坂道注意報 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 28 0 0 12/12
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー


○ホストハウスに向かう道

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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー


○ホストハウスに向かう道

地球家族6人が夕刻の道を歩いている。
急な上り坂。みんなけわしい表情。
父「ホストハウスまで一本道と聞いていたけど、この坂はきついな」
タク「疲れた」
ジュン「よし、クイズを出そう。地球上には、上り坂と下り坂のどちらが多いでしょう?」
ミサ「上り坂のほうが多い気がするな」
タク「じゃ、僕は下り坂」
ジュン「二人とも、はずれ。答えはどちらも同じ。だって、行きが上り坂ならば、同じ道を帰ると下り坂じゃないか」
ミサ「あ、しまった。だまされた」
母「でも、いいクイズね。坂を上るのはきついけど、明日帰る時は楽だということに気がついて、元気が出たわ。さあ、あと一息、がんばりましょう」
6人、フーフー言いながら坂を上り続ける。

○ホストハウスの居間

地球家族6人とHM。
HM「お疲れ様でした。坂がきつかったでしょう」
父「いやあ、あの坂を毎日上り下りされているんですか? 大変ですね」
HM「もう慣れていますから、平気ですよ。それから、今、ちょうど夕方6時ですね。坂がいちばんきつい時間帯なんですよ」
母「え? 時間帯によって、坂の傾きが変わるんですか?」
HM「そう、この星の坂はすべてそうなんです。午前6時と午後6時が一番急な坂になって、正午と真夜中は平坦なんですよ。もっとも、天気みたいなもので、日によって時間は多少変わりますけど」
ジュン「そうか、ちょうど運が悪い時間に来ちゃったんですね」

○ダイニング

地球家族6人とHMが夕食中。
HM「ここの海は観光名所なんです。明日の朝早く、みなさんを案内しますので、ぜひ見て行ってください」
父「ありがとうございます。朝早いほうがいいんですか?」
HM「私が朝から漁港で働いていますので、そこに行くついででもあるんですけど、それより、朝の海が一番きれいなんですよ。黒砂の砂浜が名物なんです」
母「砂が黒いんですか? 普通は、きれいな海といえば白い砂浜ですけど」
HM「こちらでは、砂浜は黒です。ぜひ、見てください」
タク「楽しみだな」
ジュン「ところで、なんか、このテーブル、傾いていませんか?」
HM「坂道に家があるから、しょうがないのよ」
ミサ「リコ、豆をこぼしたわよ」
リコ「うん、今拾う」
リコ、テーブルの下にもぐり、豆を拾いはじめる。
ミサ「タクも、落とさないように気をつけて。卵を持つ手が震えているよ」
タク「うん、気をつけなきゃ」
ジュン「ミサ、タクには何も言わないほうがいいかも。緊張すると失敗する性格だから」
タク「この卵、いびつな形をしているから、持ちにくくて。あ!」
タク、卵をテーブルに落とす。卵がテーブルの上を少し転がる。
HM「大丈夫よ。見てて」
卵は、転がっていかずに少し戻って止まる。
HM「卵型というのは、普通の球の形とちがって、どんどん転がっていかないようにできているのよ。鳥が産んだときに転がっていっちゃったら大変でしょ」
ジュン「なるほどね。でも、地球では、卵の形はもっと、なんというか、球に少し近いんですけど」
HM「へえ。この星のほうが、急な斜面が多いからかしらね」
ジュン「確かに。卵型がそういう性質を持っているとは知らなかったな。面白い」
ジュン、自分のお盆に卵を乗せて傾けてみる。卵が転がる。
HM「いくらなんでも、そんなに傾けたら転がるわよ」
卵はお盆を飛び出し、しゃがんでいたリコの頭の上で割れる。
リコ「あーん」
ジュン「ごめんよ・・・」

○翌朝、ホストハウスの玄関前の坂道

地球家族6人とHMが出発。
HM「朝早くて申し訳ないけど、朝の海が本当にきれいなんです。ぜひ見てほしいと思って」
父「ありがとうございます。朝6時から観光なんてあまりしたことないですけど、とてもすがすがしいですね」
HM「さあ、行きましょう」
HM、坂を上り始める。
ジュン「あれ!?」
地球家族6人、驚く。
ジュン「今、僕たちが昨日来た道を戻っているところですよね? 坂を上って来たはずなのに、今度はこっちが上り坂になっている・・・」
HM「そう、午前と午後で、上りと下りが逆になるんですよ」
ミサ「うそでしょう? そんなことがあり得るんですか?」
HM「坂はすべてそうなんですよ。午前が西高東低ならば、午後は東高西低」
タク「信じられない・・・」
ジュン「しかも、今が午前6時ということは、一番急な上り坂をまた上らなきゃいけないということですね、まいったな」
父「午前中に戻って来ないと、帰りがまた上り坂になるぞ」
HM「もっとも、異常気象と同じで、たまに異常坂道現象というのがあります。1日の途中で、何度も上りが下りに変わったりする日もありますよ」
母「今日は、どうなんでしょう?」
HM「テレビで天気予報と一緒に坂道予報をやっていましたけど、穏やかな一日ですよ。私も坂道予報士の資格を持っていますけど、大丈夫です」
ミサ「大丈夫、というか、下りに変わってくれたほうがありがたいけどなー」

○しばらくして

HMが平然と坂道を上り続ける。
その後ろを、地球家族6人が苦しそうに上る。
HM「大丈夫ですか?」
父「われわれは坂道にはあまり慣れていないもので・・・」
HM「ごめんなさい。私、漁港の仕事があるので、先に行ってもいいかしら」
父「あ、どうぞどうぞ。私たちはゆっくり行きますから」
HM「この先はずっと一本道の上り坂で、途中に一度つきあたりに出ますけど、その先も上り坂で、そこを上りきったところが海ですので、迷うことはありませんので」
母「わかりました」
HM「念のため、携帯用の通信機を渡しておきます。もしも何かあったら、ボタンを押せば私と連絡がとれます。球形と卵型の2種類があるけど、どっちがいいかしら?」
HM、バッグから2種類の球を取り出して見せる。
リコ「こっち!」
リコが球形を指差す。
HM、父に球形の通信機を手渡す。
HM「じゃあ、すみませんが、お先に・・・」
HM、先に行ってしまう。
残った地球家族6人も再び上り始める。
ミサ「なんか、卵型を選んでおいたほうがよかったような予感が・・・」
ジュン「うん。でも、リコは昨日、卵を頭から浴びて、卵型を見たくなかったんだろうな」
リコ、うなずく。
そのとき、地震が起きる。
ミサ「や、こわい」
父「道の傾きが変わり始めているのかな。どうも不気味だな」
前方につきあたりが見える。
左右に道があり、左方向に上り坂になっている。
ジュン「上り坂が続くと言っていたから、左に行けばいいんだな」
父「さあ、ここを上りきれば、海だ。あと一息」
タク「それにしても、坂を上ったところに海があるなんて、地球では考えられないよね」
ジュン「地球の常識はまったく通用しないんだよ」

○しばらくして

地球家族6人、息を切らしながら坂道を上り続ける。
母「なかなか海に着かないわね」
父「念のため、電話してみるか。タク、お父さんのリュックを開けて、さっきのボールをとってくれないか」
タク「わかった」
タク、父の背中からボール型の通信機を取り出す。
ミサ「タク、坂道なんだから、ボールを落とさないようにくれぐれも気をつけてね」
タク「え、あ、緊張して手が震える・・・」
タク、ボールを落としてしまう。
ボールは坂を転がり落ちていってしまう。
タクが追いかけようとするが、追いつかない。
タク「ど、どうしよう」
父「借り物の通信機だから、無くしたというわけにはいかないだろう。探しに行こう」
6人、坂を逆方向に下り始める。
ミサ「どこかに引っかかってくれていればいいけど・・・」
ジュン「やっぱり卵型を選んでおけば・・・ でもこの急斜面だと、たとえ卵型でも転がっていたかな・・・」
そのとき、地震が起きる。
ミサ「うわ、また地震!」
坂が急に動き出し、上りと下りが逆転する。
タク「信じられない」
ジュン「異常坂道現象じゃないか? 今日は穏やかだと言ってたのに・・・」
父「とにかく、通信機を探し続けよう」
6人、坂を上り続ける。
ジュン「また上り坂か・・・ なんだか、僕たち昨日からずっと坂を上っている気がするな・・・」
母「待って。上らずに、このまま待ちましょう」
ジュン「待つ? どういうこと」
母「いいから、いいから。ほら、音が聞こえてきたでしょ」
6人、静まる。
そのとき、上り坂の向こうから、ボール型の通信機が転がり落ちてくる。
ミサ「ほんとだ! 戻ってきた!」
母「さあ、みんなで必ず受け止めるのよ」
6人、横並びになってボールを受け止める体制をつくる。
ボールはタクの近くに転がっていき、タクはお手玉するが、それをリコが受け止める。
ジュン「リコ、ナイスキャッチ!」
リコの手が真っ黒になっている。
リコ「このボール、きたないよ」
ジュン「坂を転がっているうちに、汚れちゃったんだな。僕が持つよ。貸して」
父「さあ、海へ急ごう。下り坂だから楽だぞ」
6人、下り始める。
ジュンが通信機を振っている。
ジュン「あれ、この通信機、壊れているかも。ボタンを押しても、つながらないよ」
父「本当か、まずいな」
父、通信機を振る。少し水が出てくる。
父「中に水がたまっているみたいだな。あとで水を出せば治るんじゃないか」
ミサ「ちょっと待って。この水、海水じゃない?」
母「それから、この黒い汚れ、砂浜の砂じゃないかしら」
タク「ほんとだ。黒い砂だ」
ミサ「ということは・・・」
ジュン「海はこっちなんだ! 反対方向だよ」
ジュン、上り方向を指す。
ミサ「私たちが来る前に、一度坂が動いていたのね。早くわかってよかったわ。じゃ、行きましょう」
6人、上り始める。
ジュン「けっきょく、また上ることになるのか」

○砂浜

6人が海に着く。息を切らして疲れた表情。
HMが駆け寄る。
HM「ごめんなさい。テレビで見てびっくりしたわ。今日はすごい異常坂道現象だって」
父「そうだったんですね」
漁師が近づいてくる。
漁師「今日の海は特別きれいですよ。どうです、みなさんも、一緒に漁船に乗りませんか」
母「え、大丈夫かしら」
漁師「大丈夫、坂道の荒れは、天気の荒れや海の荒れとは何の関係もありません。今日は、坂道は大荒れでも、海はとても穏やかですから」
漁師と6人、笑いながら漁船へと向かう。

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