○片瀬知沙(かたせ ちさ)‥主人公。25歳女性。新型コロナウイルスにかかる。
コロナウイルス前だと仕事に早く慣れ、優秀な活躍を見せるようになっている。

○藤田綾子(ふじた あやこ)‥主人公の友達。25歳女性。最初に結婚を祝福してもらう。
看護師で友達付き合いを大切しており、結婚相手ともそれで衝突したが最終的に受け入れてもらえた。
気が強い性格だがナースと言う仕事上、人の健康に対し人一倍考える所がある。

○友達　22歳女性。退院した知沙を祝う女性。Facebookで知沙に誹謗中傷する友達がいますが、退院した知沙を祝う女性と同一人物かは敢えて明記しない方が面白いかもしれません。

○上司　主人公の上司。52歳男性。コロナウイルスにかかった主人公に対して理解力があるほうです。

#本編
○1■画像：昼1時頃、病院で治療を受けている知沙（本編終了後の現在の知沙の姿イメージです。）
知沙Ｎ：私の名前は片瀬知沙と言います。20代半ばの女性です。
2020年2月、私は新型コロナウイルスに掛かりました
その前後や後遺症の事について、お話ししたいと思います。

○2■画像：夜9時頃、飲み会のシーン　8人くらいが密接な距離感でテーブルを囲んでいる。
知沙「綾子、改めて結婚おめでとうー!」
■画像：友人たち、グラスをぶつけて乾杯する。※三密であるのを強調している意図があります。
知沙Ｎ：その月、私は友人の綾子の結婚祝いで飲み会をしていました。

○3■画像：知沙と綾子が感謝し合っている
綾子「ありがとう!　結婚できたのも知沙のおかげ
知沙が励ましてくれなかったら、私伸宏と上手くいってなかったと思う」
知沙「こちらこそありがとう。綾子が前向きになれた分、私も自信が付いた」
知沙Ｎ：そう言う風に話したりして、私達は楽しいひと時を過ごしました。

○4■画像：外に出ている知沙達。全員マスクを着けている
綾子「コロナウイルスには気を付けてね。今日愛知で出たって言うから」
知沙「そうだね確かに」
知沙Ｎ：言ってる事とやってる事が、今となっては矛盾しているように思えるかもしれませんし、私自身も感じています。
だけどその時はまだ、三密や外出自粛も言われてはいない事態ではありました。

○5■画像：朝7時半頃、自宅のベッドから起き上がる知沙
テロップ『数日後―、』
知沙（頭痛い‥　熱かな?　一応熱測ってみよう」
■画像：体温計で測り脇から出して表示を見る知沙
知沙（37.04℃‥　そんなに高くない
喉の痛みはないし咳も出てない…。長引いたら休憩時間に病院に行くか)

○6■画像：朝9時半頃、病院で診断を受ける知沙
知沙Ｎ：病院に行くと医者から風邪と診断され、薬を貰いました。
この時点ではまだ、新型コロナウイルスとは言われていませんでした。

○7■画像：朝7時半頃、体温計を見る知沙
テロップ『一週間後、』
知沙（いまだに微妙に熱が続いてなるな…
37.5℃以上が最近多いし、風邪薬ちっとも効いてない)

○8■画像：綾子に電話をかける知沙。
知沙Ｎ：初めて不安を覚え始めた私は、綾子が看護師をしているので電話で尋ねてみる事にしました。
知沙「もしもし、今電話して良かった?」
綾子「うん」
知沙「コロナにかかってないか不安」
知沙Ｎ：私は感じている不調を全て話しました。
綾子「ちょっと今ご飯食べて私に味がするか教えて」

○9■画像：驚いた様子の知沙と急かす綾子
知沙「え?」
綾子「早く!」

■画像：冷蔵庫の中など適当に食べ物や飲み物を出して飲み食いする。ただでさえ不安げな表情がさらに強くなった知沙
綾子「どう?　する？」
知沙「まったくしない‥。」

○10■画像：突然の変化に戸惑う知沙。
知沙Ｎ：コロナウイルスにかかって味覚症状が出れば、段々しなくなるものだと思いこんでいました。
でも私の場合は突然味がしなくなりました。
それと私は朝起きてから感じている別の違和感も知沙に伝えました。
家に飾ってある花や食べ物のにおいも全く感じないのです。

○11■画像：朝9時半頃、診察を受けてから退院までのシーン
知沙Ｎ：私は綾子の薦めで念の為「風邪」と診断されたのとは違う病院へ行き、医師の判断でPCR検査を受け陽性反応が出ました。
元々大きな病気をした事がなく、体力面では比較的丈夫な方だと思っていた分ショックでした。それから10日ほどで退院になりました。
ちなみに飲み会前後は、マスクをしてなるべく人気を避けて外に出て遊んだり仕事をしたり、家の中で過ごしていました。
感染経路は、不明です。

○12■画像：夜8時頃、パソコンの画面越しに知沙と友達（綾子ではない）が乾杯※知沙の視点で
友達「かんぱーい!」
知沙「(無理に笑顔を作りながら)かんぱい!」
■画像：知沙、用意したお菓子を食べたり飲み物を飲んだりする。

知沙Ｎ：退院してから2日後、私は友達とリモート乾杯をしました。
でもその時はまだ味覚・嗅覚障害は治ってはいません。友達に合わせてそうしていた感じです。

○13■画像：友達が人に呼ばれて後ろを向いている時に、素の『心ここにあらず』と言った表情になっている知沙
知沙Ｎ：喜んでくれて退院した私を祝うために、時間を作ってくれた友達には申し訳ないのですが、嬉しい気持ちはありませんでした。

テロップ『後遺症1 味覚・嗅覚障害が継続する』

○14■画像：自宅でパソコンを操作している知沙
知沙Ｎ：一週間後、私はリモートと言う形で職場復帰しました。
私の会社は元々オンラインでの仕事に力を入れているので、早くでリモートワークを導入出来て助かりました。

○15■画像：昼4時頃、パソコンの画面越しに上司とやり取り
上司「片瀬さん、9時頃に言っていた資料の件ですが‥」
知沙「あれ?　すいません。資料ってどんな内容なのか教えて頂けますか?」
上司「昼の12時頃に再度話しているのですが‥」

テロップ『後遺症2 集中力や記憶力が低下する』

○16■画像：朝9時半頃、引き続きパソコンの画面越しに同じ上司とやり取り
テロップ『次の日、』
上司「一ヶ月に始まる新プロジェクトについてですが、変更内容が出てきました」

○17■画像：上司、目がうつろな知沙を見て
上司「もしもし!　もしもし!」
知沙「すいません。昨日は早くで寝たんですがなぜか物凄くだるくて‥」
上司「まだお仕事復帰するには早かったのかな?」
知沙「申し訳ありません。今日は早退させてもらいます」

○18■画像：パソコンを閉じて自分を笑う知沙
知沙Ｎ：それから私はパソコンの画面を閉じました。
知沙「ｱﾊﾊﾊ」
知沙Ｎ：実際に会社に来てないのに早退って、昨日からの薄い受け答えや自分が情けなくなったりもして、思わず笑ってしまいました。

テロップ『後遺症3 強い倦怠感で無気力状態になる』

○19■画像：夕方、ベッドでうつ伏せになりながら、怒りを抱えているような表情
知沙Ｎ：それからはしばらく仕事に出られなくなって、休みの日が続きます。自分に強い憤りを覚えるようになりました。

○20■画像：自分の胸を抑える知沙
知沙「くっ……!」
知沙Ｎ：時々胸の痛みも起こります。そう言うのもあって、私はまともに仕事をする事が出来ません。

テロップ『後遺症4 胸痛が起こる』

○21■画像：時間設定は敢えて不明で、必死な表情で病院内を動いている綾子
（実際にコロナウイルスの対応に追われているか？はあやふやにして下さい。※コロナ関係の設備が画面全体に描写されているわけではない。）
知沙Ｎ：ちなみに綾子には相談していませんでした。
あの時は衝動的に電話してしまったものの、コロナウイルスの対応に追われて 忙しくなっているんじゃないか?と考えると、とても出来なかったからです。

○22■画像：朝9時頃、外で足を引き摺るほど必死に歩いている知沙
テロップ「二週間後―、」
知沙Ｎ：通院の日、私は何とかして自分の足で駅まで歩こうしました。
医者にも通院はタクシーを使って下さいと言われています。
ですが何もかも出来なくなっているので、いつも出来ていた何か人間らしい行動をと、無理にでも一つはしたくなっていました。
知沙（足が重いな…。でも歩いてたった15分だし…）

効果音：ドサッ（倒れ込んだ音）

テロップ『後遺症5 疲労感が続く』

知沙Ｎ：その後近くの病院まで運ばれました。様子を見ながら一晩過ごし、自宅へ帰りました。

○23■画像：夜8時頃、朝方自宅のベッドにて、スマホで自分のFacebookのページ（タイムライン）を見ている知沙。

■画像：スクロールしていた指が次の投稿が目に付き止まる。

(下記の『』は女性の声で)
『前に参加した飲み会の出席者に、コロナウイルス感染者がいた。私達もPCR検査を受けるハメになって迷惑だった。
まったく何やってんだよ。
私は陰性だったが、こっちは未だにネタにされたり差別も受けてるんだ。
辛いのは分かるがこっちの迷惑も分かれ』

○24■画像：その瞬間泣きじゃくる知沙
知沙「わあああああああ!」
知沙Ｎ：私はこの投稿を見た瞬間、その場で泣きじゃくりました。
Facebook上でも繋がりを持っている友達と思っていた人に、強い憎悪をぶつけられたからです。
相手の怒りも分かりますが、もっと配慮した事をして欲しかったと今でも思います。
テロップ『後遺症6 強い非難を受ける』

○25■画像：深夜2時頃、ベッドで塞ぎ込む知沙
知沙Ｎ：それからはかなり孤独に苛まれた気分に陥りました。
もちろん電話やメールなどをしているのですが、体力面の理由もありますが離れて暮らす家族には3月となり、外出自粛となっていたので会う事が出来ません。

知沙Ｎ：これからの事、生きていけるのかさえ分からないほど将来が不安になり、眠れない苛立ちで叫んでしまいたくなる衝動にも駆られていました。

テロップ『後遺症7 不安に苛まれ不眠症にもなる。またうつ病を引き起こす可能性もある』

○26■画像：綾子に呼ばれ、2階の部屋から外にいる綾子と会う知沙。
綾子「知沙！　知沙！」
知沙Ｎ：しばらくして綾子の声が外の方から聞こえてきました。
私はゆっくり起き上がり窓を開けると、必死な表情の綾子がいました。

○27■画像：綾子と会話をする知沙。途中で涙を浮かべる
知沙「(突然の訪問で逆に冷静になってる感じで)どうしたの？　今病院忙しいんでしょ？　夜だしそれに外に出るなんて…」
綾子「気にしなくて良いから！」　
知沙「子供や夫にはちゃんと話してるの？」
綾子「だからそれも気にしなくて良いから！
（■画像：目に少し涙を流し始めながら）・・・精神的にすごく追い込まれてる友達に会い行くのは、不要不急の外出にはならないでしょ?」

■画像：「うん」と言った感じに首を縦に振り目に涙を浮かべる知沙
綾子「他の友達や家族には会えた?」
■画像：引き続き目に涙を浮かべながら首を大きく何度も横に振る知沙

○28■画像：同じ様に涙を流す綾子と、引き続き会話をする知沙。
綾子「アパートの住民や職場とかに何か言われたり、意地悪されてる?」
知沙「（■画像：溜めていた涙をポロポロ流しながら）されてない」
綾子「（■画像：同じく溜めていた涙を流しながら）良かった…、ネットの中だけで済んでまだ良かったね…
（■画像：泣きながら）ごめんね…、看護の現場だったらちゃんと近くで会えるのに……」

○29■画像：同じ様に涙を流す綾子と引き続き会話をする知沙。窓を開ける住民は敢えて出さないで下さい。
知沙「（■画像：涙を流して笑いながら）病院みたいに衛生管理が整ってない所で…、防護服とか着てないのにしょうがないよ……」
綾子「（■画像：涙を流して笑いながら）そうだけどさ……」

知沙Ｎ：私と綾子は泣き明かしました。窓を開く音がしたのですが注意をしなかった住民達には今でも感謝しています。

○30■画像：朝10時頃、会社内で皆と同じ様にマスクをしながら、元気に上司に挨拶してる知沙※ソーシャルディスタンスを保ちながら少人数です。
知沙Ｎ：私は綾子が自分の家庭や仕事があるにも関わらず、無理を押して来てくれたおかげで大分助かりました。
集中力や記憶力は無事改善されています。味覚・嗅覚障害は無くなり倦怠感や無気力、疲労感も前ほどではありません。無事職場に復帰する事が出来ました。
胸の痛みはまだ続いています。ですが以前よりも前を向けているのは間違いありません。

■画像：朝9時頃、元気に外を歩いている知沙。
知沙Ｎ：以上が、私の場合の新型コロナウイルスにかかった前後の事と後遺症です。でも自分より苦しんでいる人はもっと沢山いると思います。
withコロナ時代と言います。私のように新型コロナウイルスが治ってもその後遺症を引きずったまま、これからの日常を過ごすと言う人。また差別を受ける人。
そんな人が大勢いると言う意味合いにもならないようにと、願って止みません。