登場人物
・森園ヒカル(17)…高校二年生。男子生徒。
・新道海斗(17)…ヒカルの幼馴染み。男子生徒。
・瑞野緒音(17)…ヒカルの幼馴染み。女子生徒。
・森園かよ(43)…ヒカルの母
・笑空ちゃん(4)…謎の女の子
・教師(40代)
○高校・教室(夕方)
神奈川県横浜市。西日が差し込む教室。
黒板に書かれた日付は『12月1日』。
日直『田中 磯部』とある。
教室を出て行く生徒達。
○道(夕方)
学ラン、セーラー服姿の三人。
並んで歩く男子・女子・男子の後ろ姿。
森園ヒカル(17)、瑞野緒音(みずのおと)(17)、新道海斗(しんどうかいと)(17)。
緒音「望みってさぁ、子供の頃しか叶わないらしいよ?」
海斗「何それ?」
緒音「お姉ちゃんが言ってた」
ヒカル「子供の頃だけ……?」
緒音「20になったその日から、何もかもうまくいかなくなったってさ」
ヒカル「へぇ……」
緒音「わたし達、今17でしょ。だから、やりたいことは今のうちに!」
○タイトル
『リバーシブル』
三人の後ろ姿に重ねて。
ヒカルN「僕の人生は絵空事。子供の頃しか叶わない? もし生まれた時から叶わない望みがあったなら、僕はどう生きればいい」
○ゲームセンター(夕方)
遊んでいる三人。
プリクラゾーンの近くで足を止め、
緒音「ねぇ、プリクラ撮ろうよ。記念に」
海斗「プリクラ? なんの記念に?」
緒音「うーん。三人はずっと友達? みたいな?」
『男性のみの入場お断り』の看板が置かれている。
緒音「あんた達、わたしに感謝するがいい! よかったな、ここに女がいて(ドヤ顔)」
海斗「なんだよ、女性限定って。こんなの逆に差別だろ。なぁ? ヒカル」
ヒカル「あ、あぁ……」
どれで撮影するか吟味して回る緒音。
海斗「三人はずっと一緒なんて……ありえないだろ」
ヒカル「え?」
海斗「こういうのはさ、誰かが付き合っちゃったら終わりだもんな」
ヒカル「……!」
× × ×
プリクラを撮る三人。
緒音「ほら、ヒカルもっと楽しそうに!」
ヒカル「あ……うん……」
× × ×
写真にお絵描き。
『友情LOVE』と書き込む緒音。
海斗「友情LOVEってどっちだよ」
緒音「何が? どっちもよ!」
ヒカル「(二人の様子を見て)……」
緒音「どうしたの? 最近ヒカル元気ないよね? 悩みあったら相談乗るよ?」
海斗「友情LOVEだから?」
緒音「そう、友情LOVEだから」
笑っている緒音と海斗。
緒音「まさか恋の悩み?」
ヒカル「え……」
緒音「え、図星? もしかして図星?」
ヒカル「そ、そんなことあるわけないじゃん」
緒音「人肌恋しいこの季節。人々は寄り添うように恋人を作る。それがアオハルのクリスマスってもんだ!」
ヒカル「なんだそれ」
海斗「彼氏いないくせに」
緒音「うるさい!」
海斗「ヒカルは好きな人、いないの……?」
ヒカル「それは……」
海斗「……」
○らーめん『絵空ちゃん』(夜)
ひっそり佇む店の前にやって来た三人。
表の看板には『絵空ちゃん』とある。
ヒカル「(ぼそっと)絵空事……」
○同・店内(夜)
ラーメンを食べる三人。
海斗「ってか、俺らって、このラーメン屋来るの好き過ぎじゃね?」
緒音「何故か三人揃うと、気付いたらここに来ちゃってるよね」
海斗「懐かしいな。俺とヒカルの家が隣同士で」
緒音「わたしがその正面に引っ越してきた」
ヒカル「絵に描(か)いたようなストーリーだな」
緒音「そうかも!」
× × ×
スープをすすり、次第に底に見えてくる『絵空ちゃん』の文字。
ヒカルの声「自分が何者か、まだ知らなかった頃から、三人でここへ来る。昔からそれは変わらなくて……」
海斗を見つめるヒカルの眼差し。
○ヒカルの家・ヒカルの部屋(夜)
一軒家。
シンプルな部屋に、学ランとリバーシブルのコートがかかっている。
学ランを見つめ、
ヒカル「制服が全員同じだったら平等なのにな……。全員ズボン……」
ひとりクスッと笑い、
ヒカル「さすがに全員スカートはないか」
コンコンと扉のノック音。
森園かよ(43)が入って来る。
かよ「風呂沸いたよ」
ヒカル「あ、うん。今行く」
○同・浴室(夜)
上半身を鏡に映し、
ヒカル「なんで僕は、男なんだよ……」
鏡に背を向けると、背中には大きな赤いアザがある。
血が飛び散ったような形。
ヒカル「(鏡を見つめ)本当……なんなんだよ……」
○高校・屋上
海斗「話って何?」
緒音「ヒカルのことなんだけど」
海斗「ヒカルのこと?」
緒音「最近様子がおかしいと思わない? 昔はもっと明るかったと思うの」
海斗「確かに、大人しくて前より無口だよな」
緒音「何か知ってる?」
海斗「いや……」
緒音「でも……誰かに恋をしてるのよ。きっと」
海斗「えぇ!? 何それ、この前の冗談じゃなかったの?」
緒音「(寂しそうに)あれは、恋をする目をしてる……」
海斗「なんで分かるの?」
緒音「うーん……。それは……女の勘?」
海斗「! それって緒音のことなのかな?」
緒音「え、まさか……」
海斗「……」
緒音「わたしじゃ……ないと思う。別の誰か」
海斗「(落胆したように)そっか……」
遠くを見つめる緒音。それを見つめ、
海斗「なら、別の誰かなら、俺が緒音と付き合っても文句はないよな」
緒音「え!?」
海斗「友情LOVEは壊れないよな……」
緒音「!」
○同・教室(夕方)
ヒカル「え? コクられた!?」
緒音「そう。どう思う」
ヒカル「どうって……」
緒音「?」
ヒカル「お似合いだと思うよ。うん」
緒音「(少し残念そうに)……そっか」
ヒカル「?」
緒音「世の中は、誰かが切なくなるようにできている」
ヒカル「え?」
緒音「ううん。いいんだ、ありがとう」
教室を出て行く緒音。
ヒカル「(緒音の後ろ姿に)……」
○らーめん『絵空ちゃん』(夜)
看板を見つめるヒカル。
ヒカル「僕の想いなんて、やっぱり絵空事なんだ……」
○同・店内(夜)
ひとりラーメンをすする。
ヒカル「いつかこんな日が来てしまうと思ってた。そんなの分かってた……」
○道(夕方)
並んで歩く海斗と緒音の後ろ姿。
ヒカルが少し後ろを歩いている。
緒音「ヒカル? どうしたの? (手招き)」
ヒカル「……」
海斗「どうした?」
ヒカル「あぁもう! うんざりなんだよ!」
海斗「え?」
ヒカル「お前らといるの、うんざりなんだよ!」
海斗・緒音「!」
ヒカル「何がずっと三人一緒だ! 気持ちわりぃ!」
緒音「え……!」
海斗「なんだよそれ」
ヒカル「二人で勝手にしろよ……」
海斗「は? なんだよ、ヒカルにも好きな奴、ホントはいるんだろ?」
ヒカル「はっ?」
海斗「だから俺は……」
ヒカル「なんだよ、意味分かんねぇ!」
海斗はヒカルの胸ぐらを掴み、
海斗「俺が、ヒカルがずっとこの三人でいなくて済むようにしてやったんじゃねぇーかよ!」
ヒカル「!」
緒音「!」
海斗「さっさと好きな奴にコクって、ここからいなくなっちまえよ!」
ヒカル「!!」
海斗「ヒカルは緒音のこと、別に好きじゃねぇーんだろ?」
ヒカル「……」
緒音「!」
海斗「だから付き合った。文句あんのかよ!」
ヒカル「ふざけんなよ!」
ヒカルが海斗を殴ろうとする。
止めに入った緒音が、
緒音「やめてよ! もう、こんなのやめてよ!」
ヒカルは無言で立ち去る。
海斗「……」
○港の見える丘公園(夕方)
ヒカルの沈んだ様子。
並ぶガントリークレーンを見つめ、
ヒカル「キリンに見えても、本当は違う。目に見えている姿が、真実なわけじゃない」
○山下公園
『赤い靴はいてた女の子』像の前を通り過ぎる海斗と緒音。
海を見つめている。
緒音「この海の向こうには、違う世界が広がってるんだね」
海斗「俺らが見てる世界は、本当に一部だけなんだろうな」
緒音「ねぇ、仲直りしないの?」
海斗「え?」
緒音「ヒカルと」
海斗「……」
緒音「ボタン、掛け違えちゃったのかな」
○街中(クリスマスイブ・夜)
雪が舞っている。
リバーシブルのコートを着たヒカルが自転車を走らせている。
沢山のカップルを横切る自転車。
ヒカル「どうせ、あいつらは今頃一緒に……」
× × ×
手を繋ぎ笑顔で歩く、海斗と緒音の姿。
ヒカルの声「本当はこの世界に、サンタはいない。クリスマスの夜くらい奇跡が起きたっていいのに……」
× × ×
スピードを上げる自転車。
やがて目の前に、光り輝く巨大なクリスマスツリーが見えてくる。
ヒカル「! ラーメン屋……じゃ、ない!?」
突然、ツリーの前に赤い靴を履いた笑空(えそら)ちゃん(4)が飛び出してくる。
ヒカル「!」
慌ててブレーキをかけるが、自転車は止まらない。
ヒカルを見てにっこり笑う笑空ちゃん。
ヒカル「危ないぃ!」
力いっぱいブレーキを握る。
ピタリとタイヤが止まり、その勢いで自転車から投げ出されるヒカル。
ヒカル「わぁぁああーーー!」
笑空ちゃんごと、吸い込まれるように光の中へ。
○ヒカルの家・ヒカルの部屋(朝)
目を覚ますヒカル。
ハッとして、飛び起きる。
身体を触り、
ヒカル「え……怪我……。えっ!? えぇーーー!?」
身体には怪我一つなく、全く違う容姿の女性になっている。
ヒカル「え……何これ……!」
慌てて姿見に自分を映すヒカル。
ヒカル「え、これ、誰!?」
顔を両手で叩く。
ヒカル「何これ女じゃん! 声まで……」
部屋を見渡すヒカル。
シンプルな部屋に、セーラー服とリバーシブルのコートが、かかっている。
以前と逆側が表になっているコート。
ヒカル「嘘だろ……スカートになってる」
上半身を脱ぎ、背中を鏡に映す。
背中には大きな赤いアザがある。
血が飛び散ったような形。
ヒカル「(少しがっかりした様子で)これは、あるんだ……」
コンコンと扉のノック音。
かよの声「入るよー」
ヒカル「(ジタバタ)え、ちょと待て、ちょと待て……!」
かよが扉を開ける。
ヒカル「ひぃ!」
ノーリアクションのかよ。
かよ「何してんのヒカル。あんた遅刻するよ」
ヒカル「へ……」
かよ「朝ごはん出来てるから、早く着替えて来なさい」
扉が閉まる。
ヒカル「え、どゆこと……。着替えてって、あ、あれにぃ!?」
○同・食卓(朝)
セーラー服を着たヒカルが、恐る恐るやって来る。
かよ「今日やらかしたのよ。せっかく不燃ごみの日だったのに、この前割れたお皿出し忘れちゃって……」
ヒカル「それ、この前も同じこと……」
かよ「ん?」
ヒカル「え?」
かよ「この前?」
ヒカル「……」
テーブルに置いてある新聞の日付を見るヒカル。
『12月1日』とある。
ヒカル「12月1日!?」
かよ「早いわよね。今日からもう12月なんて」
ヒカル「ウソ……そんなはず……」
○高校・教室(朝)
黒板に書かれた日付は『12月1日』。
日直『田中 磯部』とある。
恐る恐る教室を外から覗き込むヒカル。
ヒカル「12月1日……。おかしい! 絶対におかしい! 昨日はクリスマスイブだったはずなのに……」
緒音の声「おっはよう、ヒカル!」
ビックリして振り返るヒカル。
ヒカル「ひぃ!」
緒音「どうしたのヒカル? そんなビックリした顔して」
ヒカル「いや……だって……」
緒音「?」
ヒカル「逆に驚かないの? この状況!」
緒音「何が? どういうこと?」
ヒカル「……」
海斗がやって来る。
海斗「二人ともそんなとこで何やってんの?」
ヒカル「!」
緒音「なんかヒカルの様子がおかしいの」
海斗「様子がおかしいのはいつものことだろ」
ヒカル「え!」
緒音「そうかもだけど。なんか、いつもにも増しておかしいの!」
近距離でヒカルの顔を覗き込む海斗。
ヒカル「(動揺して)ち、近いです……」
海斗「意外とかわいい顔してんな」
ヒカル「!」
海斗「(ニヤリと笑い)なんてな」
立ち去る海斗。
ヒカル「あー心臓止まるかと思った……。てかこれ、誰の顔だよ!」
× × ×
数学の授業。答案用紙を手に持つ教師(40代)が、
教師「じゃぁ、今から期末テスト返すぞ」
ヒカル「え、また……!?」
× × ×
教師「森園!」
呼ばれて取りに行く。目を見開き、
ヒカル「うわっ、やっぱりこの点数だ!」
× × ×
教師「じゃぁ、次この問題、森園答えてみろ」
ヒカル「は、はい。(立ち上がり)YイコールXプラス3です……」
教師「そうだな。正解だ」
緒音と海斗が目を見合わせ驚いた様子。
ヒカル「(着席し小声で)全く同じ問題……」
○同・屋上
昼食を一緒に食べる三人。
ヒカル「ホントに? ホントにどこもおかしくない!?」
緒音「(笑いながら)おかしくないって。おかしいけど?」
ヒカル「(恐る恐る)わ、た、し、だよ?」
緒音「うん」
ヒカル「! ほら、なんていうか、顔とかさ」
緒音「え? 分かった。じゃあ、整形したとか!」
ヒカル「いやいやいや」
緒音「いつもと一緒じゃーん」
海斗「髪切ったとか?」
ヒカルの髪に触れる海斗。
ヒカル「!」
緒音「(笑いながら)あー面白い。今日どうしちゃったのよ、ヒカル」
ヒカル「海斗こそ……こんなんでしたっけ?」
海斗「え? それどういう意味?」
ヒカル「い、いや、なんでもないです」
緒音「ウケる。敬語なんだけどー」
海斗「おかしいとこがあるとしたら……」
ヒカル「(ドキドキして)あるとしたら!?」
海斗「突然、テストの問題を理解してたとか」
ヒカル「!」
緒音「点数ヤバイのに、何故か当てられたら、ちゃんと答えられるっていうね」
ヒカル「だってそれは全く同じ……」
海斗・緒音「?」
ヒカル「いや……」
海斗「まさか、ヒカルがテスト後に復習?」
ヒカル「復習っていうか、まぁ……」
緒音「ウソ、ヒカルがガリ勉に目覚めたの?」
ヒカル「そんなんじゃないんだけど」
緒音「テスト後とか、間に合ってないし!」
海斗「マジでなんかあった?」
ヒカル「髪切ったっていうか、整形したっていうか、そんなレベルじゃなくて……。それはもう、ありすぎて……」
○同・教室(夕方)
西日が差し込む教室。
黒板に書かれた日付は『12月1日』。
日直『田中 磯部』とある。
教室を出て行く生徒達。
○道(夕方)
セーラー服、学ラン姿の三人。
並んで歩く女子・女子・男子の後ろ姿。
ヒカル、緒音、海斗。
緒音「望みってさぁ、子供の頃しか叶わないらしいよ?」
海斗「何それ?」
緒音「お姉ちゃんが言ってた」
ヒカル「子供の頃だけ……?」
緒音「20になったその日から、何もかもうまくいかなくなったってさ」
ヒカル「へぇ……」
緒音「わたし達、今17でしょ。だから、やりたいことは今のうちに!」
ヒカル「(小声)あの日と同じだ……」
海斗「子供の時にだけ起こる不思議な出来事ってあんのかな」
ヒカル「え?」
海斗「まるで夢みたいな」
緒音「子供にしては大きくなり過ぎでしょ。そういうのってだいたい幼稚園くらいの話じゃない?」
海斗「そっか?」
ヒカル「そんな話、あの日もしてたっけ……」
海斗「え?」
ヒカル「あ、いや……」
○ゲームセンター(夕方)
遊んでいる三人。
プリクラゾーンの近くで足を止め、
緒音「ねぇ、プリクラ撮ろうよ。記念に」
海斗「プリクラ? なんの記念に?」
緒音「うーん。三人はずっと友達? みたいな?」
『男性のみの入場お断り』の看板が置かれている。
緒音「あんた、わたし達に感謝するがいい! よかったな、ここに女が二人もいて(ドヤ顔)」
ヒカル「わ、わたし達!?」
海斗・緒音「?」
ヒカル「あぁ、いや……」
海斗「なんだよ、女性限定って。こんなの逆に差別だろ」
どれで撮影するか吟味して回る緒音。
海斗「三人はずっと一緒なんて……ありえないだろ」
ヒカル「え?」
海斗「こういうのはさ、誰かが付き合っちゃったら終わりだもんな」
ヒカル「……!」
× × ×
プリクラを撮る三人。
緒音「ほら、ヒカルもっと楽しそうに!」
ヒカル「あ……うん……」
× × ×
写真にお絵描き。
『友情LOVE』と書き込む緒音。
海斗「友情LOVEってどっちだよ」
緒音「何が? どっちもよ!」
ヒカル「(二人の様子を見て)……」
緒音「どうしたの? 今日ずっとヒカルおかしいし? 悩みあったら相談乗るよ?」
海斗「友情LOVEだから?」
緒音「そう、友情LOVEだから」
笑っている緒音と海斗。
緒音「まさか恋の悩み?」
ヒカル「え……」
緒音「え、図星? もしかして図星?」
ヒカル「そ、そんなことあるわけないじゃん」
緒音「人肌恋しいこの季節。人々は寄り添うように恋人を作る。それがアオハルのクリスマスってもんだ!」
ヒカル「なんだそれ」
海斗「彼氏いないくせに」
緒音「うるさい!」
海斗「ヒカルは好きな人、いないの……?」
ヒカル「それは……」
海斗「……」
○らーめん『笑空ちゃん』(夜)
店の前にやって来た三人。
表の看板には『笑空ちゃん』とある。
ヒカル「(大声)えぇ!? 笑空ちゃん!?」
緒音「ビックリすんなー。何よ、何?」
ヒカル「だって、『エソラ』の文字が!」
緒音「文字? 文字が何よ?」
ヒカル「へ……前から、笑空ちゃん?」
緒音「(笑って)どうしたの? 今日やっぱりおかしいよ」
海斗「変なもんでも食ったか?」
ヒカル「ここ、もとから笑空ちゃん? この漢字だった?」
緒音「ずっと昔からそうじゃん」
海斗「そうだよ。何も変わってないけど」
ヒカル「……!」
○同・店内(夜)
ラーメンを食べる三人。
スープをすすり、次第に底に見えてくる『笑空ちゃん』の文字。
ヒカル「(呟く)絵に描(か)いたはずの空が……笑ってる」
ヒカルを見つめる海斗の眼差し。
○街中(夜)
ヒカルが街中を、きょろきょろ見回しながら走っている。
以前と逆側が表になっている、リバーシブルのコートを着ている。
○同・クリスマスツリー前(夜)
大きなツリーの前に人だかり。
足を止めるヒカル。
人々の声「3、2、1!」
ライトアップされるツリー。
歓声が上がる。
ヒカル「クリスマスが……これから、来る」
目の前に光り輝くツリー。
× × ×(O.L)
ヒカルの声「あの日、僕は……」
光り輝く巨大なクリスマスツリー。
慌ててブレーキをかけるが、ヒカルの自転車は止まらない。
ヒカルを見てにっこり笑う笑空ちゃん。
自転車から投げ出され、光の中へ。
× × ×
ヒカル「子供の時にだけ起こる不思議な出来事……」
冷たい風が足元を通り過ぎ、スカートが揺れる。
ヒカルN「この世界はどういうわけか、僕はわたしになっていた。そしてそれ以外は何も変わることのない日常だった」
ツリーを見つめ、立ち尽くすヒカル。
○高校・屋上
緒音「話って何?」
海斗「ヒカルのことなんだけど」
緒音「ヒカルのこと?」
海斗「最近様子がおかしいよな? あれ、大丈夫かな?」
緒音「確かに、最近は一段とおかしいわよね」
海斗「何か知ってる?」
緒音「いや……。でも、誰かに恋をしてるのよ。きっと」
海斗「えぇ!? 何それ、この前の冗談じゃなかったの?」
緒音「(寂しそうに)あれは、恋をする目をしてる……」
海斗「なんで分かるの?」
緒音「うーん……。それは……女の勘?」
海斗「! そっか……他に好きな……」
緒音「きっと、ヒカルは海斗のことが好き」
海斗「え、まさか……」
緒音「……」
海斗「……」
緒音「友情LOVEなんて、本当はないんだよね」
海斗「!」
緒音「ずっと、そうであってほしいって、わたしが引き止めたかっただけなんだよね」
海斗「え……」
緒音「好きなんでしょ、海斗も」
海斗「……」
緒音「ヒカルのことが」
海斗「!」
緒音「知ってた……」
その場を立ち去る緒音。
○ヒカルの家・ヒカルの部屋(夜)
姿見の前で女性らしい仕草をしてみせるヒカル。
嬉しそうな様子。
ふと我に返り、ゾッとする。
ヒカル「あぁーーわたし何やってるのよ!」
ジタバタ。
かかっているセーラー服を見つめる。
ヒカル「この後って、どうなるの? クリスマス前にあの二人は付き合ってしまう。まさか、この姿で未来を変えろってこと?」
姿見に映る女性の姿の自分を見つめる。
○高校・教室(夕方)
誰もいない教室。
ヒカルのもとに海斗が来る。
ヒカル「あ、海斗……。用って?」
海斗「あぁ。あのさぁ……」
ヒカル「?」
海斗「俺と付き合ってほしい。俺、ずっとヒカルのことが好きだったんだ」
ヒカル「(驚き)はっ? えぇ!?」
海斗「えぇ!?」
ヒカル「まさか、そんなことってある? 信じられない!」
海斗「そ、そんなにこれ意外か?」
ヒカル「いやだって、男……!」
海斗「男?」
ヒカル「あ、いや……ちょっと混乱」
海斗「?」
ヒカル「だって、海斗は、緒音のことが好きなんじゃないの?」
海斗「えっ?」
ヒカル「えっ? 違うの?」
海斗「緒音がいたから、ずっとこのままの方がいいのかなって思ってたけど。三人ずっと一緒がいいのかなって思ってたけど」
ヒカル「……」
海斗「でも、もしそれで、ヒカルが誰かのものになるくらいだったらイヤだなって」
ヒカル「!」
海斗「緒音も応援してくれてるんだ」
ヒカル「え……。緒音が!?」
海斗「後押ししてくれてさ」
ヒカル「ウソ、そんなわけ……(動揺)」
○らーめん『笑空ちゃん』(夜)
ふらふらと店の前にやって来るヒカル。
看板を見つめ、
ヒカル「わたしの想いなんて、所詮絵空事……じゃなかったの?」
笑空ちゃんの声「どうしたの?」
ヒカル「え……(声の方に振り向く)」
赤い靴を履いた、笑空ちゃんの姿。
ヒカル「あ! あの時の!」
にっこり笑う、笑空ちゃん。
ヒカル「怪我はしてない? 大丈夫だった?」
首をかしげる、笑空ちゃん。
ハッとして、
ヒカル「! 怪我してない……。もしかして、わたしってもう死んでる!? あの時に!」
にっこり笑う、笑空ちゃん。
ヒカル「この世界は、わたしの理想と妄想が生み出した仮想空間で、すでに本当のわたしは、あの世に召されてる!?」
笑空ちゃん「告白、嬉しかった?」
ヒカル「えぇっ!?」
笑空ちゃん「なんですぐに、オッケーしないの?」
ヒカル「……。なんでそれをあなたが。あなたは一体、誰なの?」
笑空ちゃん「笑空ちゃん」
ヒカル「え、笑空ちゃん!?」
店の看板を見るヒカル。
笑空ちゃん「わたしの名前は、笑空ちゃん」
ヒカル「……」
笑空ちゃん「リバーシブルの世界へようこそ!」
ヒカル「リバーシブルの世界!?」
笑空ちゃん「ここはね、リバーシブルの世界なんだよ」
ヒカル「! それって、あの日、自転車で、光の中に突っ込んで……!」
にっこり笑う、笑空ちゃん。
ヒカル「ねぇ、わたしは生きてるの? この世界は本当の世界なの?」
笑空ちゃん「あなたにとって、本当の姿はどっち?」
ハッとするヒカル。
笑空ちゃん「どうしたの? 背中」
ヒカル「え?」
笑空ちゃん「背中、怪我してるよ?」
ヒカル「それって……」
笑空ちゃん「いつもそう言われて、嫌だった」
ヒカル「!」
笑空ちゃん「あなたの背中には、アザがある」
ヒカル「な、なんでそんなこと、あなたが知ってるのよ」
笑空ちゃん「笑空ちゃんだから(にっこり)」
ヒカル「……」
笑空ちゃん「姿が変わったら、消えると思った?」
ヒカル「!」
笑空ちゃん「それはね、あなたがあなたである証。この世界でも、あなたである証」
ヒカル「アザは生まれつき、わたしの背中にあるものなの。まるで背中を刺されたみたいに。血が飛び散ったみたいに……」
笑空ちゃん「なんで背中にアザがあるの?」
ヒカル「知らないわよ! そんなの。そんなのわたしが聞きたいくらいよ!」
笑空ちゃん「背中のアザは、前世の記憶」
ヒカル「前世?」
笑空ちゃん「あなたは誰かを守る為に、誰かの為に生きていた」
ヒカル「代わりに刺されたとでも?」
笑空ちゃん「次生まれ変わった時は、自分の為に生きてほしい」
ヒカル「え……」
笑空ちゃん「背中のアザにはそんな想いが託されてるんだって」
ヒカル「自分の為……」
笑空ちゃん「あなたは今、自分の為に生きてる?」
ヒカル「……」
笑空ちゃん「また誰かの為に、自分を殺すの?」
ヒカル「!」
○新港パーク(夕方)
ヒカル「わたし、ずっと想いを飲み込む人生だった。永遠にこんな日は来ないと思ってた」
海斗「え?」
ヒカル「それが、その方が、誰かの為だと思ってた」
海斗「誰かって?」
ヒカル「ずっと、絵空事。永遠にわたしの想いは絵空事……」
海斗「絵空事?」
ヒカル「わたし、ずっと海斗のことが好きだった」
海斗「!」
目の前の、ビルの上の方に見える天使の像を指差すヒカル。
ヒカル「ねぇ、知ってる? あの天使の像は、想いを叶えてくれるんだって」
海斗がそっとヒカルの手を握り、
海斗「叶ったじゃん」
動揺して、思わず目を背けるヒカル。
ヒカル「ねぇ、一つだけ、聞いてもいい?」
海斗「ん? 何?」
ヒカル「もしわたしが、男だったらどうしてた?」
海斗「(笑って)え? 何それ? どういうこと?」
ヒカル「緒音のことを、好きになってた?」
海斗「……?」
ヒカル「あ、いや、ごめん。やっぱ、なんでもないや」
海斗「ヒカル、面白いこと言うね」
ヒカル「……」
海斗「そうだなぁ。好きになってたかも」
ヒカル「え……」
海斗「それでも、ヒカルのこと」
ヒカル「!」
○高校・教室
緒音「で、コクられて、付き合うことにしたんでしょ?」
ヒカル「そう。どう?」
緒音「どうって……」
ヒカル「怒ってる?」
緒音「え? 二人お似合いだと思うよ。うん」
ヒカル「……そっか」
緒音「世の中は、誰かが切なくなるようにできている」
ヒカル「……」
緒音「いつかこんな日が来てしまうと思ってた。そんなの分かってた……」
ヒカル「え……その言葉」
緒音「ん?」
ヒカル「いや……。でも、やっぱり、こうなったの、良くは思ってないってことだよね」
緒音「え、どうして?」
ヒカル「だって、こんな日が来てしまうって……。緒音はやっぱり海斗のことを……!」
緒音「え?」
ヒカル「え?」
緒音「友情LOVEは、ないんだなって」
ヒカル「……」
緒音「でも、別にいいの。ついでに言うとね。わたしね、どちらかというと、ヒカルのことが好きだった」
ヒカル「えぇ!?」
緒音「変だろうけど、ヒカルがもし男の子だったら、付き合ってたかな? (微笑む)」
教室を出て行く緒音。
ヒカル「(緒音の後ろ姿に)……」
○赤レンガ倉庫前
ヒカルと海斗が、楽しそうにはしゃいで駆けて行く。
○同・幸せの鐘
ヒカルと海斗が二人で鳴らしている。
海斗「これでヒカルは永遠俺のもの」
ヒカル「ちょっとー。またまたー」
海斗「え、嫌なの?」
ヒカル「いやぁーそういうことじゃないけど」
海斗「素直じゃねぇなぁ」
○山下公園
『赤い靴はいてた女の子』像の前を通りかかるヒカルと海斗。
ふと足を止めるヒカル。
ヒカル「赤い靴……」
海斗「どうした?」
ヒカル「赤い靴はいてた女の子って、違う世界に行っちゃうんだよね?」
海斗「あー違う世界っていうか、異人さんに連れられて行っちゃった……だろ?」
ヒカル「それって、まるで……」
海斗「?」
ヒカル「わたしも違う世界に来ちゃったのかな」
海斗「ヒカルはおかしなこと言うな」
× × ×
海を見つめている二人。
ヒカル「この海の向こうには、違う世界が広がってるんだね」
海斗「俺らが見てる世界は、本当に一部だけなんだろうな」
ヒカルの声「もう一つの世界では、この海斗の隣にいるのは緒音……?」
○街中(クリスマスイブ・夜)
雪が舞っている。
リバーシブルのコートを着たヒカルが歩いている。
ヒカル「クリスマスも約束の場所がいつものラーメン屋って。(笑って)ま、いっか」
○らーめん『笑空ちゃん』(夜)
店の前に海斗の姿。
ヒカルに手を振っている。
手を振り返し、海斗のもとへ。
ヒカルの後ろから自転車が迫って来る。
気配を感じ、振り返るヒカル。
ヒカル「えっ!?」
眩しい自転車のライトが迫って来る。
ヒカル「!」
スピードを落とすことなく向かってくる自転車。
近づいて来る自転車に乗っている人物の顔が、次第に笑空ちゃんへ。
ヒカルを見てにっこり笑う笑空ちゃん。
ヒカル「わぁぁああーーー!」
目をギュッと瞑る。
笑空ちゃんと共に、吸い込まれるように光の中へ。
○病院・病室(クリスマスイブ・夜)
ベッドで眠っているヒカル。
怪我を覆い、姿は男性に戻っている。
病室には、リバーシブルのコートがかけられており、再び逆側が表になっている。
窓の外を舞う雪。
○コスモワールド・観覧車(夜)
ゴンドラの中。
海斗と緒音が乗っている。
緒音「わたし達ってさ、なんで付き合ったんだろ」
海斗「……」
緒音「これってさ、誰よりも大切な人を守ろうとして……誰のことも守ってないよね」
海斗のスマートフォンが鳴る。
メッセージを開くと、目を見開く。
緒音「どうした?」
海斗「ヒカルが!」
緒音「え?」
海斗「事故に遭ったって!」
緒音「!」
海斗「どうしよう……」
緒音「行ってやりなよ」
海斗「え……」
緒音「ヒカルのとこ」
海斗「……」
緒音「行きなよ! さっさと、行ってやんなよ!」
○病院・病室(夜)
勢いよく扉を開け、入って来る海斗。
海斗「ヒカル!」
眠ったままのヒカル。
海斗「……」
海斗はヒカルの手を握り、
海斗「ごめんな……」
○コスモワールド(夜)
一人取り残された緒音。
寂しそうに風景をただ見つめている。
○病院・病室
目を覚ますヒカル。
ハッとして、飛び起きる。
ヒカル「(体を押さえながら)いてててて」
姿が男性に戻っていることを自覚し、
ヒカル「えぇ……!?」
スマートフォンを見ると『12月25日』とある。
ヒカル「あの日に……戻って来た? 夢? 僕はずっと長い夢を見てたのか……」
緒音からメッセージが来ていることに気が付き、開く。
『怪我大丈夫? わたし海斗と別れたから(笑)』の文字。
ヒカル「えぇぇ!?」
かよと海斗が、病室に入って来る。
海斗「ヒカル!」
かよ「あら、目が覚めたの?」
ヒカル「……!」
かよ「海斗君、ヒカルが怪我したって知ってすぐに飛んで来てくれたのよ。ホントいい子ね」
ヒカル「僕って……昨日どうしたんだっけ?」
かよ「まぁ、覚えてないの? ヒカル自転車で突っ込んだのよ。ほら雪降ってて、地面が凍結してたから」
海斗「ハンドル切ってガードレールにドンってさ」
ヒカル「え……ガードレール? 笑空ちゃんは!?」
かよ「え? なんのことよ?」
ヒカル「ほら、女の子! 誰か巻き込んだりしなかった?」
かよ「女の子? ヒカル寝ぼけてんじゃない?」
ヒカル「え……」
かよ「ただの単独事故よ。ホント、誰のことも巻き込まなくてよかったわよ。怪我も大したことなくて」
ヒカル「やっぱり、夢……」
かよ「今、先生呼んで来るから」
病室を出て行くかよ。
海斗「はぁ、よかったー」
ヒカル「別によくはねぇーよ」
海斗「だって、ヒカルになんかあったら、俺……」
ヒカル「!?」
海斗「いや……」
ヒカル「そんなことより、なんだよこれ」
緒音のメッセージを見せる。
海斗「あぁ……」
ヒカル「わざわざクリスマス前に付き合って、イブの夜に別れる奴があるかよ。それこそ、よくねぇーだろ」
海斗「まぁ、そうかもな。でも、たぶんお互いに別れる気だった……」
ヒカル「へ?」
海斗「それより、ごめんな、俺、あの日ヒカルに酷いこと言った。ホントにごめん」
ヒカル「あれは僕も酷いこと言った。え、ってか、僕のせいで……」
海斗「あ、いや、それは違う」
ヒカル「なら、なんで」
海斗「やっぱり、嘘は付きたくなくて」
ヒカル「え……」
海斗「とにかく、今はヒカルが無事でよかった。よかった……」
○らーめん『笑空ちゃん』(夜)
ヒカル「退院祝いがラーメンってなんだよ」
緒音「別にいいでしょ!」
海斗「昔からいつだってここだろ?」
ヒカルは店の看板に目をやる。
『笑空ちゃん』とある。
ヒカル「(大声)えぇ!? 笑空ちゃん!?」
緒音「ビックリすんなー。何よ、何?」
ヒカル「だって、『エソラ』の文字が!」
緒音「文字? 文字が何よ?」
ヒカル「へ……前から、笑空ちゃん?」
緒音「(笑って)どうしたの? 何言ってんのよ?」
海斗「おいおい、頭でも打ったか?」
ヒカル「頭は打ったよ! ここ、もとから笑空ちゃん? この漢字だった?」
緒音「ずっと昔からそうじゃん」
海斗「そうだよ。何も変わってないけど」
ヒカル「……!」
○同・店内(夜)
ラーメンを食べる三人。
ヒカル「海斗と緒音は、その……もう大丈夫なの?」
緒音「何が?」
ヒカル「いやぁ……だって、ねぇ?」
海斗「俺らいろいろ間違ってたんだよな」
ヒカル「え……」
緒音「ヒカルに好きな人がいるかもって」
海斗「それが緒音じゃないなら、俺もさっさと緒音と付き合って、いっそこの三人の関係終わらせた方がいいのかなって」
緒音「そう。わたしの好きな人は、別の誰かを見つめてる。なら、海斗でもいっかなって」
ヒカル「え……それって?」
緒音「わたしは、ヒカルが好きだった」
ヒカル「!」
緒音「でも、海斗といても、ヒカルの為にはならなかった。もちろん自分の為にもね」
海斗「俺が緒音といても、それは同じこと」
ヒカル「……」
スープをすすり、次第に底に見えてくる『笑空ちゃん』の文字。
ヒカル「(呟く)絵に描(か)いたはずの空が……笑ってる」
緒音「えっ?」
ヒカル「僕はずっと、想いを飲み込む人生だった。それが、その方が、誰かの為だと思ってた」
海斗「誰かって?」
ヒカル「海斗の為だと思ってた」
海斗「!」
ヒカル「ずっと、絵空事。永遠に僕の想いは絵空事……」
緒音「絵空事?」
ヒカル「でも、絵空事じゃなかった」
器の底に『笑空ちゃん』の文字。
ヒカル「僕はずっと、海斗のことが好きだったんだ……」
海斗「!」
緒音「いいじゃん。誰が誰のこと好きでも。もっと自由でいいじゃん。障害があった方が恋は燃えるってね!」
ヒカル「僕は、自分の人生を生きる。自分の為に生きるんだ」
緒音「友情LOVEなんて、本当はないんだよね」
海斗「!」
緒音「ずっと、そうであってほしいって、わたしが引き止めたかっただけなんだよね」
海斗「え……」
緒音「好きなんでしょ、海斗も」
海斗「!」
ヒカル「!」
緒音「なんだろ、いつの間にか、知ってた気がする。(笑って)でもまさか、こっちのパターンとはねー。わたしが残るんかい!」
顔を見合わせるヒカルと海斗。
器の底に『笑空ちゃん』の文字。
ヒカルの声「あなたにとって、本当の姿はどっち? リバーシブルに裏はない」
END
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