<登場人物>
ザ・ガンバルマン(17) 第16話主人公
シメ・ハジメ/黄金巨人ゴルディナン(24) 第17話主人公
守村 レイ(26) 第18話主人公
黒田 鉄男(26) ガンバルマンの対戦相手
守村 ダン(25) レイの兄、故人(=守護霊)
女社長
監督
子供
女性ファン
怪人
<本編>
○試合会場・入口
「第1回 HERO―1グランプリ」と書かれた看板。
T「第16話 説明しよう、ザ・ガンバルマンの『ザ』は凄く大切なのだ」
○同・闘技場
対峙するザ・ガンバルマン(17)と黒田鉄男(26)。
アナウンスの声「赤コーナー、THE所属、ガンバルマン選手」
ガンバルマン「THEではない。東京・ヒーロー・エンタープライズだ」
アナウンスの声「青コーナー、JHC所属、クロガネ選手」
黒田「では、変身させていただきます」
ガンバルマンの声「どういう事だ!?」
○THE本社・外観
雑居ビル。「東京・ヒーロー・エンタープライズ」の看板。
ガンバルマンの声「この会社が、JHCに吸収合併されるなんて!」
○同・オフィス
ガンバルマンをはじめとするヒーロー達のポスターが貼られている。
狭い室内。対峙するガンバルマンと女社長(34)。
ガンバルマン「まさか、この間の大会で吾輩が一回戦負けしたせいで……? おのれ、これが大手のやり方なのか!」
女社長「それは関係ないわ。全ては私の力不足よ。ごめんなさい」
ガンバルマン「社長が謝る必要はないのである」
女社長「それで、どうする? 他のみんなはそのまま新会社に移るそうだけど」
ガンバルマン「JHCにか?」
女社長「正確には、今回の合併を機にジャパン・ヒーロー・クラブ、JHCからジャパン・ヒーロー・エンタープライズ、JHEに社名変更するわ」
ガンバルマン「社名まで乗っ取るか……なら吾輩は、そんな汚い大手には行けないのである」
女社長「引退するの?」
ガンバルマン「いや。吾輩は社長についていくのである。何者でもなかった吾輩に、ヒーローという生き方を与えてくれた社長に」
女社長「ごめんなさい。私、実家に戻ってお見合いするの。だから……」
ガンバルマン「……そうか。なら吾輩が代わりに、残りのヒーロー人生をかけて、この会社を背負っていくのである」
女社長「どうやって?」
ガンバルマン「この会社は『東京・ヒーロー・エンタープライズ』。略してTHE。ならば……」
自身のポスターに「THE」と書き足すガンバルマン。
ガンバルマン「吾輩は今日からこう名乗るのである」
女社長「ガンバルマン?」
ガンバルマン「ガンバルマンではない。ザ・ガンバルマンだ」
○公園
木々に囲まれた公園。
着ぐるみ怪人と対峙するシメ・ハジメ(24)。シメはイケメン。
T「第17話 説明しよう、ヒーロー番組とは若手イケメン俳優の登竜門なのだ」
シメ「貴様のような、ジャングルを汚すものを俺は許さない!」
変身ポーズをとるシメ。
シメ「変身!」
しばしの沈黙。
監督の声「はい、OK」
周囲に居る多数のスタッフやジャングル仮面の恰好をしたスーツアクターらがシメや着ぐるみ怪人に駆け寄る。
監督「はい、じゃあ次は変身後ね」
カメラ裏の簡易イスに座るシメ。「ジャングル仮面」と書かれた台本を手に取る。そこにやってくる監督。
監督「よう、シメちゃん。いい表情するようになったじゃん」
シメ「あ、監督。あざ~っす」
監督「事故に巻き込まれたって聞いた時はどうなるかと思ったけどね」
シメ「いや~、ハハハ」
浮かない表情のシメ。
監督「ごめんごめん。嫌な事思い出させちゃった?」
シメ「いや、そうじゃなくて。まぁ、アレはアレで超ヤバかったんスけど」
監督「じゃあ、何?」
シメ「何て言うか……現実世界で怪獣が超バンバン出てきてんのに、こういう番組作る意味って、何なのかなって思っちゃって」
監督「それは……うん。スポンサーの玩具商品の販売促進のためかな?」
シメ「え、それ言っちゃいます?」
笑うシメと監督。そこに駆け寄る子供達。
子供「あの、サイン下さい」
監督「おいおい、ダメだよ入ってきちゃ。おい、AD~」
シメ「あぁ、俺はいいっスよ? (子供達に)その代わり、静かにね」
子供「わ~い」
シメにジャングル仮面のソフビ人形とペンを差し出す子供。
シメ「コレにサインね。お買い上げ、ありがとうございます」
子供「?」
監督「こら」
イタズラっぽく笑うシメ。
響き渡るサイレン音。
シメ「何だ?」
体長四〇メートル程の怪獣が現れる。
子供「怪獣だ!」
監督「ったく、もう。おい、撤収だ!」
シメ「さぁ、みんなも逃げて」
子供「ねぇ。変身して怪獣倒してよ」
シメ「あんな超デカい奴、無理だって。ほら」
スタッフや子供達とともに逃げ出すシメ。隙を見て、木陰に逃げ込む。
シメ「みんな行ったかな……? さて、ただでさえ撮影押してんだ。ちゃちゃっと倒すぜ」
懐からスティック型の変身アイテムを取り出すシメ。
シメ「カモン、ゴルディナン!」
光るスティック。
○避難場所
不安そうに怪獣を見つめるや子供達。そこに現れる黄金巨人ゴルディナン。
ゴルディナン「ゴルディナン!」
沸き上がる歓声。
子供「がんばれ、ゴルディナ~ン!」
怪獣に向け駆け出すゴルディナン。
○守村家・外観(朝)
夜明け前。
T「第18話 説明しよう、凍結の戦士・氷河はただ寝坊をした訳ではないのだ」
○同・寝室(朝)
床でいびきをかいて眠る守村ダン(25)。ベッドには誰もいない。
レイの声「まさか俺が緊張で眠れない日が来るとは……」
○墓地・中(朝)
守村家の墓の前で手を合わせる守村レイ(26)。
レイ「兄貴が聞いたら、ビックリするか? それとも、興味ねぇか?」
○同・前(朝)
出てくるレイに駆け寄る女性ファン。
女性ファン「あ、あの……凍結の戦士・氷河さんですよね?」
振り返るレイ。そこに居るのは女性ファンのみ。
レイ「お前か? 俺を呼んだのは」
女性ファン「本物だ~。握手してもらってもいいですか?」
レイ「勝手にしな」
女性ファン「(レイの手を取り)今日、HEROー1グランプリですよね? え、当日の朝にお兄さんに勝利を誓った感じですか? エモいんですけど~」
女性ファンと握手しながら何かの気配を感じるレイ。
女性ファン「あの、写真もいいですか?」
レイ「調子に乗るな。失せろ」
女性ファン「冷たい……でもそこがたまらん。頑張ってくださいね!」
一礼しその場を立ち去る女性ファン。
レイ「出てくるなら、出て来い」
レイの背後から姿を現す怪人。
怪人「ファンを逃がしてやるとは、冷たいのか優しいのかわからない男だな、凍結の戦士・氷河よ」
怪人に向き直るレイ。
レイ「お前か? 俺を呼んだのは」
怪人「いや、むしろ貴様が呼んだんだろ?」
レイ「……まぁ、どっちでもいい」
ブレスレットを着けた左手を高く掲げるレイ。
レイ「氷転化(ひょうてんか)」
× × ×
倒れている怪人を見下ろすレイ。
レイ「まぁ、クールダウンにはちょうど良かったな。さて……」
欠伸をするレイ。
レイ「まだ時間もあるし。家帰って寝直すか」
歩き出すレイ。
(その6 完)
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