自分にやさしく #4 コメディ

都内で暮らす30代の男女4人が登場するコメディドラマ。 何でもない会話から、時々起こる事件まで、彼らの日常を描く。
Naoki 7 0 0 02/18
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第一稿

登場人物
陸  (33) 男、天然でバカ。
直人 (32) 男、皮肉屋。
ゆず子(33) 女、サバサバしてる。
沙紀 (32) 女、THE 女子。

Twitter: ...続きを読む
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登場人物
陸  (33) 男、天然でバカ。
直人 (32) 男、皮肉屋。
ゆず子(33) 女、サバサバしてる。
沙紀 (32) 女、THE 女子。

Twitter: @naokiisonline

携帯電話

〇タクシーの中
週末に旅行に来た直人、陸、ゆず子、沙紀の四人。
空港からタクシーに乗って市街地に移動中。

直人 「ゆず子、今何時?」
ゆず子「(携帯を出して)今は16時くらいね。」
直人 「ちょっと画面見せて、確かめたいから。」

ゆず子が呆れ顔でみんなに見えるように携帯の画面を見せる。

沙紀 「は、なにこれ、ゆず子の自分の写真?しかもウサ耳付けてる?」
直人 「そう!昨日トランプの賭けに負けて、罰ゲームで3日間待ち受けを自撮りにしてもらってんの。」
沙紀 「罰ゲームが高校生みたいなんだけど。」
陸  「いいじゃん。ウサ耳似合ってるよ。」
ゆず子「最悪。周りの人に待ち受け見られないように過ごすのって意外と大変なんだからね!」
運転手「みなさん観光ですか?」
直人 「そうです。初めてなんですよ。」
運転手「それはいいですね。ではこの土地で伝わる面白い話でもしましょう。このあたりは昔から急な雨が多くて、晴れてても傘を持って出かける人が多いんですよ。ある日、外から越してきたある男が出かけようとした時、近所の人に『傘は持った?』と聞かれたんですが、その日は快晴。男はこの地域に急な雨が多いことを知らなかったので、日除けのための傘かと思い『僕は気にしないです』と答えたんだ。それから彼は、近所で『雨を気にしない変わった人』という評判が立ってしまったんだ!あはははは!面白いよな!ははは。」

何が面白いのか分からず黙り込む一同。

陸  「あははははは!」

陸だけは何でも笑うので、笑っている。
それからしばらく経ち、目的地に到着。

運転手「はい、着きましたよ。」
ゆず子「ありがとうございます。意外と遠かったですね。」
運転手「そうですね。またのご利用をお待ちしています。」

一同、タクシーから降りる。

ゆず子「さっきの運転手の話、悪いけど衝撃的につまらなかったね。」
直人 「面白い話をしましょうって期待値上げたのも良くなかっと思う。小話をしましょうくらいに抑えればよかったのに。」
ゆず子「笑いのツボが合うって理由で結婚する人のこと理解できなかったけど、今ようやく意味がわかったわ。」
陸  「さて、さっさとホテルに荷物置いて観光行こうぜ!」
ゆず子「そうだね。えっと、ホテルの方向は。。あれ携帯がない。」
直人 「あるでしょ。ちゃんと全部ポケット見た?」
ゆず子「ポケットは見たよ。まずい、本当にない。タクシーに忘れたかも。」

みんなで隅々まで探すがゆず子の携帯は見つからない。

直人 「タクシーのレシート誰かもらった?」
沙紀 「いや私がお金払ったけど、もらってない。」
直人 「なんでもらってないんだよ!忘れ物した時に連絡できるように、タクシーのレシート貰うのは常識でしょ。上京する時に習わなかったのか?」
沙紀 「誰に習うの!?だいたいなんで私が責められなきゃいけないの!」
陸  「確かにそりゃ常識だ。タクシーのレシートはもらう、居酒屋のキャッチには付いていかない、この二つは上京するときに絶対覚えなきゃだめでしょ。」
ゆず子「まずい、帰りの飛行機のチケットがあの携帯に入っているから、携帯がないと帰れない!」
陸  「いやー、この旅が一気に面白くなってきたな。とりあえずビールでも飲みながらどうするか考えようぜ。」

○バー 店内
一同、ホテルに荷物を置いてきた。
バーでビールを飲みながら作戦会議をしている。

ゆず子「私のデータはともかく、帰りの飛行機のチケットが携帯に入っている以上絶対に探さないとね。」
直人 「だめだ、さっきからゆず子の携帯に電話かけまくってるが一向に出やしない。」
ゆず子「悪いけど定期的にかけてもらえる?タクシーに忘れたのであれば、いつか誰かが出てくれるはず。」
沙紀 「あとはもうすぐディナーの予約の時間になるわね。でもそんな場合じゃないよね。。」
陸  「でもあのレストランは超人気で、3ヶ月前から予約してるんだぞ?これを逃したら次いつ行けるか分からない。」
ゆず子「そうだけど、、あ!私の携帯をGoogleで追跡すればいいんだ!直人携帯貸して!」

ゆず子が直人の携帯でGoogleにログインすると、ゆず子の携帯の現在位置が表示できた。

沙紀 「すごい!やったね。で、今どこにあるの?」
ゆず子「ここからは少し離れた場所ね。移動してる。やっぱりタクシーの中だよ。」
沙紀 「どこに移動してるの?」
ゆず子「待ってこれ、空港の方に向かってる。そうか、この地域は空港へのアクセスがいいから、きっと私の携帯が乗ったタクシーは空港行きで進んでいるんだよ。」
直人 「じゃあ俺らもタクシーに乗って、空港に向かおう。」
陸  「でもレストランの予約に間に合わなくなる。もし遅れたらキャンセルされちゃうよ。」
直人 「じゃあ二手に別れよう。陸と沙紀は先にレストランに行ってくれ。後から二人遅れてくると言えば、キャンセルはされないだろう。」
ゆず子「よし、じゃあ早速私たちは通りに出てタクシーを捕まえよう。」

○レストラン
レストランに入る陸と沙紀の二人。

陸  「おーすげー!めっちゃおしゃれなレストランじゃん!」
沙紀 「ほんと、混んでるけどいい感じ!」

テーブルに案内されるが、他の2人を待つため注文はまだしていない。
15分ほど時間が経つ。

店員 「ご注文お決まりになりましたでしょうか?」
陸  「まだ友達が来てなくて、もう少し待ってもいいですかね?」
店員 「承知しました。」

店員去る。

沙紀 「何か頼まないと気まずくなってきたね。」
陸  「そうだな。さっき店員が『一体いつになったらお連れ様はいらっしゃるのですか?』の顔をしたのをおれは見逃さなかった。」
沙紀 「また店員がきたら飲み物だけでも頼もう。てか、ゆず子たち携帯見つけられたのかな。」

○タクシー車内
ゆず子と直人が空港に向かってタクシーに乗っている。

直人 「携帯を乗せたタクシーは順調に空港に向かっているね。空港で停車してる間に追いついて捕まえよう。」
ゆず子「そうね。頼むから空港で少し停まってくれー。」
運転手「お二人は旅行ですか?」
直人 「はい。今日着いたのですが、ちょっと色々あって一度空港に戻るんです。」
運転手「ここにくるのは初めてですか?」
直人 「はい、そうです。」
運転手「そうですか、じゃあきっと楽しい旅行になりますよ。せっかくだし少し面白い話でもさせてください。このあたりは昔から雨が多くて、晴れてても傘を持って出かける人も多いんですよ。ある日、外から越してきたある男が・・・」
直人 「(??)」
ゆず子「(嘘でしょ、最初のタクシーと同じ話?)」

全く同じ話をされて思わず笑ってしまう二人。

運転手「・・・ってなったんですよ。ね?あははははは!面白いでしょう!」
ゆず子「は、ははは。それは面白いですね。(話で笑ってるわけじゃないんだけど。)」

○レストラン

店員 「失礼します。ご注文お決まりになりましたでしょうか?」
陸  「じゃあ、飲み物だけ注文します。」
店員 「大変恐縮ですが、店内の調理状況のこともあり、お客様にはお料理もそろそろご注文いただきたいのですが。」
沙紀 「仕方ないわ。じゃあ料理も注文します。」

しばらくして料理が届き、すっかり食べ終わってしまった。
二人とも満腹そうで、陸は汗もかいて少し疲れている様子。

沙紀 「張り切って頼みすぎたね。でも本当美味しかった。」
陸  「うん、まじ美味しかった。食べすぎて苦しいよ。」
店員 「失礼します。お連れ様はいつごろいらっしゃいますでしょうか?」
陸  「まだもう少し遅くなるかもしれません。」
店員 「大変恐縮ですが、ご予約人数に応じたご注文をいただければと思うのですが。」
陸  「そんなルールでもあるんですか?」
店員 「ございます。大変恐縮ですが、当店の方針でして。」
陸  「じゃあ僕があと二人分食べます。それなら問題ないですよね?」
店員 「まあ、一応問題ありません。大変恐縮ですが、お客様すでに満腹のようですが、あと二人分もお召し上がりいただけるのでしょうか?」
陸  「あなた『大変恐縮ですが』を付けたらなんでも言っていいと思ってません?大丈夫です。食べられますから。これとこれください。」
沙紀 「陸、本気?」
陸  「大丈夫。お願いします。」
店員 「ありがとうございます。汗拭き用タオルでもお持ちしましょうか?」
陸  「大変恐縮ですが、余計なお世話です。」

○空港
直人とゆず子が乗ったタクシーが空港に着いた。

ゆず子「よし着いた。てか、この地域のタクシー運転手はあのつまんない話するのが義務付けられているわけ?」
直人 「ほんと、とんだミラクルだったな。さて、俺らが乗ってたタクシーはどこだ?」

空港には無数のタクシーが停まっている。

直人 「ど、どれだ?さすがにこの追跡画面も、これ以上細かく場所を差し示せない。空港のどこかにあるくらいのざっくりした位置しか分からないよ。」
ゆず子「ちょっと待ってこの大量のタクシーの中から探せっての?」
直人 「携帯はまだ動いていない。よし、停車中のタクシーを一つ一つ探していこう。運転手の顔をみればなんとなく思い出せるはずだ。」
ゆず子「待って。この追跡画面見ると、空港の外じゃなく中を差しているように見えない?」
直人 「本当だ。そうだ、もしかしたら運転手が携帯に気づいて、空港のインフォメーションセンターとかに預けたのかもしれない。」

インフォメーションセンターに移動。

ゆず子「すみません、今日タクシーで携帯を忘れたのですが、忘れ物でここに持ち込まれませんでしたか?」
係員 「確認します。はい、携帯電話でお預かりしているものはございます。どちらの機種でしょうか?」
ゆず子「iPhoneです。」
係員 「わかりました。セキュリティの関係で何点かお伺いしたいのですが、まず携帯の色は何色でしょうか?」
ゆず子「黒です。」
係員 「ケースはどんなものを付けていますか?」
ゆず子「犬の柄のケースです。」
係員 「はい、最後に念の為、待ち受け画面が何かお伝えいただけますでしょうか?」
ゆず子「待ち受けは、、」

待ち受けがウサ耳をつけた自撮りであることに気づくゆず子。

直人 「(笑)」
ゆず子「わ、私の、自分の写真です。」

係員が待ち受けの写真とゆず子の顔を並べて同じ人かどうか見比べている。
ゆず子は恥ずかしそう。

係員が隣の係員を呼んで二人で画面と顔を見比べ始めた。

係員 「(小声で)うん、多分と同じだけどこの辺がちょっと違うような気もする。」

ゆず子「(一人で判断しろよ!恥ずかしいな!)」

係員 「ちょっと手でこうやっていただけますか?」

係員は手でうさぎの耳のようにして頭に当てて欲しいと、ゆず子に頼む。

ゆず子「それいります?」
係員 「恐縮ですが、お願いします。」
ゆず子「もう、こうでいいでしょうか。(手でうさ耳を作る)」
係員 「ありがとうございます。確認が取れましたので、こちらはお返しいたします。」
ゆず子「ありがとうございます。最後のうさ耳はいらなかったと思いますけど。」
係員 「失礼しました。セキュリティですので。」
直人 「セキュリティですので。」
ゆず子「あんた張り倒すわよ。」

○レストラン

陸  「もうこれ以上食べれない。」
沙紀 「あたしも絶対無理よ。でもまだ食べ物全然残ってるし、どうする。」
陸  「あの店員に食べられると言った以上、残すわけにはいかない。そろそろゆず子たちがこっちに着くんじゃない?」
沙紀 「今携帯を回収してこっちに向かってる途中らしい。まだしばらくは来ないと思う。」
店員 「失礼します。お食事の方はいかがでしょうか?」
陸  「美味しいです。」
店員 「お連れさんは今日はいらっしゃらないですかね?大変恐縮ですが、お食事が終わりましたようでしたら、席をお譲り・・」
陸  「いや、まだ食べてますから。あ、もう着いたかもしれない。迎えにいかなきゃ。」

陸が携帯を見ながら席を立とうとする。

沙紀 「(まだ来てないでしょ?何言ってるの。)」
店員 「それはよかったです。では失礼いたします。」

店員がテーブルを去る。

陸  「外にいる適当な人を捕まえて連れてくる。」
沙紀 「嘘でしょ?」
陸  「いや、適当な人を連れてきてあくまで食事中ということをアピールして時間を稼ぐ。何としてもゆず子達がくるまでこの席を死守する。」

しばらくすると、陸が男二人を連れて店に入ってくる。
男は二人とも20代前半くらい。男1はややぽっちゃりの見た目、男2はモヒカンの髪型なので目立つ。

陸  「(ゆず子に向かって)はい、こちらお二人連れてきたよ。ちゃんと状況は理解してくれた。」
ゆず子「は、初めまして。」
陸  「座ってください。これ、食べかけもありますけど、食べてください。」
男1 「ありがとうございます〜。このレストラン一度入ってみたかったんですが、予約がいっぱいで入れなかったんですよ。」
陸  「ですよね。(男2に向かって)ところでモヒカン素敵ですね。かっこいいっす!」
男2 「(ゆず子に向かって)あ、あのあなたの食べてたのはどちらですか?」
陸  「(無視された。)」
ゆず子「え、こっちのドリアですけど。」
男2 「じゃあドリアもらいます!」
ゆず子「(ん、キモいな。)」
男1 「じゃあぼくこのステーキもらいますね。美味しそうだな。このレストランのステーキは昔から食べたいなと思ってたんですが、予約がいっぱいで入れなかったんですよ。」
陸  「あ、それはよかったです。(さっきとほぼ同じこと言ったなこいつ)」
ゆず子「私たちみたいな見知らぬ人と食事なんて付き合っていただいてすみません。」
男2 「いえ、あなたのことは昔から知っている様な気がします。そうだ、長澤まさみさんに似てるから知ってる気がするんだ。よく言われませんか?」
ゆず子「言われたことないです。」
男2 「えー、みんな言わないだけで絶対そう思ってますよ。」
ゆず子「(全員に向かって)そう思っている人手を挙げて。」

男1と陸は手を挙げず、男2は両手を挙げた。

ゆず子「でしょうね。」
陸  「思ったことないな。」
男2 「綺麗な人だなぁ。」
ゆず子「(この人ちょっとやばそう。)」
男1 「いやーこのビールもおいしいな。ここお酒も有名なんですよね!ずっと前から一度ここで飲みたいなと思ってたんですけど、予約が・・」
陸  「予約がいっぱいで入れなかったんですよね。はい、さっき聞きました。(なんか変なやつ2人連れてきてしまったな)」

○タクシー車内
携帯を回収したので、タクシーで市街地に向かうゆず子と直人。

運転手「ここにくるのは初めてですか?」
直人 「はい。(まずい、また同じ昔話されるかもしれない)あ、いえ初めてではないです。何回も来て地元の話とかもよく聞いてます。」
運転手「そうですか。せっかくですし、何度聞いても面白い地元の話をさせてください。このあたりは昔から雨が多くて、晴れてても傘を持って出かける人も多いんですよ。ある日、外から越してきたある男が・・・」

直人とゆず子は顔を見合わせてあきれる。

○レストラン
直人とゆず子が到着したと連絡が入る。

陸  「すみません、連れが到着したので、お引き取り願えますか。」
男1 「了解しました。元々お連れ様がきたらすぐ帰るお話でしたし、では帰りますね。本当にごちそうさまでした。」
陸  「いえ、こちらこそありがとうございました。おかげで店員に催促されることもなく時間をやり過ごすことができました。」
男2 「(ゆず子に向かって)あの、良かったら連絡先交換しませんか?」
ゆず子「ごめんなさい。」
男2 「そうですか。残念です。モヒカンが嫌ですか?」
ゆず子「モヒカンも嫌です。」
男2 「モヒカンにしたのに振られるとは思わなかった。」
ゆず子「80年代のパンクロックシーンでもないのにずいぶん自信満々ですね。」
男2 「美容院で2800円もかけたのに。」
ゆず子「思ったよりリーズナブル。」

男二人が去る。
入れ違いでゆず子と直人がテーブルに到着する。

直人 「お待たせー。無事携帯はゲットしたよ」
ゆず子「ごめんねほんと待たせて。しかしずいぶん食べたね。あとさっきの二人だれ?」
陸  「話すと長くなるけど、とにかくこのテーブルをキープするために必要な二人だったんだ。俺はもう食いすぎて死ぬ。」
直人 「おれは腹減りすぎて死ぬよ。さて、何頼もうかな〜。」
店員 「失礼します。テーブルチェックでお願いします。」
ゆず子「え、今から追加で注文するんですけど。」
店員 「すでにラストオーダーは終了しています。あと20分ほどで閉店です。」
沙紀 「ラストオーダーなんて聞いてないです!」
店員 「少し前にこのテーブルの方にラストオーダーの確認をしたら、『もう大丈夫』とおっしゃったので注文を締め切りました。なぜかその方が今ここにいらっしゃらないのですが。。」
沙紀 「私じゃないわよ。その人だれ?」
店員 「モヒカンの男性でした。」
沙紀&陸 「あのバカーーー!!」

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