お急ぎの方、お先にどうぞ コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 26 0 0 11/20
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 26歳


○大都会の駅

地球家族6人、改札を出る。かなりの人ごみ。
ジュン「すごい満員電車だったね」
父「こんな都会に泊まることになるのは初めてだね」
ミサ「ちょっと私、トイレ行ってくる。リコも行く?」
リコ「うん」
トイレの前には、20人ほどの行列ができている。
ミサ「うわ、すごい行列。並ぶしかないか」
そこに、若い男性(HB)が声をかけてくる。
HB「ひょっとして、ミサさんとリコさんではありませんか」
ミサ「はい、そうですけど」
HB「あなたがたは今日、僕の家に泊まる予定なんですよ」
ミサ「そうだったんですか、よろしくお願いします」
HB「僕は鉄道会社に入って、今はこの駅で働いています。鉄道が大好きなんです。今日は鉄道マニアの家族がお泊りになると聞いていたので、とても嬉しく思います」
ミサ「あ、鉄道マニアは、弟のタク一人だけです。ほら、あそこで時刻表を見ている子」
ミサ、切符売り場にいるタクのほうを指す。
HB「あ、そうなんですか。話してこよう」
リコ「あー、まだかな。おしっこもれそう」
ミサ「え! もっとすいているトイレは無いんですか?」
HB「この駅はどこも混んでいますよ。じゃ、僕におまかせください。(大声で)みなさーん、この子が、もれそうでーす」
前に並んでいる人たちが突然全員振り向き、お先にどうぞのポーズをする。
並んでいる人「お先にどうぞ」
並んでいる人「お先にどうぞ」
ミサ「すごーい」
リコ、先にトイレに入って行く。
ミサ「どうしよう。リコだけ先に行っちゃった」
HB「あ、ミサさんも。大丈夫です。みなさーん、この子も、もれそうでーす」
並んでいる人「お先にどうぞ」
並んでいる人「お先にどうぞ」
ミサ「え、どうしよう」

○ホストハウスの玄関前

リコ、玄関のドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HF、HM、HBが出てくる。
HB「ようこそ、我が家へ」

○居間

地球家族6人とHF、HM、HB。
ミサ「先ほどはどうもありがとうございました」
HB「いえいえ。この星の人たちは、みんなお人よしですから、すぐに譲ってくれるんですよ。僕は都会の駅に勤めているので、行列には詳しいです。急いでいる人がいると譲りたくなる性格がよくわかります。これを利用して、昨年僕は、ある企画を出して、給料が2倍になったんですよ」
母「え、どんな?」
HF「まあ、まあ。君の自慢話はあとでいいから、電車で海まで行く方法を教えてあげなさい。明日の午前中に行きたいとおっしゃっているんだから」
HB「あ、どうもすみません。えーと、これが路線図で、海岸の最寄り駅はここです・・・」
HB、列車の路線図を指さしながら説明する。

○客間

地球家族6人がくつろいでいる。
タク「そうだ。僕、明日の特急の切符、今買ってくるよ。切符買うのにも並びそうな気がするから、早めに買っておきたいんだ」
父「そうか、タク、頼むよ」
母「明日の電車ならば、明日買えばいいんじゃない?」
ジュン「そうかな、今日買えるうちに買っておいたほうがいいと思うけど」
ミサ「私もそう思う」
リコ「私も」
タク「よし、じゃあ多数決で、決まり。行ってきます」
タク、立ち上がる。
父「7時に夕飯だから、それまでに戻ってくるんだよ」

○駅の切符売り場

切符売り場には、20人の行列。みんなシルクハットのような白い帽子をかぶっている。
タク「うわー、すごい行列だ。ここに並ぶのか」
駅員「お客様、乗車したい時刻をここに書いて、この帽子をかぶって並んでください」
駅員、タクに白い帽子とサインペンを手渡す。
タク「え?」
タク、帽子に「明日の午前10時」と書く。
タク「明日の午前10時。これでいいのかな」
タクが並んでいると、後ろから人が並ぶ。帽子には「18:00」と書いてある。
タク(心の中で)「あれ、18:00の列車に乗る人? 今17:45だから、あと15分しかないじゃん」
タク、後ろの人に話しかける。
タク「あの、今すぐ列車に乗ろうとしているんですか?」
後ろの人「そうなんです。急いでいるんです」
タク「良かったら、お先にどうぞ。僕は明日の切符を買うだけですから」
後ろの人「ご親切に、ありがとうございます」
タク、列を譲る。すると、次にまた帽子に「18:10」と書いた人が並ぶ。
タク(心の中で)「うわ、また急ぎの人が来た」
タク「良かったら、お先にどうぞ」
後ろの人「ありがとうございます」
タクの前の行列は、ようやく5人になる。
タク(心の中で)「やっと買えそうだ」
すると、次にまた帽子に「18:15」と書いた人が並ぶ。
タク(心の中で)「うわ、また来た」
しばらくして、タクが時計を見る。
タク「あー、もう夕飯の時間だよ。帰らなきゃ」

○ダイニング

地球家族6人とHF、HM、HBが夕食中。
ジュン「え、結局、切符買えなかったの?」
タク「うん。後ろに急いでいる人がいると、どうしても譲らなければいけない気持ちになっちゃって」
ミサ「後ろの人が急いでいるなんて、どうしてわかるの?」
タク「それがさ、いつの電車に乗るかを書いた帽子をかぶるしくみなんだ」
HB「あ、タクくん。さっそく、あの白い帽子をかぶってきたんですね。あの帽子、僕が考えたんですよ」
母「あなたが?」
HB「そうです。この星の人たちはとても親切で、急いでいる人がいると譲らずにはいられない性格です。でも、誰が急いでいるのかわからなければ、譲ることができません。あの駅の切符売り場は長い行列ができるので、並んでいると乗り遅れてしまう人が大勢出てしまいます。それで、ちょうど1年前に、あの帽子を思いついたんです」
父「そうなんですか。画期的なアイデアですね」
HB「ほめていただいて、ありがとうございます」
タク「でも、なんだか納得がいかないですよ」
母「タク、どこが納得できないの?」
タク「確かにアイデアはすばらしいと思うんですけど、そもそも、急いでいる人が多すぎるんですよ。僕はいつも、特急に乗るときは前の日までに切符を買っておかないと心配なんです」
HB「そのほうが普通だと思いますよ」
タク「そうですよね。僕もさっき、家族の意見を聞いたら、キリギリに買うという人は一人だけで、あとはみんな、前の日までに買うって」
母「え、その一人って、私のこと?」
タク「でも、今日並んでいた人は、本当にもう全員が、今すぐ電車に乗りたい人ばかりで。それで今日僕は、後から来た人にどんどん譲ってしまって、結局切符が買えなかったんですよ」
HB「そうですか、確かに僕も、最近不思議に思っていたんです。昔はみなさん、もっと余裕をもって切符を買いに来ていたと思うんですけど、最近は、当日ギリギリに切符を買う人が増えていますね。1年前くらいからかな・・・」

○廊下

ミサとタクが話している。
ミサ「明日は早めに駅に行って、切符を買わなきゃね。せっかく旅行に来たんだから、予定したとおり特急に乗って海に行きたいわ」
タク「でも、早めに駅に行ったとしても、後ろに急いでいる人が並んだら、譲らずにはいられなくて、結局ギリギリの時間になっちゃいそうだな」
ミサ「タクは本当にお人よしなんだから。私が並んであげるわよ。私はそこまで気にしないから」
タク「さあ、どうかな。あの白い帽子を見たら、落ち着いて並んでいられないと思うよ。お人よしかどうかとは違う気がするんだ。急いでいる人が後ろにいることを知りながら平気でいられる無神経な人だと周りから思われたくないからかもしれないな」
ミサ「なるほど。この星の人たちもみんな、タクと同じことを考えているのかな・・・」
タク「・・・。そうか、わかったぞ!」

○居間

地球家族6人とHF、HM、HBが再び集まっている。
タク「当日ギリギリに切符を買う人が増えた理由、わかりましたよ。簡単なことです。あの白い帽子を始めたからですよ」
HB「え、あの帽子のせいですか?」
タク「せっかく前もって切符を買おうとしても、急ぎの人が来ると譲らなければいけない。そう思うと、誰も早めに買おうとは思いません。ギリギリに行けば、みんな譲ってくれて、並ばずに買えるわけですから、みんなそうするようになっちゃいますよ」
HB「それは気がつかなかった。それじゃ、あの帽子は無いほうが良かったんだ・・・。やっぱり切符は早めに買ってもらうにかぎります。明日から、さっそく、あの帽子を廃止するよう、今から上司に電話で相談します」
タク「それがいいですよ」
HB、部屋を出て行く。HBの背中を見送るHF。
HF「この星の人は確かにみんな人がいいと言いますけど、一番のお人よしは息子なのかもしれません。あの子は、あの帽子を提案して取り入れたことが評価されて、給料が2倍になったんです。でも明日からきっと、またもとに戻ってしまうでしょう。でも、それがみんなのためになると思ったら、そうせずにはいられない性格なんですね」

○翌日の午前・駅の切符売り場

切符売り場には、20人以上の行列。だれも白い帽子をかぶっていない。
並んでいる人「あの帽子、無くなってよかったね」
並んでいる人「そうだね。またこれで、3日後の切符も、後ろの列を気にせずに買えるようになったわ」
その後ろに並ぶ地球家族6人。
ジュン「我が家で一番のお人よしはやっぱりタクだね」
ミサ「そうよね。せめて、帽子をやめるのをもう1日待ってもらえば、私たち並ばずに済んだのに」
父「特急に間に合うかな・・・」
父、心配そうに時計を見る。
そこへ、HBが話しかける。
HB「地球のみなさん、僕にお任せください。(大声で)みなさーん、この人たち急いでまーす」
前に並んでいる人たちが突然全員振り向き、お先にどうぞのポーズをする。
並んでいる人「お先にどうぞ」
並んでいる人「お先にどうぞ」
びっくりする地球家族6人。

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