就職試験必勝法 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 22 0 0 12/19
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 22歳


○ホストハウスの玄関前

地球家族6人。
リコ、玄関のドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HFとHMが出て来る。
HM「いらっしゃい。さあ、おあがりください。あら、HBは?」
HF「勉強中なんじゃないか」

○ホストハウスの居間

地球家族6人とHF、HM、HB。
HM「(HBに向かって)明日は、いよいよ試験の日ね」
ジュン「学校の試験ですか?」
HB「いいえ、会社の就職試験です。筆記試験と面接があるんです」
HF「息子は、筆記試験が得意なので、まあなんとかなると思うんですが・・・」
HB「得意というか、必死に勉強したんですよ。面接では差がつかないから、結局は筆記試験の点数が決め手になると思うんです」
母「就職試験の場合は、面接が重要だと思っていたけど、そうじゃないのね」
HB「私たちの場合は違うんですよ。これを見てください」
HB、分厚い本をテーブルの上に置く。
タク「これは?」
HB「就職試験の面接の必勝法です。座るときの姿勢から、質問に対する模範解答まで、全部書かれています」
父「すごいなあ。地球にも、こんな本はあるけれど、ここまで充実したのは初めて見たな」
HB「でも、この本は、みんな持ってるんですよ。みんなこの本を読んで、この通りに面接を受けるので、面接では差がつかない。それで僕は、筆記試験の勉強を一生懸命やったんですよ」
タク「なるほど」
ミサ、分厚い面接の本をパラパラとめくる。
ミサ「これを覚えられるくらいなら、みんな筆記試験の勉強も頑張ればいいのに・・・」
全員、一瞬静まりかえる。
HF「明日の面接は、みんなで応援に行くから、がんばれよ」
HB「うん。ありがとう」
HM、地球家族6人に声をかける。
HM「みなさんも、明日の午前中、よろしければ、私たちといっしょに見に行きませんか?」
ジュン「え、会社の面接を見学できるんですか?」
HM「はい、どの会社も、面接は誰でも自由に見学できます。その場ですぐ、合格不合格の結果も出ますから、面白いですよ」
地球家族、驚いた表情。
HB「面白いって・・・ こっちは眠れないくらい緊張しているのに・・・」
母「すぐに結果が出るとおっしゃいましたけど、筆記試験の点数は加味されないんですか?」
HB「加味されますよ。就職試験は、まず筆記試験から始まります。終わると、すぐに採点されて、点数が出ます。そして、面接試験会場に移ります。面接試験では、10人の面接官が『合格』か『不合格』かの札を上げるんですけど、そこで筆記試験の点数が良い人が有利になるんです」
タク「どんなふうに?」
HB「たとえば、筆記試験が90点以上ならば、10人の面接官のうち1人でも『合格』の札を上げれば合格になります。筆記試験が80点台ならば、2人の面接官が『合格』を出さないと合格になりません。そして、筆記試験の点数が悪くなればなるほど、より多くの面接官に『合格』を出してもらわないといけないんです。筆記試験が0点の場合は、面接官全員が『合格』の札を上げることが条件になります。面接官のうち1人でも『不合格』を出してしまうと合格になりません」
父「なるほど、ということは、筆記試験の点数がとても重要なんですね」
HB「はい。筆記試験は、満点がとれるように、今日までしっかり勉強をがんばってきました」

○その日の夜遅く、台所

母が台所に入ると、HBがいる。
母「あら、HBさん、まだ眠れないの?」
HB「えー、なかなか寝付けなくて。お母さんもですか?」
母「いいえ、私は今、のどがかわいて目が覚めたところ。のんきな性格で、悩み事が無いから、毎晩ぐっすり眠れるんですよ」
HB「いいなあ。僕は、明日の就職試験がとにかく心配で。明日受ける会社は、どうしても入社したいんですよ」
母「どうしても入社したいのなら、その気持ちを面接でしっかりとアピールすることが大切だと思うわ。必勝法の本に書いてあったように、社会常識のあるような受け答えやマナーももちろん大切だけど、それよりも、面接官に対して、この人といっしょに仕事がしたいと思わせることのほうが、大事なんじゃないかしら?」
HB「そうですね、おっしゃるとおりです。でも、そんなこと、こわくてできません」
母「こわい?」
HB「人とちがうことをするのは、リスクがあるじゃないですか。他の人はきっと、みんな必勝法の本のとおり面接で答えるんですよ。ほかのことをしゃべって、うまく行けばいいけど、もし失敗したらと思うと・・・」
母「・・・」
HB「だから、明日は、面接では、必勝法の本のとおり、無難に受け答えて、あくまで僕は筆記試験で勝負します。それじゃ、おやすみなさい」
母「おやすみなさい」
HB、台所を出て行く。
母「(心の中で)無難な受け答えか・・・」
そのとき、台所のドアが開く。HFが入って来る。
母「あら、HFさんも眠れないんですか」
HF「えー、明日の面接のことを考えると・・・」
母「そうですよね。息子さんの一生を左右する問題ですからね」
HF「それもあるんですけど、明日は、息子の面接を見た後、自分の会社で、私が面接官をやることになっているんですよ。そっちが心配で、眠れなくて・・・」
母「あら、そうだったんですか」
HF「昔は、どの学生も個性的でよかった。でも、最近は、あの必勝法の本が売れているおかげで、その学生もまったく個性がありません。どの質問をしても、返ってくる答えはみんな同じです。これでは、どうやって『合格』『不合格』を決めていいのやら、まったくわかりません」
母「個性がなくてみんな同じならば、みんな『合格』にするしかないんでしょうかね。あるいはみんな『不合格』か」
HF「そんなことでいいんでしょうか。学生さんたちの一生を左右する問題なのに」
母「そうですよね。面接官のつらさ、よくわかります」
HF「できれば面接官なんて引き受けたくなかった。いや、みんなそうでしょう。面接官をやりたい人なんて誰もいないはずです。学生さんたちの人生を大きく左右するのは、荷が重いです」
母「・・・」

○翌朝、居間

地球家族5人(母をのぞく)とHF、HMが立っている。
HM「もうすぐ筆記試験が始まるころだわ。あの子、満点をとるって意気込んでいたけれど、大丈夫かしら」
HF「その後は、面接だな。面接は10時に始まるから、そろそろ私たちも、行く準備をしなければ」
ジュン「あれ、そういえば、お母さんは?」
HM「先に行くと言って、さっき出かけられましたよ」
父「どこへ行ったんだろう」

○会社の廊下

3人の学生が、小さい部屋の前の椅子に座っている。そのうちの一人がHB。
声「まもなく筆記試験を始めますので、部屋にお入りください」
学生A、学生B、HB、立ち上がる。
部屋に入ろうとするHBを呼び止める声。
母「HBさん!」
HB「地球のお母さん! どうしたんですか? これから筆記試験で、面接の見学だったら、10時からですよ」
母「あ、それは知ってるわ」
HB「え?」
母「あなた、この会社、どうしても入りたいんでしょ。必勝法を思いついたのよ」

○会社の面接会場

10人の面接官が並んで座っている。
その前に、3人の学生が並んで座っている。その前に、司会者の男性がマイクを持って立っている。
離れたところに、見学者の席が20個ほどあり、HF、HM、地球家族が座っている。
母が遅れて部屋に入って来る。
ジュン「(母に、小声で)お母さん、どこに行ってたの? ちょうど面接始まるところだよ」
司会者「それでは、ただいまより、就職試験の面接を始めたいと思います」
会場、拍手。
ミサ「(小声で)これが本当に就職試験の面接? 司会者までいて、ショーを見に来てるみたい・・・」
面接官1「それでは、よろしくお願いします。質問をしますので、順番にお答えください。この会社に入りたいと思った理由は何ですか?」
HB「はい、さまざまな分野に進出しており、若手にとっていろいろなチャンスが与えられていると思ったからです」
面接官2「この会社のいちばんの強みはなんだと思いますか?」
学生A「環境への配慮が行き届いており・・・」
面接のやりとりを聞いている地球家族。
ミサ「(小声で)本当に、みんな同じような答えばっかり」
母「(心の中で)HFさんの言うとおり。これでは、私が面接官だったら、誰を採用すればいいか、まったく見当がつかないわ」

○しばらくして、面接会場

司会者「それでは、これで、面接は終わりになります。引き続き、結果の発表に移りたいと思います」
ジングルが鳴り響く。
司会者「まずは、Aさんです。果たして、合格でしょうか、不合格でしょうか。まずは、先ほど行われた筆記試験の点数から見てみましょう」
電光掲示板に、「93」の数字が出る。
司会者「93点です! かなりの高得点です。90点以上ですので、かなり有利になります。10人の面接官の判定で、1人でも『合格』の札が上がれば、その時点でAさんの合格が決まります。さあ、それでは面接官のみなさん、判定をお願いします!」
面接官10人、両手に『合格』と『不合格』の札を持っている。
面接官、10人とも『不合格』の札を上げる。
司会者「残念! 『合格』の札は1枚も上がらなかった! Aさん、不合格です!」
会場内、どよめき。
見学席にいたAの両親、悲しい表情。
司会者「次は、Bさんです。果たして、合格でしょうか、不合格でしょうか。Bさんの筆記試験の点数から見てみましょう」
電光掲示板に、「95」の数字が出る。
司会者「95点です! またまた高得点です。90点以上ですので、同じく、1人でも『合格』の札が上がれば、その時点でBさんの合格が決まります。さあ、それでは面接官のみなさん、判定をお願いします!」
面接官、10人とも『不合格』の札を上げる。
司会者「残念! Bさん、不合格です!」
会場内、どよめき。
ジュン「(小声で)厳しすぎるよ。一人くらい、合格を出す人がいてもいいのに・・・」
HM「大丈夫かしら。こんなに判定が厳しいんじゃ、筆記試験で満点近く取れてたとしても、合格は難しいんじゃ・・・」
HF「うーむ」
HF、腕組みして険しい表情。
司会者「さあ、最後はHBさんの判定です。まずは、筆記試験の点数を見てみましょう」
全員、電光掲示板に注目する。ジングルが鳴り響く。
HM「100点は無理でも、他の学生さんより1点でも多く取れていれば、印象が違うかもしれない・・・」
電光掲示板に、「0」の数字が出る。
司会者「なんと、0点です! HBさんの筆記試験の点数は、0点です」
会場内、どよめき。
HFとHM、驚いた表情。
HM「どうして・・・、そんなはずは・・・」
HF「あんなに勉強していたのに・・・」
司会者「さあ、大変なことになりました。0点の場合は、10人の面接官の判定で、10人全員が『合格』を出さなければなりません。1人でも『不合格』の札が上がれば、その時点でAさんの不合格が決まってしまいます。さあ、それでは面接官のみなさん、判定をお願いします!」
HM「あー、もうだめだわ」
HM、目を閉じる。
面接官、10人とも『合格』の札を上げる。
司会者「おめでとうございます、HBさん、合格です!」
会場内、驚きの声。
HB、喜びの表情で立ち上がる。くす球がHBの上で割れる。
司会者「見事に、HBさんはこの会社に就職することができました。おめでとうございます」
拍手の音。
10人の面接官、無表情で拍手している。
HFとHM、笑顔と涙で拍手。

○会社のロビー

地球家族6人とHF、HM、HB
HM「おめでとう。でも、ひやひやしたわ」
HB「筆記試験で0点を取るというアイデアは、お母さんに教わったんです。ありがとうございます」
母「いいえ」
HF「どうして0点を取ることが必勝法なんだい?」
HB「その理由を聞く時間がなくて。どうしてなんですか?」
母「面接官の気持ちになってみたのよ。最初の2人の学生さんのように、筆記試験が90点以上の場合は、一人でも『合格』と言えば合格になります。自分が面接官だったら、どんな気持ちになるかしら、HFさん」
HF「そうですね。学生さんの面接での受け答えは、まったく個性がないので、『合格』とも『不合格』とも判定のしようがありません。でも、自分が『合格』の札を上げてしまえば、他の面接官がどちらの札を上げたとしても、合格が決まってしまいます。そんな責任重大なことは、自分ではしたくありません。だから、とりあえず『不合格』の札を上げておいて、他の9人の面接官たちに判断をまかせたいと思うでしょうね」
HM「私も同じことを考えるわ。学生さんの判定をする自信は無いわ」
父「きっと、10人の面接官は、全員がそのように感じて、結果的には、みんな『不合格』の札を出してしまったんだね」
母「そう。逆にHBさんの場合は、0点だから、一人でも『不合格』と言えば不合格になります」
HF「この場合は、私が面接官の立場だったら、自分が『不合格』の札を上げてしまえば、その時点でその学生の不合格が決まってしまうと思うと、そこまで決める自信が無いから、とりあえず自分は『合格』にしておいて、他の面接官に判断をまかせたいと考えますね」
ジュン「そうか、それで、HBさんのときには、10人の面接官は全員がそう感じて、みんな『合格』の札を上げてしまったというわけか」
父「それで、0点を取ったことで、逆に有利になったことになるのか。お母さんも、大胆な必勝法を考えたね。ハラハラさせられるよ」
母「HFさん、そういえば、今日は会社で、面接官をやるんですよね」
HF「おっと、いけない。そろそろ行かなければ」
HF、立ち去りかけ、振りかえる。
HF「しかし、筆記試験の点数のいい人が入社できないのは、やっぱりどう考えてもおかしいですよ」
母「そのとおりですね。誰もがそう思ってますよ」
HF「私は、ちゃんと自分の目で学生さんを選べるように、がんばってみます」
HF、小走りに去っていく。他のみんなが見送る。

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