じいちゃんが死んだ ドラマ

立川壮大(24)は、大学卒業しても定職に就かず「小説家志望」と言いながら、その実態はたまに実家の本屋の店番をしているだけのプー太郎。そんなある日、一週間前から入院していた祖父・貞則(87)が急死する。
マヤマ 山本 36 1 0 03/03
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第一稿

<登場人物>
立川 壮大(7)(24)小説家志望
立川 貞則(70)(87)壮大の祖父
立川 秀子(54)壮大の母
立川 千乃(28)壮大の姉
立川 小絵(20)壮大の妹 ...続きを読む
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<登場人物>
立川 壮大(7)(24)小説家志望
立川 貞則(70)(87)壮大の祖父
立川 秀子(54)壮大の母
立川 千乃(28)壮大の姉
立川 小絵(20)壮大の妹
立川 節(80)壮大の祖母
古谷野 瞬(24)壮大の友人
長石 文子(52)壮大の叔母、貞則の娘
高島 久恵(62)貞則の姪
江口 洋介(53)

上司  声のみ



<本編>
○立川家・外観
   二階建ての一軒家。一階に書店。

○同・立川書店
   カウンターに座る立川壮大(7)と立川貞則(70)。読書する壮大。
貞則「壮大は、本当に本が好きだな。大きくなったら、本屋さんになるのか?」
壮大「ううん。僕ね、大きくなったらね、しょーせつかになるんだ」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)しょーせつか!」
貞則「おお、そうかそうか。小説家か」
壮大「うん。それでね、僕の書いた本がね、このお店にね、いっぱい並ぶんだ」
貞則「そうかそうか、それは凄いな。それじゃあ、壮大が大きくなったら、おじいちゃんが良いものをあげよう」
壮大「え? なになに?」
貞則「それは内緒だよ。その代わり、壮大が書いた小説はおじいちゃんに一番最初に読ませてくれるかな?」
壮大「うん」
貞則「そうかそうか、約束だぞ」
壮大「うん、約束」
   指切りをする壮大と貞則。
壮大M「これが、幼い頃の俺」

○倉庫・作業場
   いくつも積まれた段ボール箱の山。
   段ボール箱をかかえてダラダラとやってくる壮大(24)。箱の山の上に段ボール箱を置き、一息つく。
壮大M「そしてこれが、今の俺」
上司の声「おいそこ、サボってんのか?」
壮大「……今行きま〜す」
   再びダラダラと歩き出す壮大。
壮大の声「あ〜、もう疲れた」

○同・休憩室
   並んで椅子にもたれかかる壮大と古谷野瞬(24)。首にタオルをかけている壮大。
壮大「大体、人使い荒すぎなんだよな」
古谷野「まぁ、確かにね」
   雨の降っている音。
壮大「何? 雨降ってんの?」
古谷野「まぁ、ぼちぼち梅雨だもんね」
壮大「今日傘持って来てねぇし。あ〜、もう最悪。もう帰りたい」
古谷野「傘ないのに?」
壮大「うるせぇな。俺が言いたいのはそういう事じゃねぇんだよ。何で俺が、瞬に付き合って、こんな所で汗水流さなきゃなんねぇのか、って事」
古谷野「まぁ、たまにはいいだろ? 実家の手伝いだけじゃなくて、外の世界を知るってのも大事だと思うけどね」
壮大「親父みてぇな事言うんじゃねぇよ」
古谷野「ひょっとして親父さん、また何か副業始めたの?」
壮大「今度は『自転車の部品を売る店を始めるんだ』だって」
古谷野「飽きないね」
壮大「おかげで本屋は放ったらかしだよ。ったく、もう嫌になっちまうよな。今、じいちゃん居ねぇってのに」
古谷野「だからさ、そういう思いを小説にすればいいんじゃないの?」
壮大「わかってるよ、今構想中なんだよ」
古谷野「そう言って書かないくせに」
壮大「うるせぇな」
   壮大のスマホが鳴る。
壮大「ん? メールか」
   スマホ画面を見る壮大。固まる。
壮大「……え?」
   スマホの画面。メールの送り主は父。「じいちゃんが死んだ」と書かれた本文。

○メインタイトル『じいちゃんが死んだ』

○立川家・外観(夜)

○同・リビング(夜)
   壁なしで台所まで繋がっている。
   入ってくる壮大。
壮大「ただいま」
   台所に立つ立川秀子(54)。
秀子「おかえり」
壮大「……じいちゃんは?」

○同・仏間(夜)
   布団の上に貞則(87)の遺体。顔に白い布がかけられている。
   入口に立つ壮大と秀子。
壮大「じいちゃん、そんなに悪かったのかよ」
秀子「ううん。予定だと、あと二、三日で退院するはずだったのよ。それが今朝、急にね」
壮大「そんな……」
秀子「だから『お見舞いに行きなさい』って言ったじゃないの」

○(回想)同・リビング(夜)
   T「10日前」
   ソファに座りテレビを見る壮大。
壮大「え? じいちゃん入院したの?」
   台所に立つ秀子。
秀子「そうなのよ。ちょっとむくみがひどくてね。お父さんと病院に連れて行ったら、入院させた方がいいって」
壮大「なんだ、むくみか。驚かすなよな」
秀子「でもおじいちゃんも歳だし、どうせ壮大は暇なんだから、行ける時にお見舞い行っておきなさいよ」
壮大「わかってるよ。そのうちな」
   再びテレビを見る壮大。笑う。
壮大M「その言葉は嘘じゃなかった」

○同・仏間(夜)
   貞則の遺体の前に座る壮大。貞則の遺体の頬に触る。
壮大M「けど、結果的にそれは嘘になった」

○同・壮大の部屋(夜)
   六畳ほどの部屋。机やベッドがある。
   室内は片付いている。
   机に向かう壮大。心ここにあらずといった様子でペン回しをしている。
壮大M「俺は、じいちゃんが入院しても会いに行かないような人間で」

○(フラッシュ)同・立川書店
   カウンターに座っている壮大と、その脇に立っている貞則。
   何か話している様子の壮大と貞則。
壮大M「最後に交わした言葉も覚えていないような人間で」

○同・壮大の部屋(夜)
   机に向かいペン回しをする壮大。
壮大M「涙の一つも流せないような人間で」
   失敗し、落ちるペン。何も持っていない手を見つめる壮大。

○(フラッシュ)同・仏間(夜)
   貞則の遺体の頬に触れる壮大。
壮大M「死んだ人の体は冷たくなるけれど」

○同・壮大の部屋(夜)
   自分の手を見つめる壮大。自分の頬に手を当てる。
壮大M「きっと俺の方が、よっぽど冷たい人間なんだ」

○同・外観
   雨が降っている。

○同・立川書店
   読書しながら店番をする壮大。心ここにあらずといった様子。
   やってくる長石文子(52)。
壮大「いらっしゃいませ……(文子に気付いて)あ、叔母さん」
文子「あら、壮大君。こんにちは。店番?」
壮大「まぁ、そんな所です。……お袋なら中にいますよ」

○同・客間
   戸を隔てて書店と繋がっている部屋。
   向かい合って座る秀子と文子。書店との境目の場所に座る壮大。
文子「お父さん、いい顔してたわね」
秀子「そうね。眠るように息を引き取ったって言ってたから」
文子「お母さんの様子はどう?」
秀子「それがね……。わかってるんだか、わかってないんだか……」
   隣の部屋から出てくる立川節(80)
文子「こんにちは、お母さん」
節「あら、文子じゃないの。どうしたの?」
文子「ちょっと、お父さんの事でね」
節「あら、そうなの。(秀子に)秀子さん、朝ご飯はまだかしら?」
秀子「何言ってるんですか、もう食べたじゃないですか」
節「あら、そうなの」
秀子「(立ち上がって)さぁ、少しお昼寝しましょうか」
   隣の部屋に入って行く秀子と節。
文子「(壮大に)お母さん、またちょっと進んじゃってるみたいね」
壮大「そうですね」
   本屋の方を見る文子。
文子「この本屋、どうなっちゃうんだろうね?」
壮大「え? どういう事ですか?」
文子「壮大君は、何でうちが本屋をやってるのかって、知ってる?」
壮大「えっと……じいちゃんが本好きだったから、じゃないんですか?」
文子「うん、そう。だけど、私もお兄ちゃんも本はそんなに好きじゃなかったからね。この本屋、畳むかどうかっていう話になった事があるのよ」
壮大「へぇ、そうなんですか」
文子「その時、お父さんが言ったのよ。『俺が死ぬまでは本屋を続ける』って」
壮大「じゃあ、じいちゃんが死んだから、この店畳むって事?」
文子「さあ……? この店が大好きだったお父さんのためには、残しておきたいけど……お兄ちゃんがああいう人だからね」
壮大「確かに、親父なら畳みかねないですよね」
文子「でも、お兄ちゃんの独断ではさせないよ。ちゃんと家族会議して、その時は千乃ちゃんとか小絵ちゃんの意見もちゃんと聞いて……」
壮大「あの二人の意見なんて聞く必要ないですよ」
文子「そんな事言わないの。ところで、小絵ちゃんはいつ頃こっちに帰ってくるの?」
壮大「通夜が週末だから、金曜の夜には帰ってくるんじゃないですかね。何かバイトが忙しいとか言ってるらしくて」
文子「そう。千乃ちゃんは、まだこっちに住んでるのよね?」
壮大「そうですね。じいちゃんに最後に会ったのも、多分姉ちゃんですから」
文子「あら、そうなの?」
壮大「はい……」

○(回想)同・リビング(夜)
   食事をする壮大と立川千乃(28)。
千乃「でさ、今度担当する事になったおばあさんが、耳聞こえない人でさ」
壮大「へぇ、どうすんの? 手話?」
千乃「ううん、筆談」
壮大「筆談ねぇ。面倒くさくねぇ?」
千乃「声が届かないんだからさ、文字で書くしかないでしょ」
   やってくる寝間着姿の秀子。顔色が悪い。
秀子「あれ、千乃。帰ってたの?」
千乃「うん、一時間くらい前に。お母さんは大丈夫?」
秀子「う〜ん、まだあんまり大丈夫じゃないかな。(腹を抑えて)あ痛たたた」
千乃「ちょっと、無理しないでよ?」
秀子「分かってる。それにしても、ごめんね千乃。おじいちゃんのお見舞いに、夕飯の支度までお願いしちゃって」
千乃「いいって」
秀子「おじいちゃん、何か言ってた?」
千乃「言ってたよ。(壮大を見て)『壮大はどうしてる?』ってさ」
   壮大を見る千乃と秀子。
   気まずそうに顔を上げる壮大。
壮大「……何だよ」
秀子「あんた、行く行くって言って、全然お見舞い行かないじゃない」
千乃「この祖父不孝者が」
壮大「……わかったよ。明後日行くから」
千乃「明日行けばいいでしょ」
壮大「明日は瞬と一緒にスポットのバイトに行くんだよ」
秀子「あぁ、そうだったわね」
千乃「じゃあ明後日、ちゃんと行くのよ?」
壮大「はいはい」

○同・客間
   書店との境目に座り、心ここにあらずといった表情の壮大。
   隣の部屋から出てくる秀子。
秀子「ごめんなさいね、話の途中で」
   文子の正面の席に座る秀子。
文子「いいえ、こちらこそ。秀子さんには負担かけっぱなしで」
秀子「そんな事ないわよ」
文子「でも、大変でしょ? お兄ちゃんの事だから、どうせお父さんの葬儀の事は秀子さん任せなんだろうし」
秀子「まぁね」
文子「それでお母さんの面倒見てるし、それにお父さんのお通夜まで、お線香も絶やしちゃいけないんでしょ?」
秀子「それはね、大丈夫なのよ。あの、渦巻いてる奴、あったでしょ?」
文子「あぁ、蚊取り線香みたいな奴?」
秀子「そうそう」

○同・仏間
   線香台の隣にある、吊り下げ線香。
秀子の声「あれがお線香の代わりになってくれるんだって」

○同・客間
   向かい合って座る秀子と文子。
秀子「あれ一つで二、三日もつんだから」
文子「へぇ、最近は便利になったわねぇ」
   二人を見ている壮大。
壮大「便利、か……」

○(フラッシュ)同・立川書店
   カウンターに座っている壮大と、その脇に立っている貞則。
貞則「そうかそうか。いやぁ、便利になったもんだな」

○同・客間
   考え事をしている壮大。
客の声「すみませ〜ん」
壮大「あ、はい」
   立ち上がり、書店に戻る壮大。
壮大「今の……何だっけ?」

○同・壮大の部屋(夜)
   机に向かう壮大。机の上にパソコン。
   文書作成ソフトが立ち上げられているが、文字はなく白紙のまま。ペン回しをしている壮大。

○火葬場・外観
   雨が降っている。

○同・炉前ホール
   棺桶に入った貞則の遺体。
   棺桶を囲む秀子、千乃、立川小絵(20)、文子、高島久恵(62)、その他親戚達。全員泣いている。
   その中で唯一泣いていない壮大。
    ×     ×     ×
   機械により自動的に火葬炉に入って行く貞則の棺桶。
   泣きながらそれを見ている親戚達。
   泣かずにそれを見ている壮大。
    ×     ×     ×
   扉の閉じた火葬炉の前に置かれた遺影や焼香台。
   お焼香する千乃。
   千乃に続いてお焼香する壮大。焼香台につながれたコンセントのコードに気付く壮大。
小絵の声「コンセント?」

○同・会食場
   談笑しながら食事する親戚一同。
   並んで座り食事する壮大と小絵。
小絵「それがどうかした訳?」
壮大「何て言うか、最近の葬式は随分とシステマチックだな、って思ってさ。棺桶だって、ベルトコンベアーみたいなヤツで運ばれていっただろ?」
小絵「別にいいじゃん。便利だし、無駄も無いし。じいちゃんにしたって、ウチらにしたって、その方が快適だし」
壮大「便利で無駄が無ければ、何だって良い訳でもねぇだろ?」
小絵「でも兄ちゃんは、不便で無駄ばっかで何も良い事ない訳じゃん」
壮大「誰が不便で無駄ばっかなんだよ」
小絵「だってそうじゃん? 兄ちゃん、時間あったくせにお見舞い行かなかったんでしょ? マジあり得ないし」
壮大「うるせぇな。姉ちゃんと同じ事言うんじゃねぇよ。大体、小絵だって行ってねぇだろ」
小絵「しょうがないじゃん。ウチは距離的に行きたくても行けなかったの」
壮大「本当に『行きたい』って思ってたのかよ」
小絵「まぁ、そこは微妙だけど。だってウチは兄ちゃんほど可愛がられてなかったし」
壮大「そんな事ねぇだろ」
小絵「そんな事あるから。自覚ない訳? じいちゃん、完全に兄ちゃんの事ひいきしてたし」
壮大「そう……だったんだ……」
小絵「でもまぁ、ウチとしても、最後の会話が『また来るね』だと、ちょっと悪い気もする訳よ」
壮大「最後の会話……」
小絵「兄ちゃんは? じいちゃんとの最後の会話って、何話した訳?」
壮大「えっと……」

○(フラッシュ)立川家・立川書店
   カウンターに座っている壮大と、その脇に立っている貞則。
   壮大に何か手渡す貞則。

○火葬場・会食場
   並んで座る壮大と小絵。
壮大「……何だっけ……」
小絵「覚えてない訳? うわ〜、マジあり得ないし」
壮大「今思い出そうとしてんだよ」
   二人の元にやってくる久恵。
久恵「千乃ちゃんに、壮大君だったっけ? 二人とも大きくなって」
壮大「はぁ、どうも……」
小絵「いや、ウチは千乃じゃなくて小絵なんですけど……」
久恵「あら、そうなの? 嫌だ、ごめんなさいね。すっかりお姉さんになっちゃって」
小絵「いや〜、ハハハ」
壮大「(小声で)誰?」
小絵「(小声で)親戚」
壮大「(小声で)俺が言いたいのはそういう事じゃねぇんだよ。もっと具体的に」
小絵「(小声で)ウチにわかる訳ないし」
壮大「(小声で)使えねえな」
小絵「(小声で)お互い様だし」
   壮大の隣(小絵の逆側)の席に着く千乃。
千乃「久恵さん、こんにちは」
久恵「あら、こっちが千乃ちゃんね。まぁ、すっかり大人になっちゃって」
千乃「久恵さんもお変わりなく」
壮大&小絵「(小声で)誰?」
千乃「(小声で)おじいちゃんの姪の久恵さん」
壮大「(小声で)おお」
小絵「(小声で)さすが」
   久恵に向き直る壮大と小絵。
壮大&小絵「どうも〜」
久恵「それにしてもね、貞則おじさんも八七歳まで生きて、孫達がこんなに大きくなるのを見て、幸せだったろうね」
小絵「でも、アラサーで独身の長女と、大学出てプー太郎の長男じゃ……」
千乃「うるさいな」
壮大「プー太郎じゃねぇし」
久恵「壮大君、今何してるの?」
壮大「小説家目指してます」
久恵「あら、そうなの」
千乃「口だけで、全然書いてないんですけどね」
小絵「どうせ、ただ単に就職したくなかっただけだし」
壮大「そんなんじゃねぇよ」
久恵「いいじゃないの。それにね、貞則おじさんも昔、目指してた時期があるって聞いたわよ。小説家」
壮大「え?」
千乃「そうなんですか?」
小絵「何それ、初耳」
久恵「まぁ、一本も書き上げられないまま諦めちゃったみたいだけどね」
小絵「へぇ、兄ちゃんみたい」
壮大「うるせぇ」
久恵「そういえば、その時に使ってた万年筆どうしたのかしらね? 昔は『俺が死んだ時は一緒に棺桶に入れてくれ』ってよく言ってたのに」
壮大「万年筆?」
久恵「そうよ。ずっと大事に持ってたと思うだけどね」
千乃「あぁ、その万年筆なら、探したけど見つからなかったみたいですよ」
久恵「あらそう。残念ね……」
壮大「万年筆……」

○(回想)立川家・立川書店
   カウンターに座る壮大。
   やってくる貞則。足を引きずるような歩き方。
貞則「おお、壮大。ここにいたのか」
壮大「何だ、じいちゃんか。(貞則の歩き方を見て)足、どうかしたの?」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)足、どうかしたの?」
貞則「あぁ、ちょっとむくんでてな。そんな事より、壮大。小説は進んでるか?」
壮大「まだだよ。今は構想中」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)構想中!」
貞則「そうかそうか、頑張れよ」
壮大「え? あぁ、まぁね。仕事しながら、とかじゃなくて、小説一本で行こう、って決めたからさ」
貞則「そうかそうか、小さい頃からそう言ってたもんな」
壮大「そうだっけ?」
貞則「壮大、これな。お前にあげるよ」
   万年筆を差し出す貞則。
壮大「何これ?」
貞則「おじいちゃんが昔使ってた万年筆だ。小説を書く時に使うといいよ」
壮大「じいちゃん、今時そんなん使わねぇって」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)だから、今時そんなん使わないの」
貞則「おお、そうなのか?」
壮大「今はパソコンで書くんだよ。奇麗に印刷できるし、紙の無駄も少ねぇし」
貞則「そうかそうか。いやぁ、便利になったもんだな」
壮大「まぁね」
貞則「でも、約束だったからな。この万年筆はお前にあげるよ。大事にするんだよ」
   家に戻って行く貞則。
壮大「約束……? 何だっけ?」
   万年筆でペン回しをする壮大。
壮大「万年筆ねぇ……」
客の声「すみません」
壮大「あ、はい」
   万年筆を置いて席を離れる壮大。

○火葬場・会食場
   席に座る壮大。
壮大「そうだよ、あれだよ……」

○立川家・外観(夜)

○同・立川書店(夜)
   喪服姿のままカウンター周辺で探し物をする壮大。
壮大「くそっ、どこだよ」

○同・壮大の部屋(夜)
   喪服姿のまま探し物をする壮大。部屋中が散らかっている。
   やってくる秀子。
秀子「ちょっと壮大、何してるの?」
壮大「探し物だよ」
秀子「もう、何も今日する事ないじゃない」
壮大「いいだろ、別に」
秀子「せめて服くらい着替えなさいよね」
   その場を去る秀子。
   手近にあった箱をひっくり返す壮大。ペンは数本出てくるが万年筆はない。
壮大「ちくしょう……」
   ペンを掴み、壁に投げつける壮大。
壮大「何で無ぇんだよ……どこ行っちまったんだよ……」

○同・外観(朝)

○同・壮大の部屋(朝)
   散らかったままの部屋。
   喪服姿で床に座っている壮大。ゆっくりと立ち上がる。

○同・リビング(朝)
   食事の準備をしている秀子。
   やってくる壮大。着替え済み。
秀子「あれ、壮大。おはよう。どうしたの? こんなに早く」
壮大「別に……何も無ぇよ……」
秀子「探し物は? 見つかったの?」
壮大「……無かった」
秀子「そう」
   しばしの沈黙。
壮大「店、どうすんの?」
秀子「今日までは臨時休業するけど、明日からは開けるわよ」
壮大「俺が言いたいのはそういう事じゃねぇんだよ。畳むのかどうかって事」
秀子「何で?」
壮大「叔母さんから聞いたんだよ。じいちゃんが『俺が死ぬまでは本屋を続ける』って言ってた事」
秀子「あぁ、その話ね。実はそれ、続きがあるのよ」
壮大「続き?」
秀子「あの後、お父さんが……あの時は喫茶店だったか古着屋だったか……とにかく、本屋を辞めて新しい商売を始める、って言い出した事があったのよ」
壮大「まぁ、親父なら言いそうだな」
秀子「その時は本屋の景気もあんまり良くなかったから、おじいちゃんもなかなか反対しづらくてね」
壮大「……で、どうなった訳?」
秀子「おじいちゃんが言ったのよ。『もし孫達がこの本屋を必要としていたらどうするんだ。孫達の意見も聞くべきだ』って」
壮大「俺たちの意見?」
秀子「そう。その後おじいちゃん、みんなに聞いて回ったのよ。『大きくなったら何になりたいか』って」
壮大「……それって、いつの話?」
秀子「う〜ん……確か、壮大が小学校に上がったくらいの頃だったと思うけど?」
壮大「それって……」
秀子「壮大、何て答えたか覚えてる?」

○(フラッシュ)同・立川書店
   カウンターに座る七歳の壮大と貞則。
壮大の声「小……説家?」

○同・リビング(朝)
   席に座る壮大と台所に立つ秀子。
秀子「それで『僕の書いた本がこの店に並ぶんだ』って」
壮大「……」
秀子「『壮大の夢のためにはこの本屋は必要だ』って事で、お父さんも渋々納得したのよ」
壮大「じゃあ、この店が今あるのは……」
秀子「壮大のおかげ、って言ったら言いすぎだけど、おじいちゃんだけはそう思ってたかもしれないわね」
   席を立つ壮大。
秀子「どうしたの?」
壮大「……別に。……ちょっと、散歩してくる」

○小学校・前
   歩いている壮大。立ち止まる。
壮大M「今思うと、あの万年筆は」
   フェンス越しに見える小学一年生の体育の授業。リレー競争をしている。
壮大M「バトンみたいなものだったんだと思う」

○(イメージ)書斎
   小説を書こうとする若い頃の貞則風の男の背中。
壮大M「小説を書きたかったけど、結局書けなかったじいちゃんが」

○(フラッシュ)立川家・立川書店
   指切りする七歳の壮大と貞則。
壮大M「そしてあの本屋の事を本当に大事に思っていたじいちゃんが」

○小学校・前
   フェンスの前に立つ壮大。
壮大M「もしかしたら自分の死期を悟って」
   バトンゾーンで待つ、七歳の壮大にそっくりな少年。
壮大M「その夢を、思いを、俺に託して渡したものだったんだと思う」
   バトンの受け渡しに失敗し、地面に落ちるバトン。
壮大M「俺は、それを失くした」

○川辺
   近くに陸橋がある川。
   怪しい雲行き。
   土手に寝転がる壮大。
壮大M「大事なものを、大事なものだとすらわからないまま」
   手を伸ばし、何も持っていない自分の手を見る壮大。
壮大M「俺は、それを失くした」
   雨が降ってくる。
壮大M「決して失くしてはいけないものだったのに」
   雨に濡れる壮大。
壮大M「何ものにも代えられないものだったのに」
   体を起こす壮大。
壮大M「失くしたもののあまりの大きさにようやく気がついて」
   涙を流す壮大。
壮大M「俺はその日、初めて泣いた」
   陸橋を通る電車。

○(夢の中)電車・中
   並んで座っている貞則、壮大、秀子。
貞則「これは今、何に乗ってるんだ?」
壮大「電車だよ」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)電車!」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「お袋、何とかしてよ」
秀子「電車ですよ!」
貞則「おお、そうかそうか」
   しばしの沈黙。
貞則「次の駅で降りるのか?」
壮大「まだ先だよ」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)まだ先!」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「お袋〜」
秀子「まだ先ですよ!」
貞則「おお、そうかそうか。じゃあ、みんなはどこで降りるんだ?」
   貞則達の正面に座る千乃、小絵、江口洋介(53)、節。
千乃「まだ先」
小絵「ウチも」
江口「まだまだ先だよ」
節「もう少し待ってなさいよ」
貞則「そうかそうか」
壮大「なぁ、じいちゃん。俺……」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「まだ何も言ってな……」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「……」
貞則「ん? 何だって?」

○立川家・壮大の部屋(夜)
   ベッドで寝ている壮大。目を覚ます。
壮大「……んだよ、夢か」

○倉庫・作業場
   いくつも積まれた段ボール箱の山。
   無心でテキパキと働く壮大。
   その様子を驚いたような目で見ている古谷野。
上司の声「おいそこ、サボってんのか?」
古谷野「あ、すいません」

○同・休憩室
   並んで椅子にもたれかかる壮大と古谷野。
古谷野「今日も、こき使われてるね」
壮大「……だな」
古谷野「どうしたの、今日は。何か張り切ってない?」
壮大「……もう、わかんねぇんだよ」
古谷野「何が?」
壮大「じいちゃんは死んじまうし、大事な物は失くしちまうし、おまけに変な夢まで見て」
古谷野「まぁ、確かに。何で親父さんが江口洋介になってたんだろうね? まぁ俺も昔、母親が真矢ミキになる夢を……」
壮大「だから……」
古谷野「『俺が言いたいのはそういう事じゃねぇ』でしょ?」
壮大「……まぁな」
古谷野「まぁ、ようするに壮大は今、溜まっているものをどこにぶつけたらいいかわからなくて、とりあえず何も考えずに仕事に没頭してるって感じなんでしょ?」
壮大「俺、もう何したらいいんだかわかんなくてな……」
古谷野「だから、そういう気持ちを小説にすればいいんじゃないの?」
壮大「そういう気持ちを小説に、か……。そうか、そうだよ」
   立ち上がる壮大。

○立川家・仏間(夜)
   貞則の遺影と遺骨の前に座る壮大。
壮大「じいちゃん、そういう事なんだろ?」
   線香を立てる壮大。
壮大「誰かが言ってたんだよ。『声が届かないなら、書くしかない』って」
   立ち上がる壮大。
壮大「俺、書くよ。小説。だからさ、書き上がったら、一番最初に読んでくれるよな? じいちゃん」

○同・壮大の部屋(夜)
   机の上のパソコンに向かう壮大。頭をかきむしる。
秀子の声「壮大、ご飯よ」
壮大「は〜い」
   部屋を出る壮大。
   文書作成ソフトが立ち上げられているが、文字はなく白紙のままのパソコン画面。

○同・立川書店
   カウンターに座り、本を読んでいる壮大。
   客がやってくる。
客「これ下さい」
壮大「はい、いらっしゃいませ」
   本を閉じ、接客をする壮大。閉じられた本の表紙には「小説の書き方」と書かれている。

○同・壮大の部屋(夜)
   机の上のパソコンに向かう壮大。ペン回しをしながら考え込んでいる。
壮大「何か違うんだよな……」
   回しているペンを止める。
壮大「(ペンを見て)そうだ」
    ×     ×     ×
   部屋のドアを開ける秀子。
秀子「壮大、ご飯冷めちゃうわよ?」
   机の上の原稿用紙に向かいペンを走らせる壮大。
壮大「あぁ、すぐ行く」
   ドアを閉める秀子。
壮大「あぁ、もう!」
   書いていた原稿用紙を丸めて捨て、また書き出す壮大。
壮大M「祖父が亡くなったのは、気象庁が梅雨入りを宣言する前日の事だった」

○小学校・前
   考え事をしながら歩いている壮大。手にはノートを持っている。
壮大M「祖父は昔から雨が嫌いな人だったから、梅雨前に逝ってしまったんだろうと」
   何か思いついたようにノートにメモを取る壮大。
壮大M「葬儀の時、冗談まじりに親戚達がそう話していた」

○立川家・リビング(夜)
   入ってくる千乃。
千乃「ただいま」
   食事をしている秀子と節。
秀子「お帰り」
千乃「あれ? お母さんとおばあちゃんだけ? お父さんはともかく、壮大は?」
秀子「部屋。『何か調子でてきたから飯は後でいい』だって」
千乃「へぇ、本気になったんだ」
秀子「なのかしらね」
壮大M「でもそれは、あまりに突然の出来事だったから」

○同・壮大の部屋(夜)
   机の上の原稿用紙に向かい、一心不乱にペンを走らせる壮大。
壮大M「私はまだ、祖父に伝える事が出来ていない言葉がある」

○同・外観(朝)
   鳥の鳴き声が聞こえる。
壮大M「私は元来、口べたな方であるから」

○同・壮大の部屋(朝)
   机に突っ伏して寝ている壮大。原稿用紙には「(完)」の文字。
壮大M「とっさに自分の思いを正確に口にする事ができないから」

○川辺(夜)
   川のすぐ側に立つ壮大と古谷野。足場に草などは生えていない。
壮大M「じっくり、ゆっくりと考えて」
   原稿の束を持っている壮大。
壮大M「ここに書き記そうと思う」
   水切りをしている古谷野。
古谷野「そっか、とうとう一本、書き上げたんだね」
壮大「まぁな」
古谷野「気分はどう? やっぱり、達成感あるの?」
壮大「どちらかと言えば、脱力感の方が強ぇかな」
古谷野「まぁ、無理もないよね。で、その小説、もちろん俺にも読ませてくれるんでしょ?」
壮大「まだ駄目だって」
古谷野「何で?」
壮大「一番最初に読んでもらう約束してる人がいるからさ」
古谷野「ふ〜ん、じゃあ、その次でいいや。で、どうするの? やっぱコンクールとかに送るの?」
壮大「ん〜、考え中」
古谷野「(水切りをしながら)考え中って……(視界の端が明るくなった事に気付いて振り返る)ちょっと、何してるの?」
   持っていた原稿の束を燃やしている壮大。
壮大「大丈夫だって。燃え移るもんも無ぇし、消そうと思えば水だっていくらでも……」
古谷野「いやいや、俺が言いたい事はそういう事じゃなくて。何でせっかく書いた小説燃やしてるの?」
壮大「だって、じいちゃんに読んでもらうにはこれしかねぇだろ」
古谷野「え、いや……え〜!?」
   燃える原稿の前に座る壮大と古谷野。
   「ありがとう」「ごめんね」という言葉が書かれた原稿が燃えていく。
    ×     ×     ×
   燃えかすの周囲に立つ壮大と古谷野。
古谷野「あ〜あ、燃えちゃったね」
壮大「だな」
古谷野「どうするの? 俺、まだ読んでないのに」
壮大「大丈夫だって。パソコンに清書したデータ残ってるから、後はいくらでも印刷できるし」
古谷野「あ、そうなの? 何だ、驚かさないでよね」
壮大「……便利になったもんだよな」
古谷野「まぁ、確かにね。でも壮大は、今回何でわざわざ手書きで書いたの? 随分とアナログなやり方だよね」
壮大「そうだな、強いて言うなら……吊り下げ線香だな」
古谷野「……何それ?」
壮大「人が死んだ時って『お通夜まで線香を絶やしちゃいけねぇ』みたいな話があるんだってさ」
古谷野「へぇ。で?」
壮大「でも、それって大変だろ? でも、そこで吊り下げ線香ってのを使うと……」

○(フラッシュ)立川家・仏間
   線香台の隣にある、吊り下げ線香。
壮大の声「そういう手間をかけずに済むんだと」

○(フラッシュ)火葬場・炉前ホール
   機械により自動的に火葬炉に入って行く貞則の棺桶。
壮大の声「他にも、棺桶は機械で自動的に火葬炉に入れらちまうし」
    ×     ×     ×
   焼香台につながれたコンセントのコード。
壮大の声「焼香台は電気で加熱されてるし、システマチックなんだよな。最近の葬式ってヤツは」

○川辺(夜)
   並んで水切りをする壮大と古谷野。
古谷野「へぇ。便利になったもんだね」
壮大「まぁ、確かに便利だし無駄もねぇし快適だし、否定するつもりはねぇけどさ。でも、そもそも大事なのはそこで手間をかける事だったんじゃねぇのかな、って。手間を省いたら、何か自分の感情を挟み込む部分まで省かれた気になっちまうんだよな」
古谷野「う〜ん……。よくわかんないけど、だから壮大は手間をかけて、手書きで小説書いたって事なの?」
壮大「おかしいか?」
古谷野「手間をかけたおかげで、壮大の感情は小説に挟み込めたの?」
壮大「と、思う」
古谷野「なら、おかしくはないよね」
壮大「だよな。あとは、じいちゃんに届いてくれりゃいいんだけどな」
   そう言って石を思い切り投げる壮大。対岸まで届く。
   陸橋を通る電車。

○(夢の中)電車・中
   並んで座っている壮大と貞則。
貞則「壮大は次の駅で降りるのか?」
壮大「まだ先だよ」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「(大声で)まだ先!」
貞則「ん? 何だって?」
壮大「もういいよ……」
   電車が止まる。立ち上がる貞則。
壮大「ちょっと、じいちゃん降りんのかよ」
   無言で出口まで歩く貞則。
壮大「じいちゃんってば!」
   貞則を追いかける壮大。出口を出た所で立ち止まり、振り返る貞則。
貞則「一本目の小説を描き終えた人にしか出来ない事、何かわかるか?」
壮大「え、何だよ。いきなり」
貞則「二本目を描く事だ」
壮大「何だそれ。当たり前じゃん」
貞則「次も、一番最初に読ませてくれよな」
壮大「え?」
   貞則の手には手書きの原稿用紙の束。
壮大「あっ……」
   ドアが閉まる。
壮大「あ、待って……じいちゃん!」

○立川家・壮大の部屋(朝)
   ベッドで寝ている壮大。目を覚ます。
壮大「じいちゃん! ……んだよもう、また夢かよ」
   起き上がる壮大。窓の外を見る。
壮大「届いた……のかな?」
   壁にかけられた喪服を見る壮大。
壮大「あ、やべっ」

○墓地・外観

○同・中
   「立川家」と書かれた墓の前、喪服姿の親戚一同が集まり、納骨が行われている。
   その中に立つ壮大。
   その様子を見ている千乃と小絵。
小絵「ねぇ、姉ちゃん。兄ちゃん、何かあった? 顔つき変わってるし」
千乃「まぁ、色々あったからさ」
小絵「え、何なに? 何があった訳?」
千乃「教えて欲しい?」
小絵「うんうん」
千乃「どうしよっかな〜」
小絵「いい歳してもったいぶんなよ〜」
千乃「歳は関係ないでしょ」

○同・出口
   談笑する親戚達。
   歩いている壮大。
   その脇に立ち、談笑する秀子と文子。
文子「あら、そうなの?」
秀子「そうなのよ。でも、骨壺に入れる訳にもいかないでしょ?」
文子「まぁ、そうよね」
   秀子と文子の元にやってくる久恵。
久恵「あら、何の話かしら?」
秀子「あ、久恵さん」
文子「それがね、お父さんの万年筆が見つかったらしいんだけど……」
   驚いて振り返る壮大。
壮大「え!? 見つかったの!?」
秀子「そうなのよ」
文子「壮大君、知らなかったの?」
壮大「俺、聞いてねぇし……。え、どこにあったの?」
秀子「おばあちゃんが持ってたのよ」
壮大「ばあちゃんが……? (何か思い出したような表情で)あっ」

○(回想)立川家・立川書店
   カウンターに座っている壮大。万年筆でペン回しをしている壮大。
壮大「万年筆ねぇ……」
客の声「すみません」
壮大「あ、はい」
   万年筆を置いて席を離れる壮大。
   カウンターの上に無造作に置かれた万年筆。
   やってくる節。カウンターに座る。
節「(万年筆に気付いて)あらあら、こんな所に出しっ放しにして」
   万年筆をポケットにしまう節。
壮大の声「ありがとうございました」
   カウンターに戻ろうとする壮大、節に気付く。
壮大「ばあちゃん、何してんの?」
節「何言ってんの、貞夫。そろそろお店番交代する時間でしょ?」
壮大「いやいや、俺、親父じゃねぇから」
   やってくる秀子。
秀子「お義母さん、お店番はいいから、部屋に戻りましょうね」
節「あら、そうなの?」
   秀子と一緒に家に戻る節。
   ため息をついて、カウンターに座る壮大。
   机の上に万年筆はない。

○倉庫・休憩室
   並んで椅子に座る壮大と古谷野。爆笑している古谷野。
古谷野「何それ、しょうもないオチだね」
壮大「うるせぇな。そこまで笑う事じゃねぇだろ」
古谷野「でも、壮大の所のばあさんもひどいね。勝手に持ってっちゃうなんて」
壮大「だから、俺が言いたいのはそういう事じゃなねぇんだよ。この見つかって安心してんだか、しょうもないオチに怒ってんだか、悩んでた事がアホらしくてむなしいんだか、何だか分からないこの行き場の無い感情はどうしたらいいのか、って話だよ」
古谷野「だからさ、そういう気持ちを小説にすればいいんじゃないの?」
壮大「そうだな……」
   立ち上がる壮大。
壮大「よっしゃ、書くか」

○立川家・外観

○同・立川書店
   本棚に並んでいる本。その中の一冊の背表紙、タイトルに「じいちゃんが死んだ」著者名に「立川壮大」と書いてある。
   その本を手に取る客。最後のページをめくる。「完」と書いてある。
                 (完)

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