9月1日 ドラマ

8月31日。最後の日。
大沼来伝 48 0 0 10/11
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第一稿

登場人物
橋元大地(15)中学三年生少年
須田実垢(15)大地の幼馴染
大地の母


〇大地の家・中(夜)
   日めくりカレンダー。8月31日。
   暖簾の向こ ...続きを読む
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登場人物
橋元大地(15)中学三年生少年
須田実垢(15)大地の幼馴染
大地の母


〇大地の家・中(夜)
   日めくりカレンダー。8月31日。
   暖簾の向こうで皿洗い中の大地の母。
大地の母「大ちゃん‼宿題は⁉」

〇同・大地の部屋(夜)
   机の上、「自由研究」と題打つノート
   は白紙。
   椅子に座り、プリントを睨む橋元大地
   (15)。
   汗が一滴落ちて、シミになる。
大地の母の声「大ちゃん‼」
大地「だあッ!うるせぇって!」
   プリントを睨む大地。
   チャイムの音が下から聞こえる。
大地の母の声「大ちゃーん?」
大地「――何だよ⁉」
大地の母の声「須田さん」
   顔を上げる大地。

〇同・玄関(夜)
   ドアを開ける大地。
   闇の中に突っ立ている須田実垢(15)、服
   の袖を伸ばし、腕を隠す。
大地「よ、よぉ」

〇道(夜)
   並んで歩く大地と実垢。
   大地、ソワソワしている。
大地「何だよ、何か用か?」
実垢「うん」
大地「明日から毎日会えんのに」
実垢「うん……」
   間。
実垢「宿題。終わった?」
大地「いや……」
実垢「私も」
   と、道の自販機を見つける大地。
大地「何か飲もうぜ」
   ポケットから小銭を取り出し、自販機
   に入れる大地。
大地「何飲む?」
実垢「えっと……(悩む)」
   大地、待ちきれずに手を伸ばすと、
実垢「これ」
   手と手が重なる。
   目と目が合う。
大地「‼」
   サッ、と手を引く大地。
   
〇坂の上の公園(夜)
   ブランコを立ちこぎしながら、缶ジュ
   ースを飲む大地。
   滑り台の上の実垢をじっと見つめる。
   実垢、町の方をじっと眺めている。
   坂の下、ポツポツと明かりが散らばる
   町の夜景。
   実垢、缶を開けて飲む。
   と慌てて口から離し、手を当てる。
大地「だから言ったろ。熱いって」
実垢「えへへ」
大地「……こんな暑いのに、ホット飲むか普
 通?お前、休み入る前も長袖着てたし」
実垢「そう……?変かな……」
   大地、ブランコを飛び降り、実垢の元
   へ。
実垢「昔。よく来たねここ。みんなで」
大地「――ガッコ終わり、たまに俺ら来てる
 けどな」
実垢「いいなぁ。みんな仲良くて」
大地「しゃべる奴いないのか?」
実垢「うん」
大地「女友達とか」
実垢「ううん……」
大地「――好きなやつとか」
実垢「……」
大地「俺だけ?」
実垢「うん……」
大地「……」
実垢「……」
   実垢の横顔。
   見つめる大地。
   ――缶を握りつぶしてしまい、ジュー
   スがズボンにかかる。
大地「! あーあ……」
   その様子を見て微笑む実垢。
実垢「来年、またこうしてるかな」
大地「……なんだよ、急に」
実垢「ううん。いいんだ」
   大地。
実垢「大ちゃん。卒業。次の春」
大地「だな」
実垢「どっか高校行くの?」
大地「かな。お前は?」
実垢「……まだ決めてない」
大地「すぐ進路相談なのに。のんきな奴」
実垢「ふふ。大ちゃんと一緒の所にしようか
 な」
大地「何だそれ」
   坂の下に広がる町の夜景。
   二人のシルエット。
   実垢、突然滑り降りる。
実垢「そろそろ帰ろっか。怒られちゃうから
 」

〇公園・入口(夜)
   大地、ゴミ箱に空き缶を捨てる。
   潰れたサイダーと、
   実垢が飲んだコーンポタージュ。
大地「……」
   間。
   大地、捨てる。実垢の元へ。
実垢「ありがと」
大地「あぁ」
実垢「ねぇ」
大地「?」
実垢「手、繋いでいい?」
   大地。

〇坂道(夜)
   手を繋いで歩く二人。
   街灯が照らす。
   うつむいている大地。
   チラチラと大地を見る実垢。
実垢「ねぇ」
大地「――」
実垢「そんなに引っ張らないで」
大地「! ……お前だろ、引っ張ってんの」
   二人の手。
   ――実垢の指が伸びたかと思うと、大
   地の指の間に絡まる。
大地「!」
   ぶら下がる大地のもう片方の手が、ポ
   ケットに収まる。
   微笑む実垢。
   二人の後ろ姿が坂道に沈んでいく。

〇道(夜)
   分かれ道。大地と実垢。
大地「じゃあ、俺あっちだから」
実垢「うん」
大地「じゃあな」
   絡み合う二人の手、離れない。
   実垢。
   大地。
   間。
大地「――じゃあな」
実垢「――うん」
   実垢の手から抜けていく大地の手。
   見送る実垢。
   大地の後ろ姿。
   実垢、帰路につく。
   大地、脚が止まる。振り返る。
   街灯の下、実垢の後ろ姿。
大地の声「そうして家に帰った」
   実垢が闇に消える。
大地の声「それが最後だった」
   大地、もとの道に戻る。
大地の声「手が重なったとき。今思うとアイ
 ツの左手が赤くなってた気がする」

〇駅・ホーム(朝)
   電車がホーム半ばで止まっている。
   サイレンの音が入り混じる。
   電車下半分を覆い隠すブルーシート。
大地の声「次の日俺は学校に行けなかった。
 俺だけじゃなく、大人数の人がいけなかっ
 た」
   ブルーシートから、救急隊や警察官が
   出てくる。

〇部屋の窓(夜)
   揉みある二つの人影。
   太い影が一方的に細い影を殴りつけて
   いる。
   細い影の左腕をつかむと、フライパン
   を押し当てる。
   そこへ大きい影が加わり、椅子を細い
   影へ投げつける。

〇実垢の家(マンション)
   記者団が囲んでいる。
   警察に連れられて、背の高い男と肥満
   の女が出てくる。
   一斉にたかれるフラッシュ。

〇校門前
   「卒業式」と書かれた看板の周りに、
   花が飾られている。
   舞い散る桜の花びら。
大地の声「クラス全員で卒業はできなかった
 」

〇大地のクラスの教室
   もぬけの殻の教室。
   黒板に「卒業おめでとう‼」の文字。
大地の声「でも、それを気にしていたのは俺
 だけだった」

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