#21 65kHzの叫び ドラマ

人間には聞こえない周波数の叫び。それが「想い」。
竹田行人 9 1 0 06/05
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第一稿

「65kHzの叫び」


登場人物
吉田一太(17)高校生
吉田洋一(48)豆腐屋
吉田啓二(45)ロックミュージシャン


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「65kHzの叫び」


登場人物
吉田一太(17)高校生
吉田洋一(48)豆腐屋
吉田啓二(45)ロックミュージシャン


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○都立梅ヶ丘高校・校門前(夕)
   「都立梅ヶ丘高校」の看板。
   吉田一太(17)、制服で出てくる。
   吉田洋一(48)、一太の後ろを歩いている。

○ひだまりの丘公園(夕)
   広場のある公園。
   一角に蔦を這わせたひさしがあり、その下にベンチがある。
   一太、ベンチに座っている。
   洋一、一太の隣に座っている。
   ネコ、一太と洋一の間で丸まっている。
洋一「金。要るのか」
一太「要る。けど。それより音楽」
洋一「アルバイトは校則違反。それに。ライブハウスは危険も多い」
一太「それだけ? 理由」
   一太と洋一、目を見合わせる。
一太「親父。なんで音楽嫌いなの」
   ネコ、鳴く。
洋一「別に嫌いじゃない」
一太「いいけど。止めてもやるよ。だってオレには伝説のロッカーのDNAがある」
洋一「ロッカーの。DNA」
   ネコ、歩いていく。
   一太、ネコを目で追う。
一太「あ。おじさん」
   吉田啓二(45)、ネコを撫でている。
啓二「おお。一太。あ。洋一にい」
洋一「啓二」
   啓二、一太と洋一に手を振る。

○梅が丘商店街(夕)
   一太と啓二、並んで歩いている。
   洋一、二人の後ろを歩いている。
啓二「へぇ。一太バンドやってんの?」
一太「うん。wander sonarってバンド。オレ。ルイスみたいなバンドやりたいんだ」
啓二「古いねぇ。解散して15年は経つよ」
一太「19年。ロック。いや。音楽やっててルイス知らなきゃもぐりだよ」
啓二「そりゃどうも」
一太「ルイスのギタリスト。日本ロック界の生きる伝説。吉田啓二」
   一太、鞄の中から「K.YOSHIDA」と大きくプリントされた赤いタオルを取り出し、広げる。
啓二「一太。覚えとけ」
   啓二、一太の頭に手を置く。
啓二「究極の愛情表現。それがロックだ」
   一太と啓二、目を見合わせる。
啓二「だからロックは自由だ。何ものにも縛られないし、何ものも縛らない」
   一太と啓二、微笑み合う。
   啓二、洋一を振り返る。
   洋一、啓二に苦笑い。

○吉田豆腐店・外観(夜)
   「吉田豆腐店」の看板。
   シャッターが少しだけ開いていて、光が漏れている。
   ネコ、歩いている。

○同・作業場(夜)
   自宅の居間とひと続きになっている。
   洋一、作業着を着て、寸胴の中で水に浸した大豆の様子を見ている。

○同・居間(夜)
   一太、奥にある冷蔵庫を開き、中を物色している。
   啓二、食卓についている。
一太「ごめん。今おふくろ、商店街の人たちと韓国行ってて。ビールでいい?」
啓二「ああ。ありがと」
   啓二、洋一の背中を見ている。
啓二「洋一にい。すっかり豆屋だな」
一太「まめや」
啓二「最高の豆腐屋をそう呼ぶ」
一太「最高の豆腐屋ねぇ」
   一太、啓二の前にビールを置き、向かいに座る。
一太「親父見てると思うんだ。何が楽しくて生きてんのかなって」
   啓二、缶ビールのプルタブを立てる。
一太「毎日毎日同じことの繰り返し。家族より豆と過ごす時間の方が長いし」
啓二「一太。それは」
   洋一、入ってくる。
洋一「ごめんごめん。あれやってからじゃないと落ち着いて飲めないから」
啓二「いいよ。全然」
   洋一、一太の隣に座る。
一太「あ。そうだおじさん。オレのできたてのアルバム聴いてよ」
洋一「おい。一太」
啓二「いいよ」
一太「マジ? ちょ。ちょっと待ってて」
   一太、出ていく。
   洋一、一太の背中を目で追う。

○同・一太の部屋(夜)
   六畳間。
   物が散乱している。
   机の上に開封済みの一通の封筒。
   一太、部屋を漁っている。
   携帯電話の着信音。
一太「もしもし? ああ康介? なんだよ。今取りこんで。え?」
   一太、机の上の封筒に目をやる。
一太「まだだよ。来たらちゃんと電話すっから。じゃあな」
   一太、通話を終えると、机に歩み寄り、封筒を取って中身を開く。
   「オフィス コマ 新規アーティストオーディション結果」と書かれた紙。
   不合格である。
   一太、紙を見つめている。

○同・階段(夜)
   一太、CDを手に階段を下りてくる。
洋一の声「ホントにすごいんだな、ルイスは。未だに影響力がある」
啓二の声「なんだよ他人事みたいに。元は兄貴が始めたバンドだろ」
   ネコの声。
   一太、立ち止る。

○同・居間(夜)
   洋一と啓二、食卓で向かい合っている。
啓二「親父が倒れなきゃ今でも続けてたろ? ロック」
洋一「どうだろうな」
啓二「今でも思ってる。オレより兄貴の方がずっと。ロックの才能はあったって」
洋一「かいかぶりだ」
啓二「だから嬉しかったよ。一太がバンドやってるって聞いてさ。吉田ロックのDNAっていうかさ」
洋一「ロックのDNAなんてない」
   洋一と啓二、目を見合わせる。
洋一「あいつを。一太を焚きつけるようなことは言わないでくれ」
啓二「なんでだよ。いいだろ別に。夢にかけさせてやったって。一回こっきりの人生だ。失敗したって本人が満足してれば」
洋一「そういうことじゃねぇんだよ!」
   ネコの声。
洋一「オレは。あいつの父親なんだよ」
   洋一と啓二、目を見合わせる。
洋一「啓二。長くやってるからわかるだろ? ロックで。音楽で成功する難しさ」
啓二「そりゃ。まぁ」
洋一「才能や実力なんて成功条件の一つだ。運。コネクション。タイミング。そんなどうしようもないものに左右される」
啓二「確かに。確かに実力だけで成功するわけじゃない。でも」
洋一「豆腐は食えるが、音楽は食えねぇ」
啓二「それ。あん時の。親父の」
洋一「今ならわかる。あの頃反対してた親父の気持ちが」
   洋一と啓二、目を見合わせる。
洋一「あいつの人生につまづきそうな石があったら、たとえそれがどんなに小さな石だったとしても、取ってやりたいんだ」
   洋一と啓二、目を見合わせる。
洋一「オレは。あいつの父親なんだよ」
   洋一と啓二、目を見合わせる。
洋一「父親なんだよ。オレは」
   ネコの声。
啓二「やっぱりもったいねぇなぁ」
洋一「あん?」
啓二「兄貴は。最高のロッカーだ」
   洋一と啓二、微笑み合う。

○同・階段(夜)
   一太、うつむいている。
啓二の声「究極の愛情表現。それがロックだ」
   ネコの声。
   一太、顔を上げる。

○日本武道館・全景
   人々が行き交っている。
   T「10 years later」。
一太の声「ライヴハウス武道館へようこそ!」
   歓声。

○同・正門前
   仁王立ちしている一太(27)の背中。
   一太の友人・康介、一太の頭を叩く。
一太「痛! おお。康介」
康介「一太。うるさい。迷惑だろ」
一太「いいだろ。一回言ってみたかったんだよコレ」
康介「行くぞ。チケット持ったか? 豆腐屋」
一太「おう。あ。知ってた? オレみたいな最高の豆腐屋のことを、豆屋と呼ぶ」
   一太、正門に向かって歩き出す。

〈おわり〉

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