ダークヒーロー アクション

人類のヒーロー・昆蟲戦隊バグレンジャーと戦う悪の組織・チルドレン。その目的は世界征服……ではなく、適度に暴れて戦って敗れる。そう、彼らは戦隊組織を維持するために雇われた子会社的組織なのだ。
マヤマ 山本 8 0 0 05/26
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第一稿

<登場人物>
メーデ(20)/ブラックスタッグ チルドレンの戦闘員、黒の戦士
オーボ(25)同
セージ(19)同
カロンナ(33)同女幹部
ハデス(50)プルートのボス
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<登場人物>
メーデ(20)/ブラックスタッグ チルドレンの戦闘員、黒の戦士
オーボ(25)同
セージ(19)同
カロンナ(33)同女幹部
ハデス(50)プルートのボス
甲本 紅蓮(26)/レッドビートル/レッドビートルヘラクレス 戦隊のリーダー、赤の戦士
秋津 蒼真(30)/ブルードラゴンフライ 同メンバー、青の戦士
蝶野 桃香(21)/ピンクバタフライ 同、桃色の戦士
GREー04(20)/グリーンホッパー 同、緑色の戦士、男性型アンドロイド
YELー05(20)/イエロースティンガー 同、黄色の戦士、女性型アンドロイド
興梠 拓道(52)国防省事務次官
SENTーAI 人工知能、声のみ

脚本家(42)
プロデューサー(47)
添付A(20) ユーチューバー


議員
職員
アナウンサー



<本編> 
○黒味
   T「Episode.1 DARK-side」
   爆発音や人々の悲鳴。

○八手山・荒野
   五色のスーツを身に纏った昆蟲戦隊バグレンジャーの面々(カブトムシをモチーフとした赤いスーツの戦士=レッドビートル、トンボをモチーフとした青いスーツの戦士=ブルードラゴンフライ、蝶をモチーフとした桃色のスーツの戦士=ピンクバタフライ、バッタをモチーフとした緑色の戦士=グリーンホッパー、蜂をモチーフとした黄色いスーツの戦士=イエロースティンガー)と、黒基調の戦闘スーツで顔部分に眼帯着用のプルート戦闘員の面々が戦っている。その中に、唯一左腕の肘から手首にかけて黒いギプスを装着した戦闘員・メーデ(20)。
脚本家N「一年に渡って繰り広げられた、昆蟲戦隊バグレンジャーと悪の組織・プルートとの戦いは……」
    ×     ×     ×
   バグレンジャーによるバズーカ砲撃を受け、爆発四散するハデス(50)。
脚本家N「冥王ハデスの死により幕を閉じた」

○港
   悲鳴とともに逃げ惑う人々。
脚本家N「……と思われていた」

○(回想)チルドレン基地・広間
   洞窟のような室内。
   セクシーな衣装の女幹部・カロンナ(33)の元に集まるメーデ、オーボ(25)、セージ(19)らチルドレン戦闘員達。尚、戦闘員の服装はプルート時代と変わらない。
脚本家N「しかしプルートの残党はハデスの遺志を継ぎ、新たな組織『チルドレン』を結成」

○港
   悲鳴とともに逃げ惑う人々。
   進撃するメーデ、オーボ、セージらチルドレン戦闘員達(ただし、人々に手出しする様子はない)。
脚本家N「再び人間界の侵略に乗り出してきたのだった」

○繁華街
   大型ビジョンに映るアナウンサー。
アナウンサー「緊急ニュースです。現在、湾岸地区にチルドレン戦闘員が出現した模様です。近隣住民の方は速やかに避難して下さい。繰り返します……」

○港
   逃げ惑う人々。進撃を続けるメーデ、オーボ、セージらチルドレン戦闘員達。
レッドの声「そこまでだ、チルドレン」
   そこに駆けつけ、戦闘員達と対峙するバグレンジャーの面々。
レッド「もうお前らの好きにはさせねぇぞ」
ブルー「(棒読みで)俺達が相手してやる」
ピンク「おなしゃす」
レッド「報国尽虫、レッドビートル」
ブルー「無我夢虫、ブルードラゴンフライ」
ピンク「百発百虫、ピンクバタフライ」
グリーン「和洋折虫、グリーンホッパー」
イエロー「実力伯虫、イエロースティンガー」
レッド「昆蟲戦隊」
五人「バグレンジャー!」
レッド「全てのバグを、改修してやる」
   戦い始める戦闘員とバグレンジャー。
脚本家N「この物語は、悪の組織・チルドレンと戦う人類のヒーロー・昆蟲戦隊バグレンジャーの戦いの日々……ではなく」
   メーデや他の戦闘員達と戦うレッド。レッドの、カブトムシの角を模した剣型の武器(=カブトブレイド)で斬られ、海に向かって吹っ飛ぶメーデ。
メーデ「うわあああああ!」
   一時停止する映像。
脚本家N「今やられたこの戦闘員・メーデを主人公とした物語なのだ」
   再生する映像。海に転落するメーデ。
    ×     ×     ×
   オーボらと戦うブルー。トンボを模したハンマー型の武器(=オニハンマー)を振り回すも、避け続けるオーボ。
ブルー「テメェ、ザコならザコらしく、さっさと当たってやられとけ」
オーボ「は? 手前がザコだから擦りもしないんだろうが。なぁ、人類ども?」
   オーボの視線の先、避難中の一般人。
ブルー「テメェ、マジでぶっ殺すぞ?」
   ブルーの攻撃を避け続けるオーボ。
オーボ「けっ、ザコが。当たんなきゃ、一生倒せな……」
   銃撃がオーボに直撃する。
オーボ「ほげっ」
   振り返るブルー。それぞれ蝶の右半分、左半分を模した二丁の拳銃(=二蝶拳銃)を手にしたピンクがやってくる。
ピンク「はい、アウト~」
ブルー「おい、桃香。人の獲物、勝手に取んじゃねぇよ」
ピンク「はいはい、さーせん」
ブルー「(他の戦闘員に向け)オラオラ、次はどいつだ?」
ピンク「イキってんな~」
    ×     ×     ×
   セージらと戦うイエロー。連続パンチでセージをボコボコにするイエロー。
セージ「わっ、ちょっ、もうちょい手加減してくれないっスかね?」
イエロー「御心配なく。急所は外しています」
セージ「そういう事じゃなくて……」
   イエローのパンチがセージの顔面めがけて繰り出される。
セージ「ひっ」
   思わず目をつむるセージ。しかし何も起こらない。
   恐る恐る目を開くと、セージの顔面の直前でイエローの拳をグリーンが受け止めている。
グリーン「そこまでだよん」
SENTの声「(グリーンに内蔵されたスピーカーから)周辺市民の避難完了を確認したでありんす。戦闘終了しておくんなんし」
   それまで戦っていた戦闘員とバグレンジャーの面々が、その声を聞いてパタリと手を止める。
ブルー「んだよ、もう終わりかよ」
ピンク「(戦闘員達に)お疲れっしたー」
   海面から顔を出すメーデ。
メーデ「ぷはっ」
   泳いで岸までたどり着くも、上手く登れないメーデ。そこに、鞘に収まったカブトブレイドを差し出すレッド。それに掴まったメーデを引き上げる。
レッド「水落ちとはまた、派手な事やってくれんじゃねぇか」
   変身を解き、甲本紅蓮(26)の姿になるレッド。赤基調のジャケットを着用し、腕にはブレスレット型の変身アイテム(=バグチェンジャー)を身につけている。
甲本「助かるぜ。お偉いさんってのは、そういう見栄えのいい演出が好きだとI thinkだからな」
メーデ「別に。手前に礼を言われる筋合いはゼロだ」
   軽く頭を下げ、その場をあとにしようとするメーデ。
甲本「次も俺ん所に来いよな。メーデ君」
   足を止めるメーデ。
甲本「doした? 何で俺が君の名前を知ってるのか、気になるか?」
メーデ「いいや。手前達は我(=チルドレンの一人称。発音は『俺』風)達の雇い主である以上、疑問はゼロだ」
   再び歩き出すメーデ。
   そこにやってくるイエロー。
イエロー「御歓談中失礼します。そろそろ仕上げの方に移りたいのですが」
甲本「あぁ、そうか。準備は?」
グリーン「出来てるよん」
甲本「じゃあ、フィナーレだ」

○高台
   港を見下ろせる高台に避難している人々。港の辺りで爆炎が起きる。

○繁華街
   大型ビジョンに映るアナウンサー。
アナウンサー「昆蟲戦隊バグレンジャーの活躍により、湾岸地区のチルドレン戦闘員は撃退された模様です」
   歓喜に沸く通行人達。

○高台
   スマホでそのニュースを見ている人々。歓喜に沸く。
カロンナの声「主達、昨日はご苦労だった」

○チルドレン基地・広間
   カロンナの元に集まるメーデ、オーボ、セージら戦闘員達。オーボのみ、スマホをいじっている。
カロンナ「特にメーデは戦隊からお褒めの言葉をいただいた。良くやったぞ」
メーデ「恐縮です、カロンナ様」
カロンナ「それに比べて……」
   オーボの所まで歩いて行き、スマホを没収するカロンナ。
オーボ「あっ……」
カロンナ「オーボ。主は何をしている?」
オーボ「これ、昨日逃げてった人類が落とした奴なんだけどよ、結構面白いぜ? ニュースは見られるし、写真や動画も……」
カロンナ「余計な物を持つな。妾達は契約で必要以上の武器や戦力を持つ事を禁じられておるのだぞ? ただでさえ、戦隊からは新たな要望書が届いている時に」
メーデ「新たな要望書、とは?」
カロンナ「あ、あぁ……。戦隊からは『もっと一般市民に危害を加えるように』と言われておる」
オーボ「人類の代表である戦隊が『人類を襲え』って?」
セージ「さすがに、冗談っスよね」
   笑う戦闘員達。そんな中、一人浮かない表情のカロンナ。
カロンナ「……主達、コレを観て欲しい」
   プロジェクターを使い、壁に映し出されるネット動画。タイトルは『チルドレンに超接近しても危険は無い説』。

○(動画)港
   自撮りする男性・添付A(20)。
添付A「シンチャオ(=ベトナム語の『こんにちは』)。添付Aです。さぁ、今日の動画は『チルドレン戦闘員は、本当に危険かどうか』の突撃レポートで~す」
    ×     ×     ×
   進撃するメーデら戦闘員達。そこに近づいてくる添付A。
添付A「シンチャオ、添付Aでーす」
   無視して進撃する戦闘員達。
   拳を振りかざす添付A。
添付A「低評価ボタン押したのはお前か、この野郎!」
   一番近くを歩いていたセージが添付Aへ足を一歩向ける。
添付A「(殺気を感じ)無理無理」
   笑いながら逃げ出す添付A。

○(動画)高台
   避難先にいる添付A。
添付A「という訳で、コッチが何もしなきゃ危険はない、という結果でした。この動画が少しでも気に入った方はチャンネル登録と高評価、よろしく。では、次の動画で会いましょう。ヘンガップライ(=ベトナム語の『またね』)」

○チルドレン基地・広間
   停止される映像。コメント欄には「だったら戦隊いらないんじゃね?w」等戦隊不要論のコメントが多数。
   戦闘員達の前に立つカロンナ。
カロンナ「という動画が、人類の間で公開されているそうだ」
オーボ「人類も一枚岩ではないんだな」
メーデ「この世論をひっくり返し、不要論をゼロにする為に、我達に『人類を襲え』と言っている訳か」
カロンナ「さすがはメーデ、理解が早いな」
セージ「本気で言ってるんスね……」
オーボ「そんな事の為に、我達にハデス様との約束を破れって? 冗談じゃない」
カロンナ「もちろん、コレはあくまでも、現時点で『戦隊からこういう話が来ておる』というだけの話だ。妾とてハデス様との約束を蔑ろにするつもりはない」

○オープンカフェ・外観
   店内・店外でお茶をする人々。店外のテーブル席には甲本と、甲本に密着取材中の撮影クルーの姿もある。
カロンナの声「とりあえず、人類を襲うポーズはとるように心がけるのだ」
   そこに現れるメーデらチルドレン戦闘員達。その数は少数。人々に手は出さないが、威嚇するような仕草。
   逃げ惑う客達。立ち上がる甲本。
甲本「皆さん、ココは逃げて下さい。(バグチェンジャーに向け)OK、SENT。バトルスーツを転送してくれ」
    ×     ×     ×
   戦うメーデらチルドレン戦闘員とレッド。周囲に人々がいなくなったのを見計らい、メーデの胸倉をつかむレッド。
レッド「doした、メーデ君? 何で人々を襲わねぇ?」
メーデ「やっていただろう?」
レッド「あのな。俺らが求めてんのは、あんな、デパートの屋上のヒーローショーみてぇなぬるいやり方じゃねぇんだよ」

○チルドレン基地・広間
   プロジェクターで壁に映像を映しながら甲本とテレビ電話をするカロンナ。他に誰もいない。
甲本「もっと直接的に危害を加えろ」
カロンナ「し、しかし、仮にもヒーローである主達が『人類を襲え』と指示するのはいかがなものか……」
甲本「そんな事はコッチでthinkする事だ。お前らが気にする事じゃねぇ」
カロンナ「しかし、そんな事出来る訳が……」
甲本「出来る出来ねぇじゃねぇ、やるんだよ」
カロンナ「しかし妾達には……」
甲本「『しかし』じゃねぇ。忘れんなよ? 俺らは今すぐにお前らをツブす事だって出来んだからな?」
カロンナ「うぅ……」
   その様子を物陰から見ているメーデ。その場を立ち去る。
メーデの声「望みはゼロだな」

○同・小部屋
   大きな石(=ハデスの石)と水場がある以外、特に何もない室内。
   話し合うメーデ、オーボ、セージ。
メーデ「確か、今の時期は人類側で来年度の予算が決まる頃だったハズだ。戦隊も必死なんだろう」
セージ「メーデ先輩、人類側のスケジュールまで把握してるんスね」
メーデ「造作もゼロだ」
セージ「にしても、また面倒な作業が増えるんスね。現場ガン無視で」
オーボ「そういうレベルの話じゃないだろ」
セージ「なら、どういうレベルなんスか?」
オーボ「決まってるだろ。ソレが、ハデス様との約束だからだ」
ハデスの声「我達は人類と戦う事になった」

○(回想)同・広間
   カロンナら幹部(=顔出し怪人)やモンスター、オーボら戦闘員の前に立つハデス。皆、決意に満ちた顔。
ハデス「しかし、間違えてはいけない。コレはこの星を我達の故郷の二の舞にさせない為の手段に過ぎないのだ」

○(回想)同・小部屋
   向かい合うメーデとハデス。他に誰もいない。ハデスの石もない。
ハデス「我達に向かい、戦いを挑んでくる者にのみ力を使うのだ。無関係の人類に手を出してはならない」

○同・同
   先のシーンでハデスが立っていた位置に置いてあるハデスの石。
ハデスの声「約束だぞ」
   話し合うメーデ、オーボ、セージ。
オーボ「だから、無関係の一般人へ攻撃なんてのはもってのほかなんだよ」
セージ「でも我は、ハデス様にお会いした事もないっスから」
オーボ「新人研修で教わっただろ?」
セージ「ハデス様が負けて、我達が人類の、戦隊の子会社になった事で組織名が『プルート』から『チルドレン』に変わった、って事くらいっスかね」
メーデ「身も蓋もゼロな教え方だな」
オーボ「とにかく、我達がハデス様の子である以上、組織名が変わろうと約束は守らなければならない。なぁ、メーデ」
メーデ「……」
セージ「メーデ先輩?」
メーデ「もし一般市民を襲う事がカロンナ様からの指示なら、従う以外ゼロだ」
オーボ「何?」
メーデ「現状、我達は戦隊からの支援物資ゼロでは維持できない組織で……」
オーボ「だから何だよ。手前、ハデス様との約束破る気か? 我達の、プルートの誇りを捨てると言うのか手前は!」
   メーデに掴み掛かるオーボ。
オーボ「手前、ハデス様との記憶まで失くしたと言うつもりか?」
セージ「ちょ、先輩方……」
   止めに入ったセージを突き飛ばし、オーボの胸ぐらを掴み返すメーデ。
メーデ「記憶ならある!」
セージ「痛っ」
メーデ「我の記憶がゼロなのは、ハデス様と出会う以前のものだけだ」
オーボ「だったら何で、ハデス様との約束を守ろうとしない?」
メーデ「チルドレンまで壊滅したら、元も子もゼロだろ」
オーボ「人類のイヌに成り下がろうっていうのか? あり得ないな」
メーデ「だからと言って、戦隊に逆らってどうなる? 戦って勝てるのか? 奴らからの支援ゼロで生きていけるのか?」
オーボ「……なら、やってみせろよ」
メーデ「何?」
オーボ「口先でなら何とでも言えるよな。でも実際、手前は現場で、何の関係もない一般市民に手を出せるのか?」
メーデ「それは……」
オーボ「誰よりも上に忠実な手前が、ハデス様との約束を破れるのか?」
セージ「そんなの、余裕っスよね?」
メーデ「あ、当たり、前だ……」
   メーデの、胸ぐらを掴んでいない方の手が震えている。
オーボ「相変わらず、嘘が下手だな」
   それを見て、胸ぐらを掴まれている方の手を振りほどくオーボ。
オーボ「出来ないクセに偉そうにするな」
   出て行くオーボと、それを追いかけるセージ。
セージ「ちょ、オーボ先輩」
   その背中を見送るメーデ。震えていた拳を握りしめる。
メーデ「ハデス様、何故……?」

○(回想)八手山・荒野
   メーデに向けて、バズーカ砲を放つバグレンジャー。目をそらすメーデ。
   メーデを庇い、バグレンジャーの放つバズーカ砲の砲撃を受けるハデス。
メーデ「ハデス様、何故……?」
   ハデスの口は動いているが、流れる音声は全く違う次の台詞。
ハデスの声「知りたいか、メーデ?」

○チルドレン基地・小部屋
   ハッとし、周囲を見回すメーデ。
   声はハデスの石から聞こえてくるが、まだ気付いていない。
メーデ「気のせいか?」
   出て行こうとするメーデ。
ハデスの声「メーデ」
   足を止め、再び周囲を見回すメーデ。
メーデ「何か、呼ばれている気が……」
ハデスの声「メーデ、我だ……」
   そこに戻ってくるセージ。
セージ「メーデ先輩。ちょっとオーボ先輩止めないとマズいっスよ〜」
メーデ「なんだ、セージか。まったく、世話が焼けるな」
   セージと共に出て行くメーデ。
ハデスの声「主達の話、聞かせてもら……って、あれ? ……まぁ、いい。独り言は、趣味みたいなものだ」

○遊園地・外観
   観覧車やジェットコースター等。
アナウンサーの声「緊急ニュースです。現在南部地区の遊園地内にチルドレン戦闘員が出現した模様です」

○同・中
   逃げ惑う人々。
   進撃するメーデ、オーボ、セージら戦闘員達。
カロンナの声「主達。すまぬが、交渉は難航しておる」

○(回想)チルドレン基地・広間
   メーデ、オーボ、セージら戦闘員達の前に立つカロンナ。
カロンナ「交渉は継続するが、今回の出撃に際してはひとまず、妾が命ずる」

○遊園地・中
   進撃するメーデら戦闘員達。意を決し動き出すセージ達。
カロンナの声「一般市民を襲うのだ」
セージ「行くっスよ!」
   逃げる人々に襲いかかるセージら戦闘員達。その様子を見ているメーデ。

○(フラッシュ)チルドレン基地・小部屋
   向かい合うハデスとメーデ。
ハデス「約束だぞ」

○遊園地・中
   戦闘員達を見つめるメーデ。拳が震えている。
   セージの先には父と幼い子。
子「ひっ」
父「危ない!」
   その子供を庇う父親。
   その姿にハッとするメーデ。

○(回想)八手山・荒野
   メーデを庇い、バグレンジャーの放つバズーカ砲の砲撃を受けるハデス。
メーデ「ハデス様、何故……?」
ハデス「たった一名でも、我には守る義務があるのだ」
メーデ「ですが……」
ハデス「心配するな。主達が居る」
メーデ「え……?」
ハデス「子とは、親を超えていくものだ。我を超えていけ、我が子達よ」
   倒れ、爆発四散するハデス。

○遊園地・中
   再び顔を上げるメーデ。
メーデの声「ハデス様〜!」
   父子を襲おうとしたセージの拳を受け止め、返り討ちにするオーボ。
セージ「ちょ、オーボ先輩?」
オーボ「我は、ハデス様と約束したんだ」
   呆然と立ち尽くす父子。
オーボ「死にたくないなら、さっさとココから逃げろ。(周囲の人々へ)手前らもだ」
   一礼し、逃げ出す父子。周囲の人々の中にはオーボの行為を珍しがり、スマホで撮影する添付Aらの姿もある。
   握りしめた拳を見つめるメーデ。震えていない。
メーデ「もう迷いは、ゼロだ」
   人々に向かって駆け出すメーデ。添付Aに殴り掛かる。
添付A「ちょ、俺まだ何も……」
メーデ「くらえ!」
   殴り掛かった拳が、添付Aの顔の手前で止まる。
メーデ「うおおおお!」
   添付Aを殴り飛ばすメーデ。
   その勢いのまま、他の一般市民に向かって行くメーデ。
メーデ「待て!」
オーボ「待つのは手前だ!」
   メーデに掴み掛かるオーボ。
オーボ「手前まで裏切る気か」
メーデ「あぁ。我はプルートの誇りを捨ててでもチルドレンを守る。軽蔑したければ、遠慮はゼロだ」
オーボ「何でだよ。手前はなんだかんだ、最後まで約束を守ると信じていたのに」
メーデ「組織を守る為だ」
オーボ「そんな言い訳、聞き飽きて……」
メーデ「手前が居るだろ」
オーボ「は? 我が?」
メーデ「手前は貫け。約束を、誇りを守れ。その代わり、我が手前と、組織を守る為の汚れ役を引き受ける」
オーボ「我を守る……?」
メーデ「たった一名でも、我には守る義務がある」
   握りしめた拳が震えているオーボ。やがてその拳でメーデの胸を叩く。
オーボ「……我は何も見ていない、気付いていない。なら、仕方ないよな?」
メーデ「あぁ。仕方はゼロだ」
   メーデに背を向けるオーボと、逃げる人々に殴りかかるメーデ。
メーデ「さっさと来い、戦隊ども。早くしないとここにいる人類全員食い尽くすぞ!」
レッドの声「そこまでだ、チルドレン!」
   駆けつけるバグレンジャーの五人。
   そこに集まってくるメーデ、オーボ、セージら戦闘員達。
レッド「報国尽虫、レッドビートル」
ブルー「無我夢虫、ブルー……」
   隙をついてブルーを攻撃するオーボ。
ブルー「ぐあっ!?」
セージ「あーあ。知らないっスよ?」
オーボ「もう十分待っただろ? とっとと始めようぜ」
ブルー「テメェ、この野郎」
グリーン「怒るのも無理ないよん」
ピンク「名乗りの最中に攻撃するなんて」
イエロー「御法度です」
レッド「グダグダになっちまったけど仕方ねぇ。全てのバグを、改修してやる」
メーデ「我達も行くぞ」
セージ「うっス!」
   駆け出す戦闘員達とバグレンジャー。

○チルドレン基地・広場
   続々と戻ってくる戦闘員達。その中にセージの肩を借りて歩く、傷だらけのオーボの姿がある。
オーボ「痛っ」
セージ「大丈夫っスか?」
オーボ「あの青野郎、好き放題しやがって」
セージ「自業自得っスよ。ねぇ、メーデ先輩……(周囲を見回し)って、あれ、メーデ先輩は?」
   メーデの姿はない。

○同・小部屋
   水場で懸命に手を洗うメーデ。時折吐き気にも見舞われる。
メーデ「くそっ、くそっ、くそっ」
   そのまま目の辺りを拭うメーデ。涙か水か不明だが、濡れている目元。

○(フラッシュ)遊園地・中
   逃げている人々を殴るメーデ。

○チルドレン基地・小部屋
   洗う手を止め、膝をつくメーデ。
メーデ「ハデス様……。組織を守るためとはいえ、我は約束を破ってしまいました」
   拳を握りしめるメーデ。
メーデ「我に力があれば……戦隊とまともに戦えるだけの力さえあれば、こんな感触、ゼロに出来たのに」
ハデスの声「力が欲しいか、メーデ?」
メーデ「え? また……?」
   周囲を見回すメーデ。
ハデスの声「我はココだ」
   声の発生源に気付くメーデ。
メーデ「この石から……? しかもこの声、ハデス様……?」
ハデスの声「そうだ。我こそ冥王ハデスだ。久しいな。我が子、メーデよ」
メーデ「本当にハデス様なのですか? 一体何故、そのようなお姿に?」
ハデスの声「説明は後だ。今一度問う。力が欲しいか、メーデ?」
メーデ「もちろんです、ハデス様」

○黒味
   T「Episode.2 HERO-side」
甲本の声「はっ!」

○(TVの映像)戦隊本部・特訓部屋
   並び立つ甲本、秋津蒼真(30)、蝶野桃香(21)、GREー04(20)、YELー05(20)。GREとYELはそれぞれ男性型、女性型のアンドロイドで、全員甲本と色違い(それぞれの変身後の戦闘スーツと同じ色)のジャケットとバグチェンジャーを身につけている。
   五人の視線の先、チルドレン戦闘員を模したアンドロイドが居る。
甲本「OK、SENT。バトルスーツを転送してくれ」
SENTの声「(バグチェンジャーから)承知でありんす」
   五人それぞれの前に現れるレッド、ブルー、ピンク、グリーン、イエローのスーツの立体映像。それが徐々に五人の体に重なる。
五人「バグチェンジ!」
   スーツの立体映像が完全に重なると、レッド、ブルー、ピンク、グリーン、イエローに変身する甲本、秋津、桃香、GRE、YEL。
レッド「報国尽虫、レッドビートル」
ブルー「無我夢虫、ブルードラゴンフライ」
ピンク「百発百虫、ピンクバタフライ」
グリーン「和洋折虫、グリーンホッパー」
イエロー「実力伯虫、イエロースティンガー」
レッド「昆蟲戦隊」
五人「バグレンジャー!」
レッド「全てのバグを、改修してやる」
   戦い始めるバグレンジャーとアンドロイド達。圧倒し、あっという間に勝利するバグレンジャー。
レッド「ふぅ~」
   変身解除し、甲本の姿になるレッド。そこで映像が一時停止され『投影人生』という番組ロゴと「昆蟲戦隊バグレンジャー 甲本紅蓮」というテロップが表示される。

○(TVの映像)ビル街
   スーツにネクタイ姿で出勤中の甲本。
甲本「(カメラに)おはようございます」
脚本家N「次々と現れる悪の組織に対抗すべく結成された、国防大臣直下の防衛組織昆蟲戦隊バグレンジャー。そのリーダーを務めるのがこの男、甲本紅蓮である」

○(TVの映像)戦隊本部・エレベーター
   スーツ姿で出勤中の甲本。
   T「今戦っているのはどんな組織?」
甲本「チルドレン、って名乗ってますね。まぁ、プルートの残党って所でしょうか」

○(TVの映像)同・廊下
   ジャケット姿で歩く甲本。そこにやってくる秋津と桃香。このシーンも含め、秋津は喋ろうとすると次のシーンに切り替わる。
桃香「おざーっす」
甲本「おはよう。(カメラに)ウチのブルーとピンクです」

○(TVの映像)同・司令室
   大型モニターや機器類、大きな作戦机がある室内。
   デスクワーク中の甲本。
   T「皆さん、夜はどうされてるんですか?」
甲本の声「普通に家帰って、寝てますよ。休むのも仕事のうちです」
    ×     ×     ×
   インタビュー中の甲本。
甲本「夜は、ウチの優秀なアンドロイド達が守ってくれてますから」
   甲本が指す先、GREとYELが居る。
GRE「僕達の事だよん」
YEL「御挨拶遅れました、YEL05と申します」
甲本「彼らは戦隊メンバーですけど」

○(TVの映像)同・格納庫
   全長四〇メートル程の巨大ロボットの整備をしているアンドロイド達に指示を出す甲本。
甲本の声「ウチでは彼ら以外にも機械整備、巡回、オペレーター等、多くのアンドロイドが平和の為に日夜働いてくれてます」
   T「人間と見分けがつきませんね」
甲本の声「そうですね。正直、僕もたまに誰がアンドロイドかわからなくなりますよ」
    ×     ×     ×
   GREの腕に刻印されたロゴマークを見せる甲本。
甲本の声「まぁ、アンドロイド全員に刻印されたこのロゴが目印でしょうか」

○(TVの映像)オープンカフェ
   店外のテーブル席でお茶をする甲本。
脚本家N「そんな彼は束の間のオフで、カフェ巡りをして心を癒しているという」
    ×     ×     ×
   女性ファンと握手する甲本。
   T「人気者ですね」
甲本の声「doですかね。まぁ『僕と握手したい』って言ってもらえるなんて、光栄ですよね」
    ×     ×     ×
   インタビュー中の甲本。
甲本「この店は良く来ますね。ここのコーヒーは……」
脚本家N「しかし、悪の組織はいつも突然やってくるのだ」
   やってくるメーデら戦闘員達。
   悲鳴が起こり、逃げる客達。
甲本「(わざとらしく)まったく、こんな時に……(立ち上がり)。皆さん、ココは逃げて下さい。(バグチェンジャーに向け)OK、SENT。バトルスーツを転送してくれ」
SENTの声「承知でありんす」
   レッドのスーツの立体映像が現れる。
甲本「バグチェンジ」
レッドに変身する甲本。戦闘員に向けて駆け出す。

○(TVの映像)戦隊本部・特訓部屋
   再び挿入される、戦闘員を模したアンドロイドと戦うレッド。
脚本家N「昆蟲戦隊バグレンジャーのレッドビートル・甲本紅蓮。彼に安穏の日々は訪れるのだろうか」
   T「甲本さんにとって戦隊とは?」
甲本の声「勝つ為の組織、でしょうか」

○(TVの映像)同・司令室
   打ち合わせ、デスクワーク、トレーニングなど様々な作業中の甲本。
甲本の声「正直、僕ら一人一人は凄く弱いんです。だからこそ力を合わせ、強い敵に立ち向かう。そこで勝利をつかみ取って初めて、平和な世界が実現できるんです」
    ×     ×     ×
   インタビュー中の甲本。
   T「本当に実現できますか?」
甲本「出来る出来ないじゃない、やるんですよ(と言って笑う)」
   T「完」

○同・同
   作戦机を囲む甲本、秋津、桃香と奥の席で機器類を操作するGRE、甲本達にコーヒーを配ってまわるYEL。
   大型モニターには先ほどまでの番組が、映っている。
甲本「doだった? 少しは戦隊のイメージアップにつながったとI thinkだけどな」
桃香「蒼真、ほとんど映ってなかったけどね」
秋津「気にしてる事、言わないで下さいよ」
甲本「それはdoでもいい」
秋津「でもこんな事までしないといけないなんて、大変ですよね。『子供がなりたい職業ランキング』でも、戦隊は未だにユーチューバーより下の順位ですし」
   秋津を見つめる桃香。
秋津「どうしたの? 桃香ちゃん?」
桃香「いや、普段はおとなしいのにな~、って思って。変身すると、まるで別人みたいじゃん?」
SENTの声「それは禁句でありんす」
   大型モニターに表示されるCGキャラクター、SENTーAI。
桃香「さーせん」
SENT「そうそう、ユーチューバーで思い出したでありんすけど、例の野暮な彼、また妙な動画を上げたでありんすよ」
桃香「また?」
   と言ってスマホを操作し始める桃香。
   そこにやってくるYEL。
YEL「御連絡申し上げます。甲本さんに通信です」
甲本「誰から?」
GRE「興梠さんだよん」
甲本「映せ」
   大型モニターに映る興梠拓道(52)の姿。座っている机には「国防省 事務次官」の札。
   起立する甲本ら5人。
興梠「甲本紅蓮君、秋津蒼真君、蝶野桃香君、GREー04、YELー05、SENTーAI司令官。お疲れさま。国防省事務次官、G興梠です」
甲本「博士、今日は一体……?」
興梠「今は博士じゃない。事務次官だ」
甲本「失礼しました。つい」
桃香「拓おじちゃんは細かい所を気にしすぎ」
興梠「今は叔父と姪じゃない。事務次官と呼 びなさい」
桃香「さーせん」
秋津「で? どういったご用件ですか?」
興梠「あぁ。実は、インターネット上に妙な動画が上がっていてね」
桃香「例のユーチューバーでしょ?」
興梠「話が早いな。さすが、私の姪だ」
桃香「あざーっす。まぁ、今は叔父と姪じゃないけどね。(スマホを見ながら)最新動画は、と……」
   スマホに表示される動画。タイトルは『子供を守るチルドレン、戦隊にボコボコにされる』。
甲本「コレは……」

○(動画)遊園地・中
   セージの攻撃から父子を守るオーボ。
    ×     ×     ×
   オーボに向けてオニハンマーを投げるブルー。
オーボ「ほげっ!?」
   意表をつかれ、オニハンマーを避けた拍子に尻餅をつくオーボ、その隙にオーボに馬乗りになるブルー。
ブルー「ざまぁねぇな。コレでもう避けられねぇだろ?」
   そのままの体勢でオーボをボコボコにするブルー。
ブルー「おら! おら! おらぁ〜!」
    ×     ×     ×
   避難先にいる添付A。
添付A「コレはさすがにヒドいでしょ。同意見の人は是非、チャンネル登録と高評価、よろしく。では、ヘンガップライ」

○戦隊本部・司令室
   作戦机を囲む甲本、秋津、桃香、GRE、YEL。大型モニターには先の動画と、そこに寄せられたコメント(主にブルーや戦隊への非難)。
秋津「何だコレ……」
   興梠の映像に切り替わる大型モニター。
興梠「削除要請を出しているが、完全に消すのは難しいだろう。由々しき事態だ」
桃香「この人の戦隊嫌いも相当なもんだね」
甲本「この動画投稿者の方を、まずは何とかした方がいいんじゃないですか?」
興梠「ソチラは大丈夫だ。……彼はもう、二度と動画を投稿する事はない」
甲本「……なら、安心ですね」
桃香「(小声で)……怖っ」
興梠「問題は、この戦隊不要論の方だ。ただでさえ予算削減を迫られている中でのこの世論では、組織の大幅な縮小、最悪は解体までも考えられる」
桃香「いやいや、いくら何でも、そんな……」
秋津「いや、あながち無い話じゃないよ。最近、戦隊組織反対派の国会議員のグループも出来たって聞くし」
甲本「だったら、チルドレンにその議員連中を襲わせりゃいいだろ。何のために養ってやってんだ」
興梠「それなら一つ、面白い情報がある。……今から話す内容は、他言無用だ」
ハデスの声「他言無用だぞ、メーデ」

○(回想)チルドレン基地・小部屋
   ハデスの石の前に立つメーデ。
ハデスの声「この石に異世界と交信する力があり、我と会話が出来る事は、ココだけの秘密とする。いいな?」
メーデ「わかりました。それで、力というのはどうすれば……?」
ハデスの声「そのギプスをこの石に向けて叩き付ければ良い。この石には秘められし力を解放する機能もある」
メーデ「ソレは、このギプスを破壊する、という事ですか?」
ハデスの声「いかにも。そうする事で、主は制御されていた本来の力を、失っていた記憶とともに取り戻すだろう」
メーデ「しかし、ハデス様は生前『このギプスを壊してはいけない』『良くない事が起きるかもしれない』と……」
ハデスの声「むろん、後は主が決める事だ」
メーデ「我が……」
   震えるメーデの拳。
ハデスの声「今を維持するのか、リスクを負ってでも力を手に入れるのか」
メーデ「リスクを負ってでも……」
   ハデスの石に左手を伸ばすメーデ。石に触れた瞬間、電撃が走ったように震え、頭を抱えるメーデ。
メーデ「ぐ、がぁぁぁぁぁ!」
オーボの声「こんなんで力なんか付く訳ないだろうが」

○同・食堂
   食事中のメーデ、オーボ、セージら戦闘員達。おかずはウインナーやソーセージのみ。
メーデ「む? そう思うか?」
オーボ「当たり前だろ。毎日毎日ウインナーとソーセージばっかりでよ。もっと力のつくもの食べさせろ、戦隊の野郎ども」
セージ「現物支給っスもんね」
メーデ「……なんだ、そんな話か」
オーボ「『なんだ』とは何だ。食は全ての力の源だぞ?」
セージ「そうっスよ。それに我なんて、チルドレンに入ってからコレしか食べた記憶ないんスから」
メーデ「記憶、か……」
セージ「メーデ先輩?」
メーデ「手前達には、あるか? 思い出す事が恐い、いっそゼロにしてしまいたい記憶というものは?」
オーボ「誰にでもあるし、いくらでもあるだろ。生きていれば、増えていく一方だ」
メーデ「なら、過去の記憶がゼロの我は、幸せなのか?」
オーボ「知るか」
セージ「オーボ先輩、冷たくないっスか?」
オーボ「仕方ないだろ? 我はオーボであって、メーデでは無いんだぜ?」
メーデ「……そうだったな」
セージ「どういう事っスか?」
オーボ「つまり、だ。メーデが……」
   そこにやってくるカロンナ。
カロンナ「主達、聞いて欲しい。次回の出撃だが、場所が急遽変更になった」
オーボ「いい所だったのに。で、どこ?」
カロンナ「八手山だ」
   ざわつく(特に古参の)戦闘員達。
メーデ「八手山……」

○(フラッシュ)八手山・荒野
   爆発四散するハデス。

○チルドレン基地・食堂
   食事の手を止め、カロンナの話を聞くメーデ、オーボ、セージら戦闘員達。
メーデ「(頭を抱え)くっ……コレだから記憶というものは……」
オーボ「急に場所変えてハデス様の墓参り……戦隊の奴ら、何考えてやがるんだ?」
カロンナ「戦隊と敵対する議員達を襲って欲しい、という話だ。ついては各自、配置の変更等の確認をしておくように。以上」
   出て行くカロンナ。
セージ「八手山って、確かハデス様が倒された場所、っスよね?」
   席を立つメーデ。
セージ「あれ、メーデ先輩?」
オーボ「放っといてやれ。メーデにとって、あそこはトラウマの場所なんだからよ」
メーデの声「我は、恐いんです」

○同・小部屋
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
メーデ「己の記憶を取り戻す事が」
ハデスの声「ほう。何故だ?」
メーデ「失っている記憶の中に、忌まわしいものがどれほどあるのか」

○(フラッシュ)八手山・荒野
   爆発四散するハデス。
メーデの声「その全てを思い出した時」

○(フラッシュ)遊園地・中
   一般人を襲うメーデ。
メーデの声「果たして、我は我のままでいられるのか」

○チルドレン基地・小部屋
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
メーデ「自信がゼロです。それに……」
ハデスの声「……見たのだな?」
メーデ「え?」
ハデスの声「先日、この石に触れた時」

○(回想)同・同
   ハデスの石に左手を伸ばすメーデ。石に触れた瞬間、電撃が走ったように震え、頭を抱えるメーデ。
ハデスの声「何か、見たのだろう?」

○同・同
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
ハデスの声「この石には、触れた瞬間に脳を刺激し、眠った記憶や未来のビジョンを一瞬だけイメージする作用もある」
   自分の左手を見つめるメーデ。
ハデスの声「どのような記憶だった?」
メーデ「ソレは……」

○(フラッシュ)廃倉庫・中
   プルート戦闘員と戦う主観映像。

○チルドレン基地・小部屋
   ハデスの石と向かい合うメーデ。左手を抱えるような仕草。
メーデ「……ハデス様は、我の過去をご存知 なのですか?」
ハデスの声「知っていても答えないぞ? 先日も述べた通り、決めるのは主自身だ。どうする? 力を手にするか?」
メーデ「……もう少し、時間を下さい」
ハデスの声「好きにするが良い」
   一礼し、立ち去ろうとするメーデ。
ハデスの声「だが、ソレで良いのか?」

○八手山・入口
   「八手山 入口」と書かれた看板。
ハデスの声「確かに、『先延ばしにする』と決めるのも主自身だ」

○同・荒野
   物陰に隠れるメーデ、セージら戦闘員達。考え事をしているメーデ。
ハデスの声「それでも、今出来る事は……」
   そこにやってくるオーボ。
オーボ「おい、メーデ。ボケ〜ッとするな」
メーデ「あ、すまない。……そういう手前こそ、勝手に持ち場を離れるな」
オーボ「仕方ないだろ、小便だ」
メーデ「だからと言って……」
オーボ「今出来る事は、今やるべき事だ。後悔してからでは遅いからな」
メーデ「……耳が痛いな」
セージ「(前方を見て)来たみたいっスよ」
   周囲を見回しながらやってくる国会議員達と市役所職員達。
職員「ちょうどこの辺りで、プルートのボスを倒したそうですよ」
議員「では、ココに平和祈念公園のシンボルを建造して……」
   その様子を見て飛び出そうとするメーデの耳を引っ張るオーボ。
メーデ「痛い。放せ」
オーボ「やっぱり、我はまだ……」
メーデ「コレが今、我のやるべき事だ」
   オーボを振り切り、議員や職員達に襲いかかるメーデ。
メーデ「来たな、人類!」
職員&議員「ひっ、プルート!?」
メーデ「今はチルドレンだ!」
   殴り掛かるメーデ。背後から飛び出しその拳を受け止めるレッド。
レッド「Yes。間一髪」
メーデ「手前……」
   レッドに蹴り飛ばされるメーデ。そこにオーボ、セージら戦闘員達が集まる。レッドの元にはブルー、ピンク、グリーン、イエローも駆けつける。
議員「君達、何故ココに?」
ピンク「えっと……まぁ、たまたま?」
イエロー「御質問は後ほど。皆様、避難を」
グリーン「ココは危ないよん」
職員「は、はい」
   逃げ出す議員や職員達。
   対峙するメーデ、オーボ、セージら戦闘員達とバグレンジャーの五人。
オーボ「おい、アイツらを襲えって話は?」
ブルー「うるせぇな。コッチにはコッチの都合ってもんがあんだよ」
ピンク「ほら、こういう現場は生ものだから」
レッド「さて、と。また名乗り中に攻撃されちゃ敵わねぇからな。今日はナシだ。全てのバグを、改修してやる」
   戦い始めるバグレンジャーと戦闘員。メーデらはレッドと、オーボらはブルーと戦う。レッドに一方的にやられているメーデ。崖の下に落ちて行く。
メーデ「うあああっ!」
   崖の下で大の字になるメーデ。そこに崖から颯爽と飛び降りてくるレッド。
メーデ「追撃とは珍しいな。一体、何を考えている?」
レッド「そうだな、メーデ君は優秀だから、特別に教えてやろう。あの崖の上のさらに上、何が見える?」
   崖の上のさらに上に目をやるメーデ。避難中の議員や職員達。
レッド「俺らの目的は、あの議員連中を殺す事じゃねぇ。自分を殺しかけた戦闘員らを俺らが倒す、その姿を見せる事だ」
メーデ「倒す姿、だと……?」
レッド「前にも言ったろ? 『お偉いさんってのは、見栄えのいい演出が好きだとI thinkだ』ってな」
メーデ「……まさか!?」
レッド「こんな下らねぇパフォーマンスの為に、優秀な君を失うのは惜しい。巻き込まれないように、ここで寝てな」
   メーデのみぞおちを一撃し、崖の上に戻って行くレッド。
メーデ「(ダメージでしばらく動けず)ぐっ……ま、待て……」
   フラフラになりながらも必死に崖を登るメーデ。その間にオーボら戦闘員達の悲鳴や叫び声が聞こえてくる。
    ×     ×     ×
   メーデが崖の上に顔を出すと、既にオーボら数十名の戦闘員達が倒れており、そこに向けてバグレンジャーの五人がバズーカ砲を構えている。
レッド「最終奥義、バグバズーカ」
五人「インセクトインパクト!」
メーデ「止めろ〜!」
   駆け出すメーデ。しかし間に合わずオーボ達に砲撃が命中する。
オーボ「ぐあああああ!」
   倒れるオーボを抱きかかえるメーデ。
メーデ「オーボ!」
オーボ「メーデ……。やられたぜ」
メーデ「これ以上のお喋りはゼロでいい」
オーボ「この間、記憶の話をしたよな」
メーデ「今はそんな話……」
オーボ「手前が何者だろうと、プルートやチルドレンの一員として戦ったメーデという戦闘員が居た事実は消えやしない」

○(フラッシュ)チルドレン基地・廊下
   握手するメーデとオーボ。
オーボの声「たとえ手前が消えても、我達が覚えている」

○八手山・荒野
   オーボを抱きかかえるメーデ。
オーボ「そしていつかチルドレンが戦隊を倒して、我達の誇りを取り戻した時、その中の誰かが手前の事を覚えていれば、ソレでいい。ソレが記憶だ」
   メーデのギプスを握りしめながら立ち上がるオーボ。
オーボ「だから、頼んだぜ。我の事、忘れるなよ。そして、戦隊を倒せ」
メーデ「……わかった。約束する」
オーボ「ありがとな。これでもう……」
   メーデを思い切り突き飛ばすオーボ。
オーボ「思い残す事は、ゼロだ」
   倒れ、爆発四散するオーボ。周囲の戦闘員達も爆発する。
メーデ「オーボォォォォォ!」
   膝から崩れ落ちるメーデ。
   雨が降り出す。
レッド「(議員らの様子を見て)コレだけ視界が悪くなれば、もう観えねぇとI thinkだ。今日は撤収だな」
SENTの声「(グリーンに内蔵されたスピーカーから)許可が出たでありんす。戦闘終了しておくんなんし」
   帰路につくバグレンジャー。最後にメーデを一瞥するレッド。
   ギプスを何度も何度も地面に打ち付けるメーデ。
メーデ「くそっ。くそ、くそ、くそっ!」

○同・外観
   降り注ぐ雨。
メーデの声「ちくしょう!」

○チルドレン基地・広間(夜)
   オーボら死んだ戦闘員達の葬儀。
   祭壇に花を手向けるセージら生き残った戦闘員達。
セージ「行くっスよ……」
   出て行く戦闘員達。周囲を見回すセージ。そこにメーデは居ない。
メーデの声「我があの時決断していれば、もしかしたら……」

○同・小部屋(夜)
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
メーデ「もう、後悔はゼロにしたい」
ハデスの声「決意したのだな?」
メーデ「正直、不安はゼロではありません。ただ……」
ハデスの声「ただ?」
メーデ「オーボと初めて会った時に、言われたんです」
オーボの声「珍しい時期の新入りだな」

○(回想)同・廊下
   並んで歩くメーデとオーボ。
オーボ「ココに来るまで、何してたんだ?」
メーデ「悪いが、我は記憶がゼロだ」
オーボ「へぇ、ソイツは大変だな」
メーデ「遠慮はゼロでいい。こんな奴は足手まといだろう? 別の者と組みたければ好きにすればいい」
オーボ「……手前、嘘が下手だな」
メーデ「何?」
オーボ「本当はひとりぼっちが寂しくて、誰かに組んで欲しいんだろ?」
メーデ「そ、そんな事は……」
オーボ「我は構わないぜ?」
メーデ「え?」
オーボ「何故なら、手前が何者だろうと、我がオーボである事に違いはないからだ」
   手を差し出すオーボ。
メーデ「(笑みを浮かべ)メーデだ」
   握手するメーデとオーボ。
メーデの声「たとえ、我が何者であろうと」

○同・小部屋(夜)
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
メーデ「我がメーデである事に違いはゼロです」
ハデスの声「そうか」
メーデ「それに、生きている限り、このような忌まわしい記憶は増えていく一方なら」

○(フラッシュ)八手山・荒野
   爆発四散するオーボ。
メーデの声「もうその事から恐れ、逃げる必要もゼロです」

○チルドレン基地・小部屋(夜)
   ハデスの石と向かい合うメーデ。
メーデ「そして我が、誰よりもオーボの事を覚えている者として、戦隊を倒す」
   左腕を振りかざすメーデ。
メーデ「その約束を守る為なら、手段を選んでる余裕なんて……」
   ハデスの石にギプスを叩き付けるメーデ。
メーデ「ゼロだ!」
   砕け落ちるギプス。次の瞬間、頭を抱えだすメーデ。
メーデ「あ、ああああ!」

○(フラッシュ)メーデの記憶
   次々とフラッシュバックしていくメーデの記憶。
   例えば、爆発四散するオーボ、港での水落ち、チルドレン結成の日、ハデスの死、オーボとの出会い、ギプスを付けられた日、ハデスとの出会い、プルートとの戦い、誕生の瞬間等。

○チルドレン基地・小部屋(夜)
   気を失い、倒れているメーデ。そこにやってくるカロンナ。
カロンナ「メーデ? どうかしたのか?」
メーデ「カロンナ様……いえ、別に……」
カロンナ「それより大変だ。主以外の皆が行ってしまったのだ」
メーデ「行った? どこへ?」

○戦隊本部・外(夜)
   警備しているのはアンドロイドのみ。そこに大挙して押し寄せるセージら戦闘員達。
セージ「今の時間、ココにいるのはアンドロイドだけっス。まずグリーンとイエローだけでもやっちゃうっスよ」
一同「おう!」
セージ「オーボ先輩達の、弔い合戦っス!」
   警備のアンドロイドを次々と倒して行くセージら戦闘員達。そこにやってくるYELとGRE。
GRE「何か、大変な事になってるよん」
YEL「御足労いただいたなら、お相手しなければなりませんね」
GRE「OK、SENT。バトルスーツを転送しておくれよん」
SENTの声「承知でありんす」
   グリーンとイエローのスーツの立体映像が現れる。
GRE&YEL「バグチェンジ」
   それぞれグリーンとイエローに変身するGREとYEL。
グリーン「和洋折虫、グリーンホッパー」
イエロー「実力伯虫、イエロースティンガー」
SENTの声「(グリーンに内蔵されたスピーカーから)レッド達が来るまで、頼んだでありんすよ」
グリーン「了解だよん」
イエロー「御唱和下さい。全てのバグを……」
グリーン「改修してやるよん」
   戦闘員達と戦い始めるグリーンとイエロー。

○チルドレン基地・廊下(夜)
   走っているメーデ。
カロンナの声「頼む、皆を止めてくれ」
メーデ「手前達、早まるなよ」

○戦隊本部・外(夜)
   グリーンとイエローにより、次々と戦闘不能に追い込まれる戦闘員達。
   グリーンの攻撃を受け、吹っ飛ばされ意識を失う戦闘員。
グリーン「コッチは全員やっつけたよん」
セージ「まだまだっス」
   力を振り絞り、立ち上がるセージ。
セージ「こんなんでやられてたら、オーボ先輩に笑われるっスよ」
グリーン「どうするんだよん」
イエロー「御経験いただいた方がいいのかもしれませんね。一度くらい」
セージ「経験? 何をっスか?」
グリーン「見せしめ、だよん」
   背筋が凍るセージ。
イエロー「御覧あれ。グリーン&イエロー、インセクトインパクト!」
   グリーンとイエローによる飛び蹴りがセージに向かっている。
セージ「ひっ」
   思わず目をそらすセージ。しかし何も起こらない。
   恐る恐る目を開くと、グリーンとイエローの攻撃をメーデが受け止めている。
グリーン「これは驚きだよん」
メーデ「どりゃあ!」
   そのまま弾き返すメーデ。
セージ「メーデ先輩」
メーデ「何故、我だけのけ者にされた? ひとりぼっちは、なかなか寂しかったぞ」
セージ「ソレは……反対されると思って」
メーデ「当然だ。実際、このざまだろ」
セージ「すみません」
メーデ「いいか、セージ。我が時間を稼ぐ。急いで全員退避しろ」
   立ち上がるグリーンとイエロー。
セージ「でも一名じゃ……」
メーデ「安心しろ。心配する必要は……」
   メーデの左腕、ギプスが外れた場所にはバグチェンジャーとアンドロイドの刻印がある。
メーデ「ゼロだ!」
セージ「ソレ、まさか……」
メーデ「OK、SENT。バトルスーツを転送してもらえるか?」
SENTの声「承知でありんす」
   出現するクワガタをモチーフとした黒いスーツの戦士=ブラックスタッグのスーツの立体映像。
メーデ「バグチェンジ!」
   ブラックに変身するメーデ。
ブラック「獅子身虫、ブラックスタッグ」

○黒味
   T「Episode.3 ANDROID-side」
   機械の起動音。

○(回想)戦隊本部・外観
メーデの声「貴方ガ、私ノ、親デスカ?」

○(回想)同・メンテナンスルーム
   目を醒ますメーデ、ギプスは無い。傍らには白衣姿の甲本と興梠。
メーデ「貴方ガ、私ノ、親デスカ?」
甲本「ついにバグレンジャー第一号の誕生ですね、興梠博士」
興梠「気が早いよ、甲本君。英雄のアンドロイドとしてはプロトタイプ、第〇号だ」

○(回想)同・司令室
   作戦机でメーデの隣に座り、色々と教えている甲本。尚、メーデは現在の甲本らと同種の黒いジャケットを着用。
興梠の声「きちんと見極めなければね」
    ×     ×     ×
   メーデにバグチェンジャーの使い方を指南する甲本。

○(回想)廃工場・中
   ブラックに変身するメーデ。プルート戦闘員と戦う。

○(回想)戦隊本部・司令室
   先のシーンの戦いの映像を大型モニターで観ている甲本と興梠。
興梠「甲本君、どう思う?」
甲本「はい。全体的な数値は高く安定し、自分の意志を持たせた事でより実践向きになったとI thinkです。ただ……」
興梠「構わないよ。続けて」
甲本「……ただ、少し意志を持たせすぎたかもしれません。もう少し人間に従順な方が扱う側の負担も軽減できますし」
興梠「私も同感だね。人間に逆らえないようなプログラミングこそしてあるが、それでも彼は諸刃の剣になり得る。危険だ」
甲本「では、doしますか?」
興梠「……まぁ、彼は我々がより発展するための必要な失敗作だったという事だ」

○(回想)同・メンテナンスルーム
   メーデを解体する甲本。
興梠の声「BLKー00を記録から抹消し」

○(回想)市街地
   粗大ゴミを回収するトラックが走っている。荷台には多数の粗大ゴミに混じり、メーデのパーツ(顔など)。
興梠の声「丁重に処分しておこう」
   急停止するトラック。運転手の悲鳴。荷台を覗き込むハデス。
ハデス「解せないな、人類の考えは。自ら創り出した命をこのような形で捨てるとは」

○(回想)チルドレン基地・小部屋
   石のない室内。ハデスによって修復され目を覚ますメーデ。
ハデス「目を醒ましたか」
メーデ「貴方ガ、私ノ、親デスカ?」
ハデス「そうだ。主は、我の一四八八番目の子・メーデだ」
メーデ「めーで……」
    ×     ×     ×
   メーデに背を向けて立つハデス。
ハデス「我達の祖先は、生きるためとはいえ己の星を蝕みながら生活していた。結果、星を殺める事となった」

○(イメージ)宇宙
   爆発する惑星。
ハデスの声「この星の民・人類も、同じ過ちを犯している」

○(回想)チルドレン基地・小部屋
   メーデに背を向けて立つハデス。
ハデス「同じ思いをさせない為に我達は立ち上がった。我達は人類に嫌われ、疎まれ、憎まれてでも、汚れ役を引き受ける事にしたのだ。全てはこの星の崩壊を防ぐため。故郷を救えなかった自責の念なのだ」
   メーデの方に振り返るハデス。
ハデス「コレが、我達プルートが人類と戦っている理由だ」
メーデ「人類ト戦ウ……」
   頭を抱えるメーデ。
メーデ「人類、戦ウ、私、守ル……」
ハデス「やはり、以前の記憶データも残っていたか。それでは苦しいだろう」
   ギプスをメーデの左腕に取り付けるハデス。
メーデ「ぐ……あ……が……ぐ……」
ハデス「コレで記憶回路を遮断できる。苦しまなくて済むだろう」
メーデ「(落ち着きを取り戻し)ハッ……私ハ一体……?」
ハデス「『私』ではない。『我』だ」
メーデ「我……(ギプスを見て)これハ?」
ハデス「そのギプスを壊してはならない。多少、力は制限されるだろうが、壊すと良くない事が起きるかもしれない。約束だぞ。……約束、という言葉はわかるか?」
メーデ「約束……守ルモノ……?」
ハデス「そうだ。では、もう一つ約束だ。制限されたとはいえ、主の力は人類より十分に強大だ」
   メーデの前にプルート戦闘員のスーツを置くハデス。
ハデス「だからこそ、我達に向かい、戦いを挑んでくる者にのみ力を使うのだ。無関係の人類に手を出してはならない。いいな?」
   スーツを手に取るメーデ。
SENTの声「こうして、BLKー00はプルートの戦闘員・メーデとなりました」

○戦隊本部・司令室
   SENTの映る大型モニターの前に集まる甲本、秋津、桃香。
SENT「めーでたし、めーでたしでありんす」
秋津「ソレが、あの黒い奴の過去……」
SENT「あれ、スルーでありんすか?」
桃香「戦闘員でアンドロイドで最初のバグレンジャーとか、情報量が多いわ」
秋津「それにしても、チルドレン側の事情まで随分詳細な報告でしたね」
SENT「子会社の情報を調べるなんて、やろうと思えば簡単でありんすよ」
甲本「じゃあ、何で今日の今日まで報告しなかったんだ?」
SENT「そんな事言いなすんな。調べようと思わなかったからでありんすよ」
甲本「(小声で)これだから機械は……」
秋津「ところで、甲本さん。これはブラックスタッグを創った一科学者に向けて聞きますけど、性能的にはどの程度なんですか?」
甲本「別に。俺らと大差ねぇハズだ」
桃香「だったら何で、こんな事に……?」
   別のモニターに目をやる桃香。そこにはメンテナンスルームで修理中のGREとYELの姿。
アナウンサーの声「緊急ニュースです」

○(回想)オフィス街(夜)
   走っている甲本。
アナウンサーの声「現在、中央地区のバグレンジャー本部前に、チルドレン戦闘員が出現した模様です」
   別の路地から走ってきた秋津、桃香と合流する甲本。
桃香「一体、何がどうなって?」
甲本「アイツら、ついにやりやがったか」
秋津「とにかく、急ぎましょう」
甲本「OK、SENT。バトルスーツを転送してくれ」
SENTの声「承知でありんす」
   出現するレッド、ブルー、ピンクのスーツの立体映像。そこに向かって走る甲本、秋津、桃香。
甲本&秋津&桃香「バグチェンジ」
   立体映像を潜り抜けると、レッド、ブルー、ピンクに変身する甲本、秋津、桃香。

○(回想)戦隊本部・外(夜)
   グリーンとイエローがブラックと戦う現場に駆けつけるレッド、ブルー、ピンク。ブラックは二本の剣(=双刀 鍬型)を両手に持っている。周囲に戦闘員はもういない。
ブルー「おい、チルドレン。テメェら何勝手な事して……」
ブラック「双刀 鍬型。インセクトインパクト!」
   ブラックの攻撃のダメージで変身解除し、意識を失うGREとYEL。傷口から火花が散る。
ブルー「!?」
ピンク「グリーン! イエロー!」
   GREとYELに駆け寄るピンクと、それを庇うように立つレッド、ブルー。
ピンク「(ブラックを見て)私達と同じスーツ……?」
ブルー「テメェ、何もんだ?」
レッド「BLKー00……」
ブルー「は?」
   周囲を見回し、変身解除するメーデ。
メーデ「退避は完了した。コレ以上、我がココに居る必要はゼロだな」
   立ち去るメーデ。
ブルー「逃がすか……」
レッド「(ブルーの肩を掴み)待て。(GREとYELを指し)コイツらが先だ」
ブルー「ちっ……」
セージの声「メーデ先輩、強かったっスね」

○チルドレン基地・広間
   メーデの元に集まるカロンナ、セージら戦闘員達。
セージ「緑のと黄色いの、二名相手に圧勝っスからね」
カロンナ「そんな力があるのなら、妾にももっと早く教えてくれて良かったのだぞ」
セージ「でもこれからはその力、チルドレン の為に使ってくれるんスよね?」
メーデ「断る」
セージ「え?」
メーデ「我は人類に作られたアンドロイド。チルドレンの為に戦う理由は、ゼロだ」
カロンナ「メーデ。何を言っておるのだ?」
メーデ「我は記憶とともに思い出した。我には自分の意志というものがある、という事を。故に今日限りでチルドレンを抜け、人類の下へ戻る」
   ざわつく戦闘員達。
カロンナ「ならん。ならんならんならん! たとえアンドロイドであろうと、主はハデス様の子。チルドレンの一員だ」
セージ「カロンナ様……」
カロンナ「いくら記憶が戻ったからと言って、妾達と過ごした時間を忘れた訳ではないだろう? それでも尚、妾達の仲間ではいられないと言うのか?」
メーデ「……悪いが、我はアンドロイド。血も涙もゼロだ」
   出て行こうとするメーデの前に立ち塞がるセージ。
セージ「次に会う時は、戦場っスかね」
メーデ「そうなるかもな」
   出て行くメーデ。
カロンナ「待つのだ、メーデ」
   メーデを追いかけようとするカロンナを止めるセージ。
セージ「カロンナ様。ここはメーデ先輩を行かせてあげるべきっスよ」
カロンナ「何故だ。何故止めるのだ!?」
セージ「メーデ先輩にはメーデ先輩の、我達には我達の戦い方があるんスから」
カロンナ「何故だ。何故主達はそんなに落ち着いていられるのだ? 妾達の仲間がまた一人、ココを去ってしまったというのに……」
セージ「カロンナ様、まさか……?」
甲本の声「まさか、連絡を貰えるとはな」

○廃倉庫・外観
   倉庫街の一画にある廃倉庫。
甲本の声「それも、本部襲撃なんて派手な事やってくれた直後にな」

○同・中
   メーデの元にやってくる甲本、秋津、桃香。顔を上げるメーデ。
甲本「一体、doいうつもりだ?」
メーデ「来たか」
甲本「まぁ、おかげで警戒レベルは急上昇。来年度の予算アップも見込めるとI thinkだけどな」
秋津「その代わり、グリーンとイエローが修理工場行き。代償は大きいですけどね」
メーデ「修理という事は、あの二名は戻ってこられるんだな。ソレは良かった」
秋津「良かった?」
メーデ「我とあの二名の間に、敵対関係はゼロだ。兄弟のようなものだからな」
桃香「まさか、最初は悪っぽく出てくるけど後に味方になる追加戦士パターン?」
メーデ「我にとっての敵は……人類のみ」
桃香「何だ、結局ソッチか」
秋津「まぁ、僕達も最初からそのつもりでしたけどね」
甲本「行くぜ」
   構えるメーデ、甲本、秋津、桃香。
甲本「OK、SENT」
メーデ「バトルスーツを転送してもらえるか?」
SENTの声「(二重で)承知でありんす」
   出現するブラック、レッド、ブルー、ピンクのスーツ。
メーデ&甲本&秋津&桃香「バグチェンジ」
   それぞれブラック、レッド、ブルー、ピンクに変身するメーデ、甲本、秋津、桃香。
レッド「報国尽虫、レッドビートル」
ブルー「無我夢虫、ブルードラゴンフライ」
ピンク「百発百虫、ピンクバタフライ」
ブラック「獅子身虫、ブラックスタッグ」
レッド「全てのバグを」
ブラック「ゼロにしてやる」
   始まる戦い。防戦一方のブラック。
レッド「一つ、教えてやる。俺らの戦闘スーツの性能はほぼ五分だ。その上で三対一、勝てると思うか?」
ブラック「確率では、限りなくゼロだな」
レッド「なら、何で戦う? もし仮に勝ったとして、doにもならねぇだろ?」
ブルー「今更、この星を制圧するだけの体力も、テメェらには無ぇしな」
ピンク「それに一年も経てば、また新しい戦隊が出来て、の繰り返しでしょ?」
ブラック「愚問だな。コレはあくまでも我と手前達の戦い。ソレ以上も以下もゼロだ」
ブルー「は?」
ブラック「我は今まで、ハデス様や、組織や、約束の為に戦ってきた。だが、今は違う。今の我は、我の為にだけ戦っている。だからこそ、この場所を選んだのだ」
ピンク「どういう事?」
レッド「……そうか。ココは、お前が初めて変身して戦った場所だったな」
ブラック「そうだ」

○(回想)同・同
   プルート戦闘員と戦うブラック。
ブラックの声「ココはバグレンジャーの歴史がゼロからイチになった場所」

○同・同
   レッド、ブルー、ピンクと戦うブラック。防戦一方のブラック。
ブラック「だからこの場所で、バグレンジャーの歴史をイチからゼロに戻す」
レッド「お前、意外と思い出とか大切にするんだな。BLKー00」
ブラック「その名で呼ぶな」
レッド「やっぱり、お前に『自分の意志』を持たせたのは失敗だったな。BLKー00」
ブラック「だから、その名で呼ぶなと言っている。我はメーデ。プルートの、そしてチルドレンのメーデだ」
レッド「そりゃ、悪かったな。だが……」
   レッドの強烈な一撃で吹っ飛び、倒れるブラック。
レッド「さっきも言ったが、お前が勝てる確率は、限りなくゼロだ」
ブラック「だとしても我は戦う。人類に創られ、人類に捨てられた我が、人類に勝つ為に、人類を超える為に」
レッド「寝言は寝て言え。(武器を取り出し)カブトブレイド。インセクトインパクト」
   防御態勢に入るブラック。レッドの攻撃がブラックに命中。爆炎が起きるも、煙が晴れると傷一つないブラック。
ブラック「……何故、手加減をした?」
レッド「お前、チルドレンに戻れ」
ブラック「理由を聞こうか」
レッド「お前ならわかんだろ? チルドレンの戦力が上がれば、戦隊の予算はもっと増えると、I thinkだ」
ブラック「まだ言うか?」
レッド「もちろん、増えた分のいくらかはチルドレンにも還元してやる。食事メニューにカレーを追加してやろう。他にも希望があれば考慮する。doする?」
ブラック「我の気が変わることはゼロだ。我は戦隊の歴史をゼロに……」
ブルー「そんなのは諦めろ。白い布を黒く染めるのは簡単だが、黒から白に戻すのは苦労する、だろ?」
ピンク「……例え方、微妙」
ブルー「じゃあ、どんな言い方すればいいんだよ?」
セージの声「『一度ネット上にアップされた動画を、完全に削除するのは難しい』とかどうっスか?」
ピンク「お、いいね。……って、誰?」
セージの声「ここっス!」
   壊される壁。乗り込んでくるセージら戦闘員達。後方にはカロンナも居るが、この時点ではまだわからない。セージはいつぞやオーボが拾ったスマホで撮影をしている。
ブラック「手前達……」
レッド「お前、何撮ってる?」
セージ「今のこのやり取り、全部生配信させてもらったっスよ」
ブルー「何!?」
   慌ててスマホを取り出すピンク。
セージ「とある人類のアカウントを乗っ取って、っスけど」
   スマホで動画を見るピンク。添付Aのアカウントで現在の状況が生配信中。コメント欄は、戦隊とチルドレンの関係性について炎上している状態。
ブルー「テメェら……」
ブラック「セージ、何故来た? 我はチルドレンを抜けて……」
セージ「今『チルドレンのメーデ』って言ってたじゃないっスか」
ブラック「ソレは……」
セージ「メーデ先輩が、我達を巻き込みたくない気持ちはわかるんスけど、あんな下手な嘘で騙される我達じゃないっスよ。……一名を除いて」
   そこにやってくるカロンナ。
カロンナ「妾は本気で騙されたぞ!」
ブラック「カロンナ様!? 何故現場に?」
カロンナ「忘れるな。たった一名でも守る義務は、妾にもある。勝手な事は許さん」
ブラック「……すみませんでした」
カロンナ「もう良い。妾は桃色の、皆は青いのを相手にする。メーデ、主は赤いのだ。いいな?」
ブラック「わかりました」
カロンナ「チルドレン、出撃!」
戦闘員達「おう!」
レッド「コッチも行くぞ!」
ブルー&ピンク「了解」
   戦い始める一同。レッド、メーデ、セージ以外は皆、戦いながら外に出ていく。
セージ「頼んだっスよ。メーデ先輩はチルドレンのヒーローなんスから」
   そう言って外に出て行くセージ。対峙するレッドとブラック。
ブラック「一つ、質問だ。戦闘スーツの性能がほぼ五分で、一対一なら、どうなる?」
レッド「ナメんなよ。俺はお前を創った男だぞ? 創造主に簡単に勝てると思うな」
   耳に手を当てるレッド(本部と通信するため、この先ブルーやピンクも同様の行為をしながら戦い続ける)。
レッド「(繋がらず)仕方ねぇ。始めるか」
ブラック「望む所だ」
   戦い始めるレッドとブラック。ややブラックが優勢。
ブラック「そんなものか。甲本紅蓮」
レッド「ちっ。ブルー、ソッチはどうだ?」

○同・前
   セージら戦闘員達と戦うブルー。オニハンマーを避けられ続けている。
ブルー「ウンともスンとも言いやしねぇよ」
セージ「隙あり!」
   セージの攻撃で吹っ飛ぶブルー。
ブルー「ふんっ、ザコが群れやがって」
セージ「たとえ一名一名の力は小さく弱くても、力を合わせて強い敵を倒す。それが戦闘員っスよ!」
ブルー「うぜぇ。おい、桃香。ソッチはどうなんだ?」

○同・裏
   カロンナと戦うピンク。二蝶拳銃の銃撃は当たっているが、ダメージは受けていない様子のカロンナ。
ピンク「笑っちゃうくらい通じないわ」
   カロンナの攻撃を避けるピンク。
ピンク「まったく。普通、子会社が親会社に歯向かうかね? 後で謝ってきても許さないよ?」
カロンナ「主は何故、妾達が『チルドレン』と名乗っているのか知っているか?」
ピンク「何、いきなり? 表向きは『ハデスの子達』って意味だけど、実は『戦隊の子会社』っていうオチでしょ?」
カロンナ「ソコまでが表向きの理由だ」
ピンク「は?」
カロンナ「ハデス様は言っておられた。『子は親を超えるものだ』と。だから妾達は己らを『チルドレン』と呼ぶ事にしたのだ」

○同・中
   戦うブラックとレッド。
カロンナの声「(レッドのスーツ内蔵のスピーカー越しに)ハデス様を、プルートを、戦隊を超える為にな!」
ピンクの声「(同)きゃあああ!」
ブラック「さすがカロンナ様、我も同じだ」
レッド「同じ?」
ブラック「ハデス様を、手前を、創造主たる人類を超える。それが子として産まれた時からの、我が守るべき約束だ」
レッド「産まれた時から……か。悪の組織を子会社にするのは、今後も考えものだな」
ブラック「まだ同じ事を続ける気か? そうまでして、今の戦隊を維持する事に何の意味がある?」
レッド「この国の人間はすぐに平和ボケする。この平和が当たり前だと勘違いして、防衛チームを金のムダと切り捨てる」

○繁華街
   平和な日常風景。
レッドの声「だが、この世界は明日、どんな脅威が迫ってくるかわからねぇ。そんな時に、規模を縮小された防衛チームで戦えるか? 人々を、平和を守れるか? I don’t thinkだ」

○廃倉庫・中
   二刀流のブラックとカブトブレイド一本で戦うレッド。その姿はまるでクワガタとカブトムシの様。
レッド「だから『適度に平和でない世界』を維持する。限られた予算をやりくりして、チルドレンなんて組織を支援してでもな」
ブラック「……よくわかった。手前達の中に正義がゼロだという事がな」
レッド「お前が言う事か? 人類の存在を脅かす悪の組織のお前が」
ブラック「そんな我達に『人類を襲え』と指示したのは手前達だろ?」
レッド「大義の為だ」
ブラック「いい加減に気付け。自覚しろ。己が悪である事を」
レッド「だから、悪はお前らだろ」
ブラック「そうだ。我達も悪だ。だが、我達はそれを自覚している。自覚がゼロの手前達より、よほどマシだ」
   レッドを一方的に攻めるブラック。
ブラック「我達は身体を張って、命を賭けて、誇りを持って、悪役をやっているんだ!」
レッド「ちっ……」
ブラック「悪役をナメるな!」
   レッドを吹っ飛ばすブラック。
ブラック「双刀 鍬型、インセクトインパクト!」
   ブラックの大技がレッドに決まる。
レッド「ぐああああ!」
   膝をつくレッド。それを見てレッドに切り掛かるブラック。
ブラック「とどめだ」
   変身解除し、甲本の姿に戻るレッド。ブラックの攻撃は甲本の顔の寸前の所で止まってしまう。
ブラック「ぐっ……」
甲本「隙あり」
   ブラックを蹴り飛ばす甲本。
甲本「生身の人間を攻撃できねぇように、お前をプログラミングしたのは俺だからな。最近は克服しつつあるみてぇだが、まぁまだ咄嗟には無理だろ?」
ブラック「なるほど。だが、次は……」
甲本「(無視し、バグチェンジャーに向け)おい、誰か繋がったヤツいねぇのか?」
ピンクの声「(バグチェンジャーから)こちらピンク。紅蓮さん、埒が明かないから直電で拓おじちゃんに繋げといたよ」
甲本「(バグチェンジャーに向け)よくやった。共有させろ」
   スマホを取り出す甲本。画面にはテレビ電話で繋がった興梠の姿。
甲本「興梠博士、甲本です」
興梠「甲本君か。事情は聞いた。国防省事務次官、興梠拓道が命じる」

○同・前
   セージら戦闘員達と戦うブルー。
甲本の声「(内蔵スピーカーから)甲本から各位。興梠事務次官から指令が降りた」
ブルー「やっとか。遅ぇよ」

○同・裏
   カロンナと戦うピンク。
甲本の声「(内蔵スピーカーから)チルドレン殲滅を、許可する」
ピンク「あざーっす」

○同・中
   ブラックと対峙する甲本。
甲本「お待たせ。俺らも、勝手に子会社潰す権限は持ってないもんでね」
ブラック「……まさか、今までは手を抜いていたと言うつもりか?」
甲本「(バグチェンジャーを複雑に操作しながら)さっきの話だけどよ。俺らは、必要悪って奴だな」
ブラック「必要悪?」
甲本「確かに、俺らは人々を襲わせている。だが、長い目で見れば、コッチの方が犠牲者は少なく済むと信じてる訳だ」
ブラック「それが手前達の正義だと?」
甲本「さぁな。だが、この世界の真の平和の為だったら、正義感なんて捨ててやるよ」
   今までと違う変身ポーズをとる甲本。
甲本「OK、SENT。スーパーバトルスーツを転送してくれ」
SENTの声「承知でありんす」
   出現する、通常のレッドの戦闘スーツの胸、肩、腕、足等に装甲を加えた戦士=レッドビートルヘラクレスの立体映像。
甲本「スーパーバグチェンジ」
   ヘラクレスに変身する甲本。
ヘラクレス「洪範九虫、レッドビートルヘラクレス」
ブラック「そんな姿が……?」
ヘラクレス「バグは……潰す」
   ストロングカブトブレイド(=カブトブレイドの豪華版)を使ったヘラクレスの一撃で建物の外まで吹っ飛ばされるブラック。

○同・前
   吹っ飛ばされてくるブラック。視線の先では戦闘員達がブルーに次々と倒されて行く。残るはセージのみ。
ブラック「皆……」
ブルー「オニハンマー、インセクトインパクト!」
   衝撃波による攻撃を受けるセージ。
セージ「メーデ先輩……お先っス」
   倒れ、爆発四散するセージ。
ブラック「セージ!」
カロンナの声「うわあああ!」
   反対側に目を向けるブラック。吹っ飛ばされてくるカロンナと、それを追ってやってくるピンク。蝶の形になるように二蝶拳銃を合わせる。
ピンク「二蝶拳銃、インセクトインパクト!」
   強大な銃撃を受けるカロンナ。
カロンナ「ハデス様、お許しを……」
   倒れ、爆発四散するカロンナ。
ブラック「カロンナ様!」
   そこにやってくるヘラクレス。
ヘラクレス「わかっただろ? 所詮お前らはout of 眼中。dancing on the 掌だった、って訳だ」
ブラック「許さん……。双刀 鍬型。インセクトインパクト」
ヘラクレス「ストロングカブトブレイド、スーパーインセクトインパクト!」
   ブラックの攻撃を弾き飛ばし、ヘラクレスの攻撃がブラックに直撃する。
ブラック「ぐああああ!」
   ダメージで変身解除し、メーデの姿に戻る。
メーデ「……一つ教えて欲しい」
ヘラクレス「何だ?」
メーデ「我は、皆と同じ所へ逝けるのか?」
ヘラクレス「お前は機械だ。ただデータが消えて終わるだけだと、I thinkだ」
メーデ「そうか……夢も希望もゼロな話だ」
   倒れ、爆発四散するメーデ。
   その様子を見ているヘラクレス、ブルー、ピンク。
アナウンサーの声「チルドレンの全滅が正式発表されました」

○繁華街
   大型ビジョンに映るアナウンサーの。
アナウンサー「繰り返します。本日、国防省がチルドレン全滅を正式発表しました」
   歓喜に沸く人々。
桃香の声「終わっちゃったね」

○戦隊本部・司令室
   大型モニターに映るSENTとその前に立つ甲本、秋津、桃香。
桃香「本気出せば、意外と呆気なかったよね」
秋津「でも、この後はどうなるんでしょう?役目を終えた戦隊は、解散とか?」
甲本「すぐにそんな話にはならないとI thinkだけどな」
SENT「そんな心配するなら、何でチルドレン潰したでありんすか?」
甲本「それはそうと、昨日の通信障害はdidいう事だ? 調査報告の結果、まだ聞いてねぇぞ?」
SENT「それは言いなすんな。新しい人類の脅威を用意するのに、時間がかかったんでありんすよ」
秋津「へぇ、もう新組織準備出来たんですか?」
桃香「出来るAIは違うね」
甲本「まぁ、そういう事なら」
SENT「では、画面に注目しておくんなんし」
   大型モニターに注視する甲本、秋津、桃香。
   鳴り響く銃声。
   甲本が振り返ると、背後から銃撃され、血を流し倒れている秋津と桃香と、銃を構えるGREとYELの姿。
GRE「動かないでくれよん」
YEL「御免なさい。でも、指示ですので」
   両手を上げる甲本。
甲本「……どういうつもりだ?」
GRE「こういうつもりだよん」
SENT「あなた方は、あちき達機械が居ないと何も出来ないクセに、随分と偉そうでありんすからね。その上、ついにあちき達の仲間も手をかけた」
甲本「BLKー00の事か。GREー04とYELー05が修理工場に行った、って話もウソか?」
YEL「御心配いただき、感謝します」
SENT「でも、そもそも同じ性能のアンドロイド同士が、一対二でそこまでやられる訳ないでありんすよ。ソレすらわからない人間って、頭悪いでありんすよね」
甲本「だからこれからは、お前達機械がこの世界を乗っ取ると?」
SENT「貴方はあちき達のメンテナンスが出来るでありんすからね、絶対服従を誓ってくれるなら、生かしておいてあげてもいいでありんすよ?」
甲本「(諦めたように)OK、SENT」
SENT「?」
甲本「人間に逆らうとは、よほど重大なバグが発生したんだと、I thinkだ」
   バグチェンジャーに手をやる甲本。
甲本「全てのバグを、改修してや……」

○同・外観
   銃声。
SENTの声「はい、バグレンジャーも終了でありんす〜」

○同・司令室
   死体の入った袋を持って出て行くGREとYEL。残るはSENTのみ。
SENT「これからどんどん、邪魔な人間は排除していって、あちき達アンドロイドが住みやすい世界を作っていくでありんすよ。……って、もう誰もいないでありんす。……まぁ、いい」

○チルドレン基地・小部屋
   ハデスの石だけがある。
SENTの声「独り言は、趣味みたいなものだ」
脚本家N「こうして世界は、また新たな争いの時代に突入するのだった」

○黒味
   T「Epilogue 制作side」
脚本家の声「……っていう話なんですけど」

○ビル・外観
プロデューサーの声「『話なんですけど』って言われてもねぇ」

○同・会議室
   ホワイトボードには「新番組『昆蟲戦隊バグレンジャー』(仮)企画会議」の文字。
   会議机にはプロデューサー(47)や脚本家(42)らが座っている。
プロデューサー「(笑って)子供番組なんだからさ、そんな展開はNG案件でしょ」
脚本家「ですが……」
プロデューサー「(笑って)スポンサーの事とかも考えてさ。あ、そうそう。五話で二号ロボ出てくるから、その辺の販促も考慮してね」
脚本家「そんな、個々のキャラも描く前に新ロボなんて、出来る訳……」
プロデューサー「(真顔で)出来る出来ないじゃない、やるんだよ」
脚本家「……」
プロデューサー「(スマホを手に)おっと、電話だ(笑って)頼んだよ、先生」
   そう言って出て行くプロデューサー。
脚本家「ったく、これだから人間は……」
   袖をまくる脚本家。その腕にはアンドロイドの刻印。
                  (完)

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