。犯人の中では、ここの絵は特にお気に入りなんだよ。だから絶対にまた来る」
警児「(いい推理だな)」
× × ×
数時間後。トンネル内を見ている唱と警児。
唱「寒っ」
ホッカイロ数枚を唱に渡す警児。
警児「ホッカイロは張り込みの基本だ」
唱「あんまり路上で張り込みしてるの、聞いたことないけど。普通、車の中じゃないの?」
警児「それは物語の中の探偵だ。それに車売っちゃったし。これが現実」
唱「・・・」
警児「唱、ごめんな」
唱「え」
警児「迷惑かけて・・ごめんな」
唱「・・・うん。・・・誰か来る?」
警児「?」
トンネル内に入って来たのは、蛍光色のパトロールベストを着た伊沢。
× × ×
落書きを見ている唱、警児、伊沢。
伊沢「見回りといいますか、生徒も巻き込まれているので」
警児「すみません、うちの息子が疑ってたみたいで」
唱「・・・すいません」
伊沢「いえ・・じゃあやっぱりお2人ですか?先日、僕のこと尾行してたの?」
唱「え、気づいてたんですか!?」
警児「それも息子が。すみません」
伊沢「いや、僕も唱さんと偶然会った時に変な対応をしてしまったので」
警児「そうなんですか」
伊沢「実は昔、一緒に絵をやっていた子がバンクシー好きで。その子もバンクシーを模倣したような作品を描いてて」
警児「ほお」
伊沢「その子を思い出してしまって。あ!その子が犯人かもって訳では!気になってフェイスブック調べたら、海外で結婚して暮らしてました」
警児「あ検索したんですね」
伊沢「・・・しちゃいました」
警児「忘れられない片想いってありますよね」
唱「・・・。(警児に)ねえ?」
落書きの絵で立ち止まる黒ずくめの人物。手にはカバン。
目配せをし合う唱、警児、伊沢。
黒ずくめ「(落書きをじっと見ている)」
唱「・・・どうなの」
警児「・・・まだだ、確証がない」
カバンに手をかける黒ずくめ。
唱/警児/伊沢「!?」
その時、警児のスマホからメール着信音が鳴る。茂みの方を向く黒ずくめ。
警児「・・・うわぉ」
唱「なんでマナーモードにしてないの!探偵だろ!」
警児「何時も依頼メールを確認できるように」
唱「でもこういう時は別じゃん!」
警児「・・・ああっ!」
茂みから出る一同。黒ずくめと対面し。
黒ずくめ「(気づいて)!?」
警児「突然すみません、探偵です」
黒ずくめ「はい?」
警児「お仕事帰りですか」
黒ずくめ「はあ?」
警児「最近落書きや放火の事件起きてるじゃないですか。それでパトロールしてまして」
黒ずくめ「・・・」
警児「失礼ですが、かばんの中を見せてもらえませんか」
黒ずくめ「なぜ?」
警児「調査の一環です」
黒ずくめ「・・・任意ですか」
警児「探偵の調査には、任意は無いんですよ」
黒ずくめ「任意が無いなら、人のことは調べられないですよね?」
警児「(この野郎)」
黒ずくめ「帰るところで。いいですか」
警児「・・・」
伊沢「・・・あの」
黒ずくめ「(伊沢を睨む)」
伊沢「えっと・・その・・上着の袖」
黒ずくめ「あ?」
伊沢「絵描いてる人って、服に色がついてしまうじゃないですか。洗濯すれば落ちる事もありますが」
警児「(伊沢に)大丈夫か?」
伊沢「でも特に袖の裏って、ほんとに落ちない箇所なんですよ」
自身のシャツの裏地を見せる伊沢。絵の具汚れが軽くついている。
唱「ほんとだ・・・」
自身の袖に、目線が行く黒ずくめ。
伊沢「もし描いてないなら、色なんて付いてるはずがないんです」
警児「私より探偵らしいじゃないか・・・」
伊沢「袖裏だけでも見せてもらえませんか」
黒ずくめ「・・・」
伊沢「うちの生徒、巻き込まれてるんです」
黒ずくめ「・・・」
警児「カバンか袖裏、どちらかでいいんで見せ・・」
突如、走り去る黒ずくめ。
一同「!?」
追いかける面々。
〇 道(深夜)
黒ずくめを追っている一同。
唱「(こっちの道なら先回りできる!)」
迷うことなく走る唱。流山の街を知った証である。
× × ×
黒ずくめを追いかける一同。遂に三方に囲み、追い詰める。すると刃物を出す黒ずくめ。
唱「え・・・」
唱の方に対面する黒ずくめ。
警児「唱!」
刃物を突き出し、唱へ向かって走る黒ずくめ。
唱「!?」
黒ずくめ「(何かに気づき)!?」
自転車に乗った緒方が黒ずくめに突進。
黒ずくめ「(崩れ落ちる)」
黒ずくめを取り押さえる緒方。
緒方「(唱に)大丈夫か!?」
唱「はい・・・」
緒方、黒ずくめのマスクを取ると、誰も見覚えのない男・高橋(46)。
高橋「評価しろよ・・・平等に見ろよ・・・なんで俺だけ・・・(と呟く)」
無線で各位に連絡する緒方。
唱「(まだ少し呆然としている)」
警児「(唱に)大丈夫か、ごめんな」
緒方「23時以降の青少年の外出は、条例で禁止されてます。・・・今回は正当な理由があったとはいえ・・・」
唱「・・・ごめんなさい」
緒方「でも、ちゃんとした大人も同伴していたので」
警児「ありがとうございます」
伊沢「ご迷惑おかけしました」
緒方「(伊沢を見て)ん?あれ・・・」
伊沢「(緒方の反応に)え?・・・」
近づいてくるパトカーのサイレン音。朝日が出かかっている。
警児「(朝日に対して)うわお」
伊沢「朝・・あ、野呂さん、学校・・行ける?」
唱「はい、行きます」
〇 通学路(朝)
学校へ向かっているゆうみ。
〇 流山中学校・校門前(朝)
ゆうみ、歩いていると、校門前に唱が立っていて。
唱「(ゆうみに気づいて、ガッツポーズ)」
ゆうみ「(ありがとう)」
〇 流山市内・景観(日替わり)
○ 受験会場(日替わり・朝)
試験を受けているゆうみ。(包帯は全てとれている)
〇 唱の自宅・リビング(日替わり・昼)
PCで通信制高校・D校の入試結果を見ている唱。画面には「合格」の表示。
唱「おっ・うおぉ・・っしゃあーー」
〇 通学路~トンネル内(日替わり・昼)
学校の帰り道。唱、歩いていると、巡回中の緒方がやって来て。
緒方「もう学校終わり?」
唱「明日、卒業式なので」
緒方「おお、卒業おめでとう」
唱「ありがとうございます」
緒方「早いねー、もう卒業か」
唱「そもそも、まだ会って2ヶ月ですよ」
緒方「そうだった、転校生。ねえ、君の先生の名前って、伊沢先生?」
唱「はい。え?」
〇 ゆうみの部屋(日替わり・朝)
3月17日。卒業式当日。制服にスカーフを通しているゆうみ。壁掛けカレンダーの3月17日を見ている。
ゆうみ「・・・」
〇 通学路~ある小売店前(朝)
学校へ向かって歩いている唱。
途中、車道を挟んだ先で、店主が緒方に感謝している光景を目撃する。
〇 通学路~流山中学校前(朝)
唱、歩いていると。後ろから壮亮が。
壮亮「おう」
唱「おはよう」
× × ×
学校へ歩いている唱と壮亮。
壮亮「あっという間だったなー」
唱「ほんとに」
壮亮「・・・おまえいなかったらさ、こんな感じで、絶対卒業できてなかった」
唱「・・・」
壮亮「ありがとうな」
唱「こちらこそ」
〇 体育館(朝)
卒業証書の授与が行われている。
× × ×
保護者席にスーツ姿で座っている警児。その横には、唱の母で警児の元妻・南野恵(50)。
警児「ありがとうな」
恵「唱にご飯ちゃんと食べさせてる?野菜食べろとか言って、ボウル一杯の生野菜出してないでしょうね」
警児「(図星・・・)」
× × ×
壇上。卒業証書を受け取る唱。
× × ×
卒業生が退場している。拍手で送っている在校生や保護者ら。途中、保護者席に恵がいることに気づく唱。
唱「(恵に)!?」
唱に向かって、より強い拍手を送る恵。
唱「(ありがとう)」
〇 3年1組教室(昼)
式後。話している唱と伊沢。
伊沢「卒業おめでとう」
唱「2カ月にしては濃い生活でした」
伊沢「先生も2か月とは思えないよ」
唱「そうだ、先生も初日遅刻勢だったんですね」
伊沢「ん?」
唱「お巡りさんが言ってました。教育実習初日に遅刻したのは、流山中の教育実習生史上初だって」
伊沢「どうして!?え?お巡りさん?」
ゆうみを見かける唱。
唱「あ、また顔出しますね!」
ゆうみの方へ向かう唱。
伊沢「ちょ・・・あの警官の子!(と思い出し)・・・警官になったのか」
嬉しそうに唱の姿を見ている伊沢。
〇 昇降口(昼)
卒業生や保護者で賑わっている。校門へ向かっているゆうみ。追いかける唱。
唱「(追いついて)帰るの?」
ゆうみ「喋る人いないし」
唱「俺も」
ゆうみ「・・・」
唱「・・・」
〇 通学路~家までの道(昼)
歩いている唱とゆうみ。
ゆうみ「・・・ちょっと喜んでいい?」
唱「え?」
背伸びをし、思わず声を上げるゆうみ。
ゆうみ「地獄終わったー」
唱「・・・」
ゆうみ「あ、ずっとこの日待ってたの」
唱「そうなんだ」
ゆうみ「不登校になろうとも思ったけど、でもその分耐えたら、この日の快感、最高かもと思って」
唱「うん・・・」
ゆうみ「超快感、あー!」
唱「(ゆうみの姿に驚いている)」
ゆうみ「でも」
唱「?」
ゆうみ「最後の2ヶ月は早く感じた」
唱「・・・そうなんだ」
ゆうみ「ありがと」
唱「え」
ゆうみ「探偵になったら教えて。何かあったら依頼するね」
唱「まだなるって決めたわけじゃ・・・」
ゆうみ「そのときは割引よろしく」
唱「なんで」
ゆうみ「ココとココの関係性で」
唱「そこは依頼人と探偵の関係性だから」
ゆうみ「けち」
唱「てか、だったらさ・・あれ・・連絡先・・」
ゆうみ「あ交換?いいよ」
唱「お、おう」
ゆうみ「でも紙とペン」
唱「・・・あ!」
卒業品のボールペンと、卒業アルバムのメッセージ欄を見せる唱。
ゆうみ「おお」
お互いの卒業アルバムのメッセージ欄に連絡先を書き合う唱とゆうみ。
ゆうみ「この欄を使う世界線が私にあるとは」
唱「同じく」
お互い、連絡先を書き終わり。
ゆうみ「またね」
歩き去っていくゆうみ。どんどん遠くなっていくゆうみの姿。唱、走って近づき。
唱「絶対なるから!(叫ぶ)」
ゆうみ「・・・(振り返って)うるさい!」
再会を予感させる2人の姿。
唱M「これが探偵になったきっかけ」
タイトル「中学生探偵日記」
おわり
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