音痴が変人に恋するなんてありえない! 恋愛

音痴の演劇部員奥野ノノカは、次回公演のミュージカルの役を狙っている。そんな折、変人兼高アラタが転校してきて、演劇部のオーディションに参加するのだが……。
tide 59 0 0 09/23
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第一稿

人 物
奥野ノノカ(17) 女子高生、演劇部員
兼高アラタ(17) 高校生
細川レイ(18) 演劇部部長
鈴木正(48) 演劇部顧問
部員1
部員2


〇高校・ ...続きを読む
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人 物
奥野ノノカ(17) 女子高生、演劇部員
兼高アラタ(17) 高校生
細川レイ(18) 演劇部部長
鈴木正(48) 演劇部顧問
部員1
部員2


〇高校・廊下(朝)
   人気のない廊下の突き当りに、非常口の誘導灯と金属製のドア。
   ドアの前で奥野ノノカ(17)が台本を片手になにやら呟いている。セリフが歌に変わり 
   始める。
   突如ドアノブがガチャガチャと音をたてる。
ノノカ「ひゃっ!」
   恐る恐るドアノブに手を伸ばすノノカ。
   勢いよくドアが開く。
   外には汗だくで乱れた服装の兼高アラタ(17)が立っている。
兼高「窓の数数えながら歩いてたら遅刻しちゃった!ごめん、急いでるから!」
   と走り去る。
ノノカ「まだ始業前だけど。てか、誰?」

〇同・教室(朝)
   教壇に兼高が立っている。黒板には「兼高アラタ」と大きく書かれている。
兼高「兼高アラタです!千葉から来ました!趣味は、えー、窓を数えること、毛虫の毛を集める
 こと、枝毛をきれいに二本に裂くこと、それから、えー色々です!よろしくお願いします!」
   教室は静まり返っている。
教師「仲良くしてやれ。席は……」
   兼高はノノカの隣の空き席に歩き出している。
兼高「どっかで会ったよね?」
ノノカ「はじめまして」
   と目を合わせずに答える。
兼高「前世かなぁ」
   ノノカ、机ごと兼高から離れる。

〇同・廊下
   カバンをもった生徒らが連れ立って歩いている。
   ノノカが生徒らの流れに逆らって歩いている。
   ノノカのすぐ後ろに兼高。

〇同・演劇部の部室
   ノノカが入って来る。
   部員たちが各々芝居の稽古をしている。
   細川レイ(18)が近づいてくる。
レイ「誰、その子。入部希望?」
ノノカ「え?うわっ!兼高!なんでついて来てんの」
兼高「演技、上手!流石演劇部だね」
ノノカ「ケンカ売ってる?」
レイ「兼高、君?演劇部に興味あるのよね」
兼高「うーん、あんまり。奥野さんがどこ行くのか気になっただけで」
レイ「そっか。これから次の公演のオーディションやるから、兼高君も受けてね。台本読みなが
 らでいいから」
ノノカ「おいおい」
兼高「うーん。じゃあちょっとだけ」
ノノカ「おいおいおい」
レイ「ノノカ、貸したげて」
ノノカ「おいおいおいおい」

〇同・職員室
   鈴木正(47)が「次回公演 オーディション要綱」と書かれた紙を眺めている。
   鈴木立ち上がり、職員室から出ていく。

〇同・演劇部の部室
   鈴木が部員たちの前に立っている。
鈴木「じゃ、部内オーディション始めるね。皆、リラックス、リラックスよ。いい?」
   硬い表情のノノカ。
鈴木「一番手、細川さん、よろしく」
レイ「はい!よろしくお願いします」
   深呼吸してから堂々と演技を始める。
   並んで座っている兼高とノノカがレイの芝居をじっと見つめている。
   やがてレイが歌い始める。
兼高「ねえ、なんで急に歌ってるの」
   とレイを見つめながら囁く。
ノノカ「あんた、ミュージカル知らないの」
   レイを見つめながら頷く兼高。
   レイが歌い終わり、深く一礼する。
   笑顔で大きな拍手を送る兼高。
   唇を真一文字に結んでいるノノカ。

〇同・外観
   グラウンドで野球をしている高校生たち。
   屋上で金管を吹いている高校生。

〇同・演劇部の部室
鈴木「リラックス、リラックス。いい?」
ノノカ「よ……よろしくお願いします」
   硬い表情のまま演技を始めるノノカ。やがて歌い出すが、とても音痴。
   ノノカの演技が終わる。
   気のない拍手に混じる忍び笑い。
   耳まで真っ赤にして兼高の方に歩いていくノノカ。
兼高「すごいよ!47回!」
ノノカ「はあ?」
兼高「音程外した回数!素数だよ!」
   ノノカが兼高の脛を思い切り蹴飛ばす。
   飛び上がって痛がる兼高。
鈴木「最後に……兼高君。やってみる?」
兼高「はい!」
   と前に歩み出る。
レイ「ちょっと、台本は?」
兼高「覚えました!」
レイ「へーえ」
兼高「よろしくお願いします!」
   と演技を始める。
   レイがノノカに近づいてくる。
レイ「めちゃくちゃね」
ノノカ「しかもセリフ全然覚えてないですし
   真剣な表情の鈴木。
   やがて兼高が歌い出す。
   部員たちの表情が一変する。
   ノノカが息をのむ。
   兼高、歌い終え、大仰にお辞儀する。
   静寂。
レイ「すごい、すごい!演技はアレだけど!
   と力強く拍手。
   部員たちからも割れんばかりの拍手。
   険しい表情のノノカ。
兼高「いやあ、ありがとうございます。今朝、非常口の傍で歌ってた奥野さんのイメージで演技
 してみました!どうでしたか?」
レイ「う~ん?うん、そうね、演技はこれから勉強すればいいわ。ね、先生!」
鈴木は腕を組んでしきりに頷いている。
鈴木「随分肝が座ってるのね。初めて?」
兼高「今でもたまに妹とおままごとやります
   何度も頷く鈴木。

〇同
   T・三日後。
   そわそわしている部員たち。
部員1「主役は部長でしょ。脇役は……」
部員2「奥野さん?」
部員1「ちょっと!」
   とくすくす笑う二人。
   仏頂面のノノカ。
   鈴木が入って来る。
   部員たちが鈴木の近くに座る。
鈴木「こんにちは。皆、先日はオーディションお疲れ様。今日は、お待ちかね、配役を発表しま
 す。恨みっこなし!いいね」
   と部員らを見渡す。
鈴木「では、主役……細川さん!」
細川「はい!ありがとうございます!精一杯頑張ります!」
鈴木「しっかりね。次、脇役は……」
   緊張した様子の部員たち。
   ヘラヘラしている兼高。
鈴木「兼高君」
ノノカ「はあ!?」
   と立ち上がる。
兼高「やった!」
   と立ち上がる。
   ざわつく部員たち。

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