○ マリンハピネス・披露宴会場・扉の前
会場内から漏れてくるウエディングソング。
新郎の大友蓮(28)が不安な面持ちで扉が開くのを待っている。その隣に花嫁の姿はない。
大友の後ろではスタッフは慌ただしくしている。
扉の前にスタンバイするキャプテンの片瀬大吾(29)。
胸元についたピンマイクに、
片瀬「あと15秒で扉開けます。竹下さん、
とりあえず新郎様だけで入場してもらいます」
竹下の声「(インカムを通した声)了解です」
大友「(不安)……」
片瀬「安心して下さい。私たちがしっかりサポートしますので」
大友「色々と申し訳ありません……」
和男の声「おーい、待たせた!」
声の方を向く大友と片瀬。
○ 同・披露宴会場
列席者勢揃いの披露宴会場内。
会場内の装飾やテーブル周りも一級品。
マイクの前に立つ司会者の竹下理恵(26)がマイクに向かって話そうとする。
片瀬の声「(インカムを通した声)竹下さん、
新郎新婦でアナウンスして下さい!」
竹下、ほっとした表情を浮かべ、
竹下「それでは席後方をご覧ください。お二人を盛大な拍手でお迎えください。新郎新婦ご入場です!」
○ マリンハピネス・結婚式会場・中
T「一日前」
パイプオルガンの音に合わせ聖歌隊が『アベマリア』を歌う中、神父の前に立つ新郎新婦。
参列者たちは幸せそうに見ている。
× × ×
神父「それでは誓いのキスを」
新郎、新婦のベールを上げキス。
拍手が沸き起こる。
× × ×
新郎新婦、腕を組みバージンロードを歩く。フラワーシャワーで祝福する参列者。
和男M「人生で唯一、自分が主役になれる瞬
間。皆に幸せを称えられ幸福感に包まれる
場所」
と、フラワーシャワーが舞うその奥にひ
っそりと拍手を送っている榎本和男(4
8)。
和男M「ここで数多くの幸せな主役達を見送
ってきた」
和男、腕時計を確認しどこかへ移動する。
○ 同・廊下
披露宴会場に向かう和男。
すれ違うスタッフから挨拶をされたり、
指示を出しながら駆け足。
和男M「私は常に脇役を徹しなければならな
い。こういう私も昔は主役になれた日があ
った」
○ 同・披露宴会場
新郎新婦のケーキ入刀。
写真を撮ったり拍手する列席者。
和男も拍手をしているがどこか浮かない顔。
和男M「しかし、8年前に離婚。たまに幸せ
な姿を見ていると冷静になってしまう自分
がいる」
和男、披露宴会場から出て行く。
○ 同・廊下
事務室に向かって歩く和男。
和男M「私は支配人といえども現場第一主義。
というか、少子化の問題で年々新入社員が
減る一方で現場に出向かないと回らないこ
とも多々」
和男、事務室のドアを開けて入る。
○ 同・事務室
壁に掲示されているカレンダーを指でなぞる和男。
和男M「みんな結婚して子供を作ればいいん
だろうけど、この過密スケジュールの上、
結婚式が増えるのも正直迷惑でもある」
和男「(ため息)」
事務員の春日彩音(24)が近づいて、
彩音「いよいよ明日ですね」
カレンダーには一部赤い枠で印をつけら
れた日。
『大友様、向井様 VIP』と書かれて
いる。
和男「……」
和男M「しかしそんな事も言ってられない。明日は母体の会社に出資した向井社長のご令嬢の結婚式だ」
○ マリンハピネス・前
T「半年前」
正面玄関の前で整列している和男、汐見玲奈(35)、片瀬、竹下。
和男たちの前にハイヤーが止まる。
ハイヤーのドアが開くと向井直弼(55)が降りる。
和男、笑顔で近づき、
和男「向井社長、この度は誠に」
直弼「皆さん御機嫌よう」
和男「……」
和男の話も介さず、
直弼「中々いい面構えじゃないか」
和男「あ、つい先日リニューアルオープンしまして、中も様変わりしております」
直弼「(不機嫌そうに)……あっそう。誰のおかげだと思ってるんだ?」
和男「(少し焦り)それはもちろん向井社長に出資頂いたおかげです」
と、ハイヤーの後ろに軽自動車が止まる。
中から大友が降りてくる。
和男「花婿様でらっしゃいますか」
直弼「こちら大友システムの御曹司だ」
和男「大友システムのご子息でらっしゃいましたか。この度はご結婚誠におめでとうございます」
大友、和男に軽く頭を下げる。
直弼「じゃあ中で式のプランでも聞きましょうか」
と、中に入ろうとする直弼。
和男、直弼を止め。
和男「向井社長、今日、花嫁様は」
直弼「私の娘は来ないよ」
和男「来ないんですか……。それで進めるとマズイんじゃないですか」
直弼「あいつには任せられない。娘の結婚式といえども私のメンツが掛かっているんだ。榎本くんだったかな? それ分かるよね?」
和男「え、ええ。もちろん承知しております」
直弼「わがままな奴でね。まだまだ人前に出せる様な人間じゃないんだ」
和男「うちの娘も親の言うことを聞く耳持たずで大変ですよ」
直弼「君の娘は結婚しているのか?」
和男「いえ……いえ、まだ……」
直弼「(嬉しそうに)あっそう。それじゃあ中へ行きましょう」
和男「……」
○ 結婚式場の紹介VTR
結婚式場の外観。優雅なクラシック音楽。
結婚式場の中は豪華な装飾。ツルツルの大理石に噴水。広い披露宴会場。
神前式も出来る話の空間。
シェフが持つフライパンから火柱が立つ。
和男の声「これが様々なご要望に沿った演出が出来る私たちマリンハピネスで御座います」
○ マリンハピネス・相談スペース
式場紹介VTRはテーブルに設置されたモニターで流れている。
和男、直弼、大友が個室になったスペースで話している。
汐見が飲み物を持ってくる。
和男「こちらは向井社長の好きなジンジャーシャンパンです。どうぞお飲みになってください」
直弼「? これも取り扱っているのか?」
和男「今日のために取り寄せました。お客様に合わせた柔軟な対応、ご要望にスピーディーに対応することが私たちの仕事ですから」
直弼、一口飲んで、
直弼「(ウンウンと頷き)美味しい」
和男「ありがとう御座います。取り寄せた甲斐がありました」
大友はシャンパンに口をつけていない。
直弼「(大友に)苦手なのか?」
大友「お酒はちょっと」
直弼、大友のシャンパンを一気飲み。
和男「……」
直弼「(ゲップを抑え)残すと悪いからね。続けて」
和男「……それで向井社長の要望を聞いて当日の流れを考えてみました」
と、当日のスケジュール表を机に広げる。
和男「向井社長に相応しい当式場で一番広い披露宴会場を押さえております。料理も最高級品、アレルギーをお持ちの方がいらっしゃいましたら早急に対応出来るシェフも用意しております」
和男、スケジュール表に指をさして。
和男「まずは結婚式を執り行った後、披露宴会場に移ります。お色直しは二回。以前お電話で和装のご要望を伺っておりましたので和装、カクテルドレスの順でいいかと」
直弼、納得したように。
直弼「まあ、ここまで考えてくれているなら君の好きなように任せるよ。君がここの責任者だから」
和男「宜しいんですか」
直弼「くれぐれも粗相のないように」
和男「お任せください」
○ 和男の自宅・外観(夜)
アパートの二階に上がっていく和男。
手にはコンビニのビニール袋。
○ 同・玄関(夜)
和男、中へ入ってくる。
和男「ただいま」
部屋の明かりは点いているが返事は何もない。
○ 同・リビング(夜)
テーブルにビニール袋を置く。
和男「(ため息)疲れた」
ジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛ける。
和男「夏実、帰ったぞ」
返事はない。
返事が無いのは普段通りといった感じで
動じることなく冷蔵庫の前へ。
冷蔵庫を開けてビールを取り出す。
蓋を開け、ビールを一口。
和男、寝室の襖を開ける。
和男「帰ったぞ」
寝室では、榎本夏実(22)が化粧をしている。
えらく厚化粧である。
和男「なんだ、どこか行くのか」
夏実「(素っ気なく)ご飯」
和男「ご飯? 今日せっかく弁当買ってきたのによ。出かけるなら連絡くらいしろよ」
夏実「じゃあ弁当買ってくるって連絡してよ。いっつも買ってこないくせに」
和男「そんな……いちいち……」
夏実、メイクの手を止め和男を睨みつける。
夏実「(は?と)」
和男、夏実の威圧感に負けビニール袋からおにぎりを取り出す。おにぎりのパッケージに『シーチキン』と書かれている。
和男「誰とご飯なんだ?」
夏実「名前言っても分かんないでしょ」
和男「友達かどうか聞いてるんだよ」
夏実「友達じゃなかったら?」
和男「(怖くて聞けず)……」
夏実「……」
和男、箸を置いて紙袋から生花のブーケ
を取り出す。
和男「そうだ、汐見がプレゼントって」
と、ブーケを見せる。
夏実「これ、式場の残りもんでしょ? 汐見さんもお節介だね」
和男「(呆れ)お節介ってなんだ。汐見も久しぶりにお前と会いたがってたぞ」
夏実「私、忙しいの」
と、化粧道具を直す。
和男「大学もロクに行かずによく忙しいって言えたな」
夏実「大学にも入れなかったお父さんに言われたくないね」
和男「……」
夏実、荷物をまとめ玄関に向かう。
和男「夏実もそろそろちゃんとした人見つけた方がいいんじゃないか」
夏実、足を止めて。
夏実「ちゃんとした人なんてわかるの?」
和男「(たじろぎ)ええ? それはどこかに……」
夏実「ちゃんとしてない人同士が結婚したから私、こうなっちゃったのかな?」
和男「(何も言えない)……」
○ 同・玄関(夜)
玄関にはハイヒールとローファーが並んでいる。
夏実、迷わずハイヒールを履く。
和男「また靴買ったのか?」
夏実「ヒールが高い方が足、長く見えるでしょ?」
和男「そんな格好してると軽く思われるぞ」
夏実「娘がそんなに尻軽に見える?」
和男「いや、そ、そんな訳じゃ……」
夏実「帰り遅いから」
と、出て行く。
和男「行ってきますくらい言えよ」
と、扉に向かって叫ぶ。
○ マリンハピネス・前
T「結婚式当日」
列席者が中へ入って行く。
○ 同・新婦待合室
汐見に化粧を施される向井貴子(25)。
貴子、腕を組んで不機嫌そうにしている。
貴子「……」
汐見、化粧の手を止めて貴子の顔を見る。
汐見「すごくお綺麗ですね」
貴子「全然嬉しくないんだけど。むしろ余計」
汐見、イラッとくるが抑えて、
汐見「笑顔の方がお似合いです」
貴子「はあ? マジでムカつくんだけど。こんな状況で笑顔になれって言うの?」
汐見「今日は折角の晴れ舞台なんですから」
貴子「全然晴れてないんだけど」
汐見、青紫色のドレスを見せる。
汐見「和装が終わったらユウゼンギクの色を
イメージしたドレスですよ」
貴子「……」
汐見「この色、好きなんですよね?」
貴子「(そっぽ向いて)別に」
○ 同・新郎待合室
和装姿の大友。緊張している様。
片瀬が大友の襟を直す。
片瀬「式が無事終わるようにしっかりサポートしますので安心されてください」
大友「貴子がすみません」
片瀬「いえ、直前まで式のこと知らされてなかったらしょうがないですよ」
大友「……」
片瀬「でも花嫁様のご友人の方たちが来てくれてよかったですね」
○ 同・披露宴会場
大勢の人で溢れる会場内。
その中、席についている三人の若い男。
どこかの席を見つけて、
友人A「あの子、可愛くね?」
友人B「どの子? (見つけて)いやお前どんな趣味してるんだよ」
友人Cは席次表を広げている。
友人C「へー。やっぱり貴子の親父すげえな。会社の重役ばっかだよ」
席次表は会社の名前の後に『代表取締役』や『常務』や『部長』などの名前がずらりと並ぶ。
友人B「(嫌味っぽく)異業種交流会みたいだな」
友人C「こんな中で余興って罰ゲームだぞ?」
友人A「いいじゃん。せっかくだし楽しもうぜ? なっ?」
微妙な反応の友人B、C。
○ 同・新婦待合室
汐見がポーチの中を漁っている。
席を立つ貴子。
汐見「どちらに行かれるんですか?」
貴子「タバコ」
汐見「私もついて行きます。もうすぐで披露宴ですから」
貴子、先に出て行く。
汐見、追いかけようとするが化粧道具を床にばら撒いてしまう。
汐見、道具を慌てて拾う。
○ 同・披露宴会場
直弼の周りに取引先企業の重役。
談笑している。
話しが終わったようで重役たちは笑顔で離れていく。
側で待機していた和男が近づく。
和男「結婚式、無事終わりましたね」
直弼「無事と言っていいのか。……娘が失礼な態度を取ってしまったね」
和男「いえいえ、そんな」
直弼「プライベートの場なら親の私の責任。でもね、ここは貴方が用意した会場。この披露宴で失敗したら君の責任だからね」
和男「……」
直弼「今日は取引先の企業の方たちも来ている。恥をかかせないように。私を」
和男「……はい……」
和男、一礼して離れていく。
扉を開けて会場外へ。
○ 同・同・前
扉を閉めて深く息を吐く和男。
汐見、慌てて近づき、
汐見「和男さん! 大変!」
和男「声が大きいぞ。お客様が聞いているんだから。それにここでは支配人って呼べ」
汐見「花嫁が居なくなったのよ」
和男「はあ!? 居ない!?」
周りの人たちが一斉に和男を見る。
和男、ハッとして周りの人たちに笑顔を
見せる。
汐見を誰もいない通路に連れて、
和男「嘘だろ?」
汐見「とりあえず私、探してくる」
と、走り出そうとする汐見。
和男「ちょっと待って、どういうことなんだ」
汐見「少し目を離したすきにどこかに消えちゃったのよ」
和男「ったくこんな時に……」
和男、力が抜け壁に寄りかかる。
和男「まずい、非常にまずい」
頭をおさえる和男。
汐見「とにかく私は外に探しに行くわ。まだそんな遠くに行ってないだろうから」
和男「ああ。わかった……」
汐見「私が連れてくるまでどうにか繋いでてね」
と、走り去る。
和男「お、おい、ちょっと!」
汐見、振り返ることなく消えていく。
和男、腕時計を見る。
時間は12時15分。
和男、決心してインカムのマイクに向か
って話し出す。
和男「みんな聞いてくれ」
○ 同・披露宴会場
片瀬が和男の声を聞いている。
和男の声「花嫁の姿が消えた」
片瀬「(驚き)ええっ……」
ホールスタッフ達が一斉に目を合わせる。
司会者席についている竹下。
和男の声「入場まで残り15分だ。汐見が今探しに行ってるが……最悪の事態を想定して動いてくれ」
○ 同・同・前
和男、インカムのマイクに向かって話している。
和男「頼んだ」
と、深いため息を吐き、どこかへ歩いて
いく。
○ 同・披露宴会場
そわそわしている貴子の友人たち。
会社の重役ら。
直弼は腕時計を見る。
直弼「(遅いな)……」
直弼、不満そうな表情。と、やっと披露
宴会場の照明が暗転。
○ 同・同・前
会場内から漏れてくるウエディングソング。
大友が不安な面持ちで扉が開くのを待っている。その隣に花嫁の姿はない。
大友の後ろではスタッフは慌ただしくしている。
扉の前にスタンバイする片瀬。
胸元についたピンマイクに、
片瀬「あと15秒で扉開けます。竹下さん、
とりあえず新郎様だけで入場してもらいま
しょう」
竹下の声「(インカムを通した声)了解です」
大友「(不安)……」
片瀬「安心して下さい。私たちがしっかりサ
ポートします」
大友「色々と申し訳ありません……」
和男の声「おーい、待たせた!」
声の方を向く大友と片瀬。
和男の隣には和装姿の女性。
よく見ると白塗りした事務員の彩音。
片瀬「(驚き)彩音さん」
彩音、動じず、逆に楽しんでいるみたい
に。
彩音「似合ってます?」
和男「大友さん、すみません」
と、頭を下げる。
大友「……」
和男「花嫁様が帰ってくるまでこいつが何と
か凌ぎますのでどうか!」
と、もう一度頭を下げる。
大友「僕はどうしたら……?」
和男「いつも通り、こいつを貴子さんだと思
って隣にいてくれたら大丈夫です」
片瀬「私たちがしっかりサポートします」
大友「(迷いながらもしょうがないと)分か
りました。僕は責任とれませんよ」
和男「(頷き)よし、片瀬合図!」
片瀬「(インカムで)竹下さん、新郎新婦で
アナウンスして下さい!」
○ 同・披露宴会場
竹下、ほっとした表情を浮かべ、
竹下「それでは席後方をご覧ください。お二人を盛大な拍手でお迎えください。新郎新婦ご入場です!」
扉が開くと出てきた大友と彩音にスポットライト。
○ 街のどこか
汐見が貴子を探し回っている。
○ 公園・前
汐見が公園の前を通りかかる。
汐見「(あ、と)!」
汐見、誰かを見つける。
○ 公園
ブランコに座っているドレス姿の貴子。
汐見「見つけた。何してんの、ここで」
貴子「なにその口の利きかた。あんたスタッフでしょ?」
汐見「親があーだと娘もそうなるわ」
と、隣のブランコに座る。
貴子「……はっ?」
汐見「披露宴出なよ。ここでそんな格好じゃ浮くよ?」
貴子「あそこには戻りたくない」
汐見「まだ結婚すべきじゃなかったんだろうね」
貴子「……何? さっきから」
汐見「まだまだ子供だってこと。結婚式って自分が主役だけどおもてなしをする場でもあるのよ」
貴子「(強がり)そんなの分かってるよ」
汐見「あんた恋愛したんでしょ? 旦那が可
哀想だよ。一人にしちゃ」
貴子「……」
汐見「世の中にはね、家族が結婚相手を決めることだって沢山あるの。好きな人と一緒になりたいって言っても結婚できないことだって」
貴子「……」
汐見「好きになった人の仕事や年収。安定した家庭は作れるのか。相手の親は何をしているのか。どこで何をしてきたのか……一度、バツがついた人は何かしら欠陥があるんじゃないか。相手の子供が好きになってくれない」
貴子、汐見の手元に目を落とす。
汐見の左薬指に指輪はない。
貴子「……お姉さんのこと?」
汐見「あんた一人が悪い訳じゃない。でも大切な人の側には居てあげな」
貴子「……」
汐見「遠い知り合いのことだよ」
一輪の花を持ってくる小さな女の子。
女の子「花嫁さん」
貴子、受け取るのを迷う。
貴子「……」
遠くにいる女の子の母親が、
母「みなみ、戻ってきなさい」
女の子「(貴子を見つめる)」
貴子「……」
女の子、沈んだ顔になり戻ろうとする。
貴子、咄嗟に花を受け取る。
貴子「……ありがとう」
女の子、嬉しそうに走り去る。
汐見「好きなの? 子供」
貴子「……子供は苦手」
と、薄っすら微笑み貰った花を見つめる。
カクテルドレスと同じ色をしたユウゼンギク。
汐見、ブランコから立ち上がって、
汐見「行くよ、披露宴。行かないって言っても連れてくけどね」
汐見、少し笑う。貴子もつられて笑う。
貴子「いま披露宴どうなってるの?」
汐見「心配しないで。私たちの売りはどんな事態が発生してもスピーディーに対応することだから」
貴子「お父さん怒ってるだろうな……」
汐見「一緒に謝るよ」
○ マリンハピネス・披露宴会場
直弼は酒を注がれ良い気分。
瓶とグラスを持って列を作る男たち。
壇上にいる大友と彩音。
楽しそうに酒を飲み交わす直弼たちを呆然と見ている。
和男がやってきて。
和男「これじゃ、どっちが主役か分からんな」
頷く大友。
竹下、司会席に立って、
竹下「それでは花嫁さまのお色直しに移りたいと思います」
○ 同・女性化粧室
和男と彩音が話している。着付けのスタッフはカクテルドレスを用意している。
片瀬が入ってきて。
和男「まだか! 汐見と花嫁は!?」
片瀬「いや連絡が繋がらなくて」
彩音「私は大丈夫ですよ」
和男「お前は良くても俺の精神が耐えられないんだよ」
彩音「このカクテルドレス着てみたかったんですよねー」
和男「……」
彩音、着替えようと脱ごうとする。
彩音「支配人、着替えないと次、間に合わないですよ?」
和男「……わかってるよ」
和男、片瀬部屋を出ていく。
○ 同・トイレ・個室
便器に腰掛ける和男。
和男「はあ、……」
と、ため息。
男たちの声。誰かが入ってきた音。
○ 同・トイレ
小便をする直弼とその部下。
部下「料理は美味かったっすねえ」
直弼「最高級のものを選んだからね」
部下「向井社長の娘さん、何か違和感ありませんでした?」
○ 同・同・個室
ギクッとする和男。
和男「……」
○ 同・トイレ
直弼「(ちょっと考えて)……そんな訳ないだろ。同じ顔だったよ」
部下「……そうっすかねえ。………ああっ飲みすぎたから止まらないなあ」
○ 同・同・個室
和男「(安心)……」
○ 同・トイレ
部下「この式場代、社長が払ったんですか?」
直弼「(笑って)赤字企業の大友が払える訳ないだろう。だから俺が救ってやったんだ。これは投資だよ。投資」
○ 同・同・個室
和男、息を潜めて聞き入る。
和男「(ん?と)……」
部下の声「さすが、抜かりないですね」
○ 同・トイレ
直弼「大友くんと娘を結婚させれば、いずれは大友システムの特許を安く使わせて貰えるかもしれないからね」
部下「あのシステム、使い方さえ間違わなければ」
直弼「安いもんだ」
と、直弼と部下は出て行く。
個室の扉が開いて出てくる和男。
和男「……」
ショックで立ちすくむ。
と、後ろの個室のドアが開く。
出てきたのは大友。
和男「えっ……」
大友「……」
○ 新郎更衣室・中
新しい衣装になっている大友。ソファに座っている。
おにぎりを持ってくる和男。
和男「披露宴中は食べたり飲んだりする余裕ないでしょう」
大友「ありがとうございます」
和男、大友の横に座りおにぎりを一口。
和男「うちのスタッフが握ってくれたおにぎりです。どうぞ食べてください。私もお腹空いてるんで」
大友もおにぎりを食べる。
大友「……あっ、シャケだ」
和男「私のは梅でした」
大友「この味、安心します」
和男「ですよね。あんな高級料理よりこっちの方が美味いですよね」
大友「僕もこっちの方が口に合います」
と、笑顔。
和男「……結婚って何なんでしょうね。ハハっ、こんな歳にもなって、結婚式の仕事してるのに、大友さんに聞くのもおかしいですね」
大友「……娘さん、結婚してないって言ってましたよね?」
和男「……ええ。まあ」
大友「結婚しないんですか?」
和男「大友さんの前でこんな話をするのも悪いんですけど結婚を良く思っていなくて」
大友「……」
和男「私がダメなんです。離婚なんかしちゃったから」
大友「……」
和男「離婚した姿なんか見せたら結婚って何の意味あるのって感じじゃないですか。… …まあ、そう言われたんですけど」
大友「離婚ってそんな悪いことなんですか?」
和男「え?」
大友「気持ちが抑えられないから結婚するし、気持ちが抑えられないから離婚するんですよね? どっちも前に進みたいっていう気持ちじゃないですか」
和男「……ハハっ……何を言うかと思ったら」
大友「でも違いがあるのなら、式は結婚しか
ないんですよね」
和男「……?」
大友「離婚式なんてないでしょう? 二人で祝って貰えることって結婚式だけなんです。だから結婚って大切なんです」
和男「……」
○ 街のどこか
一台のタクシーが走っている。
○ 走るタクシー・車内
汐見と貴子が乗っている。
貴子「すみません、その信号右で」
汐見「えっ? 式場は真っ直ぐよ?」
貴子「いいじゃん、少し寄り道したって」
汐見「何言ってんの? みんな待ってるのよ」
貴子「要望に応えてくれるんでしょ?」
と、笑顔。
汐見「(やられた)……」
○ 街のどこか
汐見と貴子を乗せたタクシーが信号を右に曲がって走っていく。
○ マリンハピネス・披露宴会場
司会席に立つ竹下。
竹下「それでは新郎新婦の入場です」
BGMが流れ、大友と彩音が出てくる。
彩音は透けたベールをかけ、顔を隠している。
怪しんで見る直弼。
直弼「……」
一口、グラスに口をつける。
○ 貴子の家・外観
豪邸。前にタクシーが止まっている。
表札に『向井』と書かれている。
○ 同・貴子の部屋
何やら荷物を漁っている貴子。
側で時間を気にしている汐見。
汐見「まだ?」
貴子「そんな急かさないでよ」
汐見「披露宴終わっちゃうよ?」
貴子「披露宴より大切なの」
汐見「?」
貴子、漁り続ける。
○ マリンハピネス・披露宴会場
賑わっている会場内。
変わらず直弼の側には人だかり。
竹下がマイクの前に立ち。
竹下「続いて新婦の学生時代の友人、三名の
方々にご登場頂きます。席後方にご注目下
さい」
席後方にスポットライトが当たる。
そこには三つの和太鼓とふんどし姿の友
人A、友人B、友人Cが並んでいる姿。
友人Aが背中を向けると背中に「ハッピ
ー」の文字。
友人A「ハッピー!」
友人Bの背中に「ウェディング」の文字。
友人B「ウェディーング!」
友人Cの背中に「イェーイ!」の文字。
友人C「イェーイ!」
会場内「……」
『前略、道の上より』が流れ出し、音楽
に合わせて太鼓を叩く。
笑顔で見る大友と彩音。
冷たい目で見る直弼。
直弼「……」
心配そうに見つめる和男。
和男「(嫌な予感がして)……」
女性スタッフが和男のところに来て、
女性スタッフ「新婦のお父様が支配人を呼べ
と」
和男「ええっ……?」
和男、直弼の側にくる。
和男「向井社長、お呼びでしょうか」
直弼「この余興を止めてくれ」
和男「はい?」
直弼「裸の男を見て楽しめるような人間だ
と?」
和男「いえ、でも……」
直弼「それに幾ら何でも親は娘の顔を忘れな
いんだぞ」
と、直弼の目線の先に彩音。
和男「……」
直弼「騒ぎになるのもゴメンだ。でも、この
披露宴が終わったら、分かってるだろうね」
和男「……」
直弼「止めないなら私が止める」
と、直弼立ち上がり音響係の元へ向かう。
止める和男を振り切り、音響のケーブル
を抜く。
BGMが止まり太鼓の音が鳴り響く。
BGMが止まったことに気付き、友人B、
友人Cが手を止める。
友人B「おい、やめろ」
と、叩き続ける友人Aを止めさせる。
友人A「(何が起きたか分からず)え、え
っ?」
和男「向井社長、何やってるんですか」
直弼「こんな芸を見るのは酒のツマミにもな
らない。さあ、次に移ってくれ」
静まる会場内。
片瀬、インカムで。
片瀬「竹下さん、フォロー入れて、次に進み
ましょう」
竹下、焦りながらも。
竹下「非常に楽しい余興を見せて頂きました。この続きは是非、二次会や三次会で」
大友の声「ちょっと待ってください!」
皆、一斉に大友を見る。
大友「お義父さん、これ誰の披露宴ですか」
直弼「……」
直弼、何も言わず席に座る。
大友「僕たちの為に盛り上げようと一生懸命
準備して来てくれたんじゃないんですか!」
ふんどし姿の三人、聞き入っている。
直弼「榎本くん、君がここの責任者だろ。君が責任を持ってこの場を収めなさい」
和男「……」
直弼「私の言うことを聞けないのか。対応をしろと言っているんだ」
と、声を荒げる。
和男「……はい。対応します」
和男、壇上に向かう。
大友と彩音の前に立つ和男。
和男、彩音のベールを上げる。
彩音「(訳分からず)え? ええっ?」
騒つく会場内。
直弼「(あいつ、と)……」
大友「榎本さん……」
和男「(頭を下げ)申し訳ございません。見ての通り花嫁は別人です。花嫁はどこか逃げちゃいました」
騒然となる会場。
直弼「……」
和男「逃げたくなる気持ちもわかるよ。ここに花嫁がいない理由がわかりますか? 分からねえか。分からねえだろうな」
直弼、立ち上がり和男に近づく。
直弼「よくも花嫁がいないことを隠して披露宴を進めてくれたな。これはお前だけじゃなく会社全体の責任だからな。分かってるな」
和男「責任……。あんたは娘の責任取れるのか」
直弼「……」
和男「私だってね、娘一人を花嫁に行かせてやることもできない親だけど、人一倍、誰よりも娘を思ってる。あんたにその責任と覚悟はあるのか!?」
直弼「……」
和男「もうみんな帰ってくれ。ここは営業をする場所じゃない。幸せを祝う場所だ」
不満そうにぞろぞろと帰り出す列席者たち。
直弼「……知らないからな。この結婚も破断だ」
大友「ちょっと待って下さい」
直弼、会場の外へ歩き出す。
と、ちょうど会場に入ってくる汐見と貴子。
汐見「(知らずに)ホラ、もう終わっちゃったじゃん」
貴子、直弼を見つけ足を止める。
貴子「……」
直弼も貴子に気付き足を止める。
直弼「……」
直弼、バツが悪そうに去っていく。
貴子「……」
和男「遅いよ、お前……」
と、力が抜けて椅子に腰をかける。
汐見「ごめん、編集で少し時間かかって」
和男「編集?」
貴子「お父さん! ちょっと待って」
直弼、立ち止まる。
直弼「なんだ今更」
貴子「逃げ出して、ご、ごめんなさい……」
直弼「いいんだ。気にするな」
貴子「えっ……?」
直弼「私が無理やり結婚させたから嫌だったんだろう? たったいま結婚破断になったから」
貴子「……」
直弼「気を使わせて悪かったな」
汐見「あんたやっぱり何もわかってないね」
直弼「……?」
立ち止まる直弼。
汐見「これ、流して」
と、側にいたスタッフにDVDを渡す。
和男「なんだそれ」
汐見「披露宴より大切なもの」
和男「?」
× × ×
暗くなった会場内。
スクリーンに映像が流れる。
スクリーンを見る面々。
○ スクリーンの映像
音楽が流れ出し、音楽に合わせて写真が切り替わっていく。
貴子の幼い頃の写真。
貴子を抱きかかえる若かりし直弼。
泣いている貴子を風呂に入れてやってい
る直弼。
公園の滑り台でピースをしている貴子、
一緒に写る直弼もピース。
赤いランドセルを背負った貴子。
セーラー服を着て卒業証書を開いて見せ
る貴子。
悪そうな仲間達と写っているジャージ姿
の貴子。
バイクの後ろに跨っている貴子。
○ マリンハピネス・披露宴会場
スクリーンを眺める直弼。涙ぐむ。
直弼「……」
和男、直弼の横顔を見る。
和男「……」
○ スクリーンの映像
貴子と大友が並んで写っている。
スカイツリーをバックに笑顔の貴子と大友。
大きなパフェを食べる貴子と大友。
海岸で寄り添う貴子と大友。
運転している大友の横顔。
誕生日ケーキを手に持って喜ぶ貴子。
クリスマスパーティーで楽しそうな貴子と大友、そして貴子の友人三人の姿。
背中には「メリー」「クリスマス」「イェーイ!」と書かれている。
○ マリンハピネス・披露宴会場
貴子と大友、見つめあって笑う。
和男、二人を幸せそうに見つめる。
○ スクリーンの映像
ここで映像が写真から動画に切り替わる。
ドアの前に誕生日ケーキが出てくる。
貴子「じゃーん」
と、ケーキを持っていたのは貴子。
貴子「ちゃんと撮れてる?」
母の声「撮れてるよ」
壁掛け時計を映して。
母の声「ただいま、夜の十二時を超え、父、向井直弼の誕生日となりました」
再び、貴子を映し。
母の声「なんと本日は中々家に帰らない貴子が帰ってきております」
貴子、片手でケーキを持ったままピース。
貴子「イエーイ」
母の声「ちょっと危ない。両手で持っててよ」
貴子「わかってるよ」
貴子と母が『ハッピーバースデイトゥーユー』を小さく歌い出す。
貴子、歌いながらドアを開ける。
部屋は暗い。
机に伏せて寝ている直弼。デスクスタンドだけ点いている。
貴子「ハッピバースデーディア……」
母の声「ディア?」
貴子「お父さん疲れてるね」
母の声「本当だ」
直弼、起きる素振りもない。
貴子、ケーキを机に置いて布団を体に掛けてやる。
母の声「貴子が初の親孝行です」
貴子「こんなの親孝行でもないでしょ」
と、小さく笑う。
貴子、ケーキを手にとって、デスクスタンドの灯りを消す。
母の声「このケーキは明日にお預けみたいですね」
部屋から出る貴子。
母の声「明日はどうするの?」
貴子「……明日は友達の家」
母の声「お父さんに今日来たこと言っていい?」
貴子「それ知ったらまた怒り出すでしょ」
母の声「ええ〜。じゃあいつかこのビデオを見せる日まで」
貴子、笑ってピース。
貴子「イェーイ」
『THE END』の文字。
○ マリンハピネス・披露宴
会場の明かりが戻る。
自然とスタッフたちの拍手が沸き起こる。
和男、涙ぐんで拍手している。
大友「僕たちはちゃんと恋愛しています」
直弼「……」
大友「この結婚は家族の意向だったり、企業
の戦略だったって思われたくないんです」
和男「……」
大友「僕は昔から決められた道を歩いてました。両親の考えが全てだったんです。だから中学、高校、大学も親が決めました。就職先もなんなら僕が生まれる前から決まってて……」
貴子「……」
大友「もちろん、不自由しない生活でしたけど。味がしないというか」
和男「……」
大友「初めはお義父さんからの紹介でしたけど、自由奔放な貴子さんと出会って。それから人生に、いや、人生って言ったら壮大に聞こえちゃいますよね」
直弼「……」
大友「コンビニのおにぎりって何の具が入ってるか分かりますけど、人が握ったおにぎりって噛んで噛んで噛まないと味が分からないんですよね」
和男「……」
大友「予測できないことの連続が本当の人生だって思えるようになったんです」
和男「……」
大友「だからこの結婚はお義父さんが決めたものじゃなくて、僕ら二人で決めた結婚でありたい。そう思ってます」
直弼「私と妻も恋愛したんだっけな」
と、直弼会場を出て行く。
汐見「行っちゃった」
和男「大丈夫。伝わったよ」
汐見「ってか、彩音がなんでそのドレス着てんの?」
貴子「あー! それ私が着るやつ!」
彩音、走って逃げる。
追いかける貴子。
笑うスタッフたち。
和男、安堵した表情で微笑む。ふと、大友を見る。
和男「……」
大友も楽しそうに貴子を見つめている。
和男「(安心して)よーし、片付けるぞ」
と、片付けを始める和男。
○ 和男の自宅・外観(夜)
和男、アパートの階段を駆け上がっていく。
手には紙袋。
○ 同・玄関(夜)
和男、入ってくる。
和男「ただいま」
○ 同・リビング(夜)
リビングに入ってきて、ジャケットを椅子に掛ける。
和男、襖に向かって、
和男「おーい、帰ってきたぞ」
と、襖が開く。
厚化粧をした夏実が出てきて。
夏実「聞こえてるよ」
和男、紙袋を差し出し。
和男「ほら、お土産」
夏実「お節介だなー、汐見さん」
和男「これ、俺から」
夏実「(珍しい、と)えっ?」
和男、紙袋からラップに包まれたおにぎりを取り出す。
和男「ほら」
夏実「えっ……まさかお父さんが作ったの? えっ、マジウケんだけど」
和男「お父さんだってこのくらいは作れるよ」
夏実「これ料理って言うの?」
和男「ご飯が余って勿体なかったからさ」
夏実「やっぱ残りものかぁ〜」
和男「夜ご飯食べた?」
夏実「もう食べたよ」
和男「……マジで」
夏実「マジ」
夏実、袋の中を見る。
夏実「何これ?」
紙袋の中は大量のおにぎり。
夏実「これ食べれんの?」
和男「作るのに夢中になっちゃって」
夏実「(微笑って)知ーらない」
と、玄関に向かう夏実。
和男「……また、遊びに行くのか?」
夏実、立ち止まって。
夏実「悪いの?」
和男「いやっ……何でも……」
夏実「? なんか、キモい」
和男「キモいってなんだ。キモいって。早く行ってこいよ」
夏実「(はいはいといった感じで)」
夏実、再び玄関へ向かう。
和男「(何か言いたいが耐えれず)……」
和男も玄関まで追いかける。
○ 同・玄関(夜)
ヒールの高い靴とローファーが並んでいる。
どちらを履くか迷っている夏実。
和男がやってくる。
和男「色んな思い出作って来いよ」
夏実「何? 急に」
和男「どんな奴でもいい。楽しんでこい。好きだって思える奴なら誰だって」
夏実「……お腹空かせて帰って来るから。おにぎりちゃんと冷やしてね」
和男「あ、ああ。冷蔵庫入れとく」
夏実「じゃっ」
と、出て行く。
和男「今、『じゃっ』って言った」
と、嬉しそうな和男。
ふと足元を見ると、ハイヒールが玄関に
残っている。
和男「(ハイヒールを見て嬉しい)」
と、拳を握る。
終わり
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