最終電車 ドラマ

従業員を作業中に死なせてしまい、会社も倒産し、自殺しようと思って北の端の駅に来た男。 そこで亡くなった従業員の母親と出会う。男は彼女との交流を通じて生きる気力を取り戻す。
吉田浩二 72 1 0 08/03
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第一稿

   SE 列車が駅に滑り込む音。

アナウンス「次は黒岩内、黒岩内に到着です」


   SE 列車が止まる音。
      降りてくる足音。

桐島「さむっ」
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   SE 列車が駅に滑り込む音。

アナウンス「次は黒岩内、黒岩内に到着です」


   SE 列車が止まる音。
      降りてくる足音。

桐島「さむっ」
 
   SE 雪を踏み、走る足音。
      ゲーゲー吐く音。

桐島M「俺は列車の中でビールを何本も飲ん
 でいた。飲めるのは、今日で最後だと思っ
 ていた」

   SE 咳払いする音。

桐島M「雪は止み、空は晴れ渡っていた。駅
 には人の気配がなく静まり返っていた」

   SE 遠くから聞こえてくるアオサギ
の暗い鳴き声。
スマホが鳴る音。

桐島「はい。桐島です」
男の声「北海銀行のものですが、返済の件に
 ついてお電話……」

   SE スマホを切る音。
ポケットの中の瓶を振る音。

桐島M「睡眠薬だった。もう使い方は決めて
 いた。俺は鞄と、缶ビールが何本か入った
 コンビニ袋を持っていた」

   SE 瓶をポケットにしまう音。

桐島M「ここに来る列車の中で、グーグルマ
 ップで確認した。川村家は歩いて15分。
 母親が一人で住んでるはずだ。俺は鞄の中
 の遺族補償の書類を確認した」

桐島「……最後の仕事だ」

   SE 雪を踏む音。

桐島M「駅舎には老婆が一人。ストーブの前
 に静かに座っていた。老婆は俺に顔を向け
 た」

トシ「健……帰ってきたのね」
桐島「はい?」
トシ「まあ立ってないで。座りなさい」
桐島「あの……私は」
トシ「(被せて)寒かったでしょ。ここ、温
 かいから」

   SE 椅子に座る音。
      ストーブの機械音。

桐島M「俺は言いかけた言葉を飲み込んだ。
 今日が最後だというのに、この暖かさに足
 が動かなかった」

トシ「ずっと連絡もよこさないで。心配して
 たよ」
桐島「いえ、私は」
トシ「(被せて)忙しかったのかい?」
桐島「……はい」

   SE 咳払いする音。

トシ「東京は寒かった?」
桐島「……北海道とは違う寒さで」
トシ「そうよね。あっちは底冷えするって言
 ってたわね」
桐島「ええ」

桐島M「俺は健のことをほとんど知らなかっ
 た。なのに言葉が出てきた」
トシ「ご飯、ちゃんと食べてた?」
桐島「……まあ」
トシ「まあって何よ。痩せたんじゃないの」
桐島「いえ、そんな」
トシ「見せなさい」

   SE 椅子が近づく音。

トシ「ほら、やっぱり。頬がこけてる」

桐島M「老婆の手が、俺の頬に触れた。人と
 触れあったのは久しぶりだった」

桐島「ビール、飲んでいいですか?」
トシ「遠慮しないで。飲みなさい」

   SE ビールの缶を開ける音。
      ビールを飲む音。

桐島M「老婆はぼーっと窓の外を眺めていた
 が、ふいに俺に顔を向けた」

トシ「あなた、子供のころはほんとに不器用
 で。泳ぎも木登りもてんでできなかった。
 でも、山が大好きで。それで林業の仕事に
 就いたのね」
桐島「はあ」
トシ「トドマツの木肌、冬山の美しさ。夢中
 で話してくれたでしょ。チェーンソーが扱
 いにくいとか」
桐島「まあ……重いですから」
トシ「そうよね」
桐島「はい」
トシ「泳ぎも全然だめで。父さんに叱られて
 必死に練習して」
桐島「はあ」

   SE 窓から風が入ってくる音。

桐島「あの……私は」
トシ「私?私ってさっきから何(笑って)。
 なんか変よ」

桐島M「いや、変なのはあなたじゃ……と言
 いかけた言葉を飲み込んだ」

   SE ビールを飲む音。

トシ「冬山だけは止めてって言ったのに。山
 が好きすぎたのね。不器用なくせに無理す
 るから」
桐島「はあ」
トシ「(笑って)不器用なくせに意地っ張り
 で」

   SE 桐島が吊られて笑い返すが、息
      を飲む。

トシ「社長さんによく似た人がいてね」
桐島「社長……ですか」
トシ「気さくで頼りがいがある社長だって言
 ってたじゃない。すごい酒飲みだって」

   SE 鞄が落ちる音。
      紙が床に散らばる音。

桐島「あっ……ごめんなさい」
トシ「戻ってきたら一緒に乗ろうって言って
 たでしょ。だから毎日来てたの」

   SE ビールを飲む音。

桐島「この路線、もうなくなるそうですね」
トシ「そうなの?」
桐島「はい」
トシ「でも、今日は来れたからいいわ」

桐島M「老婆はそのまま黙って、窓の外を見
 ていた。廃線の意味がわかっているのだろ
 うか」

   SE 立ち上がろうとする音。

トシ「健、あなたは悪くないのよ。山は怖い
 ところだから。それでも好きで入っていっ
 たんだから」

   SE ビールの缶が落ちる音。
      液体が床に広がる音。

トシ「どうしたの?」
桐島「大丈夫です。すいません」

アナウンス「具治安行き、最終電車がまいり
 ます。皆さま、当路線のご利用、長い間あ
 りがとうございました」

   SE 近づいてくる列車の音。

トシ「行きましょう」

   SE 立ち上がる音。
      歩く足音が止まる。
      ポケットをがさがさ探り、瓶を
      ポケットから出す音。

桐島M「これがあれば全部終わる……でも…
 …」

トシ「どうしたの?」
桐島「……いえ」

   SE 瓶がコンビニ袋に押し込まれる
      音。

トシ「行きましょう」
桐島「はい、お母さん」

   SE 息を飲む音。

桐島「……ごめんなさい」
トシ「謝ることないじゃない」

   SE 2人分の足音。

駅員「どうも。ご利用ありがとうございます。
 最後のお客様です」

   SE 列車のドアが開く音。
     
桐島M「客は俺と老婆しかいなかった」

   SE ビールの缶を開ける音。
      ビールを飲む音。

トシ「腰は大丈夫?よく腰が痛いって、揉ん
 でやったでしょ」
桐島「ああ……職業病で」
トシ「大変よね。重いチェーンソーを付けて」
桐島「最初はへっぴり腰で。肉体労働もやっ
 たことない男でしたから。でも1か月もし
 たらまっすぐ切れるように」

   SE 列車が走る音。

桐島M「窓から、トドマツの林が見えた。は
 るかかなたまで、果てしなく広がっていた」

桐島「……トドマツですね」
トシ「見て。写真」

桐島M「チェーンソーを腰に付けた健がこち
 らに向かって微笑んでいた。老婆は愛おし
 そうに写真を撫でていた」  

   SE ビールを飲む音。
      男たちのざわめき。

桐島M「あの頃、事務所はいつも男たちの声
 でうるさかった」

男「社長。お先に」
桐島「お疲れ。明日もよろしく」

   SE 木の床を踏む足音。
      「お疲れ」という男たちの声。

桐島「ずっと東京にいたんだ」
健「はい」
桐島「仕事はずっと経理を?」
健「ええ」
桐島「運動は?」
健「ジムには通ってました」
桐島「ジムか」
健「どうしました?」
桐島「いや、山仕事で使う筋肉は違うからさ」

桐島M「健は色白でほっそりしていた。周囲
 のがたいのいい山男達が、彼をじろじろ見
 て通り過ぎた」

桐島「なんで林業に?」
健「……黒岩内に戻りたくて」
桐島「母親のためか」
健「はい。介護が必要で。でもそれだけじゃ
 なくて」
桐島「ん?」
健「子供のころ、山が好きだったんです。ず
 っと東京にいたら、それを忘れていた。ま
 た触れたくなって」

   SE 書類をめくる音。

桐島「黒岩内にいるんだ。俺も黒岩内出身で
 ね」
健「同郷ですね」
桐島「ああ。母親と2人暮らしか」
健「はい」

   SE アオサギの鳴き声。
      落ち葉を踏む足音。

桐島「健。こっちだ」
健「はい」

   SE 落ち葉を踏む足音。

桐島「こいつを切ろう」
健「俺、不器用だけど、この山の匂いだけは
 好きなんです」
桐島「そうか。よし。腰を落として、こう構
 えて」
健「はい」
桐島「スイッチを入れて」

   SE チェーンソーが動き出す音。

桐島M「ガタガタ動くチェーンソーを健は必
 死に押さえていた。俺は片手で腰を支えて
 やった」

桐島「ここに当てて。まっすぐに」
健「手、離してもらって大丈夫です」
桐島「本当か」
健「はい」
桐島「……(笑って)強がりめ」

   SE 木を切っている音。
      桐島の笑い声。

桐島「よし、ストップ」

   SE ぎ~っという音。

桐島M「大きなトドマツの木が傾いた」

   SE 木が倒れる音。

桐島「やったな」
健「やった。やったー!」

桐島M「健は子供のようにはしゃいでいた。
 俺はその背中を見ながら、こいつはいい山
 男になると思った」

健「社長」
桐島「なんだ」
健「俺、この光景を母さんに見せたいんです。
 いつか一緒に」
桐島「そうか。じゃあ早く一人前にならない
 とな」
健「はい!」

アナウンス「次は目名。目名に止まります」

   SE 列車が止まる音。
      人が乗り込む音。

伊藤「トシさん、おひさしぶり」
トシ「まあ、伊藤さん。お買い物?」
伊藤「ええ、ニセコに」

   SE 近づいてくる足音。

伊藤「この人は?」
トシ「息子の健よ」
伊藤「……息子さん?」
トシ「ようやく帰ってきたの」

桐島M「老人は怪訝そうに俺を見た。俺は作
 り笑いを浮かべた」

伊藤「ま、よかったじゃない」

   SE 席に座る音。
      席を立つ音。
      近づく足音。

伊藤「あんた確か、トドマツが好きっておっ
 しゃってましたね」
桐島「……はい」
伊藤「東京では、ずっと経理をしてたと」
桐島「ええ。それが?」

   SE 咳払いする音。

桐島M「老人は俺の顔をいぶかしそうに見て
 いた」

桐島「どうかしました?」
伊藤「どっかで見たことあるな」
桐島「よくある顔です」
伊藤「あんた、健さんじゃないよね」
桐島「……」
伊藤「あ、そうそう。思い出した。あなた、
 桐島造材の桐島社長じゃないの?」

   SE 列車がガタガタ揺れる音。

伊藤「やっぱりそうだろ。桐島さん、あんた、
 こんなとこで何してるんだ。会社はもう畳
 んだって聞いたぞ」
桐島「……人違いです」
伊藤「人違いなもんか。あの事故の後、あん
 たが遺族に合わせる顔がないって逃げ回っ
 てるって、こっちまで届いてるんだ。ト
 ドマツの山、あんなに荒れさせちまって」
トシ「(割って入るように)伊藤さん……こ
 の子は私の息子よ。ねえ?」
桐島「……はい、母さん」

   SE 列車が軋むように曲がる音。
      車両がガタガタ揺れる音。

伊藤「健さんはほんと明るい人でね。毎日楽
 しそうだったなあ」
トシ「そうよね」
伊藤「よく仕事の話をしてくれたんだ」
トシ「帰ってきたときは、暗かったけど。見
 違えるように元気になって……」

アナウンス「次はニセコ、ニセコに止まりま
 す」

   SE 席を立つ音。

伊藤「じゃあトシさん、また」
トシ「じゃあね。お元気で」

桐島M「老人は降りる前に、俺の方を振り返
 った」

伊藤「健さんに似てますよ。あなた」 

   SE 列車を降りる足音。
      列車が走り出す音。

トシ「健、あの人のこと覚えてる?」
桐島「……はい」

   SE 列車が走る音

トシ「あなた、家族は?」
桐島「いません。……今は」
トシ「そう」

   SE 列車が走る音。

桐島M「老婆はそれ以上、何も聞かなかった」

   SE 列車がガタガタ揺れる音。

桐島M「窓の外に雪原が広がっていた。建物
 は何も見えなかった」

   SE ビールの缶を開ける音。
      ビールを飲む音。

桐島M「ポケットの中の瓶に手が触れた。俺
 はそっと手を離した」

トシ「この路線は絶対残るって言ってたわね」
桐島「ええ」
トシ「……今日までなのね」

桐島M「ああ、健の母も廃線には気づいてい
 た」

トシ「健はね、事故の前の日も笑ってたの。
 電話で」
桐島「……ええ」
トシ「笑い方だけは子供のころと同じで」

   SE 列車が走る音。

桐島M「それから俺も老婆もずっと黙ってい
 た」

アナウンス「次は具治安。具治安。終点です。
 長い間、当路線のご利用、誠にありがとう
 ございます」

桐島M「窓から、俺の会社が見えた」

   SE アオサギの鳴き声。
      落ち葉を踏む足音。
      チェーンソーで木を切る音。
      荒い息を吐く音。

健「きれいですね」
桐島「ああ」

桐島M「夕日が地平線に沈みかけていた。ト
 ドマツの林が赤く染まり、健はその光景を
 じっと眺めていた」

健「この会社に入って、ほんとよかったです」
桐島「もう立派な山男だな」

   SE アオサギの鳴き声

桐島M「俺は少し焦っていた」

桐島「みんなライトをつけろ!あと3本倒す
 ぞ!」
男たちの声「はい!」
桐島「一人で大丈夫か」
健「任せてください!」

桐島M「ニセコの建築ラッシュで、景気は良
 かった。そんな中、俺は補助金がらみの投
 資詐欺に遭い、損失を取り返そうとしてい
 た」

   SE チェーンソーで木を切る音。
      木が倒れる音。
      男の悲鳴。

桐島「なんだ……今の?」
男「川村!川村がっ!」

   SE 男たちの騒ぐ声。

桐島M「俺はその場に立ちすくみ、何もでき
 ず震えていた」

男「社長!来てください」

   SE 雪を踏む足音。
      荒い息を吐く音。

桐島「け……健……」

桐島M「健が仰向けに横たわっていた。倒れ
 た木に心臓が押しつぶされ、周囲に血が飛
 び散っていた」

   SE 雪に膝をつく音。

男「社長!しっかりしてください」
桐島「健。俺は……」

   SE 電車が止まる音。
      ドアが開く音。

トシ「会社に案内してくれない」
桐島「え?」
トシ「いつも会社の話をしてくれていたから、
 一度見たかったの」
桐島「中は空ですが」
トシ「それでもいいわ」

   SE 雪を踏む足音。
      鉄道ファンたちのざわめき
      やシャッター音。

桐島M「駅前の商店街は、どこもシャッター
 が閉まり、しーんと静まり返っていた」

   SE 雪を踏む足音が止まる。

桐島M「俺はふと思い出した。事故の起こる
 前日。作業後の事務所だった」

健「社長、少し話せますか」
桐島「悪いが忙しいんだ。後でな」

桐島M「俺は、借金を返しに出ていこうとし
 ていた。健が何を俺に伝えようとしたのか、
 今となっては永遠にわからない」

トシ「どうしたの」
桐島「あ、すいません」

   SE 雪を踏んで走る音。

桐島M「俺は老婆を会社の前まで連れて行っ
 た。看板はまだ残っていたものの、シャッ
 ターは下りていて、しーんと静まり返って
 いた」

トシ「ここで働いていたのね」

   SE 雪が地面に落ちる音。

桐島M「老婆は、看板に積もった雪をはらっ
 ていた。ふいに健の言葉が脳裏をよぎった」

健の声「この景色を母さんに見せたいんです」
桐島「……俺は」
トシ「ん?」
桐島「申し訳ありません。俺は……俺はあな
 たの息子じゃ」

   SE 遠くから喧騒が聞こえてくる。

桐島「桐島造材の桐島啓介です」

   SE 遠くでアオサギの鳴き声。

桐島「健さんを死なせたのは、俺です。夕方
 まで作業を続けろと言ったのは俺で、無理
 させたのも俺です。あの日、現場にいたの
 に、何もできなかった」

   SE 風の吹く音。

桐島「ずっと逃げていました。書類を持って
 きたのも、今日が最後のつもりだったから
 で……本当に申し訳ありませんでした」

   SE 雪に膝をつく音。

トシ「立ちなさい」
桐島「え」
トシ「雪が染みるでしょ」

   SE 立ち上がる音。
      風が吹く音。

桐島M「老婆はしばらく黙っていた」

トシ「知ってたわ。最初から」
桐島「え?」
トシ「健に似てるなって思ったけど、違うっ
 てすぐわかった。でも……もう少しだけ健
 と話したかったの」

   SE 風が吹く音。

トシ「俺にも居場所ができた、40過ぎた新
 人なのに親切に教えてくれるって、あなた
 には感謝してた」
桐島「俺は……俺は彼を無理に」
トシ「恨んでないと思う」
桐島「え?」
トシ「嫌なことは嫌って言える子だったから。
 あなたのそばにいたのは、あの子が選んだ
 ことよ」
桐島「……ありがとうございます」

桐島M「俺は、ずっと頭を下げていた」

   SE 遠くから聞こえてくるアオサギ
      の暗い鳴き声。

トシ「健が死んでから、毎日駅に来てたの。
 誰かと話したくて」
桐島「……」
トシ「黒岩内にいる人はみんな知ってるから、
 気を遣わせてしまって。あなたは知らない
 人だったから楽だった」
桐島「俺なんかでよかったんですか」
トシ「(笑って)あなた、健に謝りたかった
 んでしょ」
桐島「はい」
トシ「私に言ってくれたから、少し健に届い
 たかもよ」

アナウンス「黒岩内行き最終電車、まもなく
 出発いたします。函館本線、長万部~小樽
 間最終電車。皆さま、長い間のご利用、誠
 にありがとうございます」

   SE 人々の雪を踏んで歩く音。
      カメラのシャッター音。
      人々の喧騒。

桐島「あの、これを」

桐島M「俺は遺族補償の書類を渡そうとした」

トシ「それはあなたが持ってなさい」
桐島「はあ」
トシ「まだ認めたくないの」
桐島「……わかりました」
トシ「じゃあね。社長さんも頑張って」

   SE 列車に乗る足音。

桐島M「俺は一瞬、郵便ポストに入った督促
 状の束を思い出した。が、前を向こうと思
 った」

   SE ポケットの中の瓶を振る音。

桐島M「しぶとく生きてやる。この老婆のよ
 うに」

   SE ポケットから瓶を取り出す音。
      ゴミ箱の底に瓶が当たり重たい
      音が響く。
      空になったポケットを叩く音。
      遠くの方からアオサギの高く澄
      んだ鳴き声が聞こえてくる。

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