披露宴での憂うつ コメディ

どうしても湧き出てしまう親友への嫉妬ー 石丸博美(27)はその日、どうしてもベッドから起き上がることが出来ずにいた。 幼馴染の親友・茂木紀子(27)の結婚披露宴の日であるにも関わらず、何故か祝福出来ない自分がいた…。
大川晃弘 3 0 0 08/11
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第一稿

※登場人物
 茂木紀子(27)新婦
 石丸博美(27)紀子の幼馴染
 望月亜希子(27)紀子の友人
 久住隼人(30)新郎
 高山明(50)亀山製菓専務取締役
 日野重 ...続きを読む
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※登場人物
 茂木紀子(27)新婦
 石丸博美(27)紀子の幼馴染
 望月亜希子(27)紀子の友人
 久住隼人(30)新郎
 高山明(50)亀山製菓専務取締役
 日野重明(67)久住の伯父
 女性スタッフ
 司会者

〇マンション・石丸博美の部屋
  壁にパーティー用のドレスがかかっている。石丸博美(27)、パジャマ姿のままベッドに横
  になりながら一枚の葉書を見ている。葉書には『久住家・石丸家ご結婚披露宴ご招待状』と
  ある。博美、葉書を見ながら溜息、
博美「はあ~、行かなきゃ……」
  ベッドから手を出しスマホを手に取る。
   
〇結婚式場・メイクルーム・中
  ウエディングドレス姿の茂木紀子(27)、不安気な顔でスマホを見ている。
  スマホには博美から『ごめん、遅れる。挙式間に合わないかも』とメッセージ。
  傍にはタキシード姿の久住隼人(30)が座っている。ノック音がして女性スタッフが入って
  くる。
女性スタッフ「失礼致します。挙式のお時間でございます。すでに皆さまチャペルにお揃いにな
 っております」
紀子「すみません、友人が遅れてて。少し待ってもらえませんか?」
久住「紀子、今日は親父の会社の重役さん達も来てるんだ。待たせちゃ悪いよ」
紀子「でも、博美だって私には大切な人なの」
久住「それは分かるけど、我儘な嫁だとか思われたくない。俺の立場も分かって欲しい」
紀子「……分かったわ」
  紀子、スマホに目を戻して、『なるべく早く来てね。スピーチ楽しみにしてるから』とメッ
  セージを返す。

〇結婚式場・披露宴会場・中
  大勢の人が集まっている。高砂には久住と紀子が座っている。その横のマイクスタンド前に
  高山明(50)が立ち、
高山「只今ご紹介に預かりました亀山製菓専務取締役・高山明です。隼人さん、紀子さん、この
 度はご結婚おめでとうございます」
  高山の祝辞が続くなか、会場後方の扉がそっと開いて博美が入ってくる。高砂すぐ傍のテー
  ブルへ向かう。同じテーブルには望月亜希子(27)がいて、博美に気づき無言で挨拶を交わ
  す。そして高砂の紀子を見る。紀子と目が合い博美、ごめんのジェスチャーを送る。
  紀子、博美に満面の笑顔を返す。
高山「今年、創業百周年を迎えます亀山製菓は現在、新郎のお父様が三代目代表取締役を勤めて
 おりまして……」
  高山の祝辞を聞いている博美。亜希子に小声で、
博美「亀山製菓って何か聞いたことある」
亜希子「そりゃそうでしょ、『梨の種』っておせんべい作ってる有名な会社よ」
  高山の祝辞が続いている。
高山「新郎は現在都内に勤務されておりますが、いずれお父様から引き継いで弊社四代
 目社長に就任されるということで我々重役共々大変期待をしております」
  亜希子、博美に小声で、
亜希子「つまり紀子は社長夫人ってことか。上手いことやったわよねぇ」
  博美、高砂の紀子を見る。再び目が合って紀子、また満面の笑顔を返す。博美、ひきつった
  笑顔を返しボソッと、
博美「(小声で独り言)また負けか……」
亜希子「ん?」

〇同・披露宴会場外・扉口前
  『久住家・茂木家 ご披露宴会場』と看板が置いてある。

〇同・披露宴会場・中
  亜希子、ご馳走をガツガツと食べている。一方、博美はあまり箸が進んでいない。亜希子、
  それに気づき、
亜希子「どうしたの? 今日体調悪い?」
博美「ううん、でも何かスッキリしない気分」
亜希子「何言ってんの、紀子の晴れの日に。素敵だったわよ、挙式」
博美「ああ、そう……」
亜希子「興味ない感じね?妬いてんでしょ?」
  博美、慌てて、
博美「そ、そんなことないわよ!」
  亜希子と博美、高砂を見る。
亜希子「何か、紀子大変そう……」
  多くの中年男性が集まり紀子、次々頭を下げ挨拶している。亜希子、そんな高砂での紀子の
  様子を遠巻きに見ながら、
亜希子「ここに集まってる人達って、ほとんど亀山製菓の人達ばっかでしょ? 親戚含めてこれ
 からの付き合い考えると何か大変そうじゃない?」
  博美も高砂の紀子を見る。高砂では紀子が日野重明(67)と話している。
日野「紀子さんは結婚しても仕事は続けんのかえ?」
紀子「いえ辞める予定です。専業主婦になって主人を支えようかと思いまして」
日野「偉い!~ようわがってんなあ! 嫁は亭主を立てるもんだべな」
  傍で聞いていた久住が入ってくる。
久住「僕は仕事を続けて欲しいって言ってるんですがね」
日野「な~に言ってんだ! 嫁は家に入るもんだべさ~」
久住「おじさん、いいから。向こうに旨い酒用意してるから、今日は沢山呑んでよ」
日野「そうか、そうか」
  日野、一礼して高砂を離れる。紀子、疲れたのか軽く溜息をつく。久住、その様子を見て、
久住「大丈夫? ウチの親戚に気なんか遣わなくていいよ。結婚したって紀子のやりたいことや
 ればいいさ」
紀子「ありがとう。でも仕事はもういいの」
  テーブル席の博美と亜希子、
亜希子「キャリウーマン志望の紀子が専業主婦だなんて考えられないわよね?」
博美「東京でバリバリ働いて、自分の能力の限界知ったんじゃないの?」
亜希子「何か嫌味な言い方。やっぱあんた妬いてんでしょ?」
博美「違うわよ! ノン子が過労で倒れた時私が面倒見てやって大変だったんだから」
  すると司会アナウンスが入る。
司会者「ではここで新婦のご友人を代表しまして、石丸博美様よりお祝いのお言葉を頂戴したい
 と思います」
博美「うわ! いよいよだ」
  博美、緊張した様子で立ち上がる。
亜希子「頑張って! 緊張しないで」
  博美、ガチガチでマイク前に立つ。
博美「えー、隼人さん……紀子さん、じゃない……ノン子、結婚おめでとう……ええ」
  静まる会場内。博美、言葉が出ない。
  亜希子、近くから囁く。
亜希子「(囁き声で)幼馴染……」
博美「え? あ! ノン子とは幼稚園からの幼馴染でして、子どもの頃からノン子は美人で勉強
 も出来て、常に私の一歩先を行ってて、本当ムカつく……あ、いや憧れの存在でした」
  高砂の紀子、笑顔のまま聞いている。
博美「この度ノン子が結婚して、また一歩先を行かれて正直クソッ……あ、違う……え
 えと……」
亜希子「(囁く)バカッ!」
  会場内が少しざわつく。紀子も笑顔が少し曇る。
博美「あ、思い出した!実は今日、ノン子にぜひ伝えたいことがあります!それは私独立するこ
 とにしました!」
紀子「え?」
亜希子「(囁き声で)いい、いい、そんな話するな……」      
博美「もう会社には辞表を出していて、兼ねてから夢見ていたアパレル業界での活躍を目指し
 て、これからは女性起業家としてバリバリやっていくつもりよ!」
亜希子「(囁き声で)取ったなぁ、マウント」
博美「というわけでノン子、あなたは専業主婦として、しっかり隼人さんを支えてね!」
  会場からポツリポツリと拍手。司会者慌てて、
司会者「石丸様あ、ありがとうございました。ご友人からのえー、こ心温まるお言葉頂戴致しま
 した」
  博美、高砂に近づく。紀子も立ち上がる。博美、紀子に抱き着く。
  司会者、その様子を見て、
司会者「幼い頃からの友情、とっても感動的ですね」
  会場から拍手が沸き起こる。抱き合ったままの博美と紀子。博美、耳元で囁く。
博美「幸せになってね、ノン子」
  紀子も博美の耳元で、
紀子「博美も頑張って! 私もやっぱり頑張るから」
博美「え? 何を?」
  博美、抱き着くのをやめ紀子の顔を見る。
紀子「仕事も続けることにした!」
博美「ええ!?」
紀子「結婚生活もキャリアも両立させるわ」
博美「だ、だって……」
  会場では拍手が続いている。
亜希子「(囁き声で)やっぱり一歩先行かれたか……」
  紀子、再び博美を抱き寄せる。耳元で
紀子「これからもずっと友達でいようね」
博美「はいはい……」

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