疲労宴 コメディ

指輪紛失にケーキ入刀……遠藤良太(65)の担当する最後の結婚式は、まだまだトラブルがあったのです。
マヤマ 山本 20 1 0 06/14
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第一稿

<登場人物>
遠藤 良太(65)結婚式場チーフスタッフ
近野 結(27)新婦
新庄 拓郎(20)新郎
宝田 恵子(34)結婚式場スタッフ
白石 純(26)同
岩井 美奈 ...続きを読む
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<登場人物>
遠藤 良太(65)結婚式場チーフスタッフ
近野 結(27)新婦
新庄 拓郎(20)新郎
宝田 恵子(34)結婚式場スタッフ
白石 純(26)同
岩井 美奈(23)同
末永 幸一(73)演歌歌手
月島 (32)末永の付き人
上司



<本編>
○結婚式場・披露宴会場・前
   何か探している様子の新庄拓郎(20)。
   そこにやってくる遠藤良太(65)。
遠藤「新庄様、どうかされましたか?」
新庄「あ、何か指輪落としたみたいで」
遠藤「えぇ!? それは大変じゃないですか。どちらで落とされたかおわかりになりますか?」
新庄「さぁ……? でも、多分控え室だと思うんですよね」
遠藤「わかりました。では、私が控え室に行って参りますので、新庄様はこちらでお待ちになって下さい」
新庄「お手数おかけします」
遠藤「いえいえ。私にとっても、今日は大事な結婚式ですから」
   急いでその場を去る遠藤。

○同・新郎控え室
   必死に指輪を探す遠藤。
遠藤「ない、ない。披露宴始まったら皆が写真撮ったりもする訳で、もしその時に新郎が指輪をはめてなかったら……それはマズい!」

○同・披露宴会場・前
   一人立っている新庄。そこにやってくる近野結(27)、宝田恵子(34)、岩井美奈(23)。
結「お待たせ。(ドレスを見せて)どう?」
新庄「うん、いいね。でさ、実は……」
美奈「あ、そうだ。お預かりしていた指輪、お返ししますね」
   新庄に指輪を渡す美奈。
新庄「あれ、何で?」
美奈「何でって、お顔洗いに行かれた時にお預かりしたじゃないですか」
新庄「あぁ、そうだったそうだった。ありがとうございます」
美奈「どういたしまして」
恵子「では、準備はよろしいですか?」
新庄&結「はい」

○同・同・中
   拍手の中、入場してくる結と新庄。

○同・新郎控え室
   散らかった部屋。
   必死に指輪を探す遠藤。
遠藤「ない! ない! な~い!」
   入ってくる白石純(26)。
白石「チーフ、どうかした?」

○同・廊下
   並んで歩く遠藤と白石。
遠藤「見つかったなら、見つかったって教えてくれればいいのに……」
白石「まぁ、いいじゃん。あったんだから」
遠藤「で、白石君は何の用?」
白石「あぁ、そうそう。大変なのよ」

○同・披露宴会場・中
   スタンドマイクの前に立つ上司。
上司「結婚には三つの『じょう』があると言われています。一つ、二人の間で『愛情』が深まるでしょう。二つ、二人は幸せの『頂上』を目指すでしょう。三つ、二人の名字が『新庄』になるでしょう」
   良い感じの笑いが起きる客席。
上司「では、お二人の門出を祝って、乾

○同・VIPルーム
   土下座する遠藤。
遠藤「お願いします」
   荷物をまとめている末永幸一(73)とそれを手伝う月島(32)。
末永「帰る!」
遠藤「ですから、そこを何とか……」
末永「帰るったら帰るの! プリンがないんなら、歌わない!」
月島「押忍。先生のおっしゃる通りです」
遠藤「私、本日で定年退職なんです。最後の結婚式なんです。何とか、私に免じて、歌っていただけませんでしょうか?」
末永「帰る帰る帰る」
遠藤「(まんじゅうの箱を出し)こちら、当式場自慢の紅白まんじゅうでございます。こちらではダメでしょうか?」
末永「和菓子なんかいらない!」
月島「押忍。先生は、洋菓子しか口にされないっス!」

○同・披露宴会場
   壁際に立つ恵子。
恵子「演歌歌手のくせに」

○同・VIPルーム
   末永に土下座する遠藤。末永の傍らに立つ月島。
遠藤「……それでしたら、ウエディングケーキなんていかがでしょう?」
末永「ウエディングケーキ?」
遠藤「イタリアの三ツ星レストランから引き抜いたパティシエが丹誠込めて作ったケーキでして、生クリームは北海道十勝で作られた……」
末永「……」
   ソファーに腰を下ろす末永。
末永「聞けば、貴方は今日で定年退職だそうで」
遠藤「え? あ、はい。そうです」
末永「では、仕方ありません。貴方に免じて歌って差し上げましょう」
遠藤「本当ですか!?」
末永「あ、勘違いしないでくださいね。決して、ケーキに釣られた訳ではありませんので」
月島「押忍。当然っス」
遠藤「……ありがとうございます」

○同・披露宴会場
   かなりの高さがあるウエディングケーキ。そのケーキに入刀する結と新庄。その前に集まる、カメラを持った出席者達。
   無数のシャッター音。
    ×     ×     ×
   結にケーキを食べさせる新庄。
新庄「はい、あ~ん」
   無数のシャッター音。
    ×     ×     ×
   新庄に食べさせるためのケーキを切り分けようと、土台の部分に根元から包丁を入れる結。
新庄「大丈夫?」
結「大丈夫な気がする」
   バランスを崩し、新庄に向かって倒れるケーキ。
新庄「え?」
   新庄を直撃するケーキ。頭から顔から服までクリームまみれになる新庄。
結「あ……」
   しばしの沈黙。
   これまでで最大数のシャッター音。結は笑顔+ピースサインで応える。

○同・厨房
   土台だけが残ったケーキを見る遠藤と恵子。
恵子「どうしましょう?」
遠藤「『どうしましょう』って言っても、仕方ないよ。これを何とか、人数分に切り分けるしか……」

○同・VIPルーム
   テーブルの上にある皿とフォークとナイフ。
   ナフキンをして椅子に座る末永と、その脇に立つ月島。
   ノックの音。
遠藤の声「失礼致します」
   入ってくる遠藤。
末永「お待ちしていました。ケーキ、楽しみにしていましたよ。ねぇ、月島君?」
月島「押忍」
遠藤「こちら、ウエディングケーキになります」
   皿に置かれた、ものすごく細く切られたケーキ。
   無言でケーキを見る末永。
    ×     ×     ×
   荷物を持って帰ろうとする末永と、末永にしがみつこうとして月島に取り押さえられている遠藤。
遠藤「お待ち下さい!」
末永「うるさい!」
遠藤「そこを何とか!」
末永「うるさいったらうるさい!」
遠藤「私、本日で定年退職なんです。最後の結婚式なんです」
末永「うるさいうるさいうるさい!」
   月島の手を振り払う遠藤。
遠藤「それでも、何としても、どんな手を使ってでも、先生には歌っていただきます」
末永「それじゃあ、一体どんな手を使うっていうおつもりですか?」
遠藤「うお~!」
   立ち上がり、走り出し、窓から身を乗り出す遠藤。
遠藤「どうしても歌ってくれないっていうなら、ここから飛び降ります!」
末永「え? え? ちょっ、落ち着いて下さい」
月島「押忍」

○同・外
   一階の窓から身を乗り出す遠藤。
月島の声「ここ、一階っス」

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