カノープス 第一話 ドラマ

第一話「表と裏」 YouTubeのチャンネル登録者数1000万人を誇るグループYouTuber「カノープス」。 これは、そんな彼らの物語である。
ペンゼル 20 0 0 06/22
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第一稿

〈登場人物表〉

アポロ(25)カノープスのメンバー。
サマー(25)同上
アリー(26)同上
ベン (26)同上
グッチ(27)同上

磯村拓也(26)週刊誌記者 ...続きを読む
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〈登場人物表〉

アポロ(25)カノープスのメンバー。
サマー(25)同上
アリー(26)同上
ベン (26)同上
グッチ(27)同上

磯村拓也(26)週刊誌記者

相川弘志(46)タレント。
  京子(43)週刊誌編集長。弘志の妻。

若い女性たち
警官A・B
パーティーのスタッフ


〈本編〉

メインタイトル「カノープス」

◯一軒家・外観(朝)
非常に立派な一軒家。

◯同・ベンの部屋(朝) 
ベン(26)、デスクに腰掛け、鍵付きの引き出しを開ける。
中には、薬物と思われる白い粉が入った透明の小袋。そして、ストローの束。
ベン、その小袋と一本のストローを取り出し、デスク上に置く。
小袋の白い粉を少量出し、それをストローで鼻から吸おうとする。
が、吸う直前で、「ピンポーン」とインターホン。

◯同・玄関(朝) 
ベン、玄関扉を開ける。
訪問者は磯村拓也(26)。
ベン、拓也を部屋に入れる。
奥の部屋から、グッチ(27)が玄関にやって来る。
グッチ「ベン、こちらは?」
ベン「僕の幼馴染の拓也だ。週刊誌の記者をやってる」
拓也「“グッチ”と呼んでいいのかな?」
グッチ「構わないよ」
ベン「(拓也に)僕に話があるって言ってたけど、グッチも一緒でいい?」
拓也「いや、ベン。お前と二人っきりがいい」
グッチ「おぉ…そうか…」

◯同・ベンの部屋(朝) 
ベンと拓也、向かい合って椅子に腰掛けている。
ベン「それで、仕事はどう? やっぱり君も有名人のスキャンダルとか、そういうネタを扱ったりするの?」 
拓也「今日はその事で話があって来た」
と、カバンからA4サイズの茶封筒を出し、ベンの前に置く。
ベン「中身は何?」
拓也「写真だ」
ベン「もしかして、いわゆる、スクープ写真ってやつ?」 
拓也「見てくれ」
ベン「いいのか? 僕が見て」
拓也「一番最初に、お前に見てもらいたいんだ」
ベン、茶封筒を開け、中身を出す。中身は一枚の写真。
写真のベン、車の運転席で、ダッシュボードの上にある何かを、ストローで鼻から吸おうとしている。
ダッシュボードの上には、例の小袋もある。
ベン「何だコレは?」
拓也「お前、薬やってるだろ?」
ベン、何も答えない。
拓也「コカインか?」
ベン「この写真、君が撮ったの?」
拓也「俺で良かった。他の記者に撮られてみろ、お前今ごろ逮捕されてる」
ベン「君はこの写真、公表しないの?」
拓也「…分からない」

◯弘志の家・寝室(朝)
床には、男女二人分の衣服や靴が脱ぎ捨てられている。
ベッドには、アリー(26)と相川弘志(46)。
寝転がりながら、熱いキスをしている。

◯同・玄関(朝)
相川京子(43)、帰宅してくる。

◯同・寝室(朝)
キスを続けているアリーと弘志。
京子の声「あなた〜」
弘志、キスをやめ
弘志「まずい!」
アリー「今の奥さん?」
   × × ×
寝室の扉を開ける京子。
ワイシャツ姿の弘志、ベッドの前に立っている。アリーはいない。
ベッドにはスーツ。
弘志「京子」
京子「まだ着替えてなかったの? 正午からトークショーの収録でしょ?」
弘志「寝過ごしてしまった。君のほうこそ、どうしたんだい?」
京子「名刺入れを取りに戻っただけよ。忘れ物」
弘志「名刺なんか配らなくても、みんな君のこと知ってる。超有名週刊誌の編集長なんだから」
京子、弘志に近寄りながら
京子「しょうもない忘れ物をする編集長だとバレないようにしなきゃ」
抱き合う弘志と京子。
弘志「そういう編集長に俺は惚れた」
キスする二人。
京子「そのジャケットに、赤のネクタイは合わないわ」
弘志、ベッドのスーツを見る。
京子「私が選んであげる」
と、クローゼット(扉は閉まっている)へ向かう。
すぐさま、「待って!」と呼び止める弘志。
弘志「青のネクタイだろ? 自分で出すから、仕事へ行っていいよ」
京子「…そう」
と、部屋を出て行く。
弘志「アリー、出てきていいよ」
クローゼットの扉が開き、下着姿のアリーが出てくる。
アリー「私たちさ、お互いが好きだから、この関係続けてきたけど、もう終わりにしない? さっきのイチャイチャ、クローゼットの隙間から見えたの。罪悪感で胸が痛かった」
弘志「気持ちは分かるよ。でもさ…」
アリー「あなたは反対なの?」
弘志「この話はまた今度にしよう。これからトークショーの収録だ」
弘志に、うまく逃げられたアリー。

◯一軒家・ベンの部屋(朝)
ベン、デスクで例の写真を眺めている。
それを茶封筒に仕舞い、鍵付きの引き出しに入れる。
部屋の出入口の前に、グッチがやって来る。
グッチ「友達、もう帰った?」
ベン、ハッと振り向く。
ベン「ああ、拓也なら、さっき帰った」
と、引き出しの鍵を掛ける。
その様子を見つめるグッチ。

◯テレビ局・収録スタジオ 
弘志が司会のトークショー番組の収録が始まろうとしている。
カメラなどの収録機材。収録準備をするスタッフたち。
番組セットの真ん中では、弘志がスタンバイしている。
スタッフの声「本番まで3秒前」
3秒後、収録がスタート。
弘志「はい、始まりました。ジャスト・ア・トークショー。司会の相川弘志です。今日のゲストは、あの大人気ユーチューバーということで。沢山お話を伺いたいので、早速お招きしましょう。カノープスの5人です!」
スタジオ内の拍手喝采と共に、アポロ(25)、サマー(25)、アリー、ベン、グッチがセットに登場する。
そして、弘志やカノープスのメンバーたち、各々席につく。
弘志「君たちは、カノープスというグループ名で活動してるけど、その名前にした理由って何なの?」
ベン「サマー、説明して」
サマー「私? アポロ説明する段取りでしょ」
アポロ「俺が説明する予定だったけど、サマーに譲るよ」
サマー「えっと…実は理由は特にないの。カノープスって名前の星があるんだけど、何となくそれをグループ名にしようってなって」
グッチ「(ベンに)何でサマーに振ったんだ?」
ベン「理由は特にない。何となくサマーがいいんじゃないかって」
アポロ「こういうノリで、グループ名がカノープスになったんです」
弘志「そんなカノープスは現在、ユーチューブのチャンネル登録者数が一千万人。まさに、ユーチューブ界のスターだね」
グッチ「それだけ多くの人に応援してもらえて光栄です」
弘志「君たちがテレビ出演するのは今回が初めてらしいね。これからもテレビには出演していくつもりなの?」
アリー「私はやめた方がいいと思うわ。だって、ユーチューバーがテレビと関係を持つのは良くないと思うの」
弘志「それはつまり、どういうこと?」
アリー「ユーチューバーはユーチューブとカップルになるべきで、テレビとカップルにならない方が良いってこと。そうしないと、色々と問題が起こるから」
弘志「…。例えば、どんな問題?」
アリー「テレビはクローゼットの隙間から見てしまったの。ユーチューバーとユーチューブがイチャイチャしてるのを。それで、テレビはユーチューバーと関係を持っていることに罪悪感を抱いてしまうの」
アポロ「これ、何の話?」
グッチ、ベンを見る。
ベン、「さあ?」という仕草。
弘志「別の話に移ろう」
アリー「ダメよ。このことはきちんと話し合うべきよ。今ね」
弘志「…。テレビが罪悪感を抱く気持ちはよく分かる。でも、ユーチューバーとテレビは相思相愛なんでしょ? なのに、関係を終わらせてしまうのは辛い話だと思わない?」
アリー「確かにそうだけど、ユーチューバーとテレビは別れるべきなのよ」

◯同・弘志の楽屋 
アリー、入室し、ドアを閉める。
弘志、腕を組んで仁王立ちしている。
アリー「収録お疲れ。テレビ出演初だったし、緊張しちゃった」
弘志「さっきのアレ、俺たちの不倫の話だよな?」
アリー「だって話し合うべきでしょ」
弘志「よりによってカメラ回ってる時にか? 生放送だったら放送事故だぞ」
アリー「これで分かったでしょ? この関係を終わらせることに、私がどれだけ真剣か」
弘志「…」

◯クラブ・中 
ステージ上で、セクシーな衣装を着た若い女性たちがポールダンスしている。

◯同・同 
ソファテーブル席に、ベンと拓也。
拓也「トークショー、どうだった?」
ベン「気が付いたら終わってた。何だかよく分からないまま」
拓也「まあ、そういうもんだろ」
ベン「そんな話をしに来たんじゃないんでしょ?」
間。
拓也「俺、悩んでるんだ。お前に見せた例の写真。あれを公表するべきか。お前に聞くのも変な話だが」
ベン「僕くらいにしか聞けないもんね」
拓也「お前は世間から人気がある有名人だ。そんなお前が薬やってるなんて、週刊誌記者の俺からしたら、一大スクープだ。でも、薬のことを公にしたら、お前は世間からバッシングを受ける」
ベン「逮捕もされる」
拓也「親友がそうなるのは見たくない。そもそも、なんで薬なんかに手を出したんだ?」
ベン「カノープスの動画の企画は、いつも僕が考えてるんだ。そのストレスさ」
拓也「何がストレスだ? どの動画も再生回数すごく伸びてるし、高評価も沢山ついてる」
ベン「そこが問題なんだ。動画を面白いと言ってくれるのはありがたいけど、次も面白い動画を作らなきゃいけないし、またその次も面白い動画を作らなきゃいけない。永遠その繰り返しだ」
拓也「薬のこと、他に誰か知ってるのか?」
ベン「僕と君以外、誰も知らない」
拓也「誰かに話したらどうだ?」
ベン「もうこれ以上、誰も巻き込みたくない」

◯一軒家・リビング 
広々としたリビング。
アポロ、三脚で立っているスマホAをいじり、動画撮影の準備をしている。
ソファには、化粧直し中のサマー。
そこへ、グッチがやって来る。
グッチ「今からユーチューブの動画撮るって?」
サマー「今日中に撮影したいんだって」
テーブルの上に、瓶ビールやワインボトル、ウイスキーボトルなどの酒とグラスが置いてある。
グッチ「この酒は何?」
アポロ「今から撮る動画で使うんだ」
と、サマーの隣に座る。
サマー「さ、動画撮るよ」
グッチ「今日はいいんじゃないか。もう疲れた」
アポロ「軽く一本撮るだけだから」
グッチ、溜息をつく。
そして、仕方なく、ソファに座る。

◯同・同(スマホAの画面)
スマホAでの動画撮影が始まる。
サマー「どうも! カノープスです! まずは自己紹介どうぞ」
アポロ「アポロです」
サマー「サマーです」
グッチ「グッチです」
アポロ「さあ、ということで、今回の企画は?」
グッチ「俺、何やるか全く聞かされてないんだけど」
サマー「今回の企画は、なんと…まだ決めてない!」
グッチ「は? 決まってない⁉︎」
アポロ「ご覧の通り、酒を用意した。今から酒でも飲みながら、今回やる企画を考えるんだ」
グッチ「今から考えるのか? カメラ回ってるのに?」
サマー「さあ、まず飲もう」
と、ワインボトルに手を伸ばし、グラスに注ぐ。
アポロ、瓶ビールを取る。
アポロ「(グッチに)ウイスキーでいい?」
グッチ「ああ、何でも」
アポロ、ウイスキーをグラスに注ぎ、グッチに渡す。
アポロ・サマー「カンパーイ!」
三人、酒をぐいーっと飲む。
アポロ「それで、今回の企画、どうする?」
サマー「グッチは? 何か案はない?」
グッチ「うーん。みんなでトランプゲームするとか」
サマー「それだと、インパクトが少し足りなくない?」
アポロ、挙手する。
アポロ「じゃあさ、みんなでドライブに行くってのは?」
サマー「あ、イイね! ドライブ楽しそう! ドライブの動画撮ろう!」
アポロ「よし! 今回の企画はドライブだな」
グッチ「ちょっと待て。ドライブに行くのか? 今から?」
サマー「ダメ?」
グッチ「誰が運転するんだ?」
アポロ「俺が運転するよ」
グッチ「今、酒飲んだばかりだろ」
アポロ「たかがビールだ。運転しても平気だ」
サマー「ちょっとドライブして、すぐ帰るから。ね?」
グッチ「まあ、それなら…分かったよ」

◯クラブ・外 
ベンと拓也、店から出てくる。
すると目の前に、店に入ろうとする京子。
京子「磯村?」
拓也「編集長、どうしてこちらに?」
京子「このクラブのオーナーが私の知り合いで、ちょっと顔を出しに来たの」
拓也「(ベンに)こちらは相川編集長だ。俺の上司」
ベン「もちろん知ってる」
京子「あなたは、ベンさんね。カノープスの」
ベン「ええ、どうも」
拓也「ベンはちょうど今日、弘志さんのトークショーにゲスト出演したんです」
京子「あら、ホント?」
ベン「すごい偶然」
京子「あっ、そうだ。今夜8時にね、私主催のパーティーがあるんだけど、磯村、来れる?」
拓也「はい、行きます。良かったら、ベンも一緒に行っていいですか?」
京子「でも、お忙しいんじゃない?」
ベン「いや、大丈夫ですよ。ぜひ行きたいです」
京子「分かりました。お待ちしてます」

◯弘志の車の車内 
運転席に、弘志が座っている。
そこへ、助手席にアリーが乗り込む。
アリー、弘志を見つめる。
弘志「あれから考えてみたんだ。その…俺たちのこと」
アリー「それで?」
弘志「君の言う通り、別れようと思う」
アリー、「うんうん」と頷く。
弘志「ただ、これだけは分かってほしい。君と別れるのは、辛いと思ってる」
と、アリーを見つめる。
見つめ合う二人。
アリー「それは私も同じよ」

◯高級オープンカーの車内(夕方)(スマホAの画面)
サマー、助手席にて、自撮り棒を使い、スマホAで動画撮影をしている。
アポロが運転し、後部座席にグッチ。
車内では、ポップな音楽が流れている。
アポロとサマー、音楽にノリノリ。
グッチ「なあ、そろそろ引き返さないか? もう一時間もドライブしてる」
アポロ「まだ55分だ。あと5分だけ」
グッチ「ところでさ、ずっとそのカメラで、ドライブの動画撮ってるだろ?」
アリー「そうだけど、何?」
グッチ「ぶっちゃけさ、今のところ、撮れ高あんま無くない?」
サマー「そう?」
グッチ「俺たちさ、ただずーっと車に乗ってるだけだ。動画的に見応えある?」
アポロとサマー、前方に何かを発見し、目を凝らし始める。
グッチ「ていうか、目的地どこなんだよ? これ、どこ目指してるんだ?」
アポロ「あれ、警察か?」
グッチ「何? 警察?」
前方(道路)に、警官Aが立っており、「止まれ」の合図を出している。
サマーの声「ほら。なんか“止まれ”って言ってるよ」
一同、顔が強張っている。
サマー「やばくない? アポロ、お酒飲んでるし」
アポロ「…」
車を道の脇に停車させるアポロ。
運転席側に、警官A・Bがやって来る。
警官A「わざわざどうもすいません」
アポロ「どうしました?」
警官A「兄ちゃん、標識無視したでしょ。手間に“一時停止”の標識あったのに、止まらなかったよ」
アポロ「ああ…気付かなかった」
警官A「事故起こしてから、気付かなかったじゃ遅いんだよ。まあ、今回は厳重注意ってことにするから、今後は気をつけてよ」
アポロ「分かりました」
警官B「あれ、兄ちゃん。一つ聞いていい?」
アポロ「何です?」
警官B「もしかして、酒飲んでる?」
アポロ「え? いや、飲んでないけど」
警官B「ちょっと検査していいかな? 飲酒してるかどうか」
アポロ「…今ちょっと急いでるんで」
警官B「すぐ済むしさ。車から降りてもらっていいかな?」
アポロ「…」

◯道路(夕方) (スマホAの画面)
サマー、アポロの車の前に立って、自撮り棒で動画撮影している。
その隣に、グッチも立っている。
サマー「(カメラに)えー、なんか大変なことになりました。アポロは今、飲酒の検査を受けてて、かなりヤバい状況」
グッチ「けど、酒も少量しか飲んでなかったし、大丈夫だろ」
アポロの声「くそ! 離せよ!」
警官A・B、アポロを逮捕しようとするが、アポロは抵抗している。
警官A「午後5時17分、酒気帯び運転の容疑で逮捕する」
と、アポロに手錠をかける。
警官B、サマーとグッチのもとへ来る。
警官B「君たちも、彼が飲酒してたこと、知ってたんだろ?」
サマーとグッチ、沈黙。
警官B「知ってたんだろ?」
グッチ「…知ってました。二人とも」
警官B「まずは、君から逮捕する。両目を手で塞いで」
グッチ「はい? 今なんて?」
警官B「手で両目を塞ぐんだ」
グッチ「何で? 手錠かけないの?」
警官B「いいから塞げ!」
グッチ「分かった、分かった。やればいいんだろ」
と、両目を手で塞ぐ。
グッチの顔がズームされ、それ以外スマホAのカメラに映らなくなる。
グッチ「塞いだけど」
誰の返答もない。
グッチ「聞いてる?」
またしても、誰の返答もない。
グッチ「いつまで、こうしてりゃいいんだ?」
警官Bの声「手を下ろしていいぞ」
ゆっくり手を下ろすグッチ。
グッチ「?」
対面に、アポロ、警官A・Bが横に並んで立っている。
アポロ、持ち手付きの看板を背後に隠している。
アポロ「ドッキリ、大成功!」
と、看板をグッチに披露する。
看板には「ドッキリ大成功!」の文字。
グッチ「は? どういうこと?」
サマーの声「実はコレ、グッチへのドッキリ企画なの」

◯(回想)一軒家・リビング 
サマー「どうも! カノープスです! まずは自己紹介どうぞ」
アポロ「アポロです」
サマー「サマーです」
グッチ「グッチです」
アポロ「さあ、ということで、今回の企画は?」
グッチ「俺、何やるか全く聞かされてないんだけど」
サマーN「まずは、今回やる企画はまだ決まってないと嘘をつく」
サマー「今回の企画は、なんと…まだ決めてない!」
グッチ「は? 決めてないだと?」
アポロ「ご覧の通り、酒を用意した。今から酒でも飲みながら、今回やる企画を考えるんだ」
サマーN「次に、みんなでお酒を飲む」
   × × ×
アポロ・サマー「カンパーイ!」
三人、酒をぐいーっと飲む。
サマーN「次に、ドライブへ行くことを提案する」
   × × ×
アポロ、挙手する。
アポロ「じゃあさ、みんなでドライブに行くってのは?」
サマーN「そして、ドライブへ行き、警察に飲酒運転がバレる」

◯(回想)アポロの車の車内 
警官B「もしかしてさ、酒飲んでる?」
サマーN「最後に、警官に逮捕してもらう」

◯(回想)道路 
警官A・B、アポロを逮捕しようとするが、アポロは抵抗している。
警官A「午後5時17分、酒気帯び運転の容疑で逮捕する」
と、アポロに手錠をかける。
(回想終わり)

◯同(夕方)(スマホAの画面)
サマーの声「っていうドッキリなの」
グッチ「やられた…」
アポロ「(警官A・Bを指して)あの2人は本物の警官じゃない。ドッキリの仕掛け人だ」
グッチ「なんか変だと思ったんだよ。酒飲んでるのに、急にドライブ行こうとか言い出すしさ」
アポロ、笑う。
グッチ「ちょっと待て、アポロ。お前、ドライブに行く直前、ビール飲んでたよな?」
アポロ「あれはノンアルコールだ。だから、飲酒運転にはならない」
グッチ「何だそれ」
サマーの声「最後に一言、お願いします」
グッチ「飲酒運転は、絶対ダメだ」

◯ホテル・パーティー会場(夜)
京子主催のパーティー。
談笑し合う招待客たち。
記者の取材を受けている招待客もいる。
招待客たちの身なりを見るに、彼らはセレブであろう。
そんな中、拓也も記者として、招待客たちの華やかな姿を写真に収めている。
そこへ、京子がやって来る。
京子「磯村、ちょっと来て」

◯同・廊下(夜)
ベン、誰もいない廊下を歩いている。
すると、すぐ右手の部屋から
京子の声「ベンさんは、まだいらしてないの?」
拓也の声「まだみたいですね」
ベン、部屋の中をこっそり覗く。

◯同・とある一室(夜)
室内に、京子と拓也。

◯同・廊下(夜)
ベン、二人の会話を盗み聞きする。

◯同・とある一室(夜)
京子「今日のお昼、ベンさんとクラブにいたでしょ?」
拓也「はい」
京子「何か、興味深い情報はあった?」
拓也「え?」
京子「記事になりそうな情報よ。ベンさんに取材してたんでしょ?」
拓也「それは…スクープってことですか?」
京子「それよ。世間をワッと驚かせる大スクープ。何か得られた?」
拓也「えっと…」

◯同・廊下(夜)
ベン「…」

◯同・とある一室(夜)
京子「何か知ってるなら、教えてちょうだい」
拓也、少し考え
拓也「そもそも、あれは取材とかじゃないんです。ベンとは親友で、ただ他愛もない話をしてただけで、スクープとかそういうのは何も無いです」
京子「…そう。結構よ」

◯同・廊下(夜)
ベン「…」

◯同・外(夜)
拓也、ホテルの建物の壁にもたれかかり、一人立っている。
そこへ、ベンがやって来る。
拓也「(ベンに気付き)ベン、来てたのか。パーティーはこの2階でやってる」
ベン「ああ」
拓也「俺は今ちょっと、風に当たりたくて」
ベン「拓也、悩んでたよね。例の写真を公表すべきかどうか。僕から頼みがある。あの写真、公表してくれ」
拓也「え?」
ベン「そうすれば、もう悩まなくていいだろ?」
拓也「でも、薬のことを公にしたら、お前は逮捕されるし、世間からバッシングを受ける」
ベン「いつかそうなることは覚悟してた。それに思ったんだ。君が撮った写真で公になるなら、僕はこれ以上ないくらい満足だって」
拓也「本当にいいのか?」
ベン、頷く。
拓也「分かった。そうする」

◯マンション・外観(夜)
立派なタワーマンション。

◯同・ダイニング(夜)
アポロ、サマー、アリー、三人で晩酌している。
アリー「今日、動画の企画で、グッチにドッキリを仕掛けたそうね。全部、彼から聞いたわ」
アポロ「グッチは単純なやつだ。まあ、そのおかげで今回のドッキリは成功したんだけど」
アリー「お酒飲んだ直後に、今からドライブ行こうって言ったんでしょ? よくそんな提案にグッチは乗ったわよね」
アポロ「俺か飲んだのはビールだし、それに、すぐ帰るからって言ったら、グッチはすんなり受け入れたよ」
アリー「でも、実際アポロが飲んだのはノンアルコールのビールだったんでしょ? 普通そのことにも気付きそうなもんだけどね」
アポロ、サマーを見る。
サマー、アポロに顔で何かの合図を送る。
アポロ、口を結ぶ。
アリー「どうしたの?」
サマー「(アポロに)アリーには話していいんじゃない?」
アリー「何何?」
アポロ「実は、俺が飲んでたのはノンアルコールのビールじゃないんだ」
サマー「アルコールが入ってるビールを飲んだの」
アリー「嘘でしょ⁉︎ じゃあ、ホントに飲酒運転したってこと?」
アポロ「そういうことになるな」
言葉が出ないアリー。
サマー「(アポロに)ドライブ、楽しかったねー」
アポロとサマー、酒の入ったグラスをぶつけ合う。
アリー「あなたたち、どうかしてる」

◯一軒家・ベンの部屋(夜)
グッチ、鍵付きの引き出しを開ける。
そして、薬物と思われる白い粉が入った透明の小袋と、茶封筒を取り出す。
グッチ「?」
茶封筒の中身を取り出す。中身は例の写真。
グッチ「⁉︎」
部屋に入ってくるベン。
ベン「(グッチを見て)それは⁉︎」
グッチ「何だコレは? お前、薬やってるのか?」
ベン「…ああ、実はそうなんだ」
グッチ「いつから?」
ベン「三ヶ月くらい前だ」
グッチ「このこと、他に誰か知ってるやつはいるのか?」
ベン「拓也だ」
グッチ「友達の週刊誌記者か」
ベン「その写真も、拓也が撮った」
グッチ「それだけじゃないだろ?」
ベン「その写真を公表することになった」
グッチ「嘘だろ…」
ベン「これでいいんだよ」
グッチ「そんなの絶対ダメだ! 俺たち、表に立つ人間だぞ。裏で薬やってるなんて世に知れたら、どうなるか分かってるのか?」
ベン、言い返す言葉が出ない。
グッチ「その、拓也ってやつは今どこにいる?」

◯ホテル・パーティー会場(夜)
拓也、パーティーの様子をカメラで写真に収めている。
パーティーのスタッフが拓也のもとへやって来て
スタッフ「すみません、あちらの方がお呼びです」
拓也、スタッフの目線のほうを向く。
「あちらの方」の正体はグッチ。出入口の外から拓也を見ている。
拓也、出入口のほうへ歩き出す。
グッチのもとへやって来る拓也。
グッチ「パーティーの途中なのに悪かったな。君に話があるんだ、ベンのことで」
拓也「(察し)屋上で話そう」

◯同・屋上(夜)
屋上には誰もいない。
グッチと拓也、屋上の隅にやって来る。
拓也「君も知ったんだな、ベンが薬やってるって」
グッチ「写真見たよ。あれ、君が撮ったんだって?」
拓也、質問に答えず、黙っている。
グッチ「単刀直入に言う。あの写真を公表するのはやめてくれ」
拓也「俺だって悩んだよ。でも、ベン本人が公表しろと言った」
グッチ「薬のことが世間にバレたらマズイ」
拓也「ずっと隠し通すのは無理だ。いずれバレる」
グッチ「ベンと親友なんだろ? アイツのスキャンダルを世に晒すのは、君も辛いはずだ」
拓也「…もう、この話は終わりだ」
と、その場を立ち去ろうと歩き出す。
が、そうはさせまいと、グッチ、拓也の腕を掴む。
グッチ「頼む。公表しないでくれ」
拓也、グッチの手をどける。
そして、再び歩き出す。
グッチ、拓也の肩に掛けられているカメラをひったくる。
拓也「何のつもりだ?」
グッチ「写真を公表しないと約束してくれ。そしたら、このカメラは返す」
拓也「(呆れ)何言ってる?」
グッチ「俺は本気だぞ」
じーっと見合う二人。
拓也、グッチに向かって突き進む。
取っ組み合いになる二人。
そのまま、拓也、グッチを屋上のフェンスのほうへ押して行く。
フェンスにグッチの背中が付く。
カメラを奪い返そうとする拓也と抗うグッチ。
そして、グッチ、カメラを持っている手を精一杯高く上げる。
拓也、フェンスに身を乗り出して、カメラを掴もうと手を伸ばす。
だが、その瞬間、拓也、屋上から落下。
グッチ「⁉︎」
すぐさま、地上を見下ろすグッチ。
うつ伏せで倒れている拓也。
グッチ「(動揺)…」

第二話に続く         

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